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大阪公立大高専の入試に「女子枠」が新設! カリキュラム、大学との連携、女子学生の活躍から、同校の教育スタイルを探る

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大阪公立大高専の入試に「女子枠」が新設! カリキュラム、大学との連携、女子学生の活躍から、同校の教育スタイルを探るのサムネイル画像

先日、大阪公立大高専は2027年度入学者選抜から一部入試制度を変更し、学校長推薦選抜に「女性エンジニア養成枠」を新設することを発表しました。

2027年4月には現在の大阪・寝屋川市から堺市にある大阪公立大学の中百舌鳥(読み:なかもず)キャンパスに移転することが決まっている大阪公立大高専。今回の入試制度変更の内容や、同校の特徴、大阪公立大学との連携、女子学生の活躍について、6名の教職員のみなさんにお話を伺いました。

入試制度変更の内容と、その目的

<インタビュイー>
・西岡 求 先生(エネルギー機械コース 教授、教務担当副校長)

―入試制度変更の主な内容について教えてください。

西岡先生:大きく3点あります。1つ目は学校長推薦選抜の募集人員の増加(80名→100名)と学力選抜の募集人員の減少(80名→60名)、2つ目は学校長推薦選抜にある従来の「小論文と面接による特別選抜枠」に加えて「女性エンジニア養成枠」(以降、女子枠)を新設すること、そして3つ目は学力選抜における出題教科の変更(5教科から社会を除いた4教科に削減)と調査書成績の比重見直し(約40%から31%に軽減)です。

入試制度変更の概要(2025年5月22日時点)
▲入試制度変更の概要(2025年5月22日時点)

―入試制度を変更するきっかけは何だったのでしょうか。

西岡先生:外部の方からご意見をいただく高専運営審議会で、本校の女子学生の割合が約15%と、国立高専の約24%(2024年度)に比べて低い状態が続いていることを指摘いただいたことです。「男女比のバランスが整った環境で育成しないと、今の社会に対応できる人材にならないのでは」という指摘も民間企業出身の委員の方からあり、女子学生の比率を上げる必要があると考えたのです。

また、コロナ禍を境に女子の理工系に対する人気が上がったこともあり、その流れを生かしたいとも考えました。

そして2年ほど前から、入試制度の変更を本格的に検討するようになりました。東京工業大学(現:東京科学大学)などで盛んに女子枠についての話が出ていた時期で、奈良高専さんも2019年度入試から先駆けて取り組んでいらっしゃいましたので、お話を伺いに行き、本校でも始めることにしたのです。

※東京科学大学は、2024年4月入学から総合型選抜および学校推薦型選抜で女子枠を新設。

―女子枠を新設することで、結果的に学校長推薦選抜の募集人員が増え、学力選抜の募集人員が減ることになりました。このように変更された理由は何ですか。

西岡先生:本校の学校長推薦選抜の受験倍率が約2倍前後と高いことを考慮し、本校を強く志望している中学生が合格しやすくなるよう、学校長推薦選抜の募集人員を増やす形をとりました。

しかし、総定員を増やすことはできませんので、学力選抜の募集人員をどうしても少なくせざるを得なかったのですが、出題教科から社会を除き受験生の受験勉強に対する負担を軽減するとともに、総合成績に占める調査書に基づく点数の比重を下げることで、内申が振るわなかった学生でも入試当日の学力でチャレンジできる可能性を拡げました。

―将来的に女性の割合をどの程度まで高めたいと考えていますか。

西岡先生:まずは国立高専と同じ約25%を目指しつつ、最終的には4〜5割程度まで増やして、女子枠をなくしても男女関係なく本校を志望してもらえる状態にできればと思っています。これから10年くらいで、それを達成させたいですね。

2025年度入学式の様子
▲2025年度入学式の様子

―今回の入試制度変更に伴い、中学校へはどのようなアプローチを予定されていますか。

西岡先生:女子枠では2年生の内申点も推薦基準の対象になっていますので、早めに中学校の先生方にご説明する必要があると考えています。通常の学校説明とは別に、今年の7月にはオンラインで中学校の先生方にご説明する場を設ける予定です。

―どのような方に大阪公立大高専に入学してほしいと考えていますか。

西岡先生:入試制度は変更になりますが、本校の求める人物像に変更はありません。女子枠を新設したことで、高専で工学系の学習に取り組む女子学生の比率が増えることを期待しています。

2022年度のカリキュラム改編で、大阪の産業界に適した人材を育成

<インタビュイー>
・金田 忠裕 先生(エレクトロニクスコース 教授、校長補佐)
・稗田 吉成 先生(一般科目系 教授、広報企画室長)
・西岡 求 先生(エネルギー機械コース 教授、教務担当副校長)

―大阪公立大高専のカリキュラムについて教えてください。

金田先生:本校は1年次に工学の各分野の基礎科目を共通に学んだ後、2年次から「エネルギー機械コース」「プロダクトデザインコース」「エレクトロニクスコース」「知能情報コース」という機電・情報系の4つの基盤コースに分かれ、工学の専門分野の知識・技術を深めています。

また、1年次から「専門共通科目」、2年次からの各専門コースの科目に加えて、3年次からは「応用専門分野科目」を学ぶことになります。

大阪公立大高専のコース設計のイメージ図
▲大阪公立大高専のコース設計のイメージ図

―応用専門分野科目とは何ですか。

西岡先生:大きく分けて「キャリア教育」「PBL」そして「周辺領域分野」の3つについて学ぶ科目です。

キャリア教育は3年次から実施しており、スタートアップやアントレプレナーシップのマインドを育成しています。「起業する」や「企業内で起業する(イントラプレナー)」などといった道筋を教えることで、卒業後だけでなく、就職・進学後のキャリア形成について考える教育を実施。「応用専門概論」の授業では、大阪公立大学の企業出身のURA(リサーチ・アドミニストレーター)の方や、本校卒業生で起業された方による講演をしています。

大阪公立大高専のキャリア教育の様子
▲大阪公立大高専のキャリア教育の様子

西岡先生:PBLでは、SDGsを題材にしたグループワークや、異なる専門分野の学生がグループを組み、企業が直面している課題の解決法を考え、第3者に魅力的にプレゼンテーションをする取組を行っています。

大阪公立大高専のPBLにて、グループ活動のガイダンスの様子
▲大阪公立大高専のPBLにて、グループ活動のガイダンスの様子

西岡先生:周辺領域分野については、学生が自分の専門分野に加えて就職に生かせる分野も学べるよう、「物質プロセス」「物質デザイン」「環境インフラ」「環境デザイン」の4分野を用意し、学生が選択できるようにしています。一部の大学で実施されている副専攻のようなものですね。そして、周辺領域分野の4分野と基盤の4コースを組み合わせることで、4×4=16通りの教育が存在することになります。

2022年度のカリキュラム改編によって化学系と土木・建築系を専門コースとしてはなくし、機電・情報系の4コースに集約したのですが、就職活動においては化学系企業も機電系人材を求めていますし、土木系企業も情報系人材を求めています。そういった状況を鑑みて用意したのが周辺領域分野となります。

―専門共通科目についても教えてください。

金田先生:全コース共通で学ぶ、ICT及びSDGs指向の科目です。社会を支える技術者・社会人としての基本的素養と人間性を養います。

1年生による総合工学実験実習にて、VRを体験している様子
▲1年生による総合工学実験実習にて、VRを体験している様子

金田先生:大阪の産業界には、IT分野に課題をもっている企業が多くいらっしゃいます。IT人材そのものもまだまだ少ないですし、企業によっては高専や理工系大学生の採用がうまくいかないので、文系学生を採用して、企業内で教育しているというお話も聞きます。そこで、カリキュラム改編によって、IT系の技術を全学生の基礎技術として身につけ、企業側のニーズと合致させることを目指したのです。

―DX教育にも力を入れているそうですね。

西岡先生:文部科学省のデジタル人材育成の一環として、本校の「DXマインドの気付き・動機づけから始める専門技術者の育成のプログラム」が2021年度(期間:2021~2023年度)に採択され、それ以降、カリキュラム改編と共にDX系の実験・実習の実践を行っています。

「DXマインドの気付き・動機づけ」というのは、DX化を進めるには専門分野・情報分野どちらかの知識や技術だけでは不十分であり、両者の融合が必要であるというマインドに気付くことを指します。

例えば、機械系の2年生による最初の実験・実習は、従来の手作業による機械加工を体験した後、3DCADからNC旋盤、デジタル計測まですべてコンピュータ上で行って製品をつくり、それを3Dスキャナで計測して設計図との誤差を確認する内容にしています。これによって、「ものづくりはほぼコンピュータ上で行われている」という現実を2年生の時点で体感できるようにしているのです。

総合課題学習での展示会の様子。学生が制作したシミュレーションゲームを展示
▲総合課題学習の展示会にて、学生が制作したシミュレーションゲームを体験している様子

―そのような教育プログラムもあって、大阪公立大高専の求人倍率は30~40倍と高い数値を記録しています。それ以外の要因としては、何があると考えていますか。

金田先生:本校では1997年頃のインターンシップ普及以前から、夏休みの期間を利用して夏季企業実習を実施していたことが挙げられます。インターンシップ受け入れ企業に就職するケースもあり、その後、卒業生が人事担当者と一緒に求人を紹介しに来校されるという流れが30年以上続いています。そういった長きにわたる歴史が、高い求人倍率に繋がっていると思います。

稗田先生:あと、本校では毎年12月に企業研究セミナーを2日間にわたって実施しています。80+80の計160社さまに参加いただいていまして、本校卒業生も積極的に関わってくださっています。このセミナーで企業さまと本校が接触し、企業訪問やインターンシップなどにつながっている点も、本校の特徴だと思います。

企業研究セミナーの様子
▲企業研究セミナーの様子

金田先生:就職先については、大企業だけでなく、大阪に数多くある中小企業へ就職するケースも多いです。例えば工具に特化した企業や高圧ガス容器の企業など、何かに特化した企業で専門分野を活かして働きたいと考える学生は、特に機械系の学生に多いと思います。ちなみに、本科卒業生の約6割が就職約4割が大学に編入学しています。

―人権教育についても積極的に実施していると伺っています。

稗田先生:本校では人権教育5年間計画「ふらっと高専」を定め、さまざまな視点から人権について考え、多様性を認め合える人材を育成しています。自他の持っている権利について学び、多様性が尊重される社会づくりに自ら参画し、労働や生活の場で生じる人権課題の解決に資する知識・スキル・態度を身につけるために、科目→講演会→ワークショップ・フィールドワーク→科目→講演会……を繰り返し、スパイラルアップしながら学んでいきます。

講演会を行う際は、まず事前学習として本校で作成した教材をベースに学び、講演後には気づきや感想をアウトプットしてもらっています。また、フィールドワークでは特定の地域に入って多様な方々と交流し、人権について学ぶ機会を設けています。学生からは「今まで気づかなかった視点を持てるようになった」「社会に出てからも考えていきたい」といったコメントが多く、良い学びになっていると思います。

人権教育でワークショップを実施している様子
▲人権教育でワークショップを実施している様子

大阪公立大学との連携・同一キャンパスによるシナジー効果

<インタビュイー>
・秋田 成司 先生(校長)
・山本 卓也 さん(公立大学法人大阪 高専事務部長)

―2027年度入学者選抜より入試制度が変更となりますが、2027年4月には大阪公立大学の中百舌鳥キャンパスへの移転も決定しています。高専と大学とのシナジー効果として、どのようなことが挙げられると考えていますか。

秋田先生:現在、大阪公立大学と高専で連携検討委員会を立ち上げていまして、本校本科生を対象とした大阪公立大学の新たな編入学制度(2025年度中に決定予定)のほか、高専・大学との連携科目の開設、研究室との交流などを検討中です。

高専・大学との連携科目の開設を検討している目的としては、大学側からの視点だと、PBLなどといった高専の特徴的な教育プログラムを副専攻的に活用することで、大学生全員にモノづくりを経験してもらえることが挙げられます。

また高専生にとっては、早い時期から大学の専門化・高度化された研究室に触れることができ、良い刺激になると思います。例えば、大阪公立大学のイノベーションアカデミー共創研究拠点(スマートエネルギー棟)の施設などを本校のバッテリープログラム(蓄電池人材育成の取組)の学生が利用することで、高度な専門技術を学ぶ機会を得ることができます。

大阪公立大学のイノベーションアカデミー共創研究拠点(スマートエネルギー棟)
▲大阪公立大学のイノベーションアカデミー共創研究拠点(スマートエネルギー棟)

秋田先生:私はこれまで大阪公立大学の教員を務めてきまして、今年4月に本校の校長に就任したばかりですが、高専生は起業意識の強い人が多い印象です。「アカデミックな知識を持った大学生」と「攻めた意識を持った高専生」が交わることで相乗効果が期待できると考えています。

―部活動の面ではいかがでしょうか。

山本さん:現在検討中ではありますが、実際の活動面においては、例えば水泳部での合同練習や、文化系の部活動での交流は可能ではないかと考えています。

秋田先生:また、大学には鳥人間コンテストに参加している学生団体や、小型人工衛星「まいど1号」の開発をきっかけに設立された、学生が中心となって超小型人工衛星・超小型ロケットなどの宇宙機を開発している「小型宇宙機システム研究センター(SSSRC)」などがあり、本校学生からもそういったモノづくり系のグループに参加したいという声が上がっているんです。そことの交流もうまくできればと考えています。

―施設面ではどのような刷新があるのでしょうか。

山本さん:まず、中百舌鳥キャンパスにある既存の2棟を改修し、高専専用の棟にする予定です。また、大学用とは別で、体育館やクラブ部室(吹奏楽部や現代音楽部などといった大きな音を出す部活動については防音設備が整ったクラブ部室)の新設も予定しています。部員数が多いろぼっと倶楽部は、先ほどの既存2棟とは別の棟をろぼっと倶楽部専用の棟に改修することを検討しています。

「高専ロボコン2024」で大阪公立大高専「銀火(ギンガ)」が優勝した瞬間
▲「高専ロボコン2024」で大阪公立大高専「銀火(ギンガ)」が優勝した瞬間
ろぼっと倶楽部のみなさん。2023年、2024年の2年連続で高専ロボコン優勝を果たしています
▲ろぼっと倶楽部のみなさん。2023年、2024年の2年連続で高専ロボコン優勝を果たしています

山本さん:そして図書館は、大学図書館と高専図書館を併存させつつ、大学図書館も高専生が利用できるようにしようと考えています。そのほかグラウンド・食堂・生協・ホールなどの大学施設・機能も共用の方向で進めています。

自ら道を切り開く力を——ROSEを通した女子学生のキャリア支援

<インタビュイー>
・中谷 敬子 先生(プロダクトデザインコース 教授、女性ライフ・キャリア支援センター 副センター長)

―大阪公立大高専には、学校公認の女子学生有志チーム「ROSE」があります。ROSEについて教えてください。

中谷先生:ROSEは「the Road Of Science & Engineering Explorers」の頭文字をとったもので、地域貢献を通して科学の魅力や楽しさを発信し、理工系分野における女性の活躍を促進することを目的に、2013年から活動しています。そして、女性ライフ・キャリア支援センターを基盤とした教職協働体制によってその活動を支援しています。

ROSEの設計方針には明確な目的があります。それは、将来社会に出て直面するアンコンシャス・バイアス(Unconscious Bias。無意識の思い込みや偏見)に気づき、女性技術者として自ら道を切り開いていく力を学生時代から備えておくことです。

そのためROSEでは、学生自身が課題を見つけ、リーダーとなってプロジェクトを立ち上げ、メンバーと協力しながら運営していくスタイルをとっています。地域連携テクノセンターと協力して小中学生に対する出前授業を実施したり、女性ライフ・キャリア支援センターと連携して女性経営者の講演会を開催したりしています。

▲ROSEの学生と中学生が語り合いながら進めるスマートハウス設計:Next Tech Leader公開講座の様子

中谷先生:最近ですと、今年の3月に開催した「―理工系女性と社会が共に創る未来― 次世代ともにワークライフシナジーを考えるシンポジウム」では、女性技術者や高専卒技術者も出席したパネルディスカッションにROSEの学生も参加しました。また、パネルディスカッション後には参加者40名を3つのグループに分けて分科会セッションを実施し、そのファシリテーターを教員ではなくROSEの学生が務めました。

さらに、今年の8月30日(土)には大阪・関西万博に参加し、モノづくりの楽しさを感じていただけるイベントを企画中です。

ROSEによる提案「ROSE ミライラボ」がキャタピラーSTEM賞 学生部門 奨励賞を受賞(2025年2月)。本提案は、SDGsを見据えたものづくりの視点から、学びの楽しさと挑戦力を重視した教育のあり方を示したものでした。前校長の東健司先生(前列中央)と記念撮影
▲ROSEによる提案「ROSE ミライラボ」がキャタピラーSTEM賞 学生部門 奨励賞を受賞(2025年2月)。本提案は、SDGsを見据えたものづくりの視点から、学びの楽しさと挑戦力を重視した教育のあり方を示したものでした。前校長の東健司先生(前列中央)と記念撮影

―女子学生はROSEの活動をどのように感じていますか。

中谷先生:「学年やコースを越えて、安心して話せる場がありがたい」という学校生活への充足感のほかにも、「自分の言葉で小学生に伝えることで、自信がついた」といった“自己成長の実感”、「社会とつながる体験ができたことで、進路への視野が広がった」といった“将来への意識の変化”、「メンバーの話を聞いて、自分の思ったことや考えたことを発表できるようになった」といった“主体的な学びへの意欲”が感じられる声をもらっています。

特に出前授業や、大阪公立大学の理系女子大学院生チーム「IRIS」との連携で実施している小学生や中高生向けの実験体験、企業とのHP製作などの実践活動を通じて、自己成長を実感している学生が多くいます。自らの興味を軸にプロジェクトを運営することで、キャリア意識の醸成につながっているのではないでしょうか。

堺市理科展の実験ブース準備のため、ROSEとIRISで予備実験を実施している様子
▲堺市理科展の実験ブース準備のため、ROSEとIRISで予備実験を実施している様子

中谷先生:また、教員自身が、組織人として、かつ、一人の働く女性として、ROSE活動の支援に取り組む様子を学生が見ることによって、真の意味での、実践的ロールモデルになっていると感じています。

―そもそも、女子学生はどのような理由でROSEに入っているのですか。

中谷先生:主に二つあります。一つは、女性の先輩とつながりたいという想い、もう一つは小中学生に工作教室などを通じて教えたいという想いです。

ROSEは12年前に、ある女子学生が「体験入学に来る中学生に対して、私たちも何かしたい」と前日に思い、会場の片隅で女子中学生相談コーナーを実施したことがきっかけで始まりました。現在では、ROSEの活動に参加した中学生が本校に入学してROSEに入るという好循環も生まれています。

循環の側面で言うと、卒業生との交流も活発で、2年前のROSE10周年の年にはROSE Homecoming Dayを開催し、大学院生や社会人になったOGが集まって、仕事の話から、結婚・子育てと仕事の両立まで本音で語り合いました。

2023年度のROSE Homecoming Dayにて、卒業生と在校生でパネルディスカッションを実施
▲2023年度のROSE Homecoming Dayにて、卒業生と在校生でパネルディスカッションを実施

―ROSEの活動を通して、“教職員側”の変化はありましたか。

中谷先生:ROSEの活動は、学生だけでなく、教職員や組織の成長にも寄与する「共育」の実践の場となっています。所属や職制を超えた教職協働の体制が構築され、学生支援が組織的に展開されるようになったほか、自身のキャリアや働き方を見直すきっかけや、現代の学びや社会との接点に対する理解力の向上などにつながっています。

私個人としては、多くの高専生が持っている「ある特性」によって変化することができたと思っています。その特性というのは、『目の前の事象をそのまま受け入れて、「次、どうするか」を自然に考えること』です。

子育て中の私が小さい子どもを高専に連れてきた際、学生たちは普通に子どもの世話をしてくれて、そのおかげでROSEと活動ができました。そのとき、高専教員である私も自分の大変さや困りごとを隠さず学生に見せていいんだと実感したのです。それからは学生との距離が縮まりました。私は学生に育ててもらったと思っています。

―ROSEの活動を通して、女子学生にはどのようなことを感じてほしいと考えていますか。

中谷先生:最近ROSEの学生たちに伝えようとしているのは「個人と組織の共生」です。学校という組織が学生に機会を提供していることを認識し、依存はせずとも尊重し合うことの大切さを伝えています。出前授業などといったROSEの取組の多くは「今、ここで、自分たちにできる社会貢献」を形にする実践の場であり、それがそのまま、個人と組織の共生という体験に繋がります。

これは将来社会に出たときの、会社や上司との関係にも生きる視点です。ROSEの学生たちには、理不尽なことがあっても怒って辞めるのではなく、自分たちの道を自分たちでつくっていく力やマインドを身につけてほしいと願っています。

○大阪公立大学工業高等専門学校 HP
https://www.ct.omu.ac.jp/

○大阪公立大学工業高等専門学校 本科入試について
https://www.ct.omu.ac.jp/admission/regular/

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岩野先生
ロボコンに魅せられて研究・開発へ。レスキューや月面掘削などのロボットを通じて、幸せな世界を
「ティーチング・ポートフォリオ」先駆け校としての取り組みと、地域貢献としての理科教育に尽力
大切なのは「双方向でのコミュニケーション」。学生の積極性を育てる、杉浦先生の授業方針とは。

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