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【現地レポート】企業と学校が「互恵関係」で結ぶ未来。過去最多の参加者を集めた「富山高専 技術振興会」総会・交流会

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【現地レポート】企業と学校が「互恵関係」で結ぶ未来。過去最多の参加者を集めた「富山高専 技術振興会」総会・交流会のサムネイル画像

2025年12月2日(火)、ホテルグランテラス富山にて「令和7年度 富山高等専門学校技術振興会 総会・交流会」が開催されました。今年度の参加者は約200名に上り、過去最多の参加者数となりました。地域企業と高専がどのように連携し、次世代の技術者を育成していくのか。熱気に包まれた当日の様子をレポートします。

企業のメリットと教育の質向上を両立する「総会」

総会の冒頭、技術振興会会長で、株式会社スギノマシンの代表取締役社長である杉野岳会長が挨拶に立ちました。杉野会長は、現在の会員数が343社に達したことを報告しつつ、これからの振興会のあり方について強い決意を語りました。

杉野会長
▲杉野会長

企業はただ支援する、ボランティアでお金を出すということではなく、企業側にもメリットが感じられる仕組みをつくりたい。その結果として高専のステータスが高まり、中でも、富山高専が日本の一番になっていく。そのような未来を思い描いています。

続いて登壇した富山高専 校長の國枝佳明先生は、DCON2025での3位獲得や、ロボコン全国大会での活躍、さらに2026年3月にお披露目予定の新しい練習船「若潮丸」の進水式などを紹介しました。

議案では、令和6年度の事業報告や令和7年度の計画案が審議されました。次年度は教育環境支援として新たに予算が組まれ、学生に直接便益が及ぶ形での支援強化が図られています。

活気あふれる「交流会」とパネル発表

交流会の様子
▲交流会の様子

総会に続いて行われた交流会は、校長補佐・研究開発共創センター長の袋布昌幹先生の進行のもと、例年とは異なるスタイルで実施されました。ひな壇を設けず、学生や教員がパネルの前に立ち、参加企業と直接対話するポスターセッション形式です。会場の各所で活発な議論が交わされました。

交流会の中では、学生たちによるインターンシップの報告や企業との共同研究の成果発表だけでなく、各学科や部活動が抱える課題と、企業への支援要請をプレゼンする時間が設けられました。単なる活動報告にとどまらず、具体的な「支援依頼」が出されたのが印象的でした。

【FOCUS】新聞部、研究者、学校の取り組みを直撃取材

会場内で特に熱心に参加者と話し込んでいた方々に、個別取材を行いました。

1. 伝統の灯を消さないために(新聞部)
富山高専 新聞部
▲富山高専 新聞部

富山高専の新聞部は、前身である富山県立商船学校から100年近くの歴史を持つ学内新聞『うみ』を年2回発行しています。しかし、印刷費の高騰や広告作成ソフトのサブスクリプション化により、資金繰りが限界を迎えています。

「年間数十万円程度の資金があれば活動を維持できます。スポンサーになっていただいた企業様の広告や特集記事を紙面に掲載することで、学生や保護者、卒業生に確実に情報を届けることができます」と部員は語り、新たな広告スポンサー制度を企業担当者に熱心に提案していました。

2. 医療用X線CTの撮影時間短縮に挑む(電気制御システム工学科 佐藤大地先生)

佐藤先生は、医療用X線CTの撮影時間を現在の1/3に短縮するためのシンチレータ(放射線を光に変換する材料)開発を行っています。撮影時間が短くなれば、じっとしているのが難しい患者さんでも鮮明な画像が撮れ、血流のリアルタイムな可視化も可能になります。

現在、有望な材料を見つけていますが、課題は加工技術です。結晶を画素に対応するサイズに切り出すダイシング技術を持つパートナー企業を、この会場で探しているとのことでした。

3. スタートアップ支援とギネス記録(スタートアップコーディネーター 加藤孝明氏)

今年度着任したスタートアップコーディネーターの加藤氏は、同校の卒業生でもあり、なんと「けん玉」でのギネス記録保持者(紅白歌合戦出演)。その異色の経歴を生かし、学生の起業マインド醸成やエコシステム構築に向け、企業と学生の橋渡し役に意欲を燃やしていました。

技術振興会会長と富山高専校長が考える、今後の展望

國枝校長と杉野会長に、これからの高専と地域の関わりについてお話を伺いました。また、富山高専の長谷川博先生にも加わっていただいています。

杉野会長、國枝校長、長谷川先生
▲左から杉野会長、國枝校長、長谷川先生

―今回の総会は200名というものすごい参加人数ですね。

杉野会長:この出席率の高さは、単にお金を出しているだけでは生まれません。企業側も「自社の技術を伝えたい」「高専生を採用したい」という明確な意欲を持っています。私は常々、「ボランティア頼みの仕組みは、いつかは立ち行かなくなる」と言っています。企業にメリットがあり、それが利益につながるからこそ、支援を継続できる。そのサイクルをつくることが振興会の役割です。

國枝校長:先日、海外インターンシップの発表会を聞かせて頂いたんですけども、学生たちは素晴らしい経験をしてきています。そのインターンシップは、富山県の企業様から奨学金を頂いているから実現できています。企業との深い繋がりを通じて、学生たちは大きく成長しているのです。

そういった経験をして卒業した本校の学生たちが、それぞれの会社で素晴らしい評価をされていることが、富山高専の評価を上げているのだと思います。特にAI・データサイエンス教育においては、県内で初めて「リテラシーレベルプラス」の認定を受けており、産学連携教育の成果が現れています。

―今後の展望についてお聞かせください。

杉野会長:先ほども最後に申しましたように、やはりどうしてもこのような活動はボランティアになりがちですよね。ボランティアは崇高な精神ですし、とてもいいことだと思うんですけれども、それだけだと絶対いつかは成り立たなくなる時が来ます。なぜなら、企業は利益が出なくなったら、ボランティアができなくなるからです。であれば、この体制を続けるためには企業にもメリットがないとダメなんです。

富山県は人口減少が進んでいまして、今後15年で年少人口(0歳~14歳)は30%減ると予想されているんです。強烈な人口減少の中で、地域や国が生き残るためには、一人ひとりの質をあげていかないといけない。そのときに、高専というのは、その役割を果たす一つの中核だと思っています。高専生の質をさらに高めることで、地域産業を支える中核人材を育ててもらいたいです。

そのために、企業はお金やノウハウも含めて全力で支援します。そして、そこで学んだ高専の学生さんに「富山に残りたい」と思ってもらえるような会社になりたい。そして、高専卒業生が入社した企業が、再び高専を支援する。そういうサイクルをつくっていきたいというのが、振興会の一番の役目だし、私の思いでもあります。

長谷川先生:富山県でいうと、どちらかというと県東部の企業様が(振興会会員に)多いんですね。県西部の企業様がまだ少なくて、そういう意味でまだ振興会の成長ポテンシャルはあると思っています。

國枝校長:会長が先ほど「企業側にもメリットを」という話をしてくださいましたが、最近の新たな取り組みとして企業との「コラボシール」を作成し、学生たちやこれから高専に入学する子供たちへ配っています。

先ほど申しましたように、子どもが少なくなってきて、富山高専の志願者が減るのは本当に見えてきている未来なので、そこをどうにか減らないようにするために、企業と一緒になって振興会企業や高専の知名度向上に取り組んでいます。良い学生が入学して、良い学生を企業に送り出せるサイクルをつくっていきたいですね。

<編集後記>

「支援をお願いします」という学校側の切実な声と、「優秀な学生と共に成長したい」という企業の熱意が、これほどまでにダイレクトに交錯する場は珍しいのではないでしょうか。

特に印象的だったのは、杉野会長の「企業にメリットがないと続かない」という言葉です。綺麗事ではない、持続可能な産学連携の形がここにはありました。新聞部の学生が自ら企業に広告営業をかける姿や、研究者が技術課題を企業の担当者に相談する姿は、まさに富山高専が掲げる「地域に愛され、地域と共に歩む」姿そのものでした。

2026年、富山高専と地域企業の共創は、さらに加速していきそうです。

○イベント情報
【令和7年度 富山高等専門学校技術振興会 総会・交流会】
日時:2025年12月2日(火)14:45~17:30
場所:ホテルグランテラス富山

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