徳山高専の専攻科2年生である原田淳豊さん。以前は医学の道を志していた原田さんですが、無線通信に興味を持ったことから音響に関する研究を進め、この春からは広島大学大学院の先進理工系科学研究科へ進学予定です。高専での学びや将来の夢についてお話しいただきました。
医学部志望から一転、高専へ進学
―高専に進学されたきっかけを教えてください。
実は、中学生までは医者になりたいと思っていました。小さい頃に病気をして医療に助けられた経験があり、何かしら恩返ししたいと考えていました。医者になるには医学部への進学が一般的ですので、自分も大学進学を視野に入れていました。

高専への進学を考えるようになったのは、学校から配布された資料を見た母に勧められたのがきっかけです。高専の就職実績などを見て、将来につながる進路だと感じたのでしょう。また、私はあまり身体が強いほうではなかったので、医者として忙しく働くのは家族として心配だったのかもしれません。
それまで私のなかでは「高専」という選択肢はありませんでしたが、思い返してみると、パソコンにはずっと興味がありました。幼い頃から母が持っているノートパソコンに触れる機会が多かったのです。WordやExcelを使って試験問題を自作したこともあり、操作そのものも好きでしたし、パソコンの仕組みにも関心がありました。
そんななか、進学も見据えて徳山高専のオープンキャンパスに参加しました。LEDを点灯させるプログラムを書いた体験を通してパソコンでモノを制御できること、モノをつくれることに感動して、迷わず情報電子工学科を選びました。
―実際に入学してみて、高専生活はいかがでしたか。
最初は学校生活に慣れるので精いっぱいでした。というのも、電車と自転車を使った通学で片道約1時間半。往復で3時間もの時間を要していました。帰宅しても勉強する元気が残っておらず、慣れるまでにはしばらく時間がかかりました。

高専は、自由で自主性を重んじる校風が印象的でした。コンテスト参加の呼びかけなども多く、自分で手を挙げれば多くのチャンスに巡り合える環境です。授業で習って興味を持った分野については、自分で調べたり、書籍を読んだりして知識を深めていきました。それぞれの学問分野の扉を開くように、さまざまな授業が設けられているのだと思います。
なかでも印象に残っているのはアセンブリ言語の授業です。プログラムがどのような命令の積み重ねで動いているのかを一つ一つ追っていく過程が面白く、コンピュータの仕組みをより深く理解するきっかけになりました。
生活にも身近な音響信号処理の研究
―高専での研究についてお教えください。
現在に至るまで、宮﨑亮一先生のもとで、無線通信と音響信号処理を組み合わせた研究に取り組んでいます。もともとは無線通信に興味がありましたが、自分自身が音楽好きだったこともあり、音響分野にも関心を持ちました。現在は、無線で繋がる複数の端末を連携させながら音を扱う研究を進めています。
具体的には、スマートホンやタブレットなど、身の回りにある端末をマイクロホンとして複数用いて録音し、録音データを連携させる「アドホックマイクロホンアレイ」という仕組みの研究です。複数の機器で録音することで、特定の人の声だけを強調したり、雑音を抑えたりすることが可能になります。例えば、持ち寄った端末で会議の議事録が自動作成されるシステムや、工場で異常音を検知できるなど、様々な分野への応用も期待されています。

専攻科では、アプリケーションを制作して2年次の9月に国際学会で発表を行いました。実用化を目指した制作なので、やさしい操作性で使いやすくすることを重視しながら制作を進めました。初めての英語発表だったので準備に苦労しましたが、発表が無事に終わった瞬間は、心の底からほっとしましたね(笑)
本科5年次から3年間の研究活動を通して、自ら問題を見つけて解決策を考え、実際に手を動かしながら試行錯誤していく研究の進め方を身につけることができました。先輩や先生と議論を重ねながら研究を進めた経験は自分にとって大きな財産であり、今後の研究活動にも活かしていきたいと考えています。

―授業や研究以外で力を入れた活動はありましたか。
英語弁論大会に2回出場したことです。英語を学び始めたのは小学4年生の頃、公文式がきっかけでした。当時使っていた機械式の音声読み上げツール(通称:イー・ペンシル)が面白くて、発音するのが好きになり、弁論大会には中学でも2回出場していました。

また、在学中には山口県警主催のサイバーコンテストにも2回出場しました。最初に出場したのは本科5年生の時です。サイバー攻撃を受けた想定で、チームメンバーで協力しながら運営サイトにおける防御対策を講じるというものでした。
専攻科2年次は、解析ツールを使用し、暗号化された文章などを解析することが課題でした。メンバーのうち私以外の2人は本科1年生でしたが、それぞれが高い技術力を持っており、強みを生かして役割分担を行うことで効率よく作業を進めることができました。その結果、優勝することができました。優勝できたのも、知識を蓄えながら手を動かす高専での学びのおかげだったと思います。

医療と無線通信、2つの夢がつながった
―専攻科修了後の進路はどのように選択されたのでしょうか。
当初は大学3年次編入を考えて、地元に近い山口大学や広島大学を進学先の候補としていました。広島大学を選んだきっかけは、本科4年次で体験した、企業の業務内容や大学の研究などについて学ぶ高専の「キャリア・デー」です。広島大学のブースを訪れた際、無線通信分野の研究が行われていることを知り、大きな関心を持ちました。
そこでは「医療×無線通信」というテーマが掲げられていて、幼い頃から関心のあった「医療」にもこうした形で携われるのか、と可能性が見えた気がしました。「まさに自分にぴったりの研究分野だ」と強く感じましたね。
また、専攻科を経て大学院へ進学するほうが自身の将来像に適しているとの助言も受けていたので、諸々のことを考慮した結果、広島大学大学院 先進理工系科学研究科への大学院進学を決意しました。専攻科1年次の2カ月間のインターンシップを経て、2026年4月から大学院へ進みます。

―今後の目標についてお聞かせください。
社会に貢献できる技術を提供することです。無線通信技術は、遠隔医療や災害時のネットワーク確保など、医療分野における重要な課題解決に貢献できる可能性を持っています。
大学院へ進学後は、無線通信に関する専門知識を深め、将来は人々の命や健康を支える技術の実現に携わりたいと考えています。今後取り組む無線通信の研究が実用化され、医療現場で活用されることがあれば、それは自分の原点である「医療」と研究が結びついた瞬間になると思います。
その先の将来は、今は研究職志望ですが、高専の先生方から教員を勧められることもあります。後輩に教えたり研究をサポートしたり、人と接することがけっこう好きなので、もしかしたらそんな道に進んでいるかもしれません。
―高専生活を振り返って、あらためて良かったと思う点は何ですか。
たくさんありますが、一番はやはり「出会い」ですね。個性的な学生が多いですし、多方面で活躍されている先生方もいらっしゃいます。1人で研究を進めるのは心細いものですが、研究室に仲間がいれば励まされることもあり、刺激を受けながら切磋琢磨することもできるからです。

また、高専では5年もしくは7年という長い時間を過ごします。その時間を使って自分の好きなことを追求したり、興味のある分野を見つけられたりする点も、高専ならではのメリットだと実感しています。私自身も授業がきっかけで「無線通信」という研究分野に出会うことができました。「人」との出会い。「学問」との出会い。どちらも私にとってかけがえのないものになりました。
―最後に、高専を目指す方や在校生にメッセージをお願いします。
情報社会は劇的なスピードで日々変化していますが、時代に合わせて、高専もどんどん進化しています。先生方が面白いカリキュラムを立ててくださっているので、高専に進めばたくさんの面白い授業に出会うことができると思います。興味を持った分野を学び、深めることがもし好きだったら、それをとことん追求できる高専はぴったりの環境だと自信を持って言えます。
ちなみに、私はエレキギターやピアノを演奏するのが趣味で、独学ですが楽しく趣味を満喫しています。研究内容につながる面もありますね。そのほか、絵を描くことや、一眼レフで写真を撮るのも好きですし、車でドライブをするのも好きです。多趣味だと自分でも思っていますが、高専で過ごした時間があったおかげで、これだけたくさんの「好きなこと」を見つけることができました。

進学するにしても就職するにしても、自分が興味のないことを続けるのはつらいと思います。ですので、まずは「興味があること」や「好きなこと」をぜひ見つけてください。高専の授業ではいろいろな知識の入口が開かれているので、高専に行けばきっと面白いことが見つけられるはずです。
原田 淳豊氏
Atsuto Harada
- 徳山工業高等専門学校 専攻科 情報電子工学専攻 2年

2024年3月 徳山工業高等専門学校 情報電子工学科 卒業
2026年3月 徳山工業高等専門学校 専攻科 情報電子工学専攻 修了見込
2026年4月 広島大学大学院 先進理工系科学研究科 先進理工系科学専攻(量子物質科学プログラム・博士課程前期) 進学予定
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