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沖縄高専で「航空技術者プログラム」を履修し、今では一等航空整備士! さらなる目標と、整備士としてのスピリット

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整備士の中でも「一等航空整備士」として空の安全を守っている、日本トランスオーシャン航空株式会社(JTA)の座間味愛樹(ざまみ あき)さん。沖縄高専生の頃には、同校の「航空技術者プログラム」を履修しています。座間味さんが航空整備士として活躍するまでの歩みと、今後についてお伺いしました。

航空整備士に至るまでの歩みと、高専での体験

―座間味さんは沖縄高専の出身です。高専への入学は、整備士を志すきっかけとなったのでしょうか。

はい。私が沖縄高専に入学した頃に、希望者に対して開講された「航空技術者プログラム」がきっかけとして大きかったと思います。実は、最初から高専で何かをしたいという目標があったわけではなく、両親から高専の存在を教えてもらい、選択肢のひとつとして考えるようになりました。また、姉が高専に通っていたことと双子の妹が高専への入学を希望していたので、親近感もありましたね。

座間味さん
▲取材をお引き受けいただいた座間味さん

入学直後は、とても漠然としたものでしたけれども、なんとなくパイロットやCAという職業に対する憧れはありました。高専の授業は工学系の授業が多いので、そのほかにもさまざまな選択肢を当時は考えていたと思います。

航空整備士への夢が明確になったのは、その後開講された「航空技術者プログラム」の存在です。それまで漠然としていた道のりがはっきりするようになり、大きく背中を押してもらいました。

―「航空技術者プログラム」では、当時どのような授業が行われていたのでしょうか。

プログラムは4、5年生を対象に行われ、航空会社などから先生をお招きして、航空機の基本的なシステムについて学びました。また、座学だけではなく、教材を用いて、板金や電装などといった整備に関する実技の授業もありました。

プログラムにはインターンシップも含まれていて、私の場合、JTAを含め2社のインターンシップに参加しました。1社目ではプロの整備士さんに直接座学で指導していただきましたね。JTAでは期間の定めがなく、定期的に現場に赴き、実際の整備の様子を近くで見て学んでいました。

搭乗客としてではなく、整備する側として航空機を目の前にすると、改めて航空機の大きさを感じましたね。また、ドック整備(格納庫での整備)の様子を見たこともあるのですが、バラバラに分解されている航空機を見たときは驚きました。

格納庫での座間味さん
▲格納庫での座間味さん

―プログラムでの知識や経験が、現在につながっているでしょうか。

もちろん、入社してから学ぶことの方が多かったです。しかし、入社当時、航空専門学校出身の同期たちばかりで不安が大きかった中、「私は沖縄高専の航空技術者プログラムを受けたんだ」と思えたのは、安心材料として大きかったと感じます。

また、航空技術者プログラムだけでなく、高専在学時から電気通信関係を専門に学んでいたので、現在所属している電装整備課での基本的な知識として役立っています。

プログラムの直接的な経験ではないですが、定期試験に向けて放課後や休日にみんなで集まって勉強した経験はよかったと思っています。公式をただ暗記するのではなく、根本的な理解の楽しさを知り、勉強の楽しさを知れたのはよかったですね。

多岐にわたる航空整備士の仕事

―航空整備士とは、どのような職業ですか?

JTAは航空会社ですので、ライン整備を始め、ドック整備、装備品整備と大きく3分野に分かれています。私は電装整備課という部署に配属しており、航空機の「電気」「通信」「航法」関連の点検・修理をしています。

JTAの機材「ボーイング737-800(738/73H)」。
▲JTAの機材「ボーイング737-800(738/73H)」。翼の先端につけられた大きなウイングレットによって、燃料効率の向上や航続距離の延伸などの効果が大きくなります

「電気」では、たくさんある航空機の配線の整備を主に行います。不具合が見られる配線の修理や新しいシステム導入のための配線の取り付けです。

「通信」は、音声通信の整備にあたります。音声でのコミュニケーションは、離発着やフライト中もさまざまな間柄で行われています。例えば、パイロットと他の航空機のパイロット、パイロットとCA、パイロットと整備士、管制室とのやりとりもありますね。また、機内アナウンスを行うためのシステム整備も私たちが担っています。

「航法」は、航空機が出発地から目的地へ飛行するために、自分が今どこをどのように飛んでいるのか知るための様々なシステムの整備のことです。航空機が目的地に向けて飛ぶには、飛行機が今どこを飛んでいるのかを正確に導き出す必要があります。皆さんの良く知るものとしてGPSがあると思いますが、それも航法の中の1つのシステムとなっています。

JTAのオリジナルペイント機「ジンベエジェット」。
▲JTAのオリジナルペイント機「ジンベエジェット」。沖縄美ら海水族館とのコラボレーションで、同水族館のジンベエザメをイメージしてつくられました

―整備士の仕事は多岐にわたるようですが、大変じゃないですか?

電装整備は航空機の最後のドクターだと感じています。航空機に不具合が発生した場合、さまざまな要因を疑って調査をしていき、それでも特定できない場合、電装関係の不具合を疑います。

JTAの電装整備課は、全員で14人ほどです。作業自体は1人であったり2人であったりなど少人数で行うことが多いですが、沖縄という土地風土も相まって、他の部署の方々を含め整備士全体で現場という空間を共有している「和気あいあいとした雰囲気」があります。

コックピットでの座間味さん
▲コックピットでの座間味さん

スキルアップのための日々の成長・目指すゴール

―一等航空整備士の資格を取得するには、どのような過程があるのですか?

前提として4年以上の実務経験が必要ですが、大きくわけて3段階あります。はじめに、学科試験と呼ばれる筆記試験があります。学科試験に合格すると、次にある基本技術試験、実機試験に向けて、会社で勉強と訓練を行いました。

学科試験は専門参考書などを使って各々で勉強を進めていくのですが、その後は試験官との口述によるものや、実機を操作しての試験となり、幅広い知識及び技術が求められるため、試験対策は会社からの全面的なバックアップがあり、チームで一丸となって行いましたね。業務時間中にも時間を設けてもらい、先輩などに指導してもらいながら勉強する機会がありました。

―一等航空整備士の資格を取得しましたが、さらなる具体的な目標はありますか?

一等航空整備士になると、整備業務全般に携わることができるのですが、航空機に出発許可を出すことができる整備士は限られており、確認主任者という社内資格を持った方が行います。私の今の目標は、その資格を取ることです。

一等航空整備士の資格だけでなく、そこから実務経験を積み、実務レベルで知識が備わっていることを会社から認められた場合に、確認主任者として出発の許可が出せるようになります。

ですので、現状にあぐらをかいてはいられませんし、さらなるレベルアップに向けて、これまで得た知識を現場での実務に生かしていきたいと考えています。

格納庫で作業中の座間味さん
▲格納庫で作業中の座間味さん

―航空整備士の仕事をする上でのスピリットはありますか?

1番大事にしていることは、同じ失敗を繰り返さないことです。最初から100%のパフォーマンスができればベストですが、人間である以上、失敗したりうまくいかないこともあります。日々の業務の中で、ミスを共有し、全体で改善していくように取り組んでいます。

私たちの仕事は多くのお客様の命を預かっている仕事です。職場ではどんなに小さなミスでも共有することで、大きなミスや事故を防ぐことにつながると考えています。私自身も、他の整備士によるミスも含めて自分の中に落とし込んで対策に向かうことが必要だと感じています。

実は、整備士になるまでは航空機に対する恐怖心がありました。だからこそ、整備士として自分の手で完璧に整備することができれば恐怖心は拭えると思っていたんです。しかし実際には、知れば知るほど航空機という乗り物に対する恐怖心は大きくなりました。それほど、航空機はとても繊細な機械なんです。

航空機に関わるさまざまな人々が、トラブルに対するバックアップの方法をいくつも考えて準備しているのですが、それでもどんなことが起こるかわからないのが航空機だと思っています。このような恐怖心があるからこそ、丁寧に整備を行おうというモチベーションにつながっていますね。

「さくらジンベエ」を背景に撮影
▲取材をお引き受けいただいた座間味さん。「さくらジンベエ」を背景に

―最後に、高専生へメッセージをお願いします。

どのような職業に就いても共通することですが、就職後も勉強が必要な機会は絶えずやってきます。ですので、学生のうちに“勉強する癖”をつけておくといいと思います。学生のうちは勉強する時間と他の時間を分けやすく、勉強する機会自体も多いと思うので、今のうちから勉強することの楽しさを見出せると、将来のアドバンテージになると思いますよ。

座間味 愛樹
Aki Zamami

  • 日本トランスオーシャン航空株式会社 運航点検整備部 電装整備課

座間味 愛樹氏の写真

2017年3月 沖縄工業高等専門学校 情報通信システム工学科 卒業
2017年4月 日本トランスオーシャン航空株式会社 入社

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