国際高等専門学校(ICT)が主催する「ICT Startup Competition 2026」が、併設校である金沢工業大学(KIT)のイノベーションホールにて、2026年2月20日(金)に開催されました。本イベントは、学生のスタートアップマインド醸成と、グローバルなイノベーター育成を目的とした国際的な教育プログラムです。今回は「Future Creation, Together」(共に未来を創る!)をテーマに掲げ、国内外の学生・有識者・企業関係者が一堂に会しました。
本記事では、パネルディスカッションから白熱のピッチコンペティション、そして月刊高専が独自に行った参加学生や主催者へのインタビューまで、当日の模様を詳しくレポートします。
スタートアップの現状とエコシステムについて考えるパネルディスカッション

午前中は、国内外のゲスト審査員や専門家を交えたパネルディスカッションが行われました。オープニングでは、ICTのTossa Mebusaya(トッサ・メブサヤ)先生が登壇。「今日は完璧なアドバイスや手順書の話ではなく、好奇心や未来が私たちをどこへ導くのか、そして全くの他人同士が一緒に何かをつくり上げたらどうなるのかという話をしたいと思います」と、参加者に向けて歓迎のメッセージを送りました。
続いて、世界と日本のスタートアップ事情について議論が交わされました。タイでのエコシステムの変遷や、AI(人工知能)技術の台頭によるチャンスと課題、さらには農業や医療など、世界規模での社会課題解決について専門家たちが意見を共有しました。
後半では、教育機関や地域がどのようにスタートアップエコシステムを構築すべきかというテーマで進行しました。大都市への人材流出が懸念されるなか、金沢のような地方都市であっても、ドローンのテスト飛行がしやすいなど独自の利点があり、情熱さえあれば新しいイノベーションの波を起こすことができるといったメッセージが語られました。
全編英語で行われた、熱気あふれる学生ピッチコンペティション
午後からは、いよいよメインプログラムである学生ピッチコンペティションがスタートしました。このコンペティションには、ICTやKITの学生だけでなく、タイやベトナム、マレーシアなど海外の大学生たちもオンラインと対面を交えて参加しました。 各チームには3分間のプレゼンテーションと、約10分間の質疑応答の時間が与えられ、すべて英語で行われました。

学生たちからは、農業における受粉プロセスの非効率さを解決する養蜂プラットフォームや、災害時の仮設住宅の建設を迅速化する廃タイヤを活用したエコなシェルター、視覚・聴覚に障がいのある高齢者向けのスマート歩行機、交通渋滞のストレスを共有のソーシャル体験に変えるアプリなど、国内外の社会課題に直結した多彩なアイデアが披露されました。
審査員からは、ターゲット顧客の設定やコスト、競合他社との差別化、そして「実際にどうやって収益を上げるのか?」といった投資家目線での鋭い質問が次々と飛び交いました。学生たちは戸惑いながらも真剣に英語で受け答えし、白熱したセッションが繰り広げられました。
すべてのピッチが終了したのちの表彰式では、上位チームや各種スポンサーによる企業賞が発表され、会場は大きな拍手と喜びに包まれました。

参加学生・主催者インタビュー 〜挑戦がもたらした成長と、これからのビジョン〜
月刊高専は、激闘を終えたばかりの参加学生たちと、本イベントの牽引役であるTossa Mebusaya先生にインタビューを実施。初の大舞台に挑んだ学生たちのリアルな声と、イベントに込められた壮大なビジョンに迫ります。
<参加学生インタビュー>

—コンペティションを終えて、今のお気持ちはいかがですか。
LAPANANRATさん(交通渋滞のストレス緩和アプリ):ステージのときは本当に緊張していて、ずっと頭に汗が流れている状態でした。でも、この緊張を乗り越えられたことに自分でも驚いていますし、ベストを尽くせて本当に嬉しいです。
太田さん(AIを活用したレース分析プラットフォーム):初めてのスタートアップコンペティション参加でした。もう少し調査や準備をして、審査員にわかりやすく説明する必要があったと感じていますが、賞をいただくことができて本当にありがたいです。
—みなさんのビジネスアイデアのきっかけを教えてください。
笹木さん(忘れ物防止システム):日常生活で物をなくして、探すのに5分10分かかってイライラするという問題に、学校の仲間たちも困っていたことがきっかけです。
木下さん(養蜂プラットフォーム):私の父が福井県で養蜂業を始めたのですが、苦労しているように見えたのがきっかけです。父を経済的に安定させて成功させ、私がもう支えなくて済むようにしたいというのが動機です。
LAPANANRATさん(交通渋滞のストレス緩和アプリ):交通渋滞を完全になくすことは難しいので、枠にとらわれない発想をして、「渋滞をもっと楽しくて快適なものにする」ことで、運転手たちに渋滞にハマっていることさえ忘れてもらうことを思いつきました。
—今回、このコンペティションに参加しようと思った動機は何ですか。
阿部さん(忘れ物防止システム):今年はプログラミングの競技に挑戦したので、次のステップとしてもっとビジネスやマーケティングなどに取り組みたいと思い、参加を決めました。
太田さん(AIを活用したレース分析プラットフォーム):これまで3年間、ただモノをつくってデザインするプロジェクトに取り組んできましたが、ビジネスや製品を売ることについては考えてきませんでした。だからこそ、この競争に参加するのを本当に楽しみにしていました。
木下さん(養蜂プラットフォーム):将来は海外の大学、特にアメリカに行きたいと考えています。自分が海外の人たちと比べてどれくらい通用するのかを試し、大学から良い評価や審査員からの助言をもらいたいと思いました。
—すべて英語でのプレゼンに加え、審査員からは厳しい質問も飛んでいました。質疑応答はいかがでしたか。
笹木さん(忘れ物防止システム):たくさんの質問をいただいたとき、すぐに答えが思い浮かばないかもしれないと思いました。慌てずに落ち着いて理解し、できる限り丁寧に答えようと心がけました。
太田さん(AIを活用したレース分析プラットフォーム):10分の質疑応答がもっと長く感じました(笑) でも、今まで考えたことのなかったような質問を聞けて、それにどう答えるか工夫するのがすごく楽しかったですし、自分のプロジェクトの課題解決に役立つ気づきを得られました。
—最後に、後輩やこれから挑戦する人たちへのアドバイスをお願いします。
太田さん(AIを活用したレース分析プラットフォーム):新しいこと、まだ試したことのないことに挑戦してみてほしいです。みなさん新しいことや変化に緊張するものですが、新しいことに挑戦するのがスキルを伸ばす一番の方法だと思います。
LAPANANRATさん(交通渋滞のストレス緩和アプリ):私の両親は「成功したいなら、まず行動を始めなければならない」と教えてくれました。何かを始めなければ、決して成功はできません。
木下さん(養蜂プラットフォーム):ただ自分らしくいて、その瞬間を楽しんでほしいと思います。
<主催者:Tossa Mebusaya先生 インタビュー>

—先生はこのコンペティションや起業プログラムに対して、どのようなビジョンをお持ちですか。
Tossa先生:このプロジェクトは、5年間の計画で進んでいます。最初の年は「スタートアップとは何か」を教育し、2年目は「変わろう(改善しよう)」というテーマで進めました。そして今年は、「スタートアップを理解し、変わる準備ができた人たちと一緒にやろう」というフェーズです。だから今年のテーマは「一緒に(Together)」なのです。
—今回、地域の企業からも多くの協賛を得ていますが、地域との連携についてはどのようにお考えですか。
Tossa先生:このイベントは学生だけでなく、地元のビジネス関係者や地元企業、中小企業の方々にも「スタートアップが新たな可能性や顧客を見つけるきっかけになるかもしれない」と伝えるためのものです。何年もかけて学生を育てても、大都市へと去ってしまいます。だからこそ、この地でチャンスをつくり、学生や地元のコミュニティを支援したいと考えています。企業の方もその目的に共感いただいていまして、「私たちも参加したい」とおっしゃっていただいています。
—来年度以降はどのような展開を考えていますか。
Tossa先生:政府や資金調達、ビジネスの側面も巻き込み、さらに完成されたエコシステムと大きなインパクトを目指し、本格的な投資につなげようと考えています。また、世界中の大学から参加希望が来ているため、来年度の中頃にトーナメントを実施し、その勝者である10チームだけが今日のような決勝のステージに立てる形式に変える予定です。私の最大の満足は、私たちの取り組みが日本人のマインドセットに変化をもたらすことです。
—最後に、参加した学生たちへメッセージをお願いします。
Tossa先生:学生たちに伝えたいのは、「よくやった」という言葉に加えて、「ただ続けてください」ということです。勝者のみなさんは謙虚な気持ちで前に進み続けてください。そして、賞を取れなかった学生たちにとっても、今回の結果は人生のほんの一コマに過ぎません。成功は継続することで訪れます。勝てなかったからといって敗北ではありません。立ち止まった時にだけ敗北が訪れるのだということを忘れないでください。
◇
2026年の「ICT Startup Competition」は、国境を越えた学生たちの創造力と熱意が交差する、非常にエキサイティングな1日でした。英語という言語の壁を越え、ビジネスの視点から社会課題と向き合った経験は、学生たちにとってかけがえのない財産になったはずです。「勝てなかったからといって敗北ではない。立ち止まった時が敗北」というTossa先生の言葉の通り、今回の経験を糧にして、参加学生たちが世界で活躍するグローバルイノベーターへと羽ばたいていくことでしょう。
◇
○イベント情報
【ICT Startup Competition 2026】
開催日:2026年2月20日(金)
場所:金沢工業大学 12号館4階 イノベーションホール
主催:国際高等専門学校
共催:金沢工業大学
後援:Knowledge Xchange、Sripatum University、King Mongkut’s University of Technology Thonburi、VOERA Startup Studio、他
発表者:国際高専、金沢工業大学の学生等、VJIT(ベトナム)、SPU(タイ)他
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