進学者のキャリアその他

高専に入った時点で、未来が楽しくなる準備は整っている。自分と向き合って、満足する素敵な人生を!

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富山商船高専(現・富山高専)を卒業後、専攻科に進まれ、今はフリーランスとして日本とフランスで活躍されている水林香澄さん。高専への進学は、制服の可愛さが決め手になったそうです。高専時代から留学など精力的に活動されていた水林さんに、高専での思い出や今後のご展望を伺いました。

クラスで一致団結し盛り上がった「海の上の文化祭」

―水林さんが富山商船高専に進学されたきっかけを教えてください。

もともとは「有名な大学に入りたいから」という理由で、県立の進学校に行くための勉強を頑張っていました。しかし、中学3年の頃に富山商船高専のオープンキャンパスに参加してからは、そこが第一志望になったんです。

当時のダブルボタンの制服が富山県で1番可愛かったことと、自由におしゃれができるところに衝撃を受け、「絶対にこの学校がいい!」と決めました。ドラマで出てくるような制服の可愛さが受験勉強のモチベーションになりましたね(笑)

高専1年生の頃の水林さん。ご友人と
▲高専1年生の頃の水林さん

両親と塾の先生に相談し、文系が得意だったので国際流通学科(現・国際ビジネス学科)を受験。のちに、富山高専と富山商船高専が合併し、お気に入りだった制服がなくなってしまったことは非常に残念でした。

―富山商船高専に進学されてみて、いかがでしたか。

商船ならではのイベントになるのですが、「カッターレース大会」というイベントがあり、それが印象に残っています。カッターという手漕ぎの船をクラス対抗で漕いで順位を競う大会なのですが、クラスでTシャツを作って一致団結し、すごく盛り上がりました。まさに「海の上の文化祭」でしたね!

カッターレースの風景
▲カッターレースの風景(左列後ろから3番目:水林さん)

国際流通学科は女子が多かったこともあり、上位になることはなかなか難しかったのですが、レースの盛り上がりのランキングもあり、それは上位に入ることができました。授業の代わりにカッターの練習をする日などもあり、何週間も前から練習した記憶があります。

-高専時代には、留学も経験されたんですね。

もともと海外に興味がある方ではなかったのですが、高専に入学してからクラスメイトの影響も受け、学生のうちに3回の留学を経験しました。1回目は学校のプログラムで行った、本科2年生でのオーストラリアの1カ月留学です。

オーストラリアの学校が主催した休日イベントで、動物園へ。コアラを抱っこしている水林さん
▲オーストラリアの学校が主催した休日イベント(自由参加の遠足)で、動物園へ

行く前はすごく楽しみにしていたのですが、初の海外でいきなりのホームステイに緊張し、最初は食べ物も口にできないほどストレスがありました。しかし数日で慣れ、最終的には「帰りたくない」と思うほど充実しましたね。

オーストラリアの女性の先生が本当に明るい方で、参加型で楽しい授業をしていただいたことと、ホームステイ先のご家族がとても素敵な方々で、毎週車でいろいろなところに連れて行ってくれ、英語が話せない私に優しく接してくれたことを覚えています。帰国の日にはプレゼントを贈ってくださり、号泣しながらお別れをしました。

2回目は、本科3年生のときの中国・大連1カ月留学。こちらも学校のプログラムで、提携先の大学の寮に泊まりながら、実践的な語学学習をさせていただきました。放課後は、太極拳や街歩きをして中国の文化や社会を学べる機会もあり、非常に有意義な1カ月となりました。

みなさんで太極拳のポーズをしている写真
▲みなさんで太極拳のポーズ(左から2番目:水林さん)
みなさんでチャイナドレスを着ている写真
▲みなさんでオーダーメイドチャイナ

ただ、この時点で中国が大好きになったかというと、そうではなかったんです(笑) 4年生から中国語を担当してくださった先生の教え方が自分に合っていて、そこからどんどん中国語が覚えられるようになり、中国が好きになりましたね。

宮重ゼミで、苦手だった論理的思考が身に付いた

-卒業研究はどのようなことをされたのですか。

宮重教官のゼミに入り、「M&Aに必要なリーダーシップ」について研究しました。当時からリーダーの在り方、リーダーシップについて興味があったため、「M&Aという大きな変革期には、どのようなリーダーが必要となるのか?」ということをテーマに長期間研究を続けました。

宮重ゼミでは、論理的思考を育てるための議論や思考が求められます。私はもともと論理的思考タイプではなかったので、的確な理由を付けて自分の意見をまとめ、相手に分かりやすく伝えるということがとても苦手で、非常に苦しい期間が続きました。参考文献や論文も非常に難しく、中国語を読んでいるような感覚になりましたね(笑)

宮重先生のゼミ合宿での集合写真
▲宮重先生のゼミ合宿にて

宮重教官に「この論文の中に、もしかしたら秘密があるかも」と教えていただきながら、地道に根拠を見つけ続け、「M&Aを成功に導くためには、変革型リーダーシップ(①ビジョンを掲げ、そのビジョンを組織に浸透させる。②日常的に組織のメンバーとコミュニケーションをとり、関係構築を図る)をバランス良く同時に実行することが必要」という結論の論文を論理的に書き切ることができました。

私にとって宮重ゼミで論理的思考を育てる時期は修行でしたが、あの頃に「考える」という濃い経験をさせてもらえたことに感謝しています。考えが浅いと、宮重教官はすぐにそれを見透かしてくるので、本当に通用しないんです(笑) だからこそ、宮重教官に「そこまで分かるようになったんだ。変わったね」と仰っていただいたときは嬉しかったですね。

-「高専女子フォーラム」にも参加されています。

本科生のときに「高専女子フォーラム」という、高専女子を世の中(企業)に発信する事業にも参加させていただきました。全国の高専から数人ずつ高専女子が集まるとても貴重な機会で、みなさんと交流する時間はかなり盛り上がったのを覚えています。

「高専女子フォーラム」で研究発表されている水林さん
▲「高専女子フォーラム」で研究発表されている水林さん

当時、他の高専女子と関われる機会はめったになかったので、情報系・電気系・建築系の女子と出会い、様々な話を聞けたことは非常に貴重でした。私は自分の研究内容を発表させていただいたのですが、自分の意見をはっきりと伝え、能力を発揮されているようなかっこいい女性が集まっていましたね。

―専攻科に進学後も、留学の経験をされていますね。

専攻科1年の夏から1年間、中国上海の復旦大学に3回目の留学をしました。本科5年の冬からすぐに留学の準備を始め、1年休学して行くという決断をしたんです。

しかし、その時点では専攻科を休学して留学するという前例がなかったようで、宮重教官が様々な手続きをしてくださり、多大なご苦労をおかけしてしまったことを帰国してから知りました。私の人生のことを思って行動してくださったことが、涙が出るほど嬉しかったですし、今でも感謝で頭が上がりません。

中国語の上達を目標として留学し、無事HSK6級を取得することができました。現地で勉強すると、リスニングとスピーキングが一気に上達しましたね。実際に中国語だけを使わなければならない状況に置かれると、勇気を出さざるを得ないですし、やってみるしかなくなります。環境を変えて心を開けば、本来の能力を発揮できるようになるのだと実感しました。

復旦大学敷地内のイチョウ並木と水林さん
▲復旦大学敷地内のイチョウ並木にて

また初めての都会での1人暮らしということもあり、友達と夜まで出かけたり、ホームパーティーをしたりと、勉強以外も楽しみましたね。カラオケでは日本の曲をリクエストされて歌った思い出があります(笑)

復旦大学の友人のみなさんと、行きつけのバーにて撮った写真
▲復旦大学の友人のみなさんと、行きつけのバーにて

留学先を中国にしたのは、英語の力も伸ばせるのではないかと思ったのも理由としてあります。クラスメイトの半分が欧米人だったおかげで、英会話の練習にもなりました。その後の海外旅行では不自由なく過ごせたので、目標としていたレベルには到達できたと思います。

中国からの帰国後、新たな専攻科のクラスメイトと映った写真。
▲中国からの帰国後、新たな専攻科のクラスメイトと

社会に流されず、自分の本心と向き合って

―現在はどのようなお仕事をされているのですか。

専攻科を卒業した後は、制作会社や広告代理店の営業などを経験し、現在は主人の仕事の都合でフランスと日本を往復しながら、フリーランスの卵として活動しています。主な仕事はパリでのアテンド&写真撮影とお土産購入代行です。

自分で仕事を考案して集客し、責任を持って実行することがとても面白いですね。お客様の感想が直接届くので、喜んでいただけるととても嬉しいですし、改善点はすぐ生かせるためPDCAが速く、人生が前に進んでいる感覚を味わえています。

これまでのキャリアも好きなことや楽しそうなことを軸に選んできました。自分が心地よく生活できるかどうかと、常に少し高いところにメンタルを置いて、ワクワクした状態を保つことを大切にしています。

パリのマルシェを歩く水林さん
▲パリのマルシェにて

あとはシンプルに突っ走りすぎないことですね(笑) 気持ちは高く持っておくけれど、計画は地道にコツコツ。器が広くて、ずっと穏やかでいられる人間性でありたいですし、今後より多くの方のお役に立っていきたいですね。

今後の目標は2つあり、フォトエッセイストと自分のネットショップを持つことです。主人が数年後に東京でレストランを出すのが夢なので、そこに小さなセレクトショップを持たせてもらおうと思っています。また、作家さんの作品を輸入するだけでなく、日本の素敵な作品を海外にも広げていきたいですね。まだまだこれから始まることばかりなので現状は妄想のようなお話ですが、ぜひ実現していきたいと思います。

―最後に、現役の高専生にメッセージをお願いします。

社会に流されず、自分の本心と向き合って、選択をして生きていく基礎をつくってくれるのが高専です。高専生には、自分の気持ちに素直に従って日々生活していってほしいですし、若いときから自分の意志で選択をし、自分の人生を生きている実感を持ってもらいたいです。私もそのおかげで人生の軸や仕事を選ぶときの軸を持てましたし、今も新しいことに挑戦できているのだと思います。

やりたいことがあれば学生のうちから思い切ってチャレンジしてほしいです。そして、何かに疑問を持っているなら、納得するまで聞いて調べてスッキリしてもらいたいですね。進路に関しても、あなたの希望することが正解です。そのために自分の本心と向き合って、じっくり時間をかけて考えることが必要だと思いますね。

もしやりたいことに反対されたとしても、自分の思いをどう伝えて気持ちを分かってもらうかを考えたり、今できないとしても諦めずに、未来で出来るためにはどうすればいいか考えたりしてほしいです。

高専に入った時点で、未来が楽しくなる準備は整っています! 満足のいく素敵な人生を送ってくださいね。

凱旋門での水林さん
▲凱旋門にて

水林 香澄
Kasumi Mizubayashi

  • フリーランス

水林 香澄氏の写真

2012年 富山商船高等専門学校 国際流通学科(現・富山高等専門学校 国際ビジネス学科) 卒業
2015年 富山高等専門学校 専攻科 国際ビジネス学専攻 修了

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