まだまだ少ない高専女子。卒業した先輩たちって、どんな風に働いているの?会社の取り組みは?高専OGがイキイキと働く「川田工業株式会社」にお話を伺いました。
橋梁・鉄構・建築で、街づくりを支える
―どんなことをしている会社ですか?
橋梁・鉄構・建築の3つを軸に、街づくりを支えている会社です。
《具体的には》
■橋梁:東京ゲートブリッジや明石海峡大橋を建設。設計、製作、施工までの総合的な技術を持つ日本トップクラスメーカーです。
■鉄構:超高層ビルやスタジアムを支える特殊建築鉄骨の製作および建方工事を一貫して行う「鋼構造物建設」のエキスパートです。
■建築:当社独自技術のシステム建築にデザイン性を加えた鉄骨造大空間建築物(大型倉庫・工場)の設計・施工で建物の高付加価値化を実現しています。
―高専卒業者はどんな仕事を任されますか?
鋼橋やビル鉄骨などの設計・製作管理・施工、建築物の設計(構造・意匠・設備)・施工まで、多くの高専出身者が個人の強みを活かし、各職種で専門知識を育みながら活躍しています。その理由は、国内トップレベルの生産工場を保有し、設計から施工まで社内で完結することができるから。学歴に関係なく、本人の希望と適性で配属先を決定。各職種の連携を大切に、チャレンジ精神を重要視している社風です。高専生の皆さんの強みや専門性が活かせるフィールドが当社にはあります!
―高専卒女子が働きやすい環境について教えてください。
当社では、「性別を問わず活躍できる環境づくり」を重要課題としており、育児関連制度の充実と、女性社員と上司双方の意識改革を両輪で進めていくことが肝要と考えて、下記の取り組みを行っています。
また、2020年に人事制度の見直しを行い、補助的な仕事を行う「一般職」を廃止しました。多くの社員が総合職へ転換し、責任やプレッシャーなどを感じつつ、従来よりも深く仕事に関わったり任される喜びを感じているようです。これからも、女性が真に活躍できる会社にしていくための取り組みを推進していきます。
■育児関連の制度
● 出生のための「特別有給休暇」
● 2歳に達するまで取得可能な「育児休職」
● 小学校3年生修了まで実施可能な「勤務時間の短縮・変更(残業および深夜労働の免除)」 など
■女性活躍推進に関する意識改革のための取り組み(経営層/女性社員/上司対象の説明会・研修の実施)
■新入社員のうち女性比率を25%以上にする取り組み
個性を伸ばしエキスパートを育てる。「人の川田」をつくる教育制度
―研修制度について教えてください。
当社に入社するとまず「新入社員研修」をグループ各社と合同で行います。社会人として必要な知識だけでなく、会社の垣根を超えた仲間意識を深めることが目的です。研修終了後、各配属先では「トレーナー制度」がスタート。新入社員には若手の先輩がマンツーマンでつき、早く職場に馴染めるよう、指導します。その後は成長の段階ごとに必要な知識を学び、意識変革を促す各種研修を実施し、継続的なステップアップをサポートしています。
新入社員の専門教育は配属先で独自に研修を実施しています。
■橋梁技術者ローテーション制度
約2~3年をかけて設計・製作・施工3部門を経験し、本配属を決定します。
■建築若手社員育成5か年計画
「5年で一人前になる」ことを目標に、達成項目を5段階に分け、上司と課題を明確にしながら計画的に社員を育成します。
一人ひとりのペースや個性に合わせ、次の時代を担う技術者を育てる万全の体制を整えています。
子どもの頃からの重機・橋好きが高じて、橋梁技術者に
川田工業で活躍している唐下さんにインタビューしました。
―会社に入ったきっかけは?
母の仕事の関係で、幼いころから工事現場によく行っており、重機が動く様子を眺めるのが好きな、少し変わった子どもでした(笑)。そこから「大きな構造物、特に橋を見るのが好き」に変化していき、就職活動を始める頃には橋マニアに(笑)。「将来は橋をつくる仕事がしたい」と思い、インターンシップに参加した当社へ入社を決めました。
―仕事のやりがいを教えてください。
自分が様々な努力や苦労をした結果が「橋梁」として形になり、利用する方の役に立てていると実感した時に、とてもやりがいを感じます。橋梁完成時の見学会で、小学生たちがワイワイ騒ぎながら楽しそうに橋を渡っているのを見た時、とても嬉しくワクワクしました!
自分が設計したとおりに橋梁が製作され、自らの手で架設することができるのは橋梁メーカーだからこそできる仕事です!!
―プライベートはどう過ごしていますか?
現場勤務から社内勤務へ異動になり、運動不足が気になったので、ヨガを始めました。平日の夜や休日を利用し通っています。体を動かすととてもリフレッシュでき、ON・OFFも切り替えられるので、より業務に集中できるようになったと感じています。
―女性が働きやすい環境だと思いますか?
全社員に占める女性の割合は約10%なので、まだまだ少ないのかなとは思いますが、働きやすい環境だと感じています。また、ここ10年で育児関連の制度が整ってきており、女性社員が結婚・出産を経ても、100%戻ってきてくれているのが心強いです。
―今後の目標は何ですか?
希望する部署を経験できる「ローテーション制度」を利用し、「施工部門」「設計部門」「製作部門」に在籍することで、様々な視点から橋梁の設計・製作・架設に携わることができました。これらの経験を活かして、より現場で活躍できる橋梁技術者になりたいと思っています。
川田工業株式会社
【東京本社】〒114-8562 東京都北区滝野川1丁目3番11号
https://www.kawada.co.jp/
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