小山高専を卒業後、現在は北見工業大学で学を深められている中嶋匠さん。「加藤岳仁先生の研究室に入ってから、プレゼンが得意になった」とのことです。そんな中嶋さんに、高専時代の思い出や、研究のお話、加藤先生との思い出を伺いました。
高専に入って、学会や研究を早い時期から意識した
―小山高専に進学されたきっかけを教えてください。
子どものころから、夢中になるとそればかりに集中するような性格でした。ヒーロー戦隊、特撮、乗り物、スポーツなど、月ごとにハマるものが変わりましたね(笑)
高専を知ったきっかけは、理系だった父が建設関係の仕事に就いていて、僕自身も理数系が得意だったので、「理数系や機械が好きなら、高専がいいんじゃないか?」と、父に勧められたからです。
また、地元は茨城でしたが、入学時から学科が決められることに魅力を感じ、栃木の小山高専に進学しました。
―小山高専に進学されてみて、いかがでしたか。
個性的な先生方がたくさんいらっしゃいますよね(笑) 15歳という若いうちからそういった先生方と交流して、考え方を知ったり、意見交換できたりしたのは、すごく良かったです。学会や研究の話をしていただける先生が多くて、早いうちから意識的に考えるようになりました。
また、寮にも1年次から入っていたので、先輩後輩の関係性やルールを守ることなどが、成長につながったと思います。寮生は寝食共にするので、学校の日はもちろん、休みの日にも部屋でたくさん話すことができて、楽しかったです。
-高専時代はどのような部活に所属していたんですか。
実は、3つの部活に所属していたんですよ(笑) 学生会執行部、バレーボール部、そして野球部です。
学生会執行部は「広報局」として活動しまして、学内のイベント時に新聞をつくって校内配布していました。広報局長を務めたこともあります。球技大会では優勝チームに、文化祭では花火の担当者にインタビューをして、たくさんの方と関わりを持てました。でも、目立つ部活ではなかったので、なかなか書いた記事を見てもらえなくて(笑) そこは少し残念でしたね。
バレーボールは中学校からやっていたので、1年次から入部しました。初心者の仲間も多かったので、上達していく仲間の姿を見るのが嬉しかったです。また、僕は基礎を疎かにしていた部分があったので、その確認にもなりました。ポジションはセッターだったので、試合の流れを読みながら、最善策を考えることは楽しかったです。
野球部は、2年生での球技大会でソフトボールに出場したことと部の人数不足がきっかけで入部しました。野球は小学生以来だったので、硬球と軟球の違いや、打球の速さ、グラウンドの広さなどレベルが大違いで(笑) ファーストを守っていましたが、足を引っ張らないよう精一杯でした。
5年生の時はバレーボールがメインではありましたが、最後まで3つを兼部して、たくさんの経験ができ、本当に充実していたと思います。
「僕と世界レベルの研究をしよう!」にシビれた!
-卒業研究は、何をされたのですか。
僕の研究分野は「熱電変換素子」についてでした。熱を電気に変換する素子の両端に温度差が出来るように熱を与えるんです。例えば右側の素子に120度、左側の素子に20度の熱を流すと、温度差が100度になり、この温度差で発電するんです。温度差が上がるにつれて、起電力はどう上がるのか研究しました。
ガラス基材に「熱電変換層形成インク」を塗布した後は、両端から温度差を与えるのですが、そのインクの配合量も自分で決めていましたね。マニュアルはあるのですが、配合比を変えることでどうなるのか、また、ガラス基材に塗る幅を変えると結果はどう変わるのかを調べることが楽しかったです。
そもそも、僕が「熱電変換素子」を研究したきっかけは、加藤岳仁先生(月刊高専No. 002、月刊高専No. 003、月刊高専No. 084)のプレゼンでした。研究室配属の説明会でおっしゃった「僕と一緒に世界レベルの研究をしよう!」という言葉がすごく胸に響きまして(笑) この言葉をズバッと言える実力や自信が伝わり、「加藤先生の元で研究する!」と決めたんです。
加藤先生はストレートに表現してくださるので、実験でいい結果が得られたときに「素晴らしい!」と褒めていただけたことが嬉しかったですね。悩んだときも「これは世界レベルの研究だから」や「自信を持って」と背中を押していただけたので、加藤先生の研究室を選んで本当に良かったです!
-研究で意識されていたことがあれば教えてください。
1番意識したのは、「プレゼン」と「その資料づくり」です。プレゼンするにあたり、「自分の研究は他の誰よりも自分が1番プロフェッショナルじゃなくてはいけない」と思い、責任を持って取り組んでいました。もちろん、加藤先生や他の先生方もいらっしゃる前での発表なのでプレッシャーもありましたが、自分を追い込みましたね。
プレゼン資料をつくるときは「自分が言いたいことと、相手が聞きたいことは違う」という視点を持って、何度も調整しました。参考にしたのは「新聞」です。写真や図の大きさ、使うポイント、さらには見出し、副題、言葉遣い、句読点の位置なども、新聞はすごく分かりやすいですよね。卒研が始まってからは新聞をよく読むようになりましたし、広報局の経験も生かすことができたと思います。
プレゼン中は、話すスピードと目線の位置を意識しました。話すスピードが一定だと聞き手は飽きてしまうので、しっかり説明したい部分はゆっくり話し、目線も資料ではなく、聞いてくださっている方々を見ていました。
プレゼンは一方的な自己発信ではなく、「相手との話し合い」だと思っているので、そのあたりは意識していましたね。加藤先生や、聞いてくださっている方から褒めていただけたので嬉しかったですし、今でも自信にもつながっています。
「0→1」に対応できる能力をこれから培いたい
-現在は北見工業大学に進学されています。
高専での研究が楽しかったので、「進学したい」と思うようになりました。「進学するならエネルギーに関することを深く学びたい」と思い、エネルギーに関する教育と設備が優れていた北見工業大学を進学先に選んだんです。
今は3年生なので、研究室配属は来年からですが、「再生可能エネルギーの仕組み」や「システムから発電の効率を上げる方法」など、たくさんの勉強ができています。高専での学びを深めつつ、大学レベルに合わせた勉強をさせてもらえているのはありがたいです。
また、北見工業大学は日本各地から本当にたくさんの人が集まっています。留学生もたくさんいるので、いろんな方との交流の中で異なる文化や考え方に触れ、それを吸収できる環境に身を置けることが嬉しいです。
しかし、実は少し課題も感じていて……。インターンシップに参加したときに、「形状や大きさも自由なので、この部品をつくってください」と言われたので、自分なりにつくったんです。すると、企業の方から「なぜこの形状と大きさに?」「強度的な問題は?」「加工するためのコストは?」と質問され、何も答えられませんでした。
「決められた問題を解く」のは高専での経験があるので得意でしたが、「0から1をつくる」のは、そのときが初めてだったんです。そういった質問にも対応できる能力を、これから培っていきたいですね!
―現役の高専生にメッセージをお願いします。
進路を決めるのは早い方がいいです。決定はしなくても、3年生の後半からは真剣に向き合っていた方がいいと思います。僕の実体験でもありますが、準備不足がどうしても起こってしまうんですよね。情報収集が早ければ早いほど、勉強や就活にまわせる時間が増えるので、後輩には「とにかく早めの情報収集を」と伝えたいです。
あと、高専生のときにたくさんの経験を積んでいて良かったと思います。今、どんな人ともコミュニケーションが取れるのは、高専にいたおかげだと思っています。僕の知らないことをたくさん知っている友達や先生と交流していたことが、今になって生きていると感じるので、後輩たちもたくさん経験を積んでもらえたらと思います。
たまに母校に遊びに行って、後輩たちのサポートをする機会があるのですが、後輩から教えてもらうこともたくさんあるんです。私自身、「関わる人全員が自分の先生」だと思って人と接しています。自身を持って研究や学習に励み、高専を「夢を実現する場所」にしてほしいです!
中嶋 匠氏
Takumi Nakajima
- 北見工業大学 地球環境工学科 エネルギー総合工学コース
2022年3月 小山工業高等専門学校 機械工学科 卒業
2022年4月 北見工業大学 地球環境工学科 エネルギー総合工学コース 入学
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