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2028年4月、滋賀県立高専が開校予定! 滋賀に高専が求められた理由と、託された役割を三日月知事に聞く

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2028年4月、滋賀県立高専が開校予定! 滋賀に高専が求められた理由と、託された役割を三日月知事に聞くのサムネイル画像

2028年4月、グローバル企業も多数立地する滋賀県の野洲市に滋賀県立高等専門学校(以下、県立高専)が開校予定です。国公立の高専としては、2002年に設置された沖縄高専以来27年ぶりの設置となる県立高専をつくることになった経緯や夢、また、県立高専と企業との連携を目指して昨年11月に立ち上げられた「滋賀県立高専共創フォーラム」について、滋賀県知事の三日月大造氏にお話を伺いました。

県立高専で重要視される学年・コースの枠を超えたPBLと、情報技術をベースとした学び

―滋賀県に高専をつくることになった経緯を教えてください。

本県は日本の工業生産力を担う地域の1つで、とりわけ県内総生産に占める製造業の比率が高く、日本でもトップクラスです。日本を代表する企業がたくさん創業、あるいは立地しており、研究開発なども盛んに行われております。

しかし、本県には、国立でも公立でも私立でも高専がありません。県内企業の皆さんから「高度モノづくり人材を多く輩出されている高専が必要ではないか」とご要望をいただいてきましたし、私自身もJR西日本にいたときから高専生・高専卒生は高度な専門性を有していると認識していました。

取材中の三日月知事
 

ですので、私が知事になった2014年から「高専設置に向けた検討をしよう」とマニフェストに掲げていたんです。2018年の2期目から本格的に動き出し、県内企業のご要望に沿うには本当に高専がいいのか、あるいは工業高校や理工系の大学がいいのかを比較検討しました。その結果、2021年9月に高専を県立でつくろうと決断し、表明させていただきました。

―滋賀に高専をつくるにあたって、重要視している点は何でしょうか。

今まで高専がなかった滋賀につくる、令和の時代につくる、しかも県立でつくることになりますので、「これからの時代を滋賀から展望したい」という思いがあります。そうした中で、重視しているのは大きく3つです。

1つ目は、琵琶湖をはじめとする自然環境、そしてそこで培われてきた歴史・文化・技術をベースにし、その関係性の中で学生には学び深めていただきたいと思っています。「県立高専生の学びに、滋賀の地域力、リソースを最大限活かすこと」「県立高専が技術者の育成・交流のハブとして地域企業・社会に貢献し活性化させること」を目指します。

琵琶湖の写真。滋賀の人は琵琶湖とともに生きてきました。
▲滋賀県の真ん中に位置する琵琶湖。滋賀の人は琵琶湖とともに生きてきました。

2つ目はPBLです。人によって「Project Based Learning」や「Problem Based Learning」と言い方が異なりますが、企業や地域のプロジェクトや課題を起点として、それらを分野横断で学び合い、そして解決方法を見出していく学び方をシステム化したいと思っています。県立高専では学年・コースの枠を超えて、地域や企業の皆さんの積極的な関与・協力も得ながら取り組んでいきたいです。

このPBLによって、学生にとってはプロジェクトマネジメント手法の習得など、技術の社会実装のための「実践力の獲得」、関与した企業や地域にとっては、その「モノづくりや活動がアップグレードしていく」といった成果を得たいと考えています。

3つ目は、「情報技術」をベースに置きながら、「機械系」「電気電子系」「情報技術系」「建設系」の4つの専門分野をコース別で学べるようにしようと思っています。

―「情報技術」をベースに置く理由は何でしょうか。

企業の皆さんからは、最近モノづくりが変わってきていると聞いています。人が機械を触る場面も確かにまだまだ多くありますが、プログラムやシステムなどを使うことでモノはより効率的に製造されてきています。あらゆる分野のパーツとパーツをつなぐラインとして情報通信、情報技術がありますので、県立高専での学びでもその部分を重要視したいと考えています。

現在も、滋賀県立大学では「地域ひと・モノ・未来情報研究センター」でスマート農業・スマート看護・スマート観光・スマートファクトリーを進めていますし、そのベースとなる産学連携もされています。これらをぜひベースにしたいですし、県内には県立大学のみならず、立命館大学やデータサイエンス学部がある滋賀大学など、放送大学も含めれば14もの大学がありますので、企業との連携はもちろんのこと、そういった大学との連携についてもPBLの中でたくさんつくっていきたいです。

滋賀県内で高度理工系人材の裾野を広げる

―滋賀県内には大企業がいくつもありますが、中小企業との連携はどのように考えていますか。

それは2024年2月に開催する「滋賀県立高専共創フォーラム創立記念講演&トークセッション」でも主たるテーマの1つになると思います。2022年5月に県内の関係9団体で「高等専門学校の設置に向けた共創宣言」を行ったのですが、この共創宣言に基づく初めての具体的な動きが「滋賀県立高専共創フォーラム」の創立でして、今後はこれを土台に、企業と県立高専の連携・共創活動の個別具体化を図っていこうと考えています。

取材中の三日月知事
 

多くの方々が注目、期待、関心を滋賀の高専に寄せていただいていますが、それは中小企業の皆さんも同様です。「本当は高専人材が欲しいけど、どうすればそういった人に来てもらえるのだろうか」とか「高専と関わりたいけど、何ができるのだろうか」と考えていらっしゃるかと思います。

だからこそ、PBLを通して中小企業の困りごとや悩みごとを解決し、生産現場での業務の効率化やDX、新製品開発などにつなげていく、こういう流れを今後、本フォーラムを通してつくっていけたらいいなと思いますね。必ずしも大企業だけではなくて、中小企業の皆さんとのつながりも広くつくれるように努めていきたいです。

―滋賀県内の企業において、高専生のような理工系人材の状況はどうなっていると考えていますか。

現在はコロナも明けて、生産活動も本格的に回復あるいは革新している局面であり、企業側は新たな投資もしたいと考えていると思います。ただ、国としては人口が減少していますから、高度専門人材は取り合いです。

もちろん他地域や海外の人材が本県にいらっしゃることもありますが、学ぶ過程から本県に関わりを持った人材の育成を求められている状況がこの10年近く続いていると思います。ここに高度な専門性と実践力を有した高専人材を新たに加えることで、滋賀の人材のラインナップは一層多様性に富んでくるはずです。

それによって、中学卒業生の選択肢も広がります。本県の多くの企業の現場では「高専卒で働いているんです」といった声だけでなく、「自分の子供を高専で学ばせたいです」と志向される親御さんもいらっしゃいます。現に毎年60人~80人ぐらいの県内の中学卒業生が県外の高専に学びに行っていますので、そういったニーズにも応えていく必要があるんです。

取材中の三日月知事
 

しかし、県内の多くの中学校では「高専に行く」という選択肢が、進路指導の中でまだまだ一般的ではありません。最近でこそ、この月刊高専の存在や高専の教職員や卒業生の皆さんの頑張りによって広がってきましたけれども、現場で進路指導をされている先生のラインナップの中に高専が入っていないかもしれないので、新たに高専をつくる以上、県内の小中学校にはそういう情報をきちんと届けたいです。

加えて、小学校段階やそれよりも幼い段階から、言葉にすると平たくなりすぎるのですが、「遊びを通じた理工系人材育成のためのプログラム」を行うことで、理工系の趣向・興味につながるベースを育み、人材の裾野を広げていけたらいいなと思います。

さらに、世界からも学生を集めたいです。今の高専の教育システムは世界、とりわけアジアで注目されています。高度な専門性を持つ学生を集中的に教育するシステムをきちんとご紹介することで、海外の方からも「学びに行きたい」と思っていただけるようにしたいです。

一方で、県立の高専である以上、「県内就職」が期待されますが、滋賀で育った「若鮎」は、滋賀のDNAを持って、全国・世界にも羽ばたいてほしいです。何かのきっかけがあって滋賀に帰ってきたり、県内の企業の皆さんと関わったりしてもらえればと考えていますので、大らかな心で人材を育てていくことができたらいいなと思います。

「循環」「共創」「挑戦」——そして「愛」

―高専生の進路は就職が約6割、進学が約4割ですが、高専では本年度からスタートアップ人材を育成していく動きが本格的に始まっています。

県立高専の学生にも、技術を単なる技術としてではなく、価値を生み出すスキルと認識し、社会に変化をもたらすような人材になってもらいたいと考えています。企業の現場に精通した実務家教員の配置のほか、スタートアップを経験した人材による講義や、低学年次からの海外を含めたインターンシップの実施などといったカリキュラムを今後積極的に検討していく予定です。

スタートアップの基礎は滋賀には実はありまして、2016年から「滋賀テックプランター」という、県内の大学・企業・金融機関の皆さんとともに、大学や企業等の研究者から生まれるスタートアップを育成する「伴走型」の事業をしています。スタートアップ後の資金調達や、企業を育てていく過程を応援していまして、これまでの7年間でディープテック系ベンチャーが12法人設立されています。それを発展させる形で、高専でもスタートアップできる人材を育てていきたいです。

滋賀県庁の外観。高専の新設に向けて検討が行われています。
▲滋賀県庁。高専の新設に向けて検討が行われています。

―最後に、どういう思いを持った方に入学してほしいと考えていますか。

県立高専の構想をつくるための検討会議で私は3つのキーワードを申し上げました。「循環」「共創」「挑戦」です。

つくって使って捨てるのではなく、ぐるっと回せば資源が持続的につかえるモノ・システムを一緒につくるというスピリッツを大事にしたいと思うので、そういう志を持った人たちに来てもらいたいですね。

そして、そういう「循環」や「共創」や「挑戦」の基礎になるのは、やはり「愛」だと思います。「これからの社会をより良くしたい」「困ってる人がいたら助けたい」——そういう「愛」を心根に持ち、それを発芽させる技術を身につけるために県立高専に来てほしいです。

県立高専は、琵琶湖に最も多くの水を注ぐ野洲川のほとり、そして昔から霊峰と崇められている三上山(近江富士)の麓につくる予定です。

野洲川から望んだ高専予定地。駅前にはグローバル企業も多く立地しています。
▲野洲川から高専予定地を望む。駅前にはグローバル企業も多く立地しています。
Data SIO, NOAA, U.S. Navy, NGA, GEBCOLandsat / CopernicusData Japan Hydrographic Association

「愛」というのは「人間」に対してだけではなく、「私たちが住んでいる地球・地域」や「人間以外の生き物」に対する慈しみも含みます。それらを犠牲にしたモノづくりをしない仕組みを考えるなどといった取組も体現できたらいいなと思っていますね。

―さまざまな役割が、県立高専には託されていますね。

そうなんです。アレもコレもとなるとちょっと大変なんですけど、せっかく高専をつくるのですから、皆さんのご期待に応えられるような高専にしたいなと思って、スタッフ一同頑張っているところです。

昭和というたくさんのモノや機関などが誕生していた時代がありましたけど、今はだんだんと統廃合や廃止になる時代です。そんな時代の中、新たな高専をつくろうと奮闘しています。本当に大変ですが、だからこそ意気に感じて取り組んでいきたいです。

▲最寄り駅「JR野洲駅」は新快速停車駅。野洲駅から徒歩圏内のキャンパスは利便性も良好です。

 

◎イベント情報
【滋賀県立高専共創フォーラム】創立記念講演&トークセッション
日時:2024年2月8日(木)13:00~15:30(12:30開場)
場所:栗東芸術文化会館SAKIRA 小ホール
内容:
1. 創立記念講演(※事前録画放映形式での講演)
テーマ「高専生の未来可能性、滋賀県立高専・産業界への期待」
講演者:東京大学大学院工学系研究科教授 松尾 豊 氏

2. トークセッション(※会場現地での対面形式)
テーマ「高専と企業との連携・共創の現状と未来への展望」
パネリスト
・神山まるごと高等専門学校校長 大蔵 峰樹 氏
・万協製薬株式会社 中川 浩孝 氏
・鳥羽商船高等専門学校5年生 ハリス イスマイル 氏
・京セラ株式会社 三浦 桂 氏
・滋賀県知事 三日月 大造 氏

主催:「高等専門学校の設置に向けた共創宣言」9団体(滋賀県商工会議所連合会、滋賀県中小企業団体中央会、滋賀県商工会連合会、滋賀県経済同友会、滋賀経済産業協会、びわこビジターズビューロー、滋賀県建設業協会、公立大学法人滋賀県立大学、滋賀県)
共催:株式会社滋賀銀行、メディア総研株式会社

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※来場による参加は満席のため、現在、オンライン参加のみ受付中です。

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滋賀県立高専と企業とはどのように連携していけばよいのか? そのヒントが掴める、共創フォーラム創立記念イベントをレポート

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