高専教員教員

就活での100社面接が教育・研究の原点。文系と理系の両面で分析する、新時代の企業経営

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就活での100社面接が教育・研究の原点。文系と理系の両面で分析する、新時代の企業経営のサムネイル画像

大学時代の就職活動で「100社の面接経験が企業経営研究の原点です」と話す富山高専 国際ビジネス学科の宮重先生。文理両分野から、新時代における医薬品業界の経営分析と研究開発の現状などについてお話を伺いました。

就職活動を通して見えた、企業経営への関心

-まず、広島商船高専へ進んだきっかけをお聞かせください。

将来作業着を着るような仕事はちょっと苦手かなと思っていたんです。「これからは情報通信分野の時代」と言われていたこともあって、子どもらしい理由でしょうか、「スーツを着る仕事に就きたいな」と思っていました(笑)

そのような理由から、広島商船高専の流通情報工学科へ進学したんです。商船高専は全国に5校ありますが、船の需要が減ってきたので、広島商船高専の流通情報工学科では航海コースの内容が残るような形で、流通と情報の2本立てになりました。工学科ですが、文理融合のような学科でした。

卒業後は信州大学経済学部の第3年次に編入します。当時、経済学部には理系から文系の学生を募集する制度があって、私はその二期生になりました。高専で大卒程度の理系の勉強はある程度したのではないかと思い、新しいことに挑戦したいと、文系の経済学部へ進んだのです。

信州大学の校門の前に立つ宮重先生
▲信州大学の卒業式にて

―大学の就職活動では100社の面接を受けたそうですね

大学では3年次の1年間で90単位を取得しましたので、4年生は就職活動に専念しました。ただ、ちょうどバブルがはじけた後の就職超氷河期で、それまでの就職協定が廃止され、3年生の夏頃から就職活動が始まります。

大学3年生の12月に最初の内定をもらいましたが、就職活動は4年生の9月まで続けました。その経験を通じて「自分には裁量権が大きく、仕事の意義に納得できる職場が合っている」ということを自覚します。

同僚の方と写真に写る宮重先生
▲新入社員研修にて

ちょっとした自慢なのですが、私は就職活動で100社の企業面接を受けました。高専時代の友人は学校推薦なので、基本的には1人1社しか受験していません。本人たちは何も考えなくても担任の先生が来て「この企業に就職してみるのはどうですか?」と薦めてくれるのです。

就職についてはそれまで深く考えていないというか、高専にいたころは、なんとなく決まるものだと思っていました。しかし、経済学部は文系ですから、就職は自由公募です。そこで、「複数の企業を受けよう」と思い面接を受けてみると、「企業によって全く評価が違う」ことに驚きました。

面接で同じことを話しても「いいね」と言う会社もあれば、「ひどいこと言うなあ」と思う会社もあります。同じ内容にも拘わらず、評価が違う。逆にそこが面白いと感じ、「だったら、とことん見てみよう」と、100社の面接を受けたんです。

悪い印象だったのは、「企業は学生を選ぶ権利があるんだ」と、とても上から目線の会社でした。もちろん企業には選ぶ権利がありますけど、学生にも選ぶ権利があるので、対等です。そんな上から目線の企業に就職したら、就職した後が大変だと思いましたね(笑)

ちなみに、就職活動は4年生の9月まで続けていましたが、最終的に就職した製薬会社から内定をもらったのは4年生の4月です。自分が納得するまで就職活動を続けたいと申し出ると、「納得するまで活動して、その中でうちが1番だったら、ぜひうちに来てください」と言ってくれました。非常に柔軟性があり、束縛をしない、私にはマッチした会社だったと思います。この就職活動で感じたことが、今の教育・研究の原点となるわけです。

製薬会社「あなたの人生なので、自分が納得できる選択を」

-製薬会社から高専教員になるまでの経緯をお聞かせください。

製薬会社には2年間勤めましたが、やはりとても自由な雰囲気で、裁量権も大きく、のびのびと働くことが出来ました。会社の基本理念(その会社にとっての仕事の意義)に従う限り、全ての裁量権が従業員に与えられていました。

会食中の宮重先生
▲会社員時代の宮重先生

高専の教員になったのは、高専時代の恩師に誘われたことがきっかけです。

友人との富山旅行の際、友人の職場が有給休暇を取れないということもあり、友人との合流までの時間に、恩師と食事をすることになったんです。富山商船高専(現:富山高専)に国際流通学科という新しい学科が設置され、ちょうど広島商船高専から富山商船高専へと恩師が換わられたタイミングでした。

その際、恩師から「君は本当に楽しそうに仕事をしているね。日本人の多くはイヤだと思いながら毎日仕事をしているんだよ。その経験を生かして、最近立ち上げた、国際舞台で活躍できるビジネスパーソンを育成する新しい文系学科で、生き生きと働ける人材を育成する仕事を手伝ってくれないか」と誘われます。「これも何かの縁かなあ」と感じましたね。

勤務先の製薬企業にも相談しましたが、「当社は残ってほしいと思っています。ただ、あなたの人生なので、あなたの納得できる方を選択してください。どちらを選択しても、当社はあなたの人生を応援します」と言ってくれました。そして、いろいろと考えた結果、教員の道を選択することになります。

修士は経営、博士は薬学。文理両分野からの研究

-高専での研究と、取り組まれるきっかけ、内容についてお聞かせください。

富山高専には学士で就職したため、働きながら修士号・博士号を取得しました。修士課程では経営学を選択しましたが、博士課程では薬学を選択していて、文理のどちらも理解できる点は、研究の上で強みだと思っています。

現在の研究は、製薬企業を経営学の観点から分析するものです。もともと製薬会社に勤務していたので、その間に持った疑問から研究を始めました。具体的に言うと、当時の製薬産業では大型M&A(企業の買収・合併)が行われていたものの、M&Aによって競争力が向上しているとは思えなかったんです。そこで、製薬企業のM&Aを分析することから研究を開始しました。

これが大学院の修士課程での研究内容になります。この研究から、製薬企業が競争優位を得るには、企業規模よりも研究開発力が重要であることが分かりました。そこで、大学院の博士課程では、製薬企業の研究開発について分析することにしたんです。

博士課程で薬学系を選択したのは、製薬企業の研究開発を分析するには専門性の高い知識が必要だったからでした。ここでの研究の結果、基礎研究はベンチャー企業が実施し、製品化(開発)は大手製薬企業が実施しているという現状が分かりましたね。

白衣を着て研究所で写真に写る宮重先生
▲スイスの製薬会社「ロシュ社」のバーゼル研究所の調査で現地へ(高専教員時代)

今後の研究も経営学の観点から製薬企業を分析していく予定です。研究内容は技術経営やオープンイノベーションに関する内容ですので、研究成果(知見)は製薬企業以外の会社にも適用が可能だと思っています。

また、経営学は実学です。よって、研究成果は学術論文だけではなく、著書として出版社から発刊しています。研究内容を踏まえ、製薬会社や製薬に関連する会社(特に外資系企業)から講演を依頼されることも多いですね。

宮重先生の著書4点
▲宮重先生の著書

―高専での教育方針や、高専で力を入れている活動について教えてください

現在はソリューションセンター長として、地域貢献を担当しています。過去には国際交流も担当するなど、教務、学生、寮務、本科、専攻科と、高専の業務はほぼすべてを担当しました。

二人の方に囲まれて室内で写真に写る宮重先生
▲アメリカでのキャリア教育の取り組みを調査するため、ジョージワシントン大学を訪問

特にゼミ活動には力を入れています。毎年、ゼミ合宿を行っており、2つの活動を行っています。1つは研究報告会です。学生は初めて論文を書くので、それまで1年近くやったことをひと通り設計図として出してもらい、それに対してみんなでディスカッションするというものです。

ゼミ合宿で学生の皆さんとともに写真に写る宮重先生
▲ゼミ合宿の集合写真

もう1つは会社訪問です。コロナのときは行けなかったのですが、企業を実際に訪問して、働く人たちの姿を学びながら、どういう生き方がいいのかを学生は探してほしいと考えています。多くの有名企業に協力いただき、学生にも好評です。

学生には自分に合った「正解」を見つけてもらいたいですね。人生には、絶対的な正解があるわけではありません。今後も会社員、OBOGなど、さまざまな人々と交流する機会を設け、そこでいろんな「正解」があることを学んでほしいと思います。

―最後に、高専の良さと、未来の高専生に向けてメッセージをお願いします

やはり先生との距離を近くして学べるのが1番の良さですね。高専を目指しているみなさんに対するメッセージは、「自分のやりたいことをやりなさい。偏差値ではなくて、自分が興味ある分野を選択してほしい」ということでしょうか。

宮重ゼミの学生の方々と写真に写る宮重先生
▲宮重ゼミ7期生のみなさんと

最近は偏差値などの物差しで見ている人が多いと感じますが、「あなたは何をしたいのですか」——それを考えている方が高専に来ると確実に伸びます。

高専では自分の中の「正解」を探してもらいたいですね。他人から与えられた正解ではなく、正解だと思わされていたものでもなく、あなたが正解だと思えるものです。あなたにとって価値があるなら、それはあなたにとって価値のある「正解」なのです。

今、中学生の段階で自分のやりたいことがはっきりしている方が減ってきていると思います。人から見たら意味のないことでも「あなたにとって意味があれば、それは意味がある」。それが見つかれば、ぜひ高専に来てほしいです。

メディア総研のロゴがある壁の前で写真に写る宮重先生
▲取材でご来社いただいた宮重先生

宮重 徹也
Tetsuya Miyashige

  • 富山高等専門学校 国際ビジネス学科 教授・ソリューションセンター長

宮重 徹也氏の写真

1996年3月 広島商船高等専門学校 流通情報工学科 卒業
1998年3月 信州大学 経済学部 経済学科(情報経済コース) 卒業
1998年4月 萬有製薬株式会社(米国メルク・グループ)(現:MSD株式会社) 入社
2000年4月 富山商船高等専門学校(現:富山高等専門学校) 国際流通学科 助手
2003年3月 富山大学大学院 経済学研究科 企業経営専攻 修士課程 修了
2007年4月 富山商船高等専門学校 国際流通学科 助教
2008年3月 金沢大学大学院 自然科学研究科 生命科学専攻 博士課程 修了、博士(学術)
2009年4月 富山商船高等専門学校 国際流通学科 講師
2009年10月 富山高等専門学校 国際ビジネス学科 講師
2010年4月 同 専攻科専任(国際ビジネス学専攻) 講師
2010年10月 同 准教授
2014年4月 富山高等専門学校 国際ビジネス学科 准教授
2017年4月より現職

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