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小学生の頃に夢見た「通関士」を目指して。留学と民謡を通して深める、言葉と文化への理解

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富山高専の国際ビジネス学科を卒業し、國學院大學の文学部に編入学した小熊夢唯さん。台湾とカナダへの留学を経て、現在は語学と文化への理解を深めています。3歳から続ける民謡を軸に、「言語の背景にある文化を知りたい」という思いを胸に学ぶ、その歩みに迫ります。

心に刻まれたオープンキャンパスの体験授業

―富山高専に進学したきっかけを教えてください。

進路を決めたのは中学3年生の10月、同級生の中ではかなり遅いタイミングでした。それまでは公立高校への進学を漠然と考えていたのですが、英語の塾の先生から富山高専の国際ビジネス学科を勧めてもらったのが大きなきっかけです。高専といえば理系のイメージが強かったのですが、調べていくうちに強く惹かれていきました。

オープンキャンパスに参加した際に受けた体験授業が今も印象に残っています。初対面の参加者同士でチームに分かれ、疑似的に会社経営をするというワークショップでした。コミュニケーションを取りながら、決められた予算内で資金をうまく回して1位を目指すという、一般的な高校ではなかなか経験できないような内容で、「15歳からこんなに実践的なことが学べるのか」という驚きと面白さが、志望の決め手になりました。

さらに、好きな英語を専門的に学べる環境があったことや、最初の3年間を一般教養に加えて幅広い専門分野を学びながら、自分が深めたい領域を見極められることも、ここに進学してみたいという意欲を後押ししてくれました。

舞台でギターを弾く小熊さん
▲高専時代の小熊さん

―特に印象に残っている授業について教えてください。

5年生で受けた、グループディスカッションなどを通してビジネス英語を実践的に使用する授業です。富山県黒部市に主要な事業拠点を置くYKK株式会社がメキシコで事業展開する際に直面している課題を、現地で働く方々とオンラインでつないで対話しながら解決策を探るという、実践的なプログラムがありました。

日本企業では長期雇用を前提とする傾向がある一方、メキシコではスキルアップを目的とした転職が日本より活発であることを、現地の方との対話を通して知りました。その仕事観や価値観のギャップをどう埋めるのかについて、対話を通して解決策を導き出すことがゴールでした。

最初はアイスブレイクを大切にしながら相手を理解することに努め、価値観の対話を引き出していきました。専門用語など難しい言葉や表現が飛び交う場面もありましたが、集中して聞き取り、簡単な英語でもとにかく伝えることに専念。授業を重ねるごとにだんだんと相手の話を聞き取れるようになり、うまく対話ができるようになりました。

最終的には、価値観を根本から覆そうとするのではなく、転職率が高いメキシコの文化的背景を踏まえた上で、「転職した人が戻りたいと思える会社づくりと福利厚生のあり方」に軸を置いて幹部の前でプレゼンを行いました。最初から最後まで学びが多く、将来の仕事にも生かせると感じた授業でした。

―高専での研究内容を教えてください。

卒業研究では、富山市八尾町(やつおまち)で毎年9月に開催される伝統行事「おわら風の盆」を題材に、「オーバーツーリズムが地域に与える影響と対策」をテーマにしました。きっかけは、実際におわら風の盆に足を運んだとき、その人出の多さに驚いたことです。

さらに、ニューヨーク・タイムズの「2025年に行くべき52か所」に富山市が選ばれ、その記事の中で「おわら風の盆」が紹介されていたことを知り、「現時点でこれだけの人が集まっているのに、さらに増えたらどうなるのだろう」という疑問が研究の出発点になりました。

調査では、観光商品化の取り組みのひとつである「月見のおわら」の発案者への聞き取りや観光協会の職員へのヒアリング、地域住民へのアンケートを行いました。最終的には、オーバーツーリズム対策として効果的と考えられる方法や、観光商品化の今後のあり方について自分なりの提言をまとめました。

海外留学が広げた「文化」への視野

―留学経験について教えてください。

高専では2度の留学を経験しました。3年生の夏に台湾・台北へ1カ月、4年生の前期にカナダへ半年間です。台湾は初めての海外で、友人も多く参加するプログラムだったことが安心材料になりました。現地の大学で語学を中心に授業を受けながら、ある程度自由時間もあったので、台北市内をあちこち歩き回りました。

滞在中に利用したトイレでは、トイレットペーパーを流さずゴミ箱に捨てる方式が多く、最初はかなりのカルチャーショックを受けました。トイレの外にペーパーが置いてあるケースもあり、国ごとの文化の違いをリアルに感じた経験でした。

テーブルの上に並んだ小籠包やご飯類など
▲台湾留学での一枚。現地のおいしい料理たち

カナダ留学では、ケベック州出身のホストファミリーのもとで半年間を過ごしました。父・母とシスター・ブラザーが1人ずつ、犬が1匹という家族構成で、ホストファミリーの人柄の良さと過ごしやすい気候が、カナダでの生活の印象として今も残っています。

空にかかるオーロラの様子
▲カナダ留学での一枚。オーロラが見えました

ケベック州はフランス語と英語の両方が話される地域で、家族の日常会話の中にふいにフランス語が混じることがありました。この時の経験が、後に大学でフランス語を学ぶきっかけにもなりました。

英語力の面では、留学前に先輩から「ある時点を境に、突然鮮明に英語が聞き取れるようになる瞬間が来る」と聞かされていて、はじめは半信半疑でした。しかし、実際に自分でもそうした瞬間を経験し、「本当にこんなことが起きるんだ」と驚きました。留学前後でTOEICの点数が350点以上伸びたのもうれしかったですね。

言語の背景にある文化を学びたい

―大学進学の経緯を教えてください。

入学時から大学進学を視野に入れていましたが、決定的な理由は、小学生のころからずっと抱いてきた夢に関係しています。地元・富山県伏木の港町で育った私は、小学校の校外学習で北前船資料館を訪れ、貿易関係の職種について話を聞く機会がありました。その中に通関士の方がいて、仕事を初めて知り、それ以来ずっと通関士に憧れを持っていました。

通関士を目指すうえで、語学の運用能力はもちろん、国際社会の動きへの感度や、異なる文化圏の人々との相互理解も不可欠だと考えました。となれば、高専での学びだけではまだ足りないだろうと、より深く文化を学べる環境を求めて大学進学を決めました。

進学先に國學院大學の外国語文化学科を選んだのは、文化を学ぶコースでありながら語学の習得機会も豊富に確保されていたからです。高専時代の第二言語だった中国語に加え、カナダ留学でのフランス語との出会いから、大学では英語、中国語、フランス語の3言語を並行して学んでいます。

―研究は、昔から続けている「民謡」に関するものとお聞きしました。始めたきっかけを教えてください。

民謡を3歳の頃から続けています。祖父が三味線奏者で、その弾き語りを子守唄代わりに育ったため、気づけば自然と民謡を受け継いでいました。おさらい会や新春の会、地域のイベントなどで披露する機会が続き、現在に至ります。

着物を着て立つ小熊さん
▲地域の民謡イベントで発表するときの小熊さん

この経験は、大学での研究テーマにも影響しています。今後の研究では、音楽を軸とした日本文化が異なる文化圏でどのように受け入れられ、発展しているかを探るとともに、海外の文化が日本にどう受容されているかを比較する比較文化の視点で深めていきたいと考えています。高専で取り組んだオーバーツーリズム研究を発展させる方向性も考えつつ、現在ゼミの配属に向けて検討している段階です。

―授業以外の時間はどのように過ごされていますか。

「軽音」と「対話」、2つのサークルに参加しています。軽音サークルでは、決まったバンドを組まず、イベントごとにメンバーを変えるというルールが特徴です。そのため、編入生や途中参加でも馴染みやすく、すぐに溶け込めました。私はギターとボーカルを担当しています。

サークルメンバーでスタジオの鏡越しに記念撮影
▲大学の軽音サークルにて

対話サークルは、大学で知り合った友人が立ち上げたサークルです。「対話」を通じて自分と相手を見つめ直す機会をつくることを目的としています。相手の現状を知ることで自分を客観視できるなど、自己を見つめ直す機会にもなっています。

―今後の目標を教えてください。

小学生の頃から抱いてきた「通関士になる」という夢に向かって、語学力と文化への理解を積み重ねている段階です。国内・海外を問わず、貿易の現場で働きながらキャリアを築いていきたいと考えています。

現在は就職活動が始まったばかりで、貿易・物流業界を中心にインターンシップへの応募を始めました。当初は通関士としての募集がある企業を中心に探していましたが、総合職として採用されたのちに経験を積みながら通関士資格を取得するルートも視野に入れ、資格取得支援制度が充実している会社にも関心を持っています。また、通関士は国家資格なので、就職活動と並行して資格取得のための勉強も進めています。

―最後に、高専生へのメッセージをお願いします。

振り返ってみて言えるのは、「高専に行って良かったことしかない」ということです。5年間という時間をかけて、授業を受けながら自分の興味分野を見極められるからです。逆を言えば、興味がない分野を知ることも、進学先を選ぶ上での大切な判断材料になります。テストの点数が取れても、勉強していて楽しくないと感じる教科は「自分の興味と違う」というサインとして受け取れるようになりました。

また、5年間同じクラスで過ごした仲間たちは、かけがえのない財産です。上京して4カ月がたちましたが、同じクラス出身の東京組と毎月会っており、進学せずに就職の道を選んだ友人との情報交換が日常の心の支えになっています。高専で育む人間関係は、社会に出てからも続く一生ものだと感じています。

編入学は試験についての情報が少なく不安を感じやすいかもしれませんが、入学後は同じ分野に関心を持つ仲間たちと切磋琢磨しながら勉強や卒論、就活に取り組めます。興味がある方は、ぜひチャレンジしてみてください。

小熊 夢唯
Miyu Oguma

  • 國學院大學 文学部 外国語文化学科 3年

小熊 夢唯氏の写真

2026年3月 富山高等専門学校 国際ビジネス学科 卒業
2026年4月 國學院大學 文学部 外国語文化学科 3年次編入学

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