富山高専の国際ビジネス学科を卒業された山田茉寧子(まやこ)さん。現在は名古屋大学の経済学部に通われています。そんな山田さんに高専の学科としては珍しい、文系の国際ビジネス学科に進学した理由や今後の展望について、お話を伺いました。
不安より、ワクワクの方が大きくて「国際ビジネス学科」へ
―幼少期のお話をお聞かせください。
両親は私がやりたいことを何でも挑戦させてくれる環境で育ててくれたので、いろいろなことにチャレンジしていた記憶があります。自分から両親に「あれがやりたい」と話していましたね。
ニュースポーツのキンボールやチアリーディングなどの習い事を経験しましたが、最も長く続いたのはピアノで、8年くらい続きました。今もたまに弾くんですよ。
―富山高専に進まれたきっかけを教えてください。
私自身、目立ちたがり屋な性格だったので、漠然と「他の人とは違うことがしたい」という気持ちがありました(笑)
そしたら富山高専出身の父が「国際ビジネス学科っていう面白い学科があるよ」と教えてくれたんです。
県外の高専であり、「高専といえば理系」というイメージとは異なる珍しさに惹かれたので、受験することにしました。国際ビジネス学科なら外国語やビジネス系の科目もしっかり学べるという点にも魅力を感じましたね。
―県外の高専に進むことに不安はありませんでしたか。
不安より、新しい世界に飛び込むことにワクワクしていました。他の高専に比べて先輩に女子学生が多いことは知っていたので、友達もできるだろうと、入学が楽しみでした。
そして、秋のオープンキャンパスに参加したとき、先輩の姿を見て「こんな風になりたい」と思いましたね。だから、当時憧れていた先輩と同じスニーカー、同じ色のカーディガンを買って、富山高専に入学しました(笑)
キツいからこそ成長できた宮重ゼミ
―高専で印象に残っていることは何ですか。
最も印象に残っているのが、宮重徹也先生のゼミです。ゼミを決めるにあたっては、いろいろな先生と話したのですが、初めて話を聞きに行ったときに「ここしかない!」と思いました。
先輩からは「宮重先生のゼミはキツいよ」という声も聞いていたのですが(笑)、そんな環境の方が絶対に成長できると考えていたので、覚悟を持ってゼミを決めました。実際に入ってみると、自分の能力が足りず煮詰まるときもありましたが、諦めず最後まで駆け抜けた分、何倍にも成長できたのではないかなと感じています。
あとは、ダンス部での経験も思い出に残っていますね。文化祭がコロナで中止になったので、Instagramを立ち上げたのですが、その投稿は私がメインで頑張りました。また、副部長を任されていたのですが、部員を引っ張るのは大変でして。でも、おかげでマネジメントの勉強になったと思っています。
-ゼミで成長したことを教えてください。
1番成長を感じたのは、思考力です。宮重先生から「話に知的ユーモアが伴うようになったね」と言われたときは、すごく嬉しかったですね。最初は宮重先生やゼミのOBOGの方々と会話が成り立たないことも多々あり(笑)、それが悔しくて努力したんです。
それまでの私は「なぜ?」と何度も問われて深掘りされたとき、自分の思考が浅くてうまく答えられないことに悩みを感じていました。この悩みを解決するためにはどうしたら良いだろうと考えたときに、本をたくさん読むようにしたんです。
当時読んでいた本で、1番印象に残っているのは、『そもそも「論理的に考える」ってどうすればできるの?』(著:深沢真太郎)ですね。最初はピンとこない部分も多かったのですが、卒業間近に読み返したときに、「宮重先生の話と一緒だ!」と気付いた部分が多くて(笑) たくさんの人に勧めましたし、本をたくさん読んだおかげで論理的な考え方が身について、思考力のアップにつながったと思います。
ですので、宮重先生から「知的ユーモア」というワードを選んで褒めていただいたことが嬉しかったです(笑) ただの「ユーモア」ではないところが、とても印象深いですね。
-山田さんはどのような研究をされていたんですか。
消費者の行動に関する研究で、ブランド・リレーションシップとSNSを用いた推奨行動の関係性、それらの広告機能に関する研究をしていました。広告機能を果たすような推奨行動を起こすためには「ブランド・リレーションシップを構築すること」が必要だという内容です。
また、卒業研究全体を通じて、論理の一貫した文書を書く力が鍛えられましたね。研究は、仮説を立てて、それを理論と実証の面から確かめるといったやり方で進めました。その中で、不特定多数の方にインタビューをしたのですが、結果が構築した理論の部分とは異なることもあって。それまで理論の構築ばかりに気を取られていましたが、多面的に考えるようにして、理論と実証の両面から整合性が取れるように調整することが大変でした。
経済学と経営学の両方が学べる名古屋大学に進学
-高専卒業後は名古屋大学に進学されたんですね。
高専に入学した頃から、大学に進学することは決めていました。いくつか合格をいただいた中で、経済と経営の両方を学べるのが魅力的だったので、名古屋大学の経済学部に進むことにしました。
高専では経営学のカリキュラムが充実していたので、大学では経済学的な視点も学びたかったということもありますね。経済と経営の両方で知識をより増やして、今後の自分の糧になればと思っています。
-現在はどのような勉強をされていますか。
まだ編入して数カ月しか経っていませんが、経済や経営の基礎的な理論や基礎知識の補強が今のメインです。中でも私が最も得意な科目が会計でして、その授業に関しては大学院生と同じものを取って、高いレベルの中で学びながら自分を高めています。
高専では勉強できなかった経済学の知識も最近は身についてきて、授業もすごく楽しいですね。中でも「計量経済学」という統計学に近い内容の授業が面白くて。今までやったことのない領域なので自分にとっては少し挑戦的ですが、一生懸命勉強しているところです。
―現在の研究活動について教えてください。
マーケティングのゼミに所属していて、引き続き消費者の行動も分析していきたいと考えています。今は、次の研究に向けて、消費者行動の主要な理論の勉強や、それが応用された事例の収集を行っていますね。
大学での研究の展望として、消費者行動について「なぜこういった行動をするんだろう?」という疑問を明らかにしたいという軸はそのままに、高専の卒業研究では定性分析を行ったので、定量分析の力を磨きたいと思っています。後期にはデータ分析にも挑戦する予定で、より研究の質を上げていきたいです。
―国際ビジネス学科を卒業して良かったと思うことはありますか。
国際ビジネス学科ではさまざまな分野を学ぶことができるので、選択肢が広く、自分が好きなことを見つけやすい環境だと感じています。語学系に進む人もいれば、情報系に進む人もいたりと、視野が広い学科だと思いましたね。
だからこそ、やりたいことが違う仲間同士で、その違うことを掛け合わせることで、面白いことが思いつくこともありました。国際ビジネス学科でさまざまな分野の内容を広く、深く学ぶことができたからこそ、今の自分があると思いますね。
―現役の高専生にメッセージをお願いします。
高専での5年間という長い期間をどう使うかは、本当に自由です。だからこそ、自分が好きな科目や好きな分野をどんどん突き詰めていけるのが、高専の良いところだと思います。
しかし、高専は自由だからこそ、何もやらないとあっという間に5年間が終わってしまうので、5年間で頑張りたいことを見つけて、自分を磨いてほしいですね。そのためには、求められているクオリティだけで満足するのではなく、そこから少しだけ自分にハードワークを課すことが大切です。現役の高専生には、自分自身のために、「いつもよりちょっとだけ頑張ってみる」ことを意識してみてほしいと思います。
山田 茉寧子氏
Mayako Yamada
- 名古屋大学 経済学部 経営学科
2023年3月 富山高等専門学校 国際ビジネス学科 卒業
2023年4月 名古屋大学 経済学部 経営学科 入学
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