株式会社JALエンジニアリングで航空整備士として働く田中悠貴さんは、都城高専の機械工学科出身です。最上位の国家資格「一等航空整備士」を取得するまでの道のりと、仕事のやりがい、高専で身につけた基礎がどのように現場で生きているのかをお伺いしました。
クラスに部活動、仲間に恵まれた青春時代
―高専に進学したきっかけを教えてください。
小さい頃からものづくりが好きでした。最初にそのことを意識したのは、家で一人留守番をしている時です。お菓子の空き箱を使って、NHKのテレビ番組『ピタゴラスイッチ』に出てくるようなおもちゃやロボットなど作って遊ぶのが大好きで、いつも何かを作っていました。当時はただ遊んでいるだけでしたが、小学校、中学校と進むなかで「将来は工業系の分野で働きたい」と考えるようになりました。
高専を進学先として考えるきっかけは、中学時代に仲の良かった友人でした。その友人が高専志望で、最初はただ話を聞いて「自分も行こうかな」と、高専か工業高校かと迷っていました。それぞれの学校について詳しく調べるうちに、高専では専門知識を集中的に学べ、環境としては圧倒的に恵まれていることがわかり、機械工学科の受験を決めました。
―高専に入学して、環境にはすぐに慣れましたか。
慣れてきた実感を持てたのは3年生になった頃でしょうか。1、2年次は部活メインの生活をしていたこともありますが、日々たくさんのことを習うので、きちんと理解して授業についていくだけでもけっこう大変だった記憶があります。また、その頃に気づいていればよかったのですが、後になって復習の大切さを痛感しました。どんどん新しい知識に触れていくので、一つひとつ理解していかないと追いつかないんです。
周りは優秀な友達が多く、一度聞いただけでも要領よく理解するタイプもいます。一方、私はテストではあまり結果が出ていなかったので、焦りもありました。
私はどちらかというと学習量を積み重ねて勉強していくタイプだったので、その時間が圧倒的に足りていなかったのでしょう。自分のやり方に合った学習方法を当時見つけられていれば、と今になって思うこともありますが……。とにかく、時にはみんなで協力しながら定期テストの難関を必死に乗り越えた経験が、今でも強く印象に残っています。
—部活動や卒業研究はどんなことをされていたのでしょうか。
野球部に入部し、高専生活はもっぱら野球に打ち込んでいました。中学時代は強豪校にいたので、その調子で高専でも野球にのめりこんだ形です。人数が少なかったので、いろんなポジションをみんなで順番に担当しながら練習していました。何か一つの目標やゴールに向かって、みんなで力を合わせて向かっていく経験は、社会に出てからも役立っていると実感しています。

5年次には、情報工学分野を扱う研究室に所属しました。マニピュレータ制御について研究し、医療用のロボットなどのプログラミングについて学びを深めました。実は、授業ではプログラミングはあまり得意ではなかったのですが、研究室で手を動かしながら学んでいくと基礎が理解でき、いつの間にか苦手意識が消えていました。
―ほかに学生生活で思い出に残っていることはありますか。
5年間クラス替えがなかったので、クラスメイトとのつながりが強く、文化祭などの学校行事でさらに仲が深まりました。就職で東京に出てきた友人も多く、今でも一緒に遊ぶこともあり一生の友達ができたと思います。

ちなみに、会社でも高専出身者が多く、高専時代の話で盛り上がることもよくあります。全国のさまざまな出身校や出身課の話を聞くのは面白く、また、相手との距離もぐっと縮まりますね。
航空機の定時運航を支える陰の実力者
―現在の会社に就職を決めるきっかけは何でしたか。
入学時から漠然と「卒業したら就職しよう」とは考えていて、中でも車やバイクなど乗り物全般が好きだったのでメーカーや整備の仕事で探していました。そのなかで偶然今の会社の求人を見つけ、「車やバイクより大きな乗り物を触ってみるのも楽しそうだ」と感じ、採用試験を受けました。

―現在の仕事について教えてください。
入社してから4年間は国内線の機体整備を、その後3年は国際線を扱う「国際運航整備室」に所属しています。国内線と比べると国際線のほうが長距離飛行であるため、その分点検項目が増え、満たすべき条件も多くなります。所有する資格によって扱える機種や業務内容は異なりますが、平均すると1人あたり1日3~4機の整備に携わります。
整備のなかにもさまざまな分野があり、現在私が担当しているのは「運航点検」と呼ばれる、機体の基本部分の点検および整備です。

航空機が地上に降りてきて再度フライトするまで、短い場合だと1時間半ほどしかなく、作業時間は実質30分程度しかありません。とはいえお客さまの安全のために手を抜くことはできませんから、限られた時間内でどうすれば効率よく、予定通りに作業できるかがカギです。時間との勝負なので現場は常に緊迫感がありますが、チームでうまく作業を進められると達成感もあります。

―仕事で大変だと感じるのはどんなところですか。
所有する資格によって扱える機種が変わるため、就職後もさまざまな試験があり、日々勉強が欠かせません。試験前は、帰宅してから寝るまで勉強しています。私自身、働きはじめるまでこんなに勉強するとは思っていませんでしたが、高専時代に乗り越えた定期テスト勉強のおかげで、勉強のコツや体力はかなり身に付いていると思います。わからないところをつぶしていくと、いつの間にか楽しくなってくるんですよ(笑)
数カ月前には、ボーイング787型機、AIRBUS A350型機についての整備業務を行える最上位の国家資格「一等航空整備士」を取得できたので、今は次の資格取得に向けて勉強しているところです。入社してからもずっと仕事と勉強で大変な面もありますが、気づけば就職してから7年目です。入社当時はわかりませんでしたが、今ではこの仕事が自分に合っているのだと感じます。

高専時代の基礎が就職後に生きてくる
―プライベートの楽しみ方について教えてください。
趣味でバイクに乗り、自分で整備もして楽しんでいます。高専時代は、部活動を引退してからすぐにバイク免許を取りに行き、就職で東京に出てきてすぐにバイクを買いました。それから何台か乗り換えて、今は古いハーレーダビッドソンが愛車です。

地元から出て、暮らす環境が変わることでいろいろと影響を受けていることも実感します。高専時代はファッションに全然興味がなかったのですが、今は洋服がすごく好きになり、古着屋巡りをすることも。ハーレーも、地元に残っていたら乗っていないかもしれません。仕事以外でもたくさんの刺激を受けて自分に取り入れられるのは、都心部に住むメリットのひとつですね。

―高専で学んだことは、どういう仕方で日々の仕事に役立っていますか。
専門課程の授業がそのまま、特に、材料力学や流体力学の授業は現在の職業に直結していると感じます。機械についての基本的な知識を幅広く身に付けることができたおかげで、社会人になってからの資格試験の勉強も理解が進みやすいですね。高専時代の基礎があるのと何も知らないのとでは知識の入り方が全然違うと思います。
その他の専門授業でも、高専に行けば、どの業界に就職しても戦えるように成長させてくれます。基礎を応用してすぐに対応できるので、専門学校や四大卒の同僚ともぐんと差が付くと思います。勉強する体力や理解力についても、高専に行っていなければ私はきっと身に付いていなかったはずです。

―最後に、高専生へメッセージをお願いします。
在学中の勉強はつまらなく感じるかもしれませんが、将来必ずどこかで役に立ちますので、あきらめずに頑張ってください。
また、これからはどこの業界でも英語能力が必要になるかと思います。在学中に基本的な部分だけでも身に付けておくと、将来の助けになるはずです。例えば、航空機の整備の仕事では海外製のメーカーのマニュアルを使うので、記載は全部英語で専門用語もたくさん出てきます。
私自身、入社までは全然勉強していなかったので、入社後に苦労しました。基礎的な単語やポイントの読み解き方だけでも就職前に覚えておけば、かなり余裕が出たのではと悔やまれます。
これから高専への進学を考えている方へ。高専で工学の基礎が身に付いていれば入社後のアドバンテージになり、自分を売り込む機会もつくれます。将来、工業分野に進みたいのであれば、ぜひ高専受験を視野に入れてみてください。
田中 悠貴氏
Haruki Tanaka
- 株式会社JALエンジニアリング
羽田航空機整備センター 運航点検整備部 国際運航整備室 第5課第3係

2019年3月 都城工業高等専門学校 機械工学科 卒業
2019年4月 株式会社JALエンジニアリング 入社
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