進学者のキャリア大学等研究員

進学し、じっくり研究することで、さらに楽しくなった! 今後は“プラズマを利用した新しい環境・農業利用技術”の開発を目指す

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進学し、じっくり研究することで、さらに楽しくなった! 今後は“プラズマを利用した新しい環境・農業利用技術”の開発を目指すのサムネイル画像

仙台電波高専をご卒業後、専攻科へ進学され、岩手大学大学院への編入を選んだ高橋克幸先生。現在は同大学院で准教授を務め、日々プラズマの環境応用の研究に力を入れられています。就職と進学の両方を経験した高橋先生が思う、進学のメリットとは。

得意な分野から「好きなこと」を見つけ出す

―高専に進学を決めた理由を教えてください。

低層階の校舎、整備された校内
仙台電波高専(現:仙台高専広瀬キャンパス)

高校の進学先を考えていた中学3年生の時に、担任の先生から高専を教えていただきました。小学3年生からトランペットを続けていたので、大学への進学を視野に入れつつ、当時は吹奏楽部の強豪校に進学するかどうか悩んでいたんです。

最終的には、将来、手に職を付けることがベストだと考えて、エンジニアの道を選択。理数系の科目が得意で、ロボットの制御やプログラミングにも興味があったので、電子制御工学科のある仙台電波高専(現:仙台高専広瀬キャンパス)へ進学を決めました。

―本科での学びについて、教えてください。

1人掛けの机椅子が前方の教壇に向かって整列している
4年生のときに使用していた教室

電気機器やパワエレなど制御に関する専門性が高い学習に、1年生のうちからじっくりと集中できました。その後の進学を考えたのは、本科4年生の時です。

研究室選択において、「コロナ放電(プラズマ)」と「静電気力」を用いた、特殊なモーターに関する研究の紹介があり、とても興味を抱きました。このテーマで卒業論文を書き、さらに研究を深めるために専攻科へ進学しました。

一方、学外では市民団体でトランペットを継続。当時は1年のうち360日練習するほど、音楽にも打ち込んでいました。

トランペットを持って、蝶ネクタイの正装をして、大先輩とともにピースサイン
左は、小学生の時からお世話になっている社会人団体大先輩。兄のような存在です。

大学名ではなく、研究室で選ぶ進学

―専攻科へ進学されてからの、学びや研究についてお聞かせください。

本科5年生までに学んだことを「1」とすると、専攻科での学びは「10」のように感じました(笑)。もちろん、本科で学んだ基礎となることは、今考えても本当に大事で、大きな力になり、そもそもそれがベースになっています。

専攻研究では言われた通りにしていたことに、自分のアイデアを入れるようになって、自らより専門的に物理やパワーエレクトロニクス分野を勉強すると、本来の研究のおもしろさが見えてきました。学びが楽しくなって、通学する電車の中でも、よく勉強していましたね。

これは私の肌感ですが、おそらく、通常の大学編入よりも“高専の専攻科”だからこそ、専門性の高い内容を学ぶことができたと思っています。本科の5年生で取り組んだ卒論を専攻論文として、プラス2年取り組んだことで、中途半端に終わらせること無く、自分が納得するところまで、じっくり研究ができたのも嬉しかったですね。

研究がすごく楽しくなっていたので、大学院への進学を考えたのは、とても自然な流れでした。

―大学院の進学先は、どのように決められたのでしょう。

空気が澄んで、爽やかな青空と、冷たそうな北上川、雪をかぶった岩手山
岩手大学からの見える盛岡駅前の北上川と岩手山。はじめて盛岡に来たとき、本当に良い風景だと感じました。

研究テーマとして取り組んでいた、「大気圧放電・プラズマの環境等への応用」に関して、非常に興味がありました。「電気学会論文誌」などの学会誌を眺めつつ、進学先を検討していたところ、岩手大学で活発に応用研究に取り組んでいることがわかったんです。

ちょうどその時、学会発表で岩手大学を訪れることがあり、後に指導教員となっていただく高木先生と出会いました。プラズマの環境応用の第一人者である先生です。

居酒屋の前で、送別会に集まった学生たちとともに集合写真
卒業式後の研究室の送別会。最前列の真ん中が高木先生で、その右側が高橋先生

見学やディスカッションをする機会をいただいて、専攻科1年の秋の時点で、進学先を「高木研究室」と決めていましたね。大学名ではなく、自分の興味のある研究ができる研究室で選んだのは、今でも大正解だったと感じています。

―大学院へ進学後、研究員として企業にもいらっしゃったのですね。

白い壁に上下2つずつ同じサイズの写真がきれいに展示されている
2013年渋谷での写真展の写真。楽器をやめたあと、趣味は写真撮影に変化。現在も継続して撮影を行っています。

ええ。1年生の秋頃に高木先生から研究員の話をいただいて、シシド静電気株式会社で、静電気関係の装置の研究や開発、設計に6年間携わらせていただきました。高専時代から積み重ねてきた研究、学習してきた、「高電圧」「放電」「プラズマ」「パワーエレクトロニクス」の技術が本当に役に立ちましたね。

私の場合はその後また大学へ戻るのですが、やはり進学のメリットは、キャリアの選択肢や視野が広がることだと感じています。

円卓を囲んで、海外の研究者たちと写真撮影
2017年タイにて。教員になってから海外に多くの友人ができました。

もっと言えば、エンジニアとしてのレベル、給与面、自分自身の価値の向上にもつながり、引いては人生を豊かにするものになる。少なからず私は、それを体感できました。

「全てで一番」を目指さなくてもいい

―現在の研究と、今後の目標について教えてください。

黒やグレーを背景に、紫やピンク色の電流が流れている様子を写した写真
【実験の様子】 [左]数万Vを超す高電圧によって雷状の放電をつくる [真ん中]水面上 [右]水中

現在は、プラズマの環境応用として、汚水の処理や生活環境中の気体処理(悪臭などを含む)などに取り組んでおり、この技術を農水畜産業へ応用し、植物育成環境の制御や鮮度保持にも活かしているところです。また、電源技術を活かして、どこでも誰でも使えるような小型のガス処理装置の開発なども行っています。

現段階ではまだまだ分析不足なので、今後は効果や生態への影響など安全性を考慮した開発を進めて、あらゆる活用法を検討していきます。

―最後に、学生に向けてメッセージをお願いします。

屋外、木や草が生えるなか、機器を使ってキノコの栽培について研究している様子
【実験の様子】山中における実験の様子(キノコの増産実験)

私が高専生だった頃は、先生からよく「誰にも負けない一つの武器(技術・知識・能力)を身に付けろ」と言われていました。今は好きな分野をしっかり学んで、とにかく自信を付けてください。苦手なところは別の人にカバーしてもらえればいいですし、全てのことで一番を目指さなくてもいいんです。

とりあえず手を動かして、それに没頭して「なぜこのようになるのか?」「その仕組みはなんなのか?」「課題がある場合に、どうすればその課題が解決できるか?」「どうやったらもっと良いものをつくれるか」を深く考えてみてください。コミュニケーションが苦手でも大丈夫です。何か一つを掴むことができれば、勝手に声がかかりますから。

高橋 克幸
Katsuyuki Takahashi

  • 岩手大学 理工学部 システム創成工学科 准教授

高橋 克幸氏の写真

2005年 仙台電波工業高等専門学校 電子制御工学科 卒業
2007年 仙台電波工業高等専門学校 電子システム工学専攻 修了
2009年 岩手大学大学院 工学研究科 電気電子工学専攻 博士前期課程 修了
2011年 岩手大学大学院 工学研究科 電気電子工学専攻 博士後期課程 修了
2009年~2015年 シシド静電気株式会社 研究員
2015年5月~2019年8月 岩手大学 工学部 電気電子・情報システム工学科 助教
2019年9月 岩手大学 理工学部 システム創成工学科 准教授

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