インタビュー

進学したからこそできた念願の研究。“次世代型高性能二次電池”の開発を目指す

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呉高専を卒業した後、豊橋技術科学大学へ進学された稲田亮史先生。現在は同大学大学院で准教授を務め、高性能二次電池の材料・プロセスの研究に力を入れています。稲田先生の研究の原動力とは一体何なのか。そして、進学を選ぶメリットとは。

将来の可能性を広げてくれた、高専の環境

―高専に進学を決めた理由を、教えてください。

40名程の学生が整然と並んだ集合写真
高専1年次の電気工学科クラス写真(1990年4月、最前列左から3人目が稲田先生)

理科や数学の勉強が好きで、将来は何か手に職をつけたいと考えていました。特に興味があったのは理科の実験。教科書に書かれている現象を自分の目で見ると、より理解が深まる。それが楽しかったんだと思います。

中学で部活動が一緒だった先輩が高専に進学したこともあり、3年生の時に呉高専の学校説明会に参加しました。当時は早く就職したい気持ちもあり、就職先が豊富で企業からの評価も高い点に魅力を感じました。

電気系を選んだ理由は、家電機器をはじめ、ゲームや電車まで、身の回りに存在するあらゆるものが電気で動いていたからです。人が暮らしていく上で、なくてはならないエネルギーの勉強をしたいと思い、入学を決めました。

―高専本科での学びについて、教えてください。

大手企業の館銘板の前で、研修旅行のノリでがやがやと集合写真
高専5年次の研修旅行(大阪)にて(1994年5月、前列左から2人目が稲田先生)

高専は、5年間で大学4年生相当の基礎学力と実践性・課題解決力を体得する教育システムです。そのぶん学びのスピードもレベルも高く、正直、面食らいました(笑)。当時は必死でしたが、低学年のうちに専門科目を質・量ともにみっちりと学べたのはよかったと感じています。

特に実験系の科目には多くの時間が割かれるので、技術者に必要な知識や、得られた結果を論理的に分析・思考する能力を、効率的に身につけられました。

卒業後、すぐに就職を考えていた私に、進学を考えるきっかけを与えてくれたのは、4年生の時に受講した特別講義です。地元の電力会社の方が登壇され、セラミックスの超伝導体を使った磁気浮上のデモ実験を紹介されました。

「超伝導」という現象と、それを応用した際のインパクトの大きさを目の当たりにして、「超伝導にまつわる材料開発の勉強をしたい」という気持ちが強くなったのを、今でも覚えています。

一方、部活動では中学の頃から継続して陸上競技部に所属。中長距離走を卒業まで続けていました。ここで他学科の生徒とも交流できたのも良い思い出です。あの頃は、今より確実に15キロは痩せていましたね(笑)。

皆で同じポーズをしてはしゃぐ陸上部の集合写真
高専で所属していた陸上競技部の同級生と共に(1993年7月、前列右から2人目が稲田先生)

進学を選び探求した「材料開発の世界」

―それから、豊橋技術科学大学に進学されたのですね。

液化窒素のボンベに繋がれた機器とともに、大学院時代の稲田先生
超伝導マグネットを用いた実験の様子(1999年10月、大学院博士後期課程1年次)

はい。豊橋技術科学大学を選んだ理由は2つあります。1つは学部3年次に編入ができたからです。当時は、高専からの進学だと2年次編入の扱いになる大学も多く、3年次編入ができる豊橋技術科学大学は、かなり魅力的でした。

2つ目の理由は、高専本科の卒業生を多数受け入れていたからです。1学科の学生の8割以上が高専本科出身者のため、同じように高専教育を受けてきた仲間と、学びやすい環境が整っていました。

カリキュラムについても、高専で培ってきた素養を、深化・高度化できるように組まれていました。小規模な大学ではありますが、研究設備も非常に充実していて、「技術開発を通じて社会に貢献する技術者になる」というモチベーションを、高く保つことができました。

―編入後は、どのような研究をされていたのでしょう。

初めての国際学会で発表した内容展示とともに。
初めての海外(米国)での国際会議発表(2000年9月、大学院博士後期課程2年次)

幸いなことに意中の研究室に配属され、念願の「超伝導材料開発に関する研究」をしていました。編入した時点で、少なくとも大学院修士課程まで進むと決心していたので、じっくりのびのびと研究ができましたね。

自身の研究活動を進める中で、博士課程にて、さらに高度なレベルの研究に取り組みたいという気持ちが強くなり、最終的には大学院に4年半在学し、博士(工学)の学位を取得できました。

その後、運よく本学の助教になり、研究の将来的な展望を考える中で、電池の研究をされている先生に出会ったのがターニングポイントとなりました。私が研究していた材料開発の研究技術を応用できそうだと感じたことから、2011年の准教授昇任のタイミングに合わせて、思い切ってテーマを一新。現在は、高性能二次電池(リチウム電池)用の材料やプロセスに関する研究に注力しています。

テーマは大きく変わりましたが、研究に取り組む姿勢や実験の進め方、得られた結果の分析・思考のプロセスに関しては変わっていません。高専や大学・大学院で培った経験が大いに役立っています。

好奇心と「好き」から始まる技術者の道

―稲田先生の研究の原動力は、なんですか?

発表したポスターとともに。
カルガリー大学(カナダ)訪問時の写真(2015年3月)

「興味」「実験が好き」「ものづくりが好き」。簡単に言うとこの3要素ですかね(笑)。何よりもまずは、自分の興味から。それが世の中に役に立つことであれば、なお良いと思って研究を始めます。あとは、シンプルに実験やものづくりが好きだということに尽きますね。

高専はそう言った意味で、自分の興味のある専門分野を密度濃く学べる環境です。本科を卒業してすぐに技術者になるのも1つの選択ですが、もしさらに研究に取り組みたいとなれば、専攻科や大学・大学院へ進学し、じっくりと腰を落ち着けて納得できるまで学びを深めることをおすすめします。

―今後の目標を教えてください。

ポスター展示会場にて、知り合いの研究者とともに笑顔の稲田先生
国際会議にて知り合いの海外の研究者と共に(2016年6月)

高い安全性を兼ね備えた “次世代型高性能二次電池”を開発することです。リチウムイオン電池は、高いエネルギー密度や充放電効率を背景として様々な分野で利用され、私たちの生活に欠くことができない二次電池として活躍していますが、破裂や発火などのリスクが問題視されています。

材料やプロセスを見直して安全性をかなえられれば、電気自動車やスマートフォンはもちろん、人体に入れる医療機器にも対応ができるようになるはずです。

短時間充電やバッテリーの持続時間の検討なども含めて、効率的かつ安全性のある“次世代型高性能二次電池”を生み出して、エネルギー事業、医療、通信技術など幅広い分野に貢献していきたいと思っています。

加えて、私の所属大学は学部3年次に高専本科卒業生を多数(全生徒の8割強)受け入れている大学です。学生に寄り添った教育・研究指導を通じて、わが国の将来を支える実践的な高度技術者の育成にこれからも尽力していきます。

研究室にて、学生とともに、腕を組み笑顔の稲田先生
研究室の指導学生と共に(2018年10月)

●豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学系 クリーンエネルギー変換研究室紹介動画

稲田 亮史
Ryoji Inada

  • 豊橋技術科学大学大学院工学研究科 電気・電子情報工学系 准教授

稲田 亮史氏の写真

1995年 呉工業高等専門学校 電気工学科卒業
1997年 豊橋技術科学大学 工学部 電気・電子工学課程卒業
1999年 豊橋技術科学大学大学院 工学研究科 電気・電子工学専攻修了
2001年4月~9月 日本学術振興会特別研究員(DC2)
2001年9月 豊橋技術科学大学大学院 工学研究科 電子・情報工学専攻修了
2001年10月 豊橋技術科学大学 工学部 電気・電子工学系助手
2011年4月 豊橋技術科学大学大学院 工学研究科 電気・電子情報工学系准教授
現在に至る。この間
2017年4月~2018年3月 内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付参事官付 上席科学技術政策フェロー
2019年5月~11月 カルガリー大学理学部化学科客員准教授
を兼務

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