インタビュー

研究テーマは「面白そうで純粋にやってみたいこと」。生涯研究者を志す、高専出身教員の思いとは

公開日
取材日
研究テーマは「面白そうで純粋にやってみたいこと」。生涯研究者を志す、高専出身教員の思いとはのサムネイル画像

豊田工業高等専門学校を卒業後、金沢大学、大阪大学大学院を経て、現在は九州工業大学の准教授として活躍している池本周平先生。学生時代の思い出やこれまでの研究内容などについて伺いました。

モノづくりに没頭した高専時代

―池本先生は高専出身なんですね。

研究についてお話する池本先生。
九州工業大学にてお話を伺いました

愛知県にある豊田高専の機械工学科出身です。中学生の頃はそんなに成績がよくなかったし、中学校も少し荒れていました。もちろん僕自身は荒れてはいなかったんですけど、勉強を頑張るような感じはありませんでしたね(笑)。高専の存在なんてはっきり言って全然知りませんでした。

そんな中、学校の進学説明会で「高専」というものがあると聞いて、調べてみたんです。当時は完全週休2日制を導入する学校が少ない中、高専は導入していましたし、夏休みもかなり長い、そして何といっても5年制ということで凄く特別な感じがしました。正直に言えば、豊田高専を受験につながった最初のきっかけは、そんなミーハーな動機だったように思います。

もちろん、モノづくりが好きだったことも豊田高専を選んだ理由の一つです。父がエンジニアのような仕事をしていたんですけど、それよりも、父の実家に帰省した際にカブトムシを入れる木の箱の作り方や、竹を切って弓を作る方法を教えてもらったのが経験として大きかったように思います。幼少期からこういうことをやっているうちに、気付いたらモノづくりが好きになっていましたね。

―豊田高専での学生生活はどうでしたか?

研究室に集まる学生たち。
九工大 池本研究室

豊田高専は何らかの理由がない限り全員が寮に入るので、入学イコール全く新しい生活のはじまりでした。最初はとまどうこともありましたが、寮生活があったからこそ色々なことに興味が持てたんだと思います。

寮はバイクOKだったので、すぐに免許を取りました。ヤマハ『RZ250R』という8万円ほどで売りに出ていたバイクを購入しましたが、寮に持ってきた途端に壊れて、高専の仲間と一緒にキャブレーターを修理したのは良い思い出です。高専の工場実習の課題でも、壊れた原動機付自転車をバラバラに解体して、ゴーカートを作りました。今思えば、高専で過ごした5年は本当に特別な時間だったと思います。

後になって母から聞いたんですが、「高専に入ると、モノを作ることに必然的に興味が湧いてきます。危なくて心配だから止めたい気持ちはわかりますが、興味を潰さないように支えてあげてくださいね」と言われたらしいです。興味を持たせるだけじゃなく伸ばすこともサポートしてくれた高専には、もの凄く感謝しています。

―高専生ならでは強みは何だと思いますか?

研究室の学生たちとの集合写真。
九工大 池本研究室メンバーと

高専生は勉強したことを忘れていても、その根本的なアイデアは忘れずに覚えていて、応用できる人が多いなと感じます。多くの実習を並行して経験しているからか、勉強したことが紙の上だけじゃなく現実でイメージできているのかもしれません。リアリティのある想像ができれば、危ないことや無茶なことも避けられるので、作業を見ていても安心感がある人が多いです。

あと、若い頃から経験しているということも関係しているかもしれません。小さい頃に自転車に乗っていたら、何歳になっても乗り方を忘れないじゃないですか。でも大人になって初めて乗る人は乗らない時期があると乗り方を忘れちゃいそうですよね。それと同じで、中学校卒業後すぐに工場実習したり、いろいろな専門科目の知識を詰め込まれたりで、工学的センスとして身体に染み付いている部分があるのかもしれませんね。

石黒研究室から始まったロボットへの道

―金沢大学時代はどのような研究を行っていましたか?

ロボットパーツ(3Dプリンターで自作。)
学生が設計し3Dプリンタで作ったロボットのパーツ

尾田十八先生と山崎光悦先生のバイオニックデザイン研究室に入り、免疫アルゴリズムという最適化手法をテーマにしました。アルゴリズム自体はシンプルなのに、結果的に最適解が見つかるプロセスに興味を持ちました。あと、研究室では他にも色々な面白い研究の話を聞くことができました。

例えば、卵の殻って外側は何かに突かれても割れないように硬いけど、内側はひなが出られるようにやわらかい設計になっていて、これがフロントガラスに応用できるとか、キツツキは木にくちばしを打ち付けても脳震盪にならないから頭蓋骨の構造がヘルメットに使えるとかいった話です。

研究は楽しかったですし、仲間にも恵まれていましたが、大学院進学の時期に見学に訪れた石黒研究室に衝撃を受けて、大阪大学大学院へ進学することにしました。

―大阪大学大学院では石黒研究室に所属されていたのですね。

石黒研究室で、ロボットの研究をしている、学生時代の池本先生
当時の石黒研究室にて。現在の神戸高専 機械工学科 清水俊彦准教授(ドラえもんを現実に!?学生とともに打ち込むロボティクスの世界 – 月刊高専 (gekkan-kosen.com))は後輩だった

見学に行ったとき、もうここに行くしかないと思いました。その頃の石黒研究室は、パーテーションの上には全方位カメラ、横には超音波センサーが並んでいて、カーペットの下には床センサーが敷き詰められていました。そんな中に人間そっくりのアンドロイドが座っていたり、車輪移動型のロボットが動いていたりして、扉を開けたら未来が広がっているような場所でしたね(笑)。

石黒研究室では空気圧で動くヒューマノイドロボットに、人とのやりとりの中から運動を学習させるテーマに取り組んできました。作業としてはソフトウェアに関わるものが多かったですが、ロボットの故障と修理が頻繁にあったので、高専での経験が助けになりました。

あと、研究とは関係ありませんが、愛知県出身なんで2005年の愛・地球博(愛知万博)のアンドロイド出展に関われたのは嬉しかったです。それ以外にも語りつくせないほど、とても貴重な経験を沢山させてもらいました。

―九州工業大学での現在の研究内容について教えてください。

テンセグリティロボットの説明をする様子。
テンセグリティロボットと先生

「テンセグリティ」という、棒がケーブルに引っ張られて宙に浮いたように見える特殊な構造でロボットアームを作る研究を行っています。このテンセグリティロボットアームはぐにゃぐにゃと複雑で面白い動きができます。軽量・柔軟なので、動いているときに人が触れられるのも魅力ですね。

2021年度中には動画を研究室のウェブページに掲載する予定ですが、正直なところ今は何の役に立つのか考えずに開発を進めています。そこを考えない方が、面白さだけに集中できる気がするからです。とは言っても、ちゃんと構想はありますよ(笑)。人と共同作業が求められる生産現場は良い応用先と思っているので、時期が来たら取り組んでいきたいと思います。

―先生の、研究に対する思いを教えてください。

アイデア検証用の装置
1人で作っているアイデア検証用の装置

研究は本質的に楽しくて、どこか趣味や遊びに近い活動だと思っています。ですので、僕は教員になってからも趣味のように自分1人でやるテーマを持っています。大学教員なので学生に教えることが重要な仕事ですが、僕は研究室の学生さんに「僕が研究を楽しむための遊び相手になって欲しい」とよく言っています(笑)。

学生さんと一緒に研究を進めていく中で、学生さんが積極性を発揮してくれたり、アイデアをぶつけてくれたりしたときは,大学教員という仕事につけて良かったと思います。これからも、仕事として趣味として「研究」を存分に楽しんでいきたいですね。

池本 周平
Shuhei Ikemoto

  • 九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻 准教授

2003年 豊田工業高等専門学校 機械工学科卒業
2005年 金沢大学 工学部 人間機械工学科卒業
2010年 大阪大学大学院 工学研究科 知能・機能創成工学専攻修了
2010年 大阪大学大学院 情報科学研究科 マルチメディア工学専攻 助教
2014年 大阪大学 未来戦略機構 第七部門 特任助教
2015年 大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 助教
2019年から現職

池本 周平氏の写真

最新の記事

「地域連携」と「高専の繋がり」が生み出す、食品のものづくり
常に「楽しさ」を追求。世界が変わって見えだすと、研究も勉強も前進する
「母校以外考えられない」。香川高専歴14年目の田辺先生が語る、母校で働く意義とは