高専×企業高専生採用企業

新人でも任される環境で、気づけば仕事にのめり込んでいた。高専からゼネコン現場の最前線へ

SHARE

この記事のタイトルとURLをコピーしました
公開日
取材日
新人でも任される環境で、気づけば仕事にのめり込んでいた。高専からゼネコン現場の最前線へのサムネイル画像

松江高専の専攻科を修了後、日本国土開発株式会社に入社し、施工管理としてトンネル工事の現場に携わってこられた吉田和也さん。入社当初は分からないことだらけでも、現場経験を積む中で理解や面白さへと変化していきました。高専進学の背景から現在の業務、仕事への考え方の変化まで、お話を伺いました。

大学のような自由さや、独特な空気感に惹かれて高専へ

―高専へ進学したきっかけを教えてください。

同級生に誘われてオープンキャンパスに参加したのがきっかけです。そこで初めて高専の存在を知りました。

実際に行ってみると、少し大学に近いような雰囲気を感じました。学生たちがそれぞれがやりたいことに取り組んでいるように見えて、「高校とは違うな」と感じたのを覚えています。そういう自由さや独特の空気に惹かれたのが進学の決め手です。

学科は、環境・建設工学科を選びました。強いこだわりがあったわけではなく、入りやすさなどを見て選んだというのが正直なところです。ただ、結果的にこの選択が、今の仕事につながっていると感じています。

―実際に高専で学んでみて、印象に残っていることはありますか。

今振り返ると、測量やコンクリートの実習が特に印象的です。当時は「これが何の役に立つんだろう」と思いながら取り組んでいた部分もありました。

ただ、会社に入ってから「あのとき授業や実習でやっていたことは、こういうことだったのか」と、答え合わせをしているような感覚になることがあります。当時は分かりませんでしたが、今思うと、高専でやっていたことは単なる勉強ではなく、実際の仕事につながる生きた知識だったんだなと感じます。

―入学当初は強い志望があったわけではなかったとのことですが、在学中に土木分野への印象は変わりましたか。

もともと土木に対してマイナスのイメージや先入観を持っていたわけではありませんでした。実際に学んでいく中で、測量やコンクリートの実習は楽しく取り組めました。現場見学で実際の工事を見る機会もあり、スケールの大きさや迫力を感じて、「すごい仕事だな」と思った記憶があります。

他にも、パスタの乾麺を使って橋をつくる授業がありました。グループごとに構造を考えて橋をつくり、最後におもりを吊し、どれだけ重さに耐えられるかを競うんです。そのように実際に手を動かしてものをつくることには、純粋に面白さを感じていました。

―就職活動はどのように進めていましたか。

地元の企業よりも、全国規模で仕事をしている会社に行きたいという思いがありました。建設業界、いわゆるゼネコンに進みたいという方向性はぼんやりと持っていたのですが、当時は「ゼネコン」という言葉の意味もよく分かっていなかったと思います。ただ、高専で学んできたことが生かせたらとは思っていました。

「とりあえずやってみよう」。飛び込んだゼネコンの現場

―日本国土開発に入社を決めた理由を教えてください。

全国に支店がある会社だったので、「いろいろな場所や現場で働けるかもしれない」と感じたのが理由のひとつです。また、求人票やホームページを見て、若手でもいろいろなことを任せてもらえる会社だと感じたのも大きかったです。

当時は会社の規模感も分からないまま、「とりあえずやってみよう」という気持ちで決断した部分もあります。実際にどこまでできるのかは分かりませんでしたが、早い段階から経験を積める印象はありました。

―入社後はどのような仕事を担当されてきたのでしょうか。

入社から7年間、工事現場で施工管理を担当してきました。工程管理や安全管理、品質管理、原価管理など、工事全体を管理する役割です。また、発注者や協力会社の方々との調整も重要な業務のひとつです。

これまでに担当した現場は3つあり、いずれもシールド工事と呼ばれる、地下にトンネルを掘る工事でした。主に下水道管や水道管を通すためのもので、1つの現場を2年ほどかけて担当します。

▲日本国土開発と石川島播磨重工業(現:株式会社IHI)と共同開発した土圧バランスシールドによる「I&K土圧シールド工法」の動画(1974年に東京都水道局から受注した水元配水本管工事)。その後、一般的な工法として広まっていきました。

2025年の夏に3つ目の現場の工事が終わり、現在は本社の技術部に所属しています。工事を受注するための技術提案や、現場で困っていることへの支援などがメインの業務です。ただ、今後また新しい工事が始まる際には、現場に戻ると思います。

―入社当初、現場で苦労したことはありますか。

最初はとにかく分からないことだらけでした。専門用語も分からず、現場で何を言われているのかも理解できない状態でした。

初めて配属された現場では、まずは図面を見るところからのスタートでした。ただ、その図面の見方も分からず、図面に描かれているものが実際にどんな形になるのか、頭の中でイメージが全くできませんでした。

他の現場の事例を見せてもらいながら理解しようとしましたが、それでも図面と実物がなかなか結びつかず、もどかしさを感じていました。実際の作業を見ながら、「これが図面のこの部分か」と一つひとつ確認していくような感覚でした。

―7年間の経験の中で、成長を実感した瞬間はありますか。

同じようなシールド工事を経験してきた中で、最初の頃は分からなかったことが、今では理解できるようになっていると感じます。

例えば、3つ目の現場を担当していたときに、「1つ目の現場で先輩や作業員の方が話していたのは、こういう意味だったのか」と思い出すことがありました。当時は理解できていなかったことが、後になってつながる瞬間が多くあります。

そうした積み重ねの中で、自分の中に知識や経験が蓄積されてきたと実感しています。

―この仕事の面白さはどのような点にあると思いますか。

入社当初は正直、面白さを感じる余裕もなく、ついていくのに必死でした。ただ、図面に描かれていたものが、実際に構造物として完成したときの面白さは印象に残っています。

今はもう少し違った視点で面白さを感じています。同じ図面でも、完成までの工程や進め方は現場や担当者によって大きく変わるんです。例えば、同じ作業でも、ある人は1週間かけるのに対して、別の人は3日で終わらせることもあります。仕上がりも、見た目を重視するのか、機能を優先するのかで変わってきます。

そうした違いの中に、それぞれの考え方や技術が表れるので、「ここが腕の見せ所なんだな」と感じますし、人によってやり方が異なる点に面白さを感じています。

技術部での吉田さんの仕事の様子
▲技術部での吉田さんの仕事の様子

―現場での仕事と、現在の本部での仕事の違いはどのような点にありますか。

現場にいた頃は、「なぜこの寸法なのか」「なぜこの長さが必要なのか」といった背景まで深く考える機会はありませんでした。

一方で現在は、提案内容に対して「なぜそうなるのか」という根拠が求められるため、その設計の背景や考え方を学ぶ機会が多くあります。今後また現場に戻った際には、これまでとは違う視点で工事を見ることができるのではないかと感じています。

任されるからこそ面白い。高専の学びが強みに変わる

―高専での経験が、今の仕事に生きていると感じる瞬間はありますか。

特に測量に関しては、完全に理解しているわけではなくても、見聞きしたことのある言葉や知識が多く、仕事の内容を無理なく理解できていると感じます。

まったく知らない分野だと、「何を言っているのか分からない」という状態になりがちですが、高専で一度触れていることで、「聞いたことがある」「少し分かるかもしれない」と感じられるんです。その取っつきやすさは大きいと思います。

また、この仕事は数字を扱う場面が多いので、三角関数などの基礎的な知識があることはやはり役立っています。文系出身の方もいますが、そういった分野に対する慣れという意味では、高専出身の強みを感じることは多くの場面であります。

―具体的に、測量の知識が役立った場面はありますか。

例えば、測量機器を扱う場面です。現場で求められるレベルで使いこなせるわけではなくても、初めて触るという状態ではないので、心理的なハードルはかなり低いです。知識として完璧でなくても、「これはあのときやった内容だ」と思い出せるだけで、理解のスピードが全然違います。

―日本国土開発の魅力や風土について、どのように感じていますか。

若手でも積極的にチャレンジさせてもらえる風土があると感じています。できると判断されれば、年次に関係なく仕事を任せてもらえる環境です。

印象に残っているのは、入社1年目のときの経験です。これから始まるトンネル工事で、カーブ施工の計画を任されました。

カーブの計画は、1m進むごとにどの程度角度を変えるのかといった、三角関数や測量の知識を使って計算していく必要があります。最終的にどの方向を向くかにも関わる、非常に重要な工程です。

当時は重要性を十分に理解できていませんでしたが、所長に「やってみろ」と任せていただきました。計画を提出すると「この計画でいこう」と言っていただき、不安を感じながらも、私の計画で進めることになりました。結果的には問題なく進み、むしろ良い出来だと評価していただきました。

振り返ると、よく任せてもらえたなと思いますし、この経験が仕事に向き合う姿勢を大きく変えるきっかけにもなりました。以降、今の仕事にのめり込んだ感覚があります。

―今後の目標を教えてください。

将来的には主任や所長として、現場全体を任せてもらえるようになりたいと考えています。これまでは、目の前の業務をこなすことで精一杯な部分もありましたが、今後は工事全体の流れや最終的なゴールを見据えながら仕事を進めていきたいです。

また、さまざまな現場に関わってみたい気持ちもありますが、どちらかというと、これまでシールド工事を中心に経験してきたので、その強みを生かしながら、さらに専門性を高めていきたいと考えています。

―仕事をするうえで大切にしていることはありますか。

一人で抱え込まないことです。現場では判断に迷う場面がよくありますが、一人で悩んでいても答えが出ないことが多いですし、決断までに時間がかかることで工事全体に影響が出ることもあります。

もちろん、自分なりに考えることは大切ですが、そのうえで上司や作業員の方に相談することを意識しています。

トンネル工事は、地中の状況が見えない中で進めていくので、誰もが「分からない」前提で仕事をしています。だからこそ、現場では自然とコミュニケーションが生まれやすく、相談しやすい雰囲気があると感じています。

―仕事のモチベーションはどのようなところにありますか。

土木工事はインフラに関わる仕事なので、社会にとって必要不可欠なものをつくっているという実感はあります。

ただ、それ以上に大きいのは、現場での達成感です。これまで携わった現場はいずれも大きなトラブルなく進めることができ、工事が終わったときには関わった人たちみんなが前向きな気持ちになっているのを感じました。

特に印象に残っているのは、トンネルが開通した瞬間です。その場に立ち会ったときの達成感は、他ではなかなか味わえないものです。

―就職活動で大事にしたほうがいいことは何だと思いますか。

「自分が納得できる理由を持って選ぶこと」だと思います。福利厚生や条件を重視する人も多いですが、長く働くことを考えると、「続けていて苦にならないか」「自分が興味を持てるか」という点のほうが重要だと感じています。給料の良さだけで頑張り続けるのは、なかなか難しいのではないでしょうか。

そのためにも、いろいろなことを体験したり、人の話を聞いたりする中で、自分なりに「これをやりたい」と思えるものを見つけることが大切です。私は入社してからやりがいを見つけたタイプですが、それでも「なんとなく」ではなく、自分なりに納得して選ぶことが、長く続けるうえでは大事だと思います。

―最後に、高専生へのメッセージをお願いします。

高専に進学すると早い段階で専門分野を選ぶことになりますが、「一度選んだから、その道を進み続けなければいけない」ということはないと思います。別の分野に進むことも十分にできますし、その経験が無駄になることはありません。どこかで必ず生きてくるものです。

だからこそ大事なのは、自分がやりたいことや興味を持てることに、素直に挑戦することだと思います。勇気がいる決断もあるかもしれませんが、いろいろなことに興味を持って、触れてみて、自分なりの道を見つけてほしいと思います。

吉田 和也
Kazuya Yoshida

  • 日本国土開発株式会社 土木事業本部 技術部 技術支援グループ

吉田 和也氏の写真

2017年3月 松江工業高等専門学校 環境・建設工学科 卒業
2019年3月 松江工業高等専門学校 専攻科 生産・建設システム工学専攻 修了
2019年4月より現職

SHARE

この記事のタイトルとURLをコピーしました

松江工業高等専門学校 の記事

足の怪我がきっかけで始まった歩行ロボットの研究。将来的には「ロボットが自分で考えられる制御」へ
足の怪我がきっかけで始まった歩行ロボットの研究。将来的には「ロボットが自分で考えられる制御」へ
授業以外で、研究に興味を持つきっかけをつくる。母校で働く山口先生の学生への思いとは
授業以外で、研究に興味を持つきっかけをつくる。母校で働く山口先生の学生への思いとは
研究をする人から事業をつくる人へ! 研究のタネの事業化に向けて、日本の事業プロデュースに貢献
研究をする人から事業をつくる人へ! 研究のタネの事業化に向けて、日本の事業プロデュースに貢献

アクセス数ランキング

最新の記事

工学に「伝わるデザイン」の視点を。建築出身の校長が描く、鹿児島高専での新たな学び
工学に「伝わるデザイン」の視点を。建築出身の校長が描く、鹿児島高専での新たな学び
学問は最高のエンターテインメント。AIを味方に「自分で学べる人」を育てる
学問は最高のエンターテインメント。AIを味方に「自分で学べる人」を育てる
地域で生きる力を“パスポート”に——学生が生き生きと活躍する釧路高専を目指して
地域で生きる力を“パスポート”に——学生が生き生きと活躍する釧路高専を目指して