インタビュー

スイッチひとつでジャンボタニシ撃退⁉ 農家を救う高専のものづくり

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農家を悩ますジャンボタニシの研究のほか、プラズマを用いたみかん殺菌法の開発など、社会実装型の研究に取り組む佐世保高専の柳生義人先生。高専らしい工学的な視点から農業をサポートする先生の取り組みについて伺いました。

農家を助ける社会実装型研究

-高専教員になったきっかけは?

私自身、北九州高専を卒業しているんです。中学時代は技術や図工のものづくりが好きだったということもあって高専に進学しました。高専時代は、教員になれるほど成績の良い学生じゃなかったな(苦笑)。まさか自分が高専教員になれるなんて、ほんとにびっくりです。

卓球部だったんですが、毎日卓球のために学校に来ているような学生でしたね。部活ではいい仲間や先輩、後輩、恩師に巡り合うことができ、全国高専大会でも優勝するような成績を残せました。本当に卓球ばっかりしていて、将来のことは深く考えてなかったんです。そんなある日、ふと顧問の故久我先生の姿が目に留まり、高専教員だと卓球もできるし楽しそうだなという、とても安易な考えから教員を目指すように(笑)。それから勉強も頑張れるようになりました。

卒業後、佐賀大学に編入してからも相変わらず卓球に熱中していたんですが、大学の卒業研究で現在の研究テーマに繋がる「ジャンボタニシ」と運命の出会いがありました。

大学生時代の柳生先生。電気学会で受賞された際に撮影。金のメダルを手に。
佐賀大学時代(電気学会賞;柳生先生,指導教員の山部長兵衛教授,友人のKarol Hensel氏(現 Comenius大学教授))

-「ジャンボタニシの防除に関する研究」ですね。詳しく教えてください。

佐賀には多くの田んぼがあり、農家の方を悩ませているのが外来種のジャンボタニシだったんです。その名の通りジャンボなタニシで大きいものは8cmくらいになり、ド派手なピンク色の卵も有名です。このジャンボタニシは、西日本に生息していて、田植え直後の苗を食い荒らすので、農家にとってとても頭の痛い生物なんです。今普及しているジャンボタニシの防除法は環境の変化に弱く、梅雨や大雨などで水かさが増えると被害が出てしまいます。この被害を工学的なアプローチで解決していこうとしたのが研究の発端でした。

こぶし大ほどのタニシが稲に、ドピンクの多数の卵を産んでいる場面。
ジャンボタニシ

最初は電気ショックで感電死するだろうと気楽に考えていたんです。ところが、400ボルトまで電圧を上げても生き残る個体がいて、どうしたものかと頭を抱えました。ジャンボタニシは電気ショックを感じると殻に閉じこもり、その殻が絶縁体の役割を果たしていて、致命傷を与えられなかったんです。そこで今度は、積極的に殻に閉じこもらせて、エサを食べる隙をつくらせないようにすればいいんじゃないかと思って、なるべく低い電圧でジャンボタニシの行動を抑制する研究に舵を切りました。

そんなこんなで、毎日いろんなことを試している中で、ジャンボタニシが電気に集まってくる性質があることに、たまたま気付いたんです。水槽の真ん中にタニシを置き、その両端の電極に電圧をかけると、タニシがだんだんとマイナス極側に移動することを発見しました。この性質を活かせば、水田のタニシを1カ所に集めたり、その行動をコントロールできるんじゃないかと考えて、今も研究を続けています。

-電極に集まったタニシを、どのように駆除するんですか?

エンジニアとしては、集めたタニシを手で拾うのではなく、せっかくなら駆除するまでを全部オートにしたいなと思っています。ジャンボタニシの駆除には超音波を活用することにしました。ジャンボタニシを電気で集めて超音波でやっつけるまでをパッケージにして装置化しているところです。

-実用化も近そうで、まさに社会実装型の研究ですね。

そうですね。高専生たちは卒業してすぐに第一線で活躍するエンジニアの卵なんです。高専時代から、なるべくゴール(実用化)を意識して、自由な発想で解決すべき課題に取り組むことで、エンジニアに大切なセンスを養うことができると思います。ですので、私の研究では、なるべくゴールに近い、社会実装できる研究テーマで勝負していきたいなと思っています。

アメリカンスクールと協力した、佐世保ならでの英語教育

-ほかにも、プラズマを使った農産物の殺菌法についても研究されているそうですね。

ミカンの梱包工程に、ローラー上でミカンにプラズマを照射し殺菌している場面。ミカンとプラズマとの接触部は明るいピンク色をしている。
みかんとプラズマ

温州みかんやお茶をはじめ、長崎県産の農産物や畜産物は、全国の品評会で優勝するほどなんですが3割が腐敗してしまうと言われています。この腐敗を抑制できれば、食品ロスが減り、長期保存が可能になるだけでなく、長距離輸送も実現できます。私達はその殺菌に「プラズマ」を使っており、みかんが損傷しないくらいのマイルドなプラズマを、みかん表面に直に生成すると、数秒の照射で100分の1ぐらいまで菌が減る効果を得られています。

この研究も実社会にどう取り入れるかを考え、選果場に行って、どのタイミングでプラズマ照射が可能かなどを調査しました。効率的にみかんの表面にプラズマを照射する方法として、現在は搬送用コンベアと一体型のプラズマ発生器を考案し、国内外で特許化しています。

-先生は英語教育にも力を入れていらっしゃるとか。

外国の子どもと日本の学生がひとつのテーブルで実験している。真ん中の実験器具からは白い霧のようなものが発生している。
英語deおもしろ実験

実は佐世保には、すぐ近くに外国があるんです!佐世保高専では、学生の英語力UPのために、米海軍佐世保基地内の小中高校生とのSTEM交流に力を入れてきました。英語によるおもしろ理科実験を通じて、高専生は専門英語による実践的コミュニケーションを学びつつ、アメリカンスクールの生徒たちはサイエンスに触れることのできる取組みです。

もともと私が高専生だったとき、英語は得意じゃなかったんです。しゃべりたい気持ちはあったので、大学時代には積極的に留学生と友達になったり、わたし自身も外国人になりたくてオーストラリアに留学したりしました。そこで驚いたのが、自分が思ってたより英語が苦手じゃなかったってことです。英語の授業で知らず知らずのうちに英文法の基礎を身に付けさせてもらったおかげと思います。そのときにはじめて高専の英語教育のすばらしさに気づきましたね。

全身防護服に身を包み、現地のかた2名と須田校長とともに写真におさまる柳生先生。背景には機械機器が見える。
スウェーデン王立工科大訪問(須田先生と)_2010‎年‎10‎月‎1‎日

でも日本にいると英語で話す機会があまりないというのも事実です。そこで、佐世保のアメリカンスクールの小学生を高専に呼んで「英語deおもしろ実験」をしたり、高校生に対して高専の先端機器を巡る「英語deキャンパスツアー」を行うなどして、サイエンティフィックな英語力を鍛える取り組みを行っています。

“高専生は英語ができない”なんてよく聞きますが、そんなことは決してない。私自身のオーストラリアでの経験が、高専教育での英語力のポテンシャルの高さを示してると思うんです。「言葉の壁を乗り越えろ!」をキャッチフレーズに日本語でも英語でも、自分らしさ表現できるようになってほしいと思っています。

学生たちと一緒に考え、一緒に手を動かし、本気で取り組むことで、学生たちが自分で自分の人生を生きる力を身に付けるきっかけになれたらうれしいですね。最西端の佐世保高専から最先端を目指して、これからも高専教育や研究活動に邁進していきます!

柳生 義人
Yoshihito Yagyu

  • 佐世保工業高等専門学校 電気電子工学科 准教授

1998年 北九州工業高等専門学校 電子制御工学科 卒業
2000年 佐賀大学 理工学部 電気工学科 修了
2006年 佐賀大学大学院 工学系研究科エネルギー物質科学専攻 博士課程 修了。同年 佐世保工業高等専門学校 電気電子工学科 助手、2007年 同助教、2008年 同講師、2011年 同准教授。

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