高専教員教員

「都市まるごとシミュレーション」でエネルギー利用を最適化。研究と教育の両面で試行錯誤を続ける

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熊本高専の専攻科を修了後、長岡技術科学大学の大学院博士課程を修了し、2022年度から長岡高専に教員として着任された早川佳孝先生。太陽光をはじめとする都市のエネルギー利用を可視化する研究に取り組まれています。学生たちと向き合いながら、教育者としても試行錯誤を重ねる早川先生に、高専時代から現在までの歩みを伺いました。

「新しい環境」を求めて——高専で学んだ7年間

―高専に進学されたきっかけはなんだったのでしょうか。

幼少期からロボットアニメやSF映画が好きで、機械分野に興味を持っていました。

ただ、実際のところ、周りの先輩や友人の多くが地元の進学校に進んでいたため、私はそこから出たかったという理由が大きいです。馴染みのある交友関係に落ち着くよりも、「新しい環境に飛び込みたい」という気持ちが強く、寮のある高専を選択肢の一つとして考えるようになりました。

高専入学後の勉強は楽しかったです。特に専門的な科目はワクワクしながら授業を受けていた記憶があります。実習で工作機械を触るのも楽しかったですし、熱力学や流体力学といった分野に、より興味を持つようになりました。

また、もともと部活に入るつもりはなかったのですが、寮で仲良くなったテニス部の友人が、休日に寮でゴロゴロしている私に「テニスしよう!」と誘ってくれたのがきっかけで、硬式テニス部に5年間所属。しかも、学年が上がるごとに同級生が少しずつ辞めていって、最終的には私だけが残り、5年生のときにはキャプテンも任されました。

本科卒業後は専攻科を経て、長岡技術科学大学の5年一貫制の博士課程に進みました。そこでは、山田昇先生の研究室に所属し、非常に充実した研究をさせていただきました。

―そこから高専教員になられた経緯を教えてください。

博士課程在学中、修了後の進路に悩んでいたとき、山田先生が「長岡高専で公募があるよ」と教えていただいたのがきっかけです。そのときは、「なぜ私にお声がけを?」と思ったのですが、よく思い返してみれば、研究室に入ったばかりの頃に「高専教員になるために大学院に来ました」と話していたようです。

正直、私自身はあまり覚えていなくて(笑) ある種の方便だったのかもしれませんが、山田先生はその言葉を覚えていてくださり、私を呼んで話を持ちかけてくださったのだと思います。

そこにちょうど、山田先生と共同研究をされていた長岡技科大の中山忠親先生がいらして、「長岡高専の機械工学科に知り合いがいるから、紹介しておくよ」とおっしゃっていただきました。そこからだんだんと道が開けていき、長岡高専に赴任することになった次第です。

車載太陽電池の研究から、「都市まるごと」のシミュレーションへ

―大学院時代はどのような研究をされていたのですか。

太陽電池に関連する研究で、主に扱っていたのが車載太陽電池です。山田先生がトヨタ自動車やNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)との共同研究に取り組んでおり、その一部を担当させていただきました。

車載太陽電池は、その名の通り車体に取り付けた太陽電池です。これがあることによって走りながら充電することができ、充電回数や電力消費の削減につながります。私は車体に搭載する太陽電池パネルの「発電量の解析」や「温度特性の把握」のための研究に取り組んでいました。

一般的に使われている太陽光パネルは平面に設置するため、均一に太陽光を当てることができます。一方、自動車の車体には曲面が多く、場所によって光の当たり方が異なります。影になっている部分や光の弱い部分があると、その影響を受けてパネル全体の発電量が低下してしまいます。そういった問題を解決するために、パネル内の回路構成などを検討しながら、発電量の解析を行っていました。

また、固定されている一般的な太陽光パネルとは異なり、自動車は高速で移動します。走行風によって太陽電池の温度が変化するため、その影響を調べる必要があります。実際に車へ太陽電池を搭載し、走行中の温度を測定したり、シミュレーションで再現したりしていました。

―現在取り組まれている研究について教えてください。

現実の都市空間をゲームエンジン上に再現し、車載太陽電池の発電量や車両のエネルギー消費を予測する「太陽エネルギー利用のシミュレーション」に取り組んでいます。

自動車は市街地や山間部など、さまざまな場所を走行しますし、車載太陽電池の発電量は、太陽の位置だけでなく、建物や街路樹の影、走行する方向やルートによっても変化します。こうした条件を実際の車両で一つずつ検証しようとすると、非常に大掛かりです。

そこで、国土交通省の3D都市モデル「PLATEAU(プラトー)」などを活用し、実在する都市を仮想空間上に再現してシミュレーションできないかと考えました。

現在は、都市内を走行する車両の発電量などを予測できるようになっています。例えば、車が建物や街路樹の影に入ったとき、太陽電池への日射量がどのように変化するかといったことです。今後は、どのルートを走ればより効率良く発電できるのか、あるいは発電によって航続距離をどの程度伸ばせるのかといったことも検討できると考えています。

また、シミュレーションだけでなく、3Dプリンターで模型をつくり、その縮尺に合わせたスケールモデルによる実験も行いました。その結果、シミュレーションと実験の傾向がある程度一致し、研究手法としての妥当性を示すことができています。

―今後はどのように研究を発展させていくのでしょうか。

都市全体を再現するだけでなく、ゲームエンジン上でドローンや自動車といった移動物体を動かし、その挙動やエネルギー利用についてシミュレーションしたいと考えています。

研究を始めた頃は、プログラミングやゲームエンジンの扱いに苦戦することもありましたが、現在は以前よりも課題を解決できるようになりました。生成AIの発達によって、プログラム上の問題点を整理しながら、試行錯誤を重ねやすくなったことも大きいです。

一方で、現在つくっているシミュレーションシステムを、太陽光発電以外の新しい方法で活用する余地もあると思っています。私の研究に興味を持ち、異なる分野から新しい使い方を提案してくださる方がおられたら、ぜひ連携していきたいですね。

学生と同じ目線でいられるように

―研究室では、どのように研究指導を行っていますか。

毎年3名ほど学生を受け入れています。これまで卒業した学生は全員進学しており、長岡技術科学大学や専攻科に進む学生が多いです。

私としては、卒業研究生を単に指導を受ける学生としてではなく、同じ研究に取り組むグループのメンバー、同じ目線の共同研究者として考えています。私からある程度の方向性は示しますが、その後は学生自身に考えてもらい、自分の意見を出してほしいと思っています。議論を重ねながら、研究者として成長してもらうことが目標です。

―学生と関わるうえで、大切にしていることはありますか。

学生とは気軽に話せる存在でいたいという思いはありますが、どこまで踏み込んでよいのか迷うこともあります。適切な距離感については、今も模索中ですね。

今は4年生の担任をしていますが、最近は教員としての経験を重ねる中で、「この学生は、本当はこういうことを聞きたいのだろう」と、言葉の背景にある意図を考えながら話せるようになったと思います。

担任として、時には冗談を交えながら話しつつ、進路や成績については「このままだと少し厳しいよ」など、現実的なことも伝えています。ただ、学生によって性格や受け止め方は異なるため、誰に対しても同じ接し方が良いわけではありません。一人ひとりとの距離を測りながら関わっています。

▲担任を務める機械工学科4年生たちと見学旅行に行ったときの一枚(早川先生:右端)

―ご自身が高専生だった頃と、現在の学生を比べて、変化を感じることはありますか。

私が学生だった頃は、テスト期間になると現実逃避のように漫画が流行っていました。今の学生は、通話しながらゲームすることが多いようです。方法は変わっても、テスト前に現実逃避をしたくなるところは変わらないのだと思います(笑)

一方で、少し意外だったのは、スマートフォンやパソコンが身近にある世代だからといって、必ずしもそれらを使いこなせるわけではないことです。

自分のパソコンを持っていても、動画を見たりゲームをしたりすることが中心で、レポート作成やデータ整理にはあまり活用できていない学生がいます。ショートカットキーを知らなかったり、高学年になってもレポートのためにExcelを十分に使えないことも。

そこで学生には、レポート作成やデータ整理にはExcelやPythonを使うと便利だよ、とよく伝えています。デジタル機器に触れる機会が多い世代だからこそ、ただ使うだけではなく、目的に応じて便利な道具を選び、使いこなせるようになってほしいですね。

―最後に、高専生へのメッセージをお願いします。

高専は、技術を使ってさまざまなことに挑戦できる「遊び場」のような場所だと思います。

機械工学科であれば、学校にCADなどの設計ツールがあり、それを使っていろいろなものをつくることができます。「授業で使うから仕方なく覚える」のではなく、遊びの延長として、自分の興味関心の先にある目的のために触ることで、今のうちに技術を身に付けてほしいです。そこからさらに新しいものへの関心を持ち、さまざまなことに取り組んでもらえたらいいですね。

自分で興味を持って、調べて、その技術を使って何かをつくれる環境があることが、高専の大きな魅力だと思います。この環境を最大限に活用し、コンテストや研究発表などにも積極的にチャレンジしてほしいです。教員として、そのためのサポートを精一杯していきます。

早川 佳孝氏
Yoshitaka Hayakawa

  • 長岡工業高等専門学校 機械工学科 助教

早川 佳孝氏の写真

2015年3月 熊本高等専門学校 機械知能システム工学科 卒業
2017年3月 熊本高等専門学校 専攻科 生産システム工学専攻 修了
2022年9月 長岡技術科学大学 5年一貫制博士課程 技術科学イノベーション専攻 修了
2022年4月より現職

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