2023年9月23日(土)に、【富山高専出身者×企業交流会】が開催されました。社会の第一線で活躍する富山高専出身者と企業が気軽に交流することで、お互いがキャリア形成についての認識を深め、人脈づくりやビジネス拡大につなげる場を目指した本イベントは、メディア総研株式会社の東京事業所で小規模に開催。ここでは、その様子をレポートします。
参加した文系の高専卒生と企業について
今回、富山高専出身者として参加したのは、同校の宮重先生のゼミに所属されていた20代から30代の計13名。そのほか、計4名の現役の宮重ゼミ生も参加しました。
宮重ゼミでは、富山高専の国際ビジネス学科に所属している学生が経営学を勉強・研究しています。高専では珍しい「文系学科」ですが、そこにある高専としてのスピリットは理系と同じ。ビジネスパーソンとして社会で活躍できる人材を育成しています。
実際、宮重ゼミを卒業されたOBOGは、様々なところで活躍されています。人材サービス、飲料メーカー、広告、会計、コンサルティングなどなど、特定の業種にとどまりません。自身のキャリアを自分でしっかり考え、実行しているからこその多様さとも言えます。
一方、今回参加された企業は、バリュークリエーション株式会社と株式会社FIXERの2社。ベンチャーと認識されている企業ですが、どちらも創業から10年以上が経っており、事業として確実に成功させてきた2社と言えます。
バリュークリエーションは、マーケティングDX事業やデジタルメディア事業を手掛けている企業です。また、解体業者の見積もりを比較できるサービス「解体の窓口」に代表される不動産DX事業にも取り組んでいます。
FIXERは、企業や自治体などに対して、各種クラウドサービスの計画から設計、運用を手掛けるクラウドネイティブカンパニーです。クラウドネイティブ(クラウドのメリットを最大限に生かす設計)にこだわり、日本における高度情報化社会のプラットフォーム革新に挑んでいます。
今回のイベントで上記のような富山高専出身者と企業が交わることで、高専出身者が考えるキャリア形成と企業におけるキャリア形成を突き合わせ、お互いへの認識を深めつつ、キャリアに対する考え方を更新することが期待できます。それだけでなく、人脈・ビジネスの拡大につながることも考えられるでしょう。
今の自分のキャリアについて聞く
当日は、まず企業側の簡単な挨拶からスタートし、4テーブルに分かれて企業と富山高専出身者とによる交流タイム。その後、全体に対する企業プレゼンを挟み、再度4テーブルに分かれて交流しました。
交流タイムでは、富山高専出身者と企業がキャリアに関するあれこれを本音で語り合いました。筆者が見学したテーブルでは、リモート勤務によって業務を効率的に行えているのかや、ライフイベントをきっかけとした転職などについて情報交換。例えば、企業から現在のキャリアについての質問をされると、以下のような回答がありました。
富山高専出身者A:キャリアとしては今3社目なのですが、とても居心地が良いです。ライフイベントによって地元に帰ったとしても働ける環境でして、自分の好きな働き方ができているのが良いかなと思っています。
富山高専出身者B:自分は公務員なのですが、だいたい2年ごとに部署が変わるので、今までと全然違うことをすることになります。公務員になったのも、明確にやりたいことがなかったので、いろいろなことにチャレンジできそうな公務員っていいなと思ったからです。まだ「これ!」といったことが見つかってないですが、優秀な方々に囲まれて良い勉強ができていると思っています。
富山高専出身者C:私の職場は研究機関、今の職場がとても大好きです。土日も職場の近くに寄るくらいです(笑)
富山高専出身者D:それはヤバいね(笑)
富山高専出身者C:あと、全国に拠点があって、転勤によって研究内容も変わることがあるのですが、ある意味「転職」に近くて、環境をガラっと変えられる職場です。
企業:もし、いざ転職するとしたら、どうやって情報をまず入手しようとしますか。
富山高専出身者D:一通り転職サイトには登録します。あと、周りのいろいろな友達や先輩に自分が転職したいことを伝えたうえで情報収集していますね。人材系の仕事をしている人や採用の仕事をしている人にも聞いたりしています。
高専出身の社会人が自身のキャリアやその形成についてどのように考えているのかを企業が知り、高専出身の社会人同士もそれぞれがどのような価値観を持っているかを知ることができる時間になっていました。
企業側の考えを通して、キャリアを見つめる
企業プレゼンではスクリーンを用いて、バリュークリエーションとFIXERが事業内容やポリシーなどについて説明しつつ、それぞれの最後には質疑応答の時間が設けられました。
まずはバリュークリエーションの企業プレゼンからスタート。同社のデジタルマーケティングにおける「効果的な広告を目指した仮説・検証」や「価値創造」について説明がありました。また、大事にしている考え方として「挑戦」「価値」「考動」の3つを紹介。失敗を恐れず、新しい価値を創造する。そして、変化の激しい業界だからこそ、考えてから動くのでは遅く、考えながら動く(考動)のが重要であるとプレゼンされていました。
質疑応答コーナーでは、バリュークリエーションの事業に対する考えや、キャリア形成で大事なことについての質問が挙がることに。
富山高専出身者E:挑戦する中で失敗したこともあると思います。例えばどんな失敗をし、その後、どのように生かされたケースがありますか?
バリュークリエーション:車一括査定の事業を行っていたことがあるのですが、それはうまくいきませんでした。「三方よし」という言葉がありますよね。「売り手」「買い手」「世間」の3つに対して満足いくものが良い商売だという意味ですが、車一括査定はこの「買い手」に対して満足できる事業にできなかったんです。
ただ、そこの反省は、現在の「解体の窓口」のサービスに生かされています。お客様にとって良い仕組みになるよう、展開しています。
富山高専出身者F:今回のイベントでは現役の高専生も参加していますが、今後のキャリアで大事なことは何だと思いますか?
バリュークリエーション:私たちはこれまでにないモノをつくろうとしている以上、これまでと同じことをしていてもできません。そのためには、「なんとかする力」が大事だと思っています。法的・倫理的にダメでない限り、これまでに培って結晶化した自分の引き出しを駆使して、なんとかして達成する。そのための勉強をしていくのが重要だと思います。
続いては、FIXERのプレゼンへ。「Technology to FIX your challenges.(あなたのチャレンジをテクノロジーで成就する)」をミッションとし、東京本社だけでなく、名古屋・四日市・津で事業を進めているとのこと。特に四日市の事業所は、社員の約3分の2を有する研究開発の中心拠点です。また、全社員(270名 ※2023年7月1日現在)の約4割は高専出身者で、新卒入社の人数もどんどん増やしています。
FIXERの質疑応答コーナーでは、オフィス環境や、採用に対する考え方についての質問が挙がりました。
富山高専出身者G:プレゼンでオフィスの写真を見せてもらいましたが、こだわりは何かあるんですか?
FIXER:実は私たちのオフィスには仕切りがありません。会議室もガラス張りにしていますし、チャットもオープンにしています。ですので、すべての会話が筒抜けになるのですが、オープンコミュニケーション(誰がどこで何をしているかが一目で分かる)になることで、全員を巻き込んで仕事をすることができます。
富山高専出身者H:主に高専の理系をエンジニアとして採用されていますが、私たち文系の高専生に対しても今回のようにプレゼンされている理由は何ですか?
FIXER:業務改革のアプリケーション「GaiXer」など、私たちは受託だけではなく自社でサービスを開発し、お客様の課題解決に対してご提案をしています。今後、自社のサービスを世の中に広げていく過程で「生成AIコンサルタント」など、事業をビジネスサイドで拡大させる業務を担う方も必要となってきます。
みなさまのように高専で学ばれた・研究されていた「経営」の知識を生かすことで、ビジネスサイドなどでも活躍し、事業を拡大していただきたい。私がプレゼンしている理由は、そこにあります。
また、そもそも学部や学科関係なく、当社の事業にコミットしたい気持ちがあれば活躍できるとも思っているんです。その可能性を、多くの人に知ってもらうために、まずは当社のファンを増やすことが、私の仕事の本質だと思っています。
高専出身者のホンネ、企業側のホンネが交わされた【富山高専出身者×企業交流会】。文系高専生の人数は理系に比べると確かに少ないですが、だからといって高専のスピリットを持って勉強・研究されてきた文系高専生が、社会で果たす役割に変わりはありません。
そんな文系高専生が自身のキャリアをより良いものにするため、そして、高専生を採用する企業側がそのキャリアに応えられるようにするための機会を、これからもメディア総研は創出していく予定です。
◎イベント情報
【富山高専出身者×企業交流会】
日程:2023年9月23日(土)
会場:メディア総研株式会社 東京事業所
主催:メディア総研株式会社
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