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高専から北海道大学へ進学! 大学での研究を通して学んだことが、就職先でも生きている!!

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各高専をご卒業後、北海道大学工学部・情報エレクトロニクス学科に進学し、北海道大学大学院・情報科学研究科を修了された4名にお話を伺いました。高専での思い出や大学での研究、就職後に感じる高専や大学の良さなど、先輩方の軌跡と活躍に注目していきます。

北海道大学につながる高専での5年間

―皆さんが高専に入学された理由を教えてください。

阿部さん:僕は函館高専の出身になるのですが、実は高専にもともと入るつもりはなくて(笑) 公立高校に受かっていたんですけど、「大学進学するなら公立高校より高専がいいよ」と塾の先生に勧められたので、函館高専に決めました。

木澤さん:高専の就職率の良さに惹かれて、「卒業して就職したら親も喜ぶかな」というぐらいの気持ちで、函館高専を選びました。ちなみに僕は阿部くんの1つ上の先輩になるのですが、大学時代はお互い存在を知らなかったんです(笑)

肩を組んでピースサインをする根岸さん・木澤さん・阿部さん
▲飲み会にて(左から根岸さん、木澤さん、阿部さん)

榊さん:僕は八戸高専の出身です。中学時代から文系科目が全然ダメで(笑)、理系科目の成績が極端に良かったので、理系中心に学べる高専に魅力を感じましたね。また、就職や進学に強いことも伺っていたので、それも決め手になり、高専を選びました。

根岸さん:元々「技術者になりたい」と漠然と思っていて、飛行機の整備士を目指していたので、僕は前身が航空高専だった産技高専を選びました。オープンキャンパスにも参加して、面白そうだなと思い、即決しましたね!

夜、大学でジンギスカンパーティをしている4名の方
▲北海道大学でジンパ(ジンギスカンパーティー)(左から榊さん、根岸さん)

―高専に入学してよかったことや、高専での思い出を教えてください。

阿部さん:16歳から専門知識を学べたのは今でも生きています。授業で、いくつかのチームに分かれてゲームを製作したことがあるのですが、僕たちはアーケードゲームをつくりました。それが思い出に残っていますね。

ニュージーランドのホストファミリー3名と写真に写る阿部さん
▲高専の海外派遣プログラムでニュージーランドへ行かれた阿部さん。ホストファミリーのみなさんと一緒に

木澤さん:4年生の時に中学生向けの展示物をつくる機会があって、ピタゴラスイッチのようなものをつくりました。そこでモノづくりの楽しさだったり、チームで協力して手を動かす経験ができたりしたのがよかったです。

榊さん:僕は寮に5年間いたので、同級生とかなり仲良くなれたのは嬉しかったですね。寮祭というイベントがあって、その期間はもうお祭り騒ぎで(笑) ライブやゲーム大会が行われていました。僕も出店して参加していましたね。

旅館で浴衣姿でピースサインをする榊さん
▲高専の卒業旅行での榊さん

根岸さん:「自分の好きなことが何なのか」を突き詰められた5年間だったと思います。今、電気電子関係の仕事に就いているんですけど、その方向に行きたいことが分かってよかったです。あとは5年間一緒にいると仲良くなるので、その空気感も面白かったですね。

教室で天狗のお面を手にする根岸さん
▲高専の教室での根岸さん

将来から逆算して考え、北海道大学に進学

―皆さんが北海道大学を選んだきっかけを教えてください。

榊さん:もともと就職を考えていたので、高専で求人票を見ていました。そこで「医療機器メーカー」に興味が湧いたのですが、「もう少し生態系や医療系の知識を付けたい」と思い、就職から進学に切り替えたんです。北海道大学は、電気系をベースに医工学を学べるところに魅力を感じました。

根岸さん:4年生になっても「開発関係に就きたい」という気持ちは変わらなかったので、大学院に行く方が選択肢として広がるなと思ったんです。母が北海道出身ということもあり、親戚が多かったことと、推薦をいただけたので北海道大学に進学を決めました。

机の上に置かれた四角形の装置
▲根岸さんが高専の卒業研究で作成されていたEIT装置の一部

阿部さん:高専5年間で電気電子とモノづくりを学んだので、それを使って「人々の健康に貢献したい」と思いました。「医療機器メーカー」への就職を考えていたので、電気電子だけじゃなくて、人の体についても学びたいと思ったのが、北海道大学を選んだ理由です。

木澤さん:将来から逆算して考えた時に、高専卒の就職で「新しい技術の開発や研究」は狭き門だと感じていたので、大学院卒を必要資格として考えていました。視野を広げたかったので総合大学に進学を考えており、地元の北海道大学に決めました。

研究以外にも今につながる経験をたくさん積めた

―北海道大学でどのようなご研究をされたのですか?

榊さん:僕の研究は、レーザーとカメラを用いた「超音波治療装置出力の光学的評価」です。がん治療や美容に使われる強めの超音波にレーザーを当てて、音波によって曲げられたレーザーを画像から判断していました。自分から考えて、先生に提案してやってみるという経験ができたのは良かったですね。

根岸さん:心筋細胞に超音波で刺激を加えると拍動のリズムが変化するので、それを応用して、細胞が力を感じ取る仕組みの解明に取り組みました。顕微鏡を使ったり、細胞培養したり、これまでとは違う研究で、とてもわくわくしましたね! しかし、細胞生物学や解剖学の知識も必要となり、そのあたりはとても苦労しました。研究では、細胞への刺激を発生させる装置を自作したりと、高専での経験も生かせたと思います。

研究室で白衣を着て研究中の根岸さん
▲北海道大学にて、根岸さんの研究風景

木澤さん:大学では、材料科学向けのレーザ顕微鏡に関する研究を行いました。結晶材料の分子情報と結晶性を同時に分析・可視化できるような、新しい原理の顕微鏡を目指していました。ライバルになるような研究室が国内や海外にあり、第一線で活躍されている方と競い合っていくので、競争心を駆り立てられましたね。なかなかうまくいかなかったですけど(笑)

阿部さん:レーザーと顕微鏡を組み合わせて、細胞の組織を可視化する研究をしました。直属の先輩がいない中で、装置もほとんど出来上がっていない状態で、すべて自分で一から構築しました。PDCAサイクルを回して、試行錯誤しながらつくり上げていくのはやりがいがありましたね!

スーツを着て、学位記を持って写真に写る阿部さんと根岸さん
▲北海道大学の学部卒業式にて、阿部さん(写真左)と根岸さん

―みなさん別の研究室のご出身なんですか?

木澤さん:同じ研究室なんですが、ご指導いただいた先生が違うんです。榊さんと根岸さんは、人間情報工学研究室の工藤准教授、僕と阿部くんは同じ研究室の橋本教授にご指導いただきました。橋本教授は、前任の教授と入れ替わりで着任されていて、僕が1期生だったんですよ。

▲研究室のお写真(前列左から1番目が木澤さん、後列左より1番目が橋本守先生、2番目が榊さん、3番目が工藤信樹先生、4番目が加藤祐次先生、5番目が現在、石川高専で教鞭をとる任田崇吾先生、6番目が根岸さん)

―北海道大学、そしてそのまま大学院へ進学してよかったことを教えてください。

根岸さん:しっかりとしたスケジュールを立てて進めることを望まれる先生でしたので、各自スケジュール管理が上手くなっていくんですよね。次の週、次の月何をするかまで、ちゃんと計画を立てていました。またコロナ前だったので、飲み会も多い研究室だったんです(笑) 遊びも多かったけど、研究はしっかり成果を出すことがみんな上手かったですね。

榊さん:生物系の授業が増えたので、専門分野にも新鮮味を感じました。また、学会発表で、実際に病院で働いているお医者さんや技師さんの前で発表する機会も増えたんです。エンジニアに伝える報告では、原理や過程を重視することが多いんですけど、お医者さんには「この研究ができると、最終的にこんなメリットがありますよ」という出口を意識して発表していましたね。

榊さんと、学位記を持って写真に写る高専OBの皆さま
▲榊さんと高専OBの先輩のみなさんとで記念写真(一番左は石川高専の任田崇吾先生

木澤さん:勉強以外にも、サークルやバイト、研究室での人間関係、趣味など広い意味での視野を拡げることができました。また、準備に対する意識が変わりましたね。中途半端な状態でゼミに参加すると、説明にアラが出て指摘されてしまうので(笑) とことん調べて準備をしたうえで人に説明することがマナーだと学びました。

ポスターを手で示す木澤さん
▲ポスター形式で研究発表されている木澤さん

阿部さん:実は北海道大学に入って初めて「勉強が楽しい!」と思うようになりました。高専時代は、テストで点を取ることに必死で、本質が見えていなくて(笑) 大学では、学問がより理解でき、身に付いているという実感がありました。あとは、全国各地から人が集まるので、出会いも新鮮でしたね!

高専や北海道大学での学びが、そのまま仕事で役立っている

―就職してから感じる、高専や北海道大学の良さを教えてください。

木澤さん:現在は、日立製作所で電子顕微鏡の研究を行っています。電子顕微鏡を半導体の検査や計測向けに応用する仕事ですね。大学での研究領域の延長戦になるので、専門性は大いに生かされています。電子顕微鏡の制御に関しては、高専での知識も使っています。全部今に繋がっていて、「あの時の勉強は無駄じゃなかったな」と思いながら、仕事をしていますね!

阿部さん:僕は大研医器にて、電気回路の設計開発をやっていますね。高専でずっと学んできた、回路や電気の知識をフル活用しています。回路設計だけではなく、1つの製品の開発に全体的に携われているので、製品の仕組みや評価方法に関しては、大学で身に付けた研究が生かされていますね!

白い車の前でピースサインをする阿部さん
▲現在はドライブが趣味の阿部さん

根岸さん:今の仕事は、キヤノンメディカルシステムズで、X線CTの検出器のデータの処理を担当する基盤の開発をやっています。電気電子の範囲なので、高専で学んだことがベースになっていますね! 医療機器という広いくくりで考えれば、大学で医療機器関係を学んだので、その知識も役に立っていますよ。

榊さん:スマートフォン向けのイメージセンサーの設計を、ソニーセミコンダクタソリューションズで行っています。半導体がメインなので、知識としては高専時代に学んだ分野が近いですね。出力された画像を評価する点や、プロジェクトメンバーに伝えるプレゼンは大学院での経験も生かされていますね。

研修ポスターを指しながら仕事をされる榊さん
▲社会人1年目、研修ポスター発表をされる榊さん

高専在学中に「将来を考えた行動」をすることが大切

―最後に後輩にメッセージをお願いします。

阿部さん:推薦で大学進学を考えているのであれば、高専での成績が重要になると思います。ただ、勉強ばかりじゃなくて遊ぶことも大事です(笑) 早い段階から進学認識があるのであれば、成績は取りつつ、自分の将来設計ができているといいですね!

木澤さん:高専生って自分が思っている以上に、外からの評価が高いんですよね。なので、誰かにアピールできるような技術を身に付けておくと、いいことがありますよ! あとは小手先のスキルだけでなく、広い視野を持って、原理原則になるような勉強をしてほしいですね。

学位記と賞状を持ち写真に写る木澤さん
▲修士課程での研究成果が顕彰され、学院長賞を授与された木澤さん

根岸さん:高専では1年間しか研究をやらないですけど、その研究が結構楽しいなって思うならば、大学進学はアリだと思います。とはいっても、大学進学を選ぶには、いい成績を取っておかないといけません。矛盾していますけど、研究の楽しさを知る前に、頑張っとかなきゃいけないですよね(笑) 大学行く気持ちがゼロじゃないのであれば、自分の選択肢を増やすために、高専での勉強を頑張りましょう。

榊さん:高卒だと、大学で工学を勉強し始めてから2年半ぐらいで、自分の道を決めなきゃいけないですよね。対して高専は5年間専門知識を学んだうえで、最終的に自分がやりたい道を選べます。大学は、絶対数として高専よりも数が多いですし、規模も大きいので、より自分のやりたいことに合致したところを選びやすくなりますよ。

―研究に関すること以外で、北海道大学ならではのアピールポイントはありますか?

一同:(笑)

木澤さん:札幌駅に近いところ……、あと校内でジンギスカンができます(笑)

根岸さん:確かに、校内でBBQやジンギスカンをしていました(笑) 今はコロナなので分からないですが……、それは他の大学にはないポイントかもしれないですね!

榊 飛翔
Tsubasa Sakaki

  • ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社

榊 飛翔氏の写真

2014年 八戸高等専門学校 電気情報工学科 卒業
2016年 北海道大学 工学部 情報エレクトロニクス学科 生体情報コース 卒業
2018年 北海道大学大学院 情報科学研究科 生命人間情報科学専攻 修士課程 修了
2018年~ ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社

根岸 聖太
Shota Negishi

  • キヤノンメディカルシステムズ株式会社

根岸 聖太氏の写真

2015年 都立産業技術高等専門学校 医療福祉工学コース 卒業
2017年 北海道大学 工学部 情報エレクトロニクス学科 生体情報コース 卒業
2019年 北海道大学大学院 情報科学研究科 生命人間情報科学専攻 修士課程 修了
2019年~ キヤノンメディカルシステムズ株式会社

木澤 駿
Shun Kizawa

  • 株式会社日立製作所

木澤 駿氏の写真

2016年 函館工業高等専門学校 電気電子工学科 卒業
2018年 北海道大学 工学部 情報エレクトロニクス学科 生体情報コース 卒業
2020年 北海道大学大学院 情報科学研究科 生命人間情報科学専攻 修士課程 修了
2020年~ 株式会社日立製作所

阿部 隆爾
Ryuji Abe

  • 大研医器株式会社

阿部 隆爾氏の写真

2017年 函館工業高等専門学校 電気電子工学科 卒業
2019年 北海道大学 工学部 情報エレクトロニクス学科 生体情報コース 卒業
2021年 北海道大学大学院 情報科学院 生体情報工学コース 修士課程 修了
2021年~ 大研医器株式会社

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