卒業生のキャリア現役大学・大学院生

地域活性化から世界の歴史認識へ。高専で見つけた「学びたい」を追って東京外国語大学へ

SHARE

この記事のタイトルとURLをコピーしました
公開日
取材日
地域活性化から世界の歴史認識へ。高専で見つけた「学びたい」を追って東京外国語大学へのサムネイル画像

富山高専の国際ビジネス学科を卒業し、現在は東京外国語大学 国際社会学部で学ぶ谷口莉彩さん。高専時代には音楽フェスを通した地域活性化を研究し、キルギス留学での異文化研修をきっかけに、歴史認識や集合的記憶へと知的関心を広げてきました。「自分のやりたいことを自分で決めて、納得しながら進んでいく」ことを大切にする谷口さんに、これまでの歩みを伺いました。

かわいい制服に憧れて。見つけた「高専」という進路

―富山高専に進学したきっかけを教えてください。

中学時代に、ソフトテニス部の先輩が高専の制服で部活の応援に来ていて、「制服がかわいい!」と思って、調べたのがきっかけでした。そのときに、5年制で、しかも文系の学科がある珍しい高専があるのを知りました。

それから、富山高専の秋のオープンキャンパスに参加してみました。実際に通っている方の話を聞いたり、体験授業を受講したりしているうちに、ビジネスに関する専門的な授業を高校一年生から受けることができるという高専の魅力を感じ、私もここで勉強したいと富山高専を目指すことにしました。

―実際に入学してからの印象はいかがでしたか。

高専1年次から、外国語や会計、経営といったビジネス系科目の専門的な勉強ができて、文系の高専の良さをすぐに実感できました。

前期・後期の2期制なので、試験範囲は広く、内容も濃いなと。大学受験に向けての勉強というよりも、社会に出てからも使える知識や自分の興味のある分野を勉強しているっていう意識で、大変ながらも楽しく勉強できていたかと思います。

1番最初のテストで割と良い点数を取って、それからは点数をあまり下げたくない!と思って、勉強には力を入れていました。数学やIT系のデータサイエンスの勉強には苦戦しましたが、それも今では良い思い出です。

高専の勉強の中でも特に印象的だったのは、経営学について深く勉強できたことです。どうやって人をマネジメントし、組織を運営していくのか、知識を深めることができました。この経営学の知識は、チームで活動するような実生活の場面などで活かせているなと感じます。

▲高校一年生の時、授業でクリスマスパーティについて話し合ったとき

―高専時代の研究内容について教えてください。

「ミュージックツーリズムを通した地域活性化」について研究しました。研究テーマとして選んだ大きな理由は2つあります。

1つは、富山高専で尊敬している先生が社会学を専門としていて、その先生のもとで学びたいと思ったことです。そこで、社会学のテーマの1つである「地域活性化」に取り組むことにしました。

2つめは、高専3年次から参加していた音楽フェスでのボランティア経験です。この経験が、地域活性化というテーマに興味を持つきっかけになりました。富山で毎年開催されている音楽フェスなのですが、「人を集めて、開催地の経済に還元していく」という文化の可能性にとても興味が湧いたんです。日本全国から人も来て、音楽フェスが終わるまで開催地が注目される。観光資源が少ない地域でも、イベントを通して地域の魅力が伝えられるといった点に注目して、研究テーマにしてみようと思いました。

―研究は、実際に音楽フェスの会場で調査されたそうですね。調査を通して、どのようなことが分かりましたか。

研究の結論としては、「地域活性化」といわれると経済効果やその数値に注目しがちですが、それだけではないことに気づきました。フェスが開催された地域にまた遊びに行きたい。ボランティアとして参加したい。自分の地元に多くの方が来てくれて、地元に誇りを持てた。そういった、数値化できないような心理面での社会的貢献もあることに気づけたのが研究の大きな収穫でした。

音楽フェスの会場で研究のためのアンケートも行ったのですが、千人以上の方から回答をいただくことができました。データをたくさん集められたおかげで、4万字もの論文として研究内容を発表できたことは、とても嬉しかったです。充実した研究ができた経験は、富山高専でのとても大きな思い出として、今でも心の中に残っています。

▲富山の音楽フェス「ONEFES」のボランティアに一緒に参加した友人たちと

学科も学年も越えて。文化祭実行委員長で得た大きな経験

―学校生活で思い出に残っていることを教えてください。

文化祭実行委員長として、富山高専の文化祭の企画運営に携わったことも思い出深い体験でした。私は中学生のころから周りの人と一緒に1つのものをつくり上げることが好きだったので、高専でも同じことをしたいなと思って、立候補しました。

国際ビジネス学科のある射水キャンパスには、電子情報工学科や商船学科もあります。1つの学科だけでなく、他の学科の人もバランスよく集めて、文化祭実行委員会を組織したいなと思いました。それに、高専は5学年あるので、学年もバラバラに集めたいなとも思いましたね。いろいろな学科・学年から実行委員になってくれる人を集めることで、それぞれの学科の特徴や事情も知れて、思いもよらないアイデアも出てくるかもと期待していました。

文化祭実行委員長の仕事を始めていく段階になると、最初は高専生同士の関係構築を第一に考えて運営していきました。私と個人的に話せる方は多かったのですが、集まった学生同士は初対面の方も多い状況だったので、会の初めはアイスブレイクを意識する機会も増やして、信頼構築できるようにと考えました。このときの文化祭実行委員長の経験は、私にとって人生の大きな糧になったと思っています。

▲北斗祭の実行委員のメンバーとステージで記念撮影

―高専に進学して良かったと思うことを教えてください。

いち早く専門的な勉強ができることが、高専に入学して一番良かったと思う点です。

また、国際ビジネス学科を選んで良かったなと思う点は、1つの分野だけでなく、幅広い分野を学べる環境が整っていることです。経済や政治、法学など、自分の興味関心や突き詰めて勉強していきたい分野がどこにあるのかを、高校や大学に通っている方たちよりも早く見つけられる環境があるのは、高専の魅力的な部分だなと私は思っています。

キルギスで生まれた新たな問い。「集合的記憶」を学ぶために

―東京外国語大学に編入学した経緯について聞かせてください。

高専4年次の夏に行った「キルギスでの3週間の異文化研修」がきっかけになっています。高専で4年間勉強したロシア語を使ってみたかったですし、ホームステイもできるとあって参加しました。ただ、社会的な情勢もあって、ロシアではなく旧ソ連国のキルギスに行くことになりました。

実際キルギスに行ってみると、若者がキルギス語を話せなくなってきている現状があり、国も問題視していることを知りました。「旧ソ連の国でも、ロシア語の使用が推奨されている国とそうでない国があるのはなぜだろう」と疑問に思い、背景にある実際の歴史と歴史認識の違いや、ある社会や集団の中で共有される過去についての記憶や認識を指す「集合的記憶」というテーマに関心を持つようになりました。

そして、国際関係や政治経済はもちろん、哲学やジェンダーなどについても幅広く勉強できること、また研究対象はロシア、旧ソ連地域を想定していたため、それらの地域について学ぶ上で最も環境が充実している東京外国語大学への進学を決めました。

▲キルギスで一緒に留学していた、高専と他大学のメンバーとの最後の日の一枚

―現在の大学生活はいかがですか。

最初は友達ができるのかなと不安もあったのですが、今では編入学した方と友達になれましたし、軽音サークルやアイドルダンスコピーサークルにも入って、友達も増えました。充実していて、高専時代よりも忙しいかもしれません(笑)。編入学してから一気にいろいろなことをしすぎてしまって、キャパオーバーになりながらも、なんとか前期を終えられた感じです。

ただ、大学は「クラス」みたいな意識で受ける授業が少ないので、高専時代の「クラス」での授業が懐かしいなと思うこともあります。

▲大学でのアイドルコピーダンスサークルでの一枚

―今後の目標について教えてください。

後期も単位をしっかりと取って、目の前の大学の課題や勉強を頑張りたいと思っています。大学の志望動機にもなっていた「ロシアと旧ソ連地域における集合的記憶の相違や記憶の政治利用についての比較分析(特に大衆文化などからの記憶の分析)」について、地に足をつけてじっくりと勉強していきたい気持ちが強いです。

大学に入ってから、高専時代にはあまり考えていなかった就活のことも考えるようになりました。後期以降はより本格的に就活に時間を割けていけたらと思っています。今は、グローバル展開している企業や海外支社があるような会社に興味があります。「同じ目標を持った仲間たちと働けて、成長できる」ような仕事を見つけられたらいいなと思っています。さらに、高専や大学での勉強が生かせるような仕方で働けたら最高ですね。

―最後に、高専生へのメッセージをお願いします。

実際に前期を終えてみて、高専から大学への編入学を決めて本当に良かったと感じています。大学では3・4年生になると、単位の取得状況等によっては学校に行く頻度が少なくなるという話も聞きます。編入の場合だと、他の学部生と比べて単位を多く取らなくてはいけないため、大変なときもありますが、2年間で十分に充実した大学生活を送れるのはとても有意義な選択だったと感じています。

高専は今の自分につながる新しい価値観や出会いがあった場所だったなと、大学生になってあらためて感じています。高専から専攻科に進学するにしても、大学に編入学するにしても、自分のやりたいことを自分で決めて、納得しながら進んでいくのが、一番後悔のない選択だと思います。自分自身と向き合いながら、努力を続けていくことが大切なのかなと思います。

谷口 莉彩氏
Risa Taniguchi

  • 東京外国語大学 国際社会学部 国際社会学科 3年

谷口 莉彩氏の写真

2026年3月 富山高等専門学校 国際ビジネス学科 卒業
2026年4月 東京外国語大学 国際社会学部 国際社会学科 3年次編入

SHARE

この記事のタイトルとURLをコピーしました

富山高等専門学校 の記事

高専は何でも学びになるし、人間としての厚みが出る。「自立して挑戦する」という心意気
高専は何でも学びになるし、人間としての厚みが出る。「自立して挑戦する」という心意気
なぜ高専生が現場で重宝されるのか。即戦力として活躍するために必要な経験や考え方
なぜ高専生が現場で重宝されるのか。即戦力として活躍するために必要な経験や考え方
高専で鍛えられた「伝える力」。モチベーションアップや自己成長につながるメンターの存在
高専で鍛えられた「伝える力」。モチベーションアップや自己成長につながるメンターの存在

アクセス数ランキング

最新の記事

地域活性化から世界の歴史認識へ。高専で見つけた「学びたい」を追って東京外国語大学へ
地域活性化から世界の歴史認識へ。高専で見つけた「学びたい」を追って東京外国語大学へ
通学路の竹と、大分の特産品から生まれた「色で伝わる」生分解性パッケージ。原動力となった「停滞することの怖さ」
通学路の竹と、大分の特産品から生まれた「色で伝わる」生分解性パッケージ。原動力となった「停滞することの怖さ」
沖縄の地域課題から出発し、科学の力で世界へ。iGEM Okinawaが挑む「養豚×合成生物学」
沖縄の地域課題から出発し、科学の力で世界へ。iGEM Okinawaが挑む「養豚×合成生物学」