インタビュー

憧れの仕事に全力投球!「リケジョ」を育てて、未来を創る

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9歳の時に立てた「教師になる」という夢を叶え、母校である佐世保工業高等専門学校 電気電子工学科の准教授として活躍する大島 多美子先生。プライベートでは2児の母でもある大島先生が、教育の現場に立ち続ける理由やその原動力に迫ります。

最先端技術を支える「未来の材料」を作り出す

―教師を志したきっかけを教えてください。

電車のなかで、恩師と生徒たちとが仲良く座ってお出かけしているほほえましい風景。
小学3年生:夏休みにクラスで松浦線一周遠足に出かけた時の写真

小学3年生の頃に出会ったひとりの女性の先生が、大きなきっかけをくれました。学級会で突然、中森明菜を歌い出したりして(笑)、常に元気で明るくて楽しい方でした。それまで引っ込み思案だった私を褒めてくれたことが嬉しかったのを覚えています。

次第に「先生みたいになりたい」と思うようになって、バスケットボールを習いはじめたり学級委員に立候補したりと、内気だった性格が社交的に変わっていきました。先生とは今でも親交があり、年賀状のやりとりが続いているんです。

中学時代は数学が得意で、理科の実験も好きだったので、自然と理系での進学を考えていました。そのとき担任の先生が教えてくれたのが佐世保高専だったんです。家からも近く、学校からも推薦がもらえるということで入学を決意しました。当時は女子の割合が今より低く、全体の1~2割程度だったと思います。

―高専ではどのような研究をされたのでしょう。

先生よりも一回り二回り大きな金属製の機械の後ろで、赤い作業着を着てはにかむ大島先生
プラズマプロセスを用いた機能性薄膜の作製で使用している実験装置

プラズマ工学の研究です。5年生の時の卒業研究で、指導教員の方がプラズマをテーマに研究されていたことを機に、プラズマプロセスを使った機能性材料薄膜の創製の研究をはじめました。

「機能性材料薄膜」とは、ガラスやプラスチック、金属といったさまざまな基材にコーティングする薄膜で、身近なところで言うと、ポテトチップスのパッケージフィルムの内側や眼鏡の反射防止膜、スマートフォンのタッチパネルの透明導電膜などがあります。

製品の機能を高め、生活をより快適にしている材料のひとつである一方で、最先端技術かつ高機能・高品質な機能性材料薄膜を作るとなると、資源の枯渇問題や環境、健康に配慮しながら、これまでになかった新しい材料の開発が求められています。

研究内容を絵や表にしたスライド
プラズマ中の発光種の測定や作製した薄膜の分析

私の研究では、「レアメタル」と呼ばれる希少金属で有毒な材料の代わりに資源が豊富で安価、人体にも害の少ない材料で機能性材料薄膜の創製をテーマとし、そのプロセスにプラズマを使った開発を試みています。気づけば20年以上ですね(笑)。

具体的には、固体材料を用いて膜を作っていたところを粉体に変更することで、あらゆる組み合わせに対応できる膜を作り出します。現在はこのプロセスでの機能や品質の安定化を図っているところです。ゆくゆくは「レアメタル」に変わる“未来の材料”となることを期待しています。

「リケジョ」の道

―高専を卒業後、大学へ進学。高専教員になることはいつ頃から意識され始めたのでしょう。

高専生の頃は数学の中学教員を志していたのですが、高専からの道はかなり狭いとわかり、大学へ進学することにしました。ドクターになった頃、母校である佐世保高専に教員の募集 が出ていることを知り応募。まさか母校に戻ってくるなんて、思ってもいませんでした(笑)。

―先生が力を入れて取り組んでいらっしゃる「理系女子セミナー」について教えてください。

ホールのようなところで、白い楕円形のテーブルを囲んで、子どもたちと保護者が理科に親しんでいる
理系女子セミナーの様子

「理系女子セミナー」は、女子の理工系分野への進路選択を支援する活動で、2014年にスタートしました。佐世保市男女共同参画推進センター「スピカ」と連携したセミナーで、対象は未来の「リケジョ」である女子小中学生たち。

高専の専門性を生かして、プログラミングやモノづくりのワークショップを開催することで、工学に興味を持ってもらい、理工系分野への進路選択に役立ててもらえることを期待しています。

2019年からは、私が担当する電気電子の分野だけでなく、機械や電子制御、物質など4学科の特色を出した企画を立て、積極的に運営してきました。コロナ禍以前には、「スピカ」で、1年間に計5回開催しています。

「自分の好きな色と香りをつけたグリセリンソープ作り」や「メロディが鳴りLEDが点灯する回路を取り付けた宝石箱作り」など、女子が興味を引きそうなテーマ設定はもちろん、かわいらしいシールやキラキラのラメを使う工程などを取り入れ、年々バージョンアップを図っているところです。

―子どもたちや保護者からの反応はいかがでしょうか。

理系女子セミナー、参加募集のチラシ
理系女子セミナーのチラシ。理系女子セミナーは佐世保市との連携事業になっているので,行政の方と協力しながら毎回可愛らしく楽しいデザインのチラシを作っています。

アンケートを見ると、参加した子どもたちの8割以上が「楽しかった」と回答してくれています。講座をリピートしてくれる子や、佐世保高専でのイベントに足を運んでくれる子も増えてきました。子どもの関心とともに保護者にも高専の魅力を伝えることができ、どんどんファンが増えてきています。

子どもたちは、「お花屋さん」「パン屋さん」「お医者さん」など、自分の身近にある職業から夢を見つけます。「研究者」「開発者」「科学者」も、その機会さえ増やせばきっと選択肢に入ってくる。そう信じているので、コロナ禍でセミナーの開催は少なくなりましたが、コロナ禍が明けたら、以前のようにセミナーを再開して「リケジョ」の仲間を増やしていきたいですね。

大好きな仕事だからこそ

―「2児の母」「研究者」「教員」と多くの顔をもつ大島先生。その原動力とは?

大島先生と旦那さん娘さん息子さんとの家族写真
長女が小学校を卒業した記念に家族で大阪旅行に行った時の写真。普段は仕事ばかりで家族に迷惑をかけていることを申し訳なく思っています。そんな私を家族、そして両親が支えてくれているからこそ今の私があります。

やっぱり、憧れていた職業を一生の仕事にできたことですね。だからこそ、疎かにしたくないし、仕事には全力で取り組みたいと思っています。

佐世保高専メイン入口で、卒業式の日に学生さんたちと記念撮影
担任を務めたクラスで卒業式の日に撮った写真 。教員になり次は担任を務めることが夢でした。大変なことも多いですが、学生さんの近くで寄り添い、共に過ごすことのできる時間はかけがえのないものです。

教師の仕事は、人の人生の一部に関われる仕事です。私自身も小学3年生で出会ったひとりの教師をはじめ、高専・大学と多くの恩師との出会いがあり、今ここに立てています。だからこそ、自分も学生に寄り添うことを第一に考えたいし、その仕事を両親も家族もすごく応援してくれているので、甘えるところは甘えて、これからも大好きな仕事を続けていきたいですね。

屋内のバレー場の椅子から、観覧席のカメラに向かって手を振る学生さんたちと大島先生
高専体育大会に出場した時、当時の5年生と写った写真。入学した当時は女子バレー部がなかったので、私達の代で女子バレー部を作り、在学中は主将を務めていました。母校に戻ってからは顧問として携わっており、女子バレー部の部員の頑張る姿を見て勇気をもらっています。

大島 多美子
Tamiko Ohshima

  • 佐世保工業高等専門学校 電子電気工学科 准教授

1997年 佐世保工業高等専門学校 電気工学科 卒業
1999年 熊本大学 工学部 電気情報工学科 卒業
2001年 熊本大学 大学院自然科学研究科 博士前期課程 電気システム専攻 修了
2003年 佐世保工業高等専門学校 電気工学科助手
2004年 熊本大学 大学院自然科学研究科 博士後期課程 システム情報科学専攻 修了
2005年 佐世保工業高等専門学校 電気電子工学科講師
2010年 佐世保工業高等専門学校 電気電子工学科准教授、現職
2016年 国立高等専門学校機構 本部事務局 男女共同参画推進室併任准教授
2020年 九州大学 大学院 システム情報科学研究院 准教授(クロスアポイントメント)

大島 多美子氏の写真

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