
富山高専を卒業後、専攻科に進まれ、現在は黒田化学株式会社で働かれている宮下さん。高専では何でも挑戦し、現在は仕事とプライベートを両立されている宮下さんに、高専時代の思い出や、研究のお話、現在のお仕事について伺いました。
自立して動かないと、欲しい生活は手に入らない
―富山高専に進学されたきっかけを教えてください。
中学生の頃、同級生のお姉さんが富山高専の国際ビジネス学科に通っていたんです。当時、私の弟がボーイスカウトに所属していて、親同士がすごく仲が良かったので、そこから高専の情報を得ました。

中学生の頃の私は、「普通高校の勉強は、大学受験のための勉強なんじゃないか」という疑問は抱きつつ、とはいえ成績や内申点を上げるために動いていたので、幸い進路の選択肢は多かったと思います。
しかし、先生方から進学校を勧められた際、どうも自分にはしっくりこなかったんです。「果たして良い高校や大学に行く人生を、自分は求めているんだろうか」とモヤモヤしていた時期に、突然「高専」という知らない学校の情報が飛び込んできて、「私には高専しかない!!」って思っちゃいましたね(笑)
―富山高専に進学されてみて、いかがでしたか。
高専の先輩たちは本当にきらびやかで、「自分もこんな風になれるんだ!」と夢に溢れていましたが、すぐに現実を突き付けられました(笑) 「ただ生活していればキラキラできる」というわけではなく、「自立して動かないと、欲しい生活は手に入らない」と悟ったんです。

テストには暗記科目がたくさんあるので、「どうやって自分に合う勉強方法を見つけるか」が工夫ポイントでした。私の場合は、音読という方法に辿り着きましたね。授業中にプリントを作成して、友達と問題を出し合いながら、ひたすら喋って覚えました。成績にはこだわらない性格でしたが、毎回クラス平均程度の点数が取れていたので、やはり自分には合っていたと思います。
高専時代は寮生活をしていました。私の部屋でピザパーティーをしたことも楽しかったですし、寮のイベントも盛り上がりましたね。寮生活は、生活のリズムを整えられることが、一番のメリットでした。さまざまな制約の中で生活できる能力が身に付きましたが、デメリットだったのは、平日20時が門限だったことです(笑) ただその分、寮の中で楽しめたのは良かったと思います。

―部活は何に所属していましたか。
バスケットボール部に所属していました。キャプテンをさせていただいたのですが、私は高専に入ってからバスケットボールを始めたので、初心者スタートだったんです。だから、自分の実力は関係なく、声をしっかりと出して、チームをまとめていけるよう努力しました。
一番難しかったのは、みんなの目線を同じ方向に向けることです。部活目的で高専に入ってくる人は少ないので、その状況の中で、みんなが同じ目標に向かう努力をすること、全国を目指してチームをまとめていくことには苦労しました。その調整役や、コーチや監督との橋渡し役を経験させてもらえたことは大きな経験だったと思います。結果、全国高専に出場、目標の1勝を上げることは達成できましたし、嬉しかったです。

―留学にも行かれたそうですね。
1ヶ月間の異文化実習で、カナダに行きました。ホームステイ先のホストマザーはお年を召されたおばあちゃんで、旦那さんが日本人だったので、すごく日本に好意的で、日本の文化にも理解のある方でしたね。うどんやお好み焼き、ちらしずしなどを振る舞ったのが、いい思い出です。

留学先の実習では「水の都」と呼ばれるビクトリアに行ったり、たくさんハイキングをしたり、ショッピングをしました。現地の先生方や学生さんともコミュニケーションを取ることができて良かったです。

「森を見て、林を見て、木を見る」
―卒業研究はどのようなことをされたのですか。
実は私、研究テーマを決めるのに半年かかったんです(笑) 夏のゼミ合宿まで全然スイッチが入らなくて、中身の出来ていないペラペラなレジュメを提出したところ、宮重教官に「これだけ?」って言われて、場が凍ったんです(笑) 先輩方にも「出来ない人には怒らない。やれるのにやってないから怒っているんだよ」と言われました。そこからスイッチが入りましたね。

研究テーマは人材育成の分野です。「上司と部下の関係性に着目し、なぜOJTによって部下の能力が向上するのか、そのプロセスを明らかにする」という内容でした。結論としては、上司が部下に対して「少し頑張らないと達成できないような目標」を設定し、かつその目標設定に沿った仕事を適度に任せることで部下のモチベーションの要素になり、モチベーションの向上によって能力も向上する、という結論になりました。
研究をするにあたっては、やはり「なんて日本語は難しいんだ」と実感しましたね(笑) 副査の先生が一言一句定義を考えられる先生だったので、言葉選びや表現に苦労しました。
「宮重語録」はたくさんあるのですが(笑)、私が一番好きなのは、「森を見て、林を見て、木を見る」です。「何を学ぶことにおいても、いきなり細かい話をせずに大枠から理解し、その後細かいところを見ていく。その順番が常に大事」という意味でして、この言葉が印象に残っています。
―その後、専攻科に進学されたんですね。
元々3年生ぐらいまでは大学編入を視野に入れていましたが、自己分析をしているうちに「本当にやりたいことは大学編入なのか」と考えるようになりました。そこで、自分で動けばいくらでも充実させることができる専攻科を選んだんです。

早々に単位は取り終わり、ゼミの出張や学会発表に合わせて、旅行をたくさんしましたね(笑) 大学に編入すると単位を取ることで忙しくなり、遊びの時間がなかなか取れないと聞いたので、専攻科に進学してよかったと思います。
「仕事とプライベート」よりも天秤にかけるもの
―現在はどのようなお仕事をされているのですか。
就職活動のときの軸は「誰と働くか」でした。仕事内容や業界にはこだわっておらず、働いている人が魅力的に見えるかどうかを重視して、東京の会社に就職しました。

しかし、新卒1年目で結婚し、転職することを決めた際は、かなり悩みました。仕事は大好き、でも自分が望んでいるライフイベントは両立したかった。そこで、「仕事とプライベート」ではなく「キャリアと時間」という天秤にかけて考えました。どちらの方が取り返しがつかないかを考えた時に、出た答えが新卒1年目での結婚と転職だったんです。
お相手は小学校の同級生でして、もともと結婚願望が強い方だったので、トントン拍子に話が進み、結婚を機に東京から地元の富山に戻り、ここでも「誰と働くか」を軸に、自動車部品メーカーに転職しました。人生何があるか分からないですね(笑)
今は品質保証部に所属しているのですが、私の部署は基本的に悪い連絡しか飛んでこない部署でして(笑) お客様からはクレーム、社内からは品質異常の連絡が飛んでくる部署なので、それに対して原因の追究や分析をし、担当の部署の方に是正の依頼をお願いするという仕事内容です。

今後の目標は、2年で1人前、5年以内にプロになることです。「石の上にも3年」と言われますが、私はせっかちなので(笑)、2年でそこは追い抜きたい。人の倍近くのスピード感で吸収をすることで、2年で独り立ち、5年で「宮下さんに聞けば全て分かる」という状態に持っていきたいと思っています。そのために日々新しい知識を得て、信頼関係の構築に励んでいます。
―現役の高専生にメッセージをお願いします。
責任のない自由はこの世に存在しないので、自己責任が前提にはなりますが、本当に何でも挑戦させてもらえる学校なので、それをフルに活用して、どんどんやりたいことを体現してほしいです。何をやっても学びになると思いますし、人間としての厚みが出ると思うので、いろんなことを頑張ってください。また、困った時は3歩先を行く先輩たちや、100歩先の先生たちに、何でも相談するといいですよ。
あと、専攻科もとても楽しいです。7年間同じ環境にいて「井の中の蛙になるんじゃないか」と思っていたのですが、関わる人たちは自分で変えられますし、どんどん外へ出て行動を起こせば何も問題ありませんでした。
もしその行動力が自分には無いと思うのであれば、強制的に環境を変えるという意味で編入や就職は一つの選択肢としてありますが、「自立して何でもやる」という心意気さえあれば、どの選択肢を選んでも後悔はしないと思います。編入では出来ない経験が出来るので、ぜひ専攻科も視野に入れてほしいですね!
宮下 日向子氏
Hinako Miyashita
- 黒田化学株式会社 グローバル品質保証部 品質管理課

2021年3月 富山高等専門学校 国際ビジネス学科 卒業
2023年3月 富山高等専門学校 専攻科 国際ビジネス学専攻 修了
東京での就職を経て、
2024年2月より現職
富山高等専門学校の記事



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