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学生も自立した研究者!——常日頃から外の世界に目を向けることで生まれた「放射線計測」研究

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東京大学をご卒業後、民間企業と東京大学での研究職を経て、富山高専の教員になられた高田英治先生。現在は国立高専機構の本部で国際学会の運営などを担当し、研究活動にもご尽力されています。高専教員になられたきっかけや教育方針について、お話を伺いました。

学術研究がしたい——紆余曲折のキャリアを経て高専教員へ

―高専教員になられた経緯を教えてください。

高校生の頃は、「負けたくない」という一心で、スポーツをするかのように勉強していました。そして、社会科の教材に書かれていた原子力や核融合に関する記述を読むなかで、「資源の少ない日本では、エネルギー確保のために原子力や核融合が必要だ」と考えるようになり、エネルギー関係の勉強をしたいと思うようになったんです。

大学入学後もエネルギー分野への気持ちは変わらなかったことから、大学2年生の後期に学科を選択する際、原子力工学科を選びました。

大学院修了後は、三菱総合研究所に入社。三菱総研はシンクタンクと呼ばれ、当時から非常に人気の高い企業でした。そのため、私自身の特性などは特に気にせず、人気に流されるように就職したと思います。

入社後は、クライアントに依頼された調査等を行っていました。しかし、「私のやりたい研究とは少し違うな」と感じていて……。自分がどういった研究をしたいのか考えたところ、「自ら実験を行ってデータをとるような“学術研究”がしたいのだ」と、そこで初めて気づくことができました。

そして、30歳のときに会社を辞め、博士課程に入学しなおす形で東京大学に戻り、助手として5年ほど勤めました。「そろそろ次の就職先を」と思っていたとき、富山高専で働いていた大学の同期(富山高専卒)が声をかけてくれたんです。それをきっかけに、地元である富山県に戻り、富山高専の教員として働くことになりました。

専攻科の入口の前で写真に写る高田先生と学生のみなさま
▲現在の高田先生。研究室の学生のみなさんと

―富山高専での教員生活はいかがでしたか?

担任業務やバドミントン部の顧問、寮の宿直等があり、大学の教員とは違った苦労がありましたが、幸せな高専生活を送らせていただきました。

あるクラスで5年生の担任をしていたとき、40人程度の中から3人が同じエネルギー系企業に就職したことがあります。卒業後に、「先生の専門分野だし、その話をたくさん聞いていたのが大きいです」と言われました。

学生たちの年代にとっての担任の話は、とても影響力があるのだと実感しましたね。学生生活のみならず、その後の人生のサポートをする大事な仕事で、責任もありますが、今思うと楽しかったなと感じます。

高専の研究はアイデア勝負?! 有機材料を用いた放射線検出器

―先生は、どのような研究を行っているのですか?

研究テーマは「放射線計測」で、現在取り組んでいるものの1つは、核融合科学研究所との共同研究である「高速中性子検出器開発」です。具体的には、核融合反応で発生した中性子のエネルギーや方向をより正確に計測するため、開発しています。

シルバーの丸い細孔充填型中性子検出器
▲上から見た細孔充填型中性子検出器

また、放射線計測の研究は医療用途のものも多く、私の研究室では量子科学技術研究開発機構との共同研究として「医療用放射線検出器開発」も行っています。主に、医療行為としてX線撮影・X線CT撮影を行う際に、医者と患者がどのくらい被ばくしているのかを計測するための研究です。

これまでの医療用の検出器には、無機の材料が使われていました。しかし、無機材料の検出器を置いてしまうと、感度が高い分、X線を通さないため、そればかりが写ってしまい、医療行為の邪魔になってしまうんです。そのため、水素や炭素といった、有機材料を使った検出器の開発が求められていました。

黄色くて四角い形の、有機半導体放射線検出器
▲有機半導体放射線検出器の拡大写真

研究を始めた頃は、世界的に見ても、私を含めた数人しかやっていなかったんです。それ以降、大手企業の進出などにより、有機の半導体を使った放射線検出器もかなり浸透してきており、話題作りという面で貢献できたかなと思っています。

高専は、他と同じことをやっていても、金銭面や設備面で勝てない部分もあるので、アイデア勝負になることも多いです。普段から他の業界を見て、「これは自分の研究に使えるのではないか?」ということを常日頃から考える。それがうまく生きたのが、この研究だと思います。

有機半導体放射線検出器
▲フレキシブル基板に設置した有機半導体放射線検出器

―他には、どのような研究を行っているのですか?

日本原子力研究開発機構と共同で、福島第一原発の廃炉措置に向けたγ線カメラの開発を行っています。

γ線カメラは、放射線汚染の状況を画像表示できるものですが、非常に高い放射線のある環境では、測定結果がずれてしまうことが多々あるんです。現段階では、γ線カメラに使用されている放射線検出器の「不感時間」がその原因ではないかと考えています。

放射状の形をした、形状可変γカメラ
▲形状可変γカメラ

放射線検出器は、放射線を受けると電流を流して検出結果を示す仕組みで、たくさんの放射線を受ければ、その分だけ大量の電流を流します。私の研究では、1万個の小さい放射線検出器が並んだものを使用していて、それら1つ1つが独立して動きます。

一方で、検出器は、一度に大量の電流を出すと、不感時間となり、しばらく動かなくなってしまうんですよね。つまり、高い放射線環境下では、放射線検出器1万個の中で不感時間が重なるものが多くなり、電流の数値にずれが生じてしまうというわけです。

形状可変γカメラの実験をしているところ
▲形状可変γカメラ実験の様子

この結果を受けて、現在は、ずれた分の数値を調整するためのソフトウェア開発を行っています。このソフトウェア開発によって、少しでもγ線カメラを使用できる範囲を広げ、より詳細に汚染状況を把握できるようになれば、作業員の被ばくの低減や、作業効率の向上に繋がり、より円滑な廃炉作業に貢献できると考えています。

「研究がしたい」という気持ちを再燃させたい

―先生の教育方針を教えてください。

とにかく、学生のうちに経験させることを大事にしています。研究も手取り足取り教えてあげるのではなく、できるだけ自立した研究者として接するように心がけ、外部の人とも交流する機会を設ける。このように、学生が考えるために必要な情報や機会を提供することが教員の仕事だと思っています。

実験中の高田先生
▲研究室で学生と実験中の高田先生

私自身、就職先などについて家族からアドバイスを受けられる環境ではなく、周囲の雰囲気に流された安易な就職活動をしてしまった経験があります。そのため、早い段階から、自分の将来の仕事について考える癖をつけてほしいんです。

高専生は一般教養を苦手に思っている印象が強いのですが、それはあくまで時間数の問題だと思います。実験実習をしながらでも、英語や社会的な事象について少しでも目を向け、視野を広げていってほしいなと思います。

―今後の目標を教えてください。

現在は富山高専の教授を併任しておりますが、研究できるのは残り数年だと思います。今後は、私の研究に興味のある若手の先生と協力する形で、今やっているテーマを継続させ、少しでも発展させていきたいです。

高専教員は、研究がしたい気持ちを持って働き始めていると思うのですが、教育に手いっぱいで、研究が思うようにできていない教員が多いのも事実なんですよね。そういった教員をサポートしながら、「研究をしたい」という気持ちを思い出してもらえるように、高専機構本部の仕事として新たな企画等を考えていきたいです。

高田 英治
Eiji Takada

  • 独立行政法人国立高等専門学校機構 本部事務局 研究総括参事・教授
    富山高等専門学校(併任) 電気制御システム工学科 教授

高田 英治氏の写真

1986年3月 東京大学 工学部 原子力工学科 卒業
1988年3月 東京大学大学院 工学系研究科 原子力工学専攻 修士課程 修了
1988年~1993年 株式会社三菱総合研究所 副研究員
1994年9月 東京大学大学院 工学系研究科 システム量子工学専攻 博士課程 中退
1994年10月 東京大学大学院 工学系研究科 システム量子工学専攻 助手
1999年3月 同 講師
1999年4月 富山工業高等専門学校(現・富山高等専門学校) 電気工学科 助教授
2007年4月 同 准教授
2009年10月 富山高等専門学校 専攻科 准教授
2010年10月 同 教授
2014年4月 富山高等専門学校 電気制御システム工学科 教授
2022年4月より現職

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