インタビュー

海外に渡る学生の未来を拓く。趣味と両立する独自のスタイル

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経営者向けセミナーや英文ジャーナルの査読など学外の活動に積極的に参加しつつ、プライベートの時間も充実させる、鹿児島高専の島名賢児教授に話を伺いました。

あらゆるチャレンジは授業に反映

-ご専門は機械工学ですね。

島名先生のアート溢れる研究室にてお話を伺いました。
鹿児島高専内にてお話を伺いました

研究テーマは「工作機械の加工精度向上」です。樹脂を流し込む金型をつくる工作機械の高精度化を目指し、切削加工の状態監視やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の高精度加工について研究しています。

長年続けているのは、愛知県の工作機械メーカーである、キラ・コーポレーションとの共同研究です。前任の先生から引き継いでテーマを広げ、シミュレーションやミクロンレベルでの加工などに挑戦しています。

-企業経営者向けのビジネススクール講師も務めているとお聞きしました。

経営者向けビジネススクールのパンフレット。白オレンジ青でデザインよく案内されている。
「第4次産業革命 エグゼクティブビジネススクール2020」パンフレット

2019年度から北九州市での『第4次産業革命 エグゼクティブビジネススクール』や、大分県での『大分県スマート工場人材育成研修』でも登壇させていただきました。DX(デジタルトランスフォーメーション)に必須であるMES(製造実行システム)関する内容です。

最初に話をいただいたときに「学生の教育に取り入れられるのでは」と思いました。社会での高専生の専門的な知識や技術に対する評価は高いですが、大学生に比べるとプレゼンや人前で話すスキルが見劣りするとよく言われます。でも、将来的に鹿児島高専の卒業生が専門的な知識や技術だけでなく、経営者の視点で考えることができる、マネジメントの意識を持って就職できたら強みになると考えたんです。

エグゼクティブビジネススクールにオブザーバーとして同行してもらった3人の若い先生も「すごくよかった」「セミナーと同じ方法のワークショップを授業の中でやってみたい」と話してくれています。高専教員が経営者向けの話を聞く機会はあまりないので、大きな刺激になったようです。

-海外の大学との交流について教えてください。

Zoomの画面。鹿児島高専の教員と学生そして中国の大学の学生とをつないで。
南京航空航天大学と研究交流会(Zoom)

今年の3月から中国・南京航空航天大学との研究交流を始め、第1回目のワークショップを終えたところです。オンラインで繋ぎ、鹿児島高専の学生が発表して中国の先生が質問してくださる、という流れでした。次回は中国チームの発表です。オンライン開催でも学生のモチベーションは確かに上がったと実感しています。

-若手の先生方をセミナーに連れ出したり、海外の大学との研究交流を担当したりと、高専のみなさんと校外の世界を繋ぐ橋渡しをされているんだなと感じました。

悩む人の背中を押すのが私の役割だと思います。海外に行きたいけど踏み出せない、授業だけじゃなく他のこともしてみたい、そんな気持ちがあるときに相談できる人が必要ですよね。

指導する側がグローバルな経験をしないと、アドバイスできないんです。まずは私が視野を広げないと。そう考えて2012年から2020年までの間だけでも国際会議で11カ国に渡航しました。論文もずっと英語で書いて出しているので、英文ジャーナルから査読依頼が来ることもしょっちゅうです。

海外の国際会議に出ることももちろん大切ですが、トラブルや現地の人と会話した内容など、些細な出来事から価値観を変えるほどの衝撃を受けることがあります。日本で資料を読むだけでは絶対に手に入らない経験です。

ストックホルムにて。橋のうえで絵になる建築物を背景に、ポーズをとる島名先生。
国際会議@Stockholm

以前「休学して1年間留学したい」という専攻科の学生がいました。本科のときは周囲に反対されて叶わなかったけれど、どうしても諦められないと。私は「ぜひ行ってこい」と応援したんです。

その子が1年遅れの卒業式を迎えたとき「島名先生は行ったほうが良いとあっさり言って驚いた。すごくうれしかった」と話してくれて、本当に良かったなと思いました。

-悩んでいる子が相談に来たら、どんなふうにアドバイスしていますか?

勧めるというよりは自分が持っている情報を話すだけ。あとは本人に決めてもらうしかないと思っています。「行くべきだ」というのはあくまで私の考えですから、無理やり説得することはないですね。

何事も楽しくないといけない

-島名先生の研究室には素敵な絵がたくさん並んでいますね。

島名先生の研究室の一部。壁面にはセンス良く並べられたアートの数々。棚のうえにも写真たてに入れられたアートたち。
先生の研究室

地元の作家さんの作品を中心に飾っています。ここに居る時間が長いので、好きなものに囲まれていたくて。仕事をする場でも、楽しくないといやですね。

大げさに言えば、芸術や文化はなくても生きていけます。そんな生きる上で必ずしも必要でないものを愛することこそが人生の豊かさです。楽しまないと損。

業務は集中して短時間で終わらせ、家での時間を大切にしています。100インチのプロジェクターで映画を観て、週末には映画館にも行くんです。映画は年間200本くらい観ているんじゃないかな。

暇さえあればロックやクラシック、ジャズを聴きに行きますし、美術館やギャラリーもよく行きますね。

-それだけカルチャーがお好きなのに、東京に拠点を移さないのはなぜでしょう。

島名先生とその研究室の学生たち。
前方に注目しながら、ミーティングを行っている様子だろう。
卒研生たちと

確かに都心のほうがそういうモノに触れる機会は増えますが、それだと心のバランスが崩れそうな気がします。写真も好きで、風景を撮ったり季節の花を撮影したり。季節を感じることは、すごく大切にしていますね。

気を抜くことも大事だと思うんですよ。知り合いの女性が料理にすごく手間をかける人で、仕事で遅くなった日にも丁寧に食事をつくったら、子どもが待ちきれずに怒ってしまったと相談されたことがありました。

そのお母さんには「70点の日があってもいいんじゃないか」と伝えました。たまには手を抜いたり出前を取ったりしても、笑顔で食卓を囲むほうが親子関係はきっとうまくいく。いつも100点じゃなくていいんです。

お母さんだけではなく、学生や社会人にも通じることですよね。私は睡眠も8時間しっかりとって、昼間のパフォーマンスを高くするよう努めています。

真面目な学生ほど、研究で追い詰められて精神的に参ってしまうことがあります。そんなときにこの研究室に来て芸術に興味を持ってもらえたら。がんばることから離れて、大切にできるものがあると人は強くなれると思います。

島名 賢児
Kenji Shimana

  • 鹿児島工業高等専門学校 電子制御工学科 教授

2000年 鹿児島大学理工学研究科博士後期課程修了、博士(工学)。
2002年 鹿児島工業高等専門学校 電子制御工学科 助手、2006年同助教授、2007年同准教授、2016年同教授。

島名 賢児氏の写真

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