北海道苫小牧市に位置し、道内各地から学生が集まる苫小牧工業高等専門学校。男子寮は「蒼冥寮(そうめいりょう)」、女子寮は「楓和寮(ふうかりょう)」と呼ばれ、男子263名、女子66名の学生が生活しています。寮務主事の中村努先生と2名の寮生に、リアルな寮生活について伺いました。
充実した管理体制と、共同生活のための設備
―先生はどのような業務を担当されていますか?
中村先生:私は寮務主事を務めており、4名の寮務主事補の先生と協力しながら、寮生活の指導と寮生会(※)のサポートを行っております。生活指導については低学年との面談やオリエンテーション、寮生会については行事のサポートが主な業務です。
※寮生会:学校の指導の下、寮生全員で組織されており、寮生の規律ある共同生活を自治的に運営している会。
女子寮には午後4時から午後10時まで、3名の寮母が1日交代で常駐しています。さらに事務職員3名を合わせた11名で寮の管理・運営を行っています。
―苫小牧高専の寮について、具体的な情報を教えてください。
部屋代としては、個室で月額800円、2人以上の部屋で月額700円です。そして、光熱費や消耗品等の購入に充てられる月額15,000円の寮費に加え、食費が月額で約3万円かかります。ベッドや机は備え付けです。布団は自分で持ってきたり、レンタルを利用したりする学生も多いです。
男子寮には大きな浴槽と16個のシャワーが付いた浴室があり、女子寮には5つのシャワーが付いた浴室に加えて、シャワーブースが5つ完備されています。
洗濯機は各階に2台ですので、夏場の部活で忙しい時期などは常に動いているような状況となり、終わっているのになかなか取りに行かなくて注意されている学生をよく見ますね(笑) 冷蔵庫は、女子寮に共用の大きいものが1つあり、男子寮にはロッカー式の小さな冷蔵庫が30個ほどあります。
男子寮の部屋割りは、ほとんど2人部屋です。ただ、来年春から一部の改修工事を始めるため、一時的に3人部屋が増えると予想されます。女子寮は、1年生は2人部屋、2年生以降は個室になりますが、現在は空きがあるため、1年生から個室で生活しています。
学習習慣を身に付ける! 1日のタイムスケジュールは?
―寮生の1日のタイムスケジュールを教えてください。
午前7時半に起床の鐘が鳴り、午前7時45分になると、階ごとに4~5年生が点呼を行います。「いるはずの学生がいない!」という場合などは、電話等で宿直教員に連絡し、対応してもらいます。
朝食は午前7時45分~8時45分の間にとることができます。ただ、男子263名と女子66名がいるので、全員が同時に食堂に入るとぎゅうぎゅうになってしまうんですよね。COVID-19感染予防の観点からも、おおまかに時間を分けて食堂を利用してもらうようにしています。
授業は午前9時から始まり、午前中の授業を終えたら寮へ戻って昼食をとり、13時から始まる午後の授業に向けて、学校に戻ります。学校は寮から歩いて1~2分で着くので、往復の負担はほとんどありません。放課後は、それぞれが部活や勉強、お風呂などを済ませ、夕食は、午後6時~7時半の間に食べます。
あと、1~3年の低学年生は、学習習慣を身に付けるため、午後8時~10時までは自習時間があるんです。1年生のうちは4~5年生が各部屋をまわって様子を確認したり、定期試験1週間前を「学習強化期間」として、見回りを行ったりしています。「学習強化期間」に関しては、教員側から強制しているわけではなく、寮生会が自ら提案して行っているものです。
門限は午後10時です。午後10時半には夜点呼を行い、11時過ぎに部屋が消灯。勉強などのために起きていたいという学生は、机のライト等を使って生活しています。
寮生へインタビュー! なぜ高専に?/寮生活で大変なことは?
―お2人が高専に進学したきっかけを教えてください。
寅尾さん:私は北海道の日高町出身ですが、中学校の先輩が高専へ進学していたことを機に、高専の存在を知り、早くから専門的な勉強ができる環境に魅力を感じて進学を決めました。
齊藤さん:私はもっと遠くて、襟裳岬という地域の出身です。北海道の一番下の尖ったところですね。車だと3時間くらいかかります。
家が漁師の家系で、私が長男ということもあり、継ぐかどうかについて両親と話をする機会がありました。そして、「継ぎたくないなら、たくさん勉強して違う道に進みなさい」「行くなら寮のある学校にしてほしい」と言われまして。就職に強いイメージがあったことから、高専への進学を決めました。
―寮生活を始めるにあたって、不安なことはありましたか?
寅尾さん:「早く新しい友達や先輩たちと仲良くなりたい」という気持ちが強く、親戚が近くにいたこともあって、あまり不安はなかったですね。
齊藤さん:寮に入る前は、ホームシックになるのではないかと心配していたのですが、そうでもなかったです。
齊藤さん:というのも、入学してすぐにCOVID-19が流行し始めたため、寮に入って3日目で閉寮になってしまって。初めの半年間は実家で遠隔授業を受けていたんですよね。だから、寮に再び戻ったときは「やっと学校に通えた」という気持ちで、楽しさのほうが強かったと思います。
―実際に生活してみて、苦労したことはありますか?
齊藤さん:生活していくうえで、人にはそれぞれのパーソナルスペースがあると思うのですが、いざ一緒に生活してみると、自分が思うよりも近い人が当然いて。慣れるまでは大変でしたね。
寅尾さん:近くのドラッグストアまでは徒歩で20~30分かかるので、特に冬は寒くて億劫になります(笑) 無くなるぎりぎりになって、ようやく買いに行く感じですね。
寮生活は、学生の協調性や社会性を高めることができる
―寮に入って良かったと思うことはありますか?
齊藤さん:普段の生活やイベントを通して人と話す機会が多いので、人との関わり方については色々な面から学べると思います。また、寮とは言っても、基本的には1人で生活していくので、お金をやりくりするための感覚も早いうちから身に付けられました。
寅尾さん:書記長の仕事をするうえで、大人とのやり取りが多く、「勉強になる」と感じることも多いです。これは、寮に入っていなければできなかった経験だと思います。ただ、私たちは入学した当初からCOVID-19の影響で部屋の行き来やイベントなどで制限された生活を送っているんですよね。できるだけ早く「本来の寮生活をしてみたい」と思っています。
―先生が思う、寮生活の良いところはなんだと思いますか?
中村先生:特に1年生を見ていると、寮生は早くに学習習慣が定着していると感じています。中学を卒業して初めてスマートフォンを持ったという学生は、生活リズムが崩れてしまいがちですが、寮にいれば勉強時間も確保されていますし、周りもみんな勉強している環境です。そのため、教え合いながら、レポートや定期試験に取り組んでいるように見受けられます。
あと、協調性や我慢強さが、嫌でも身に付くと思いますよ。他の人に配慮し、我慢しなければいけないことも多いと思いますが、若いうちにこういった経験をしておくことは、社会に出たときにも、きっと役立ちます。
卒業生の話を聞いていると、横のつながりに加えて、縦のつながりも強いようで、本当に良いものを得られているんだなと感じていますね。15~20歳という大事な時期に、同じ場所で寝食を共にした寮生同士にしか分からない感覚がきっとあるんです。それを手に入れただけでも、寮生活を経験することの価値があるのかなと感じています。
苫小牧工業高等専門学校 蒼冥寮/楓和寮
〒059-1274 北海道苫小牧市字錦岡443番地365
TEL:0144-67-8002/8939
苫小牧工業高等専門学校HP 学生寮ページ
https://www.tomakomai-ct.ac.jp/campus_life/dorm
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