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AIが病気を自動診断?! 医療と情報技術をつなぐために重要なのは「結果」と「根拠」

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医用画像処理をご専門とされている久留米高専の古賀裕章先生。医療分野で情報技術を活用するための研究にご尽力されています。研究を始めることになったきっかけや現在取り組まれている「高専ワイヤレスIoTコンテスト」についてお話を伺いました。

「医療」×「情報」の研究へ。きっかけは恩師との出会い

―先生の学生時代について教えてください。

幼い頃からロボットやプログラミングに興味があり、中学生の時には、熊本高専で開かれていた公開講座に参加したこともあります。出身が熊本ということもあり、大学を選ぶ際には、比較的近くで興味のある分野を勉強することができる九州工業大学を選びました。

また、情報だけをメインにした「情報工学部」というのは、この地域には九工大くらいしかなくて。その点にも魅力を感じ、進学を決めました。

大学進学後は、工業大学ということもあり、同じような趣味を持った友達がたくさんいて、とても楽しかった印象があります。その頃の友人とは、今でも仲良くしていますね。同じ情報系ということもあり、仕事の情報交換などを通して良い刺激になりますし、話すことでストレス発散にもなって、良い関係が築けていると思います。

大学院へ進学したのは、恩師である九工大の山川烈先生との出会いがきっかけです。山川先生のお話は本当に面白くて。「脳」と「情報」を組み合わせた複合分野の研究内容にも惹かれ、「この先生の下で研究したい!」と思い、生命体工学研究科に進学したんです。

大学院時代の皆さんと写真に写る古賀先生
▲大学院時代の集合写真(前列左から3番目:山川先生、後列左から2番目:古賀先生)

大学院では、山川先生が参加していたプロジェクトの一環で、「てんかん」という脳の病気について研究しました。

これは、山口大学の医学部の先生方と一緒にやっていたプロジェクトで、実際に手術に立ち会うなどしながら、私たちの持つ技術をどのように医療に役立てることができるのかということを学んでいました。そのため、医学部の先生からご指導をいただく場面も多く、難しさとやりがいを感じていましたね。

―高専教員になるきっかけは何だったのでしょうか。

大学院時代、同期の3分の2以上が高専をはじめとする外部からの進学者だったんです。そのため、高専出身者と話す機会も多く、「高専って楽しそうな学校だな」と感じていました。また、高専教員になられた研究室の先輩方も多く、その背中を見ているうちに自然と高専教員を志すようになっていましたね。

AIの活用で質の高い医療を提供! 導入までの課題は?

―現在はどのような研究をされているのでしょうか。

久留米高専の建物
▲久留米高専 外観

医用画像(レントゲン写真など)や医療データに対して、画像処理やデータ処理を行って、自動診断や診断補助を行うシステムを開発しています。

例えば、目の奥にある血管を観察して動脈硬化の程度などを判断する手法があるのですが、医師の方たちはそれを画像で見て診断しているんですよね。これは医師の方が勉強と経験を重ねて分かるようになるものですが、それだと個人の技量や経験に依存する部分が多く、診断ミスにもつながりかねません。

そこで、AIが診断補助や自動診断を行うことによって、病気の見落としを防止し、医師の負担軽減に貢献することが期待されているんです。AIは膨大なデータから解を導き出すため、精度が高く、医師がそれらを駆使することで、より高度な医療の提供ができると考えています。

久留米高専の門
▲久留米高専 正門

ただ、AIの問題としてよく挙げられているのが、最終的な結果だけが導き出されるため、「なぜ、そうなったのか?」が分かりづらいという点です。

これは、医学の分野では大きな弊害になってくるんです。例えば、病院に行って、医師の方から「理由は分からないけれど、コンピュータがこう言っているから、あなたはこの病気です」と言われても、非常に困りますよね。どういった点に注目して判断したかという根拠を示すことができなければ、患者さんは納得して治療を受けることができません。

そこで、私の研究では、根拠を明確に示したうえで病気を診断できるようなシステムの開発を目指しています。医学に限らず、理由もなく結果が分かるだけでは使いにくいという場合も多いんですよね。だから、この技術が実現することで、様々な分野で使いやすいシステムの構築につながればいいなと考えています。

―この研究で、苦労しているのはどのような点ですか?

機械学習の分野では、たくさんのデータが必要になります。例えば、画像解析の分野で必要な画像は少なくとも数万枚です。私は医師ではないですし、自分でそれらのデータを集めることには限界があります。

そのため、他の教員や医師とのコネクションをつくりながら、データをいただくことでやっと始められる研究なんです。このデータを集める段階が1つ難しい点です。

顎の形状のパターン図
▲嚥下(えんげ)機能の解析に向けて、顎の形状を49パターンに分類。嚥下とは、食べ物を口の中で噛み、飲み込みやすい大きさに変えて、喉、食道、胃へ送り込むこと

また、医療分野で使われる情報技術に関しては、センサーの置き方や情報の取り方といった、情報を専門とする私たちが考える構造に加え、医師の方たちがシステムに求める要件を考慮しなければなりません。しかし、医療と情報の分野では考え方が異なる場面が多く、そこをうまくすり合わせて、新しい技術の開発につなげるのは難しいですね。

さらに、私が扱っているAIの分野では、日々新しい技術が生まれています。それを勉強し続けながら、自分なりにかみ砕いて、自らの研究に応用できるのかを発想していく。簡単ではありませんが、挑戦しがいのある研究だと思います。

通信技術で社会問題を解決!「高専ワイヤレスIoTコンテスト」

―先生は、「高専ワイヤレスIoTコンテスト(WiCON)」にも取り組まれています。

「高専ワイヤレスIoTコンテスト」とは、5Gや無線通信といったワイヤレス技術を使って社会問題を解決しようという取り組みです。ちょうど4年生の担任をしていることもあり、クラスに話を持ちかけたところ、参加したいという学生がいたため、活動を始めました。

学生に指導中の古賀先生
▲WiCONの取り組みの様子(写真右:古賀先生)

久留米では毎年、大雨が原因で冠水が起きており、地域にとって大きな問題となっています。そこで、ワイヤレス技術を活用してこれを解決できないかと考えたのです。

最終的には、機械学習やディープラーニングといった、私が持っている技術も使って、「何時間後に道路が冠水する」といった予測を市民の皆様に発信し、被害を最小限に抑えられるようなシステムの開発を目指しています。

腕組みをする古賀先生
▲WiCONでの集合写真

社会問題に取り組むという経験は、学生たちの成長にもつながると思うんです。社会実装を目指した取り組みであるため、市役所とのやり取りなども多く、学校にいるだけでは学ぶことができない「社会とのつながり」を学ぶ良い機会にもなります。だから、私としてもできる限りの協力をしていきたいと考えています。

―今後、力を入れていきたいことはありますか?

今ある技術をそのまま使うだけでなく、視点を変えながら、活用の幅を広げていく。そうして、複合分野での新しい技術を開発することが私の役割だと考えています。

そのため、まずは他分野の先生との連携を強め、より柔軟な研究体制を構築していくことが、1つの目標です。そして、そこで成果が出れば、自然と次につながっていくと思うんです。これからも、人とのつながりを大切にしながら、研究・教育活動に励んでいきたいです。

古賀 裕章
Hiroaki Koga

  • 久留米工業高等専門学校 制御情報工学科 准教授

古賀 裕章氏の写真

2004年3月 熊本県立宇土高等学校 普通科 卒業
2009年3月 九州工業大学 情報工学部 システム創成情報工学科 卒業
2011年3月 九州工業大学 生命体工学研究科 脳情報専攻 博士前期課程 修了
2017年3月 九州工業大学 生命体工学研究科 脳情報専攻 博士後期課程 修了
2017年4月 山口大学大学院 創成科学研究科(理学) 情報科学分野 学術研究員
2019年4月 久留米工業高等専門学校 制御情報工学科 助教
2022年10月より現職

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