
富山高専を卒業後、神戸大学に進まれ、現在はIT系企業にお勤めの青山颯希さん。高専時代は留学をきっかけにTOEICが400点以上も伸びたとのこと。ゼミで培った論理的思考法を武器に活躍されている青山さんに、高専時代の思い出や、現在のお仕事について伺いました。
TOEICが400点以上も上がった秘訣
―青山さんはどのような幼少期を過ごされたのですか。
両親の影響もあり、小学生の頃からゴルフを始めたんです。ゴルフ漬けの毎日で、平日は3~4時間、休日は10時間以上練習して、休みの日は試合遠征もよく行っていました。

中学生の時に県の強化選手になって、海外の試合に出た時に人生が変わりましたね。それまではプロを目指すか迷っていたのですが、プロの世界は努力ではどうにもならない才能の部分があると知ってしまって、諦めたんです。
他国のコーチから教えていただける機会もあったんですが、コーチの言いたいことを理解することが出来ませんでした。「自分は今、上手くなるチャンスを逃してしまった」と本当に悔しかったので、進学先は英語を本格的に学べて、放課後すぐにゴルフの練習ができるところを考えました。それで富山高専を選びましたね。
―実際に進学されてみて、いかがでしたか。
ずっとゴルフばかりしていたので、勉強は得意じゃなくて。そんな状態で国際ビジネス学科に入ったので、周りの友達のレベルの高さについていけなかったんです。帰国子女や英語が好きで仕方がない友達と一緒に授業を受けることは、挫折感しかなかったですね(笑)
ただ、4年生の時に半年間カナダへ留学に行った経験が、大きく英語を伸ばしてくれたと思います。ホストファミリーにも恵まれて、いろいろなところに連れて行ってくれました。

英語力が格段に上の友達と遊ぶ機会も多かったです。何を話しているか分からないときもありましたが、恥を捨てて質問しました。簡単な英語に言い換えてくれたり、ゆっくり話してくれたので、だんだんとコミュニケーションが取れるようになりましたね。

その結果、留学前に受けたTOEICは450点ぐらいだったのですが、留学後は870点まで上がりました。留学後は授業が分かるようになりましたし、自分から先生に質問できるようになって、成長を感じましたね!
-ゴルフに関してはいかがでしたか。
プロの道を諦めはしましたが、上手くなることには貪欲だったので、試合で少しでもいい成績を残すために一生懸命練習しました。基本的には個人戦ですが、チーム戦のある試合もあって、そういった試合は毎回すごいプレッシャーがあったのを覚えています。
県の女性全員が出られるアマチュアの大会があるのですが、高専2年生のときに史上最年少で優勝することができました。陸上部の顧問の先生がその時の新聞を持ってきて、「青山が優勝したぞ!」とクラスのみんなの前で発表してくれたのですが、恥ずかしかったですね(笑)
心理的安全性が高い組織は、ミスが起こりにくい
-卒業研究はどのようなことをされたのですか。
最年少だった私がゴルフのチーム戦でリーダーになったことがあり、チームづくりや、モチベーションの保ち方など、宮重先生の経営学で学んだことが机上の空論ではないと分かったんです。それでもっと学びたいと思ったので、宮重ゼミを選びました。

研究テーマは「心理的安全性について」で、具体的には病院におけるチームの心理的安全性について研究しました。心理的安全性は、「自分の意見を恐れずに言うことができる環境」で、そのような心理状態で働ける環境がある組織は心理的安全性が高い組織といえます。
3つの病院さんの看護師チームにインタビューを行い、結果としては「心理的安全性が高いチームは医療ミスを報告できる環境にあるため、大きな事故につながりにくい」という結論に至りました。
医療ミスは起きてはいけないことですが、人間なので誰しもミスをしてしまうことはあります。その1つの小さなミスを放っておくと、もっと大きなミスに繋がることがあるので、ミスを報告できる心理的安全性の高い環境をつくることが大切なんですよね。
—宮重先生からの言葉で印象に残っているのは何でしょうか。
宮重先生にはずっと「キレイな論文を書いてね」とアドバイスをいただいていたのですが、「キレイな論文」の意味がずっと分かりませんでした。ゼミの友達は「この論文はキレイだよね」って話しているのに、私だけその意味が分からなくて、長い間苦労しましたね。
しかし、「キレイな論文は論理が一貫していることなんだ」と気付いてからは、一気に伸びたと思います。宮重先生に最終の卒論を確認いただいたときは、すごい心臓がバクバクしていたのですが、一発OKとなりました。
「論理が一貫しているということを緩やかに気付くタイプの人もいるけど、青山さんは急に分かったタイプの人っていう感じだね」と宮重先生に言われたときは、本当に嬉しかったです。
チームが伸びる「シェアード・リーダーシップ」
―高専卒業後は、神戸大学に進学されたんですね。
経営学をもっと学びたいと思い、神戸大学に進学しました。経営学に精通した先生がたくさんいらっしゃって、すごくためになりましたね。経営学の授業は全部受けました。
大学時代はすごく髪色が派手で、ピアスもたくさん開けていたので、「神戸大学にこんな人いるんだ」と友達にはよく言われていましたね(笑) 勉強もできて真面目ですが、遊びも楽しめる学生が多いと思いました。

神大では、「チームの中のリーダーはどうあるべきか」という研究をしました。リーダーシップのタイプは様々あるのですが、チームメンバーの多様性を生かすリーダーだと、チームにプラスの影響を与えるということが分かりました。
それが「シェアード・リーダーシップ(Shared Leadership)」というものなのですが、「自分がリーダーで偉い」という立ち位置ではなくて、チームメンバーが水平的な関係の中で組全員がリーダーシップを発揮し、リーダーの役割を共有していることを指します。今後自分がリーダーの肩書きをいただいたとしても、メンバーの人と水平的な関係のまま関係を築き、全員がリーダーシップを発揮できるようなチームにできたらと思いました。
大学の時も、宮重ゼミで培った思考法がすごく役に立ちました。「自分がそう思ったから」という根拠のない仮説は立てなくなりましたし、論文に基づいて、根拠のある仮説を立てられるようになったので、高専での学びが生きましたね。

―現在はどのようなお仕事をされているのですか。
IT系企業で、営業とマーケティングの部署に所属しています。もともとインターンに参加したことがきっかけで、チーム戦で「何かをつくり上げてください」というお題をいただき、そこで優勝したことがきっかけで内定をいただきました。また、「はたらく」を楽しくするというミッションにも共感しましたね。
現在は大手法人様向けに人事労務のERP(※)パッケージ販売を行っていますが、考え抜いてお客様にご提案することや、仮説思考を常に持って業務遂行が求められることに面白さや難しさを感じています。
※Enterprise Resources Planning の略で、ヒト・モノ・カネ・情報といった「企業の経営資源」を一元的に管理しマネジメントする方法のこと。

宮重先生のゼミで学んだ論理的思考は、進学をしても、仕事をしてからも常に生かされています。現在は「どんな訪問をすれば目的を達成できるのか」と訪問の構成を考えたり、受注するまでのシナリオを考えたりするときに、論理的思考法を用いていますね。マーケティング用語も社内で使うので、学んでいて良かったと感じています。
今後の目標は、まずは早く自分で仕事を回せるようになることです。将来的には、マネージャーとして部下をまとめられる立場になれるくらい、仕事ができる人になりたいですね。自分が分からないことは「分からない」と素直に言えて、チームとして働くときも心理的安全性の高い組織がつくれるように成長していきたいです。
―最後に、現役の高専生にメッセージをお願いします。
高専は「専門的にこれをやりたい」と心に決めた人にはすごくいい環境だと思います。大きな目標ばかり見ていたら、現実とのギャップに苦しくなるので、苦しいときは友達を頼り、目の前のことを1つずつクリアしていくことに注力したらいいと思います。
授業で学んだことが社会人になるとすごく役に立っているので、勉強はしていて損はないです。やっぱり、自分のレールは自分で敷くことが大切だと思います。
国際ビジネス学科は、「語学とビジネスを早いうちからじっくり学びたい」と思う方にはぴったりです。普通の進学校のように「大学受験のための勉強」をするのではなく、自分が学びたいことを5年間かけて学んだ延長線上に、大学進学や就職の道があります。様々なことにチャレンジできる機会が多いことが国際ビジネス学科の魅力なので、気になった方は富山高専に来てください!
青山 颯希氏
Satsuki Aoyama
- IT系企業 営業・マーケティング部署 所属

2021年3月 富山高等専門学校 国際ビジネス学科 卒業
2023年3月 神戸大学 経営学部 卒業
2023年4月より現職
富山高等専門学校の記事



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