インタビュー

高専が開発する人工衛星「KOSEN-1」など、 宇宙開発に携わる人材育成に熱意を燃やす

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次世代エネルギーとして注目されている核融合発電の研究やプラズマを用いた宇宙用エンジンの開発研究など、宇宙開発の分野でも活躍されている明石高専電気情報工学科の梶村好宏教授。2021年に打ち上げが予定されている、高専生による人工衛星「KOSEN-1」の開発も指導する先生の研究や教育のビジョンについて伺いました。

企業・大学など、さまざまな縁が繋げた研究の道

―研究者を目指したきっかけは?

高校生のときに物理クラブに入り、エネルギー問題について知ったんです。石油資源の枯渇といったエネルギー問題が将来危機的な状況に直面するということが書かれた本を読み、新しいエネルギーをつくっていかなきゃいけないんだと衝撃を受けたのがきっかけでした。新しいエネルギーと呼ばれるもののなかでも核融合の分野に興味を持ち、大学では核融合関連の研究室に入りました。レーザー核融合といって、レーザーを当てて物質を融合させ、変化する物質の過程を数値解析するという研究で博士論文をまとめました。
実は、物質が変化する過程というのはパルサーといって、宇宙の星の近辺で起こっていることと類似しているんです。なので、そうした数値計算がレーザー核融合だけじゃなく、宇宙の現象にも応用できるということで、宇宙磁場の起源となるメカニズムの実証にも取り組みました。アメリカの研究所に留学していた時には、数値計算で、宇宙で観測された現象を再現し、そのメカニズムを理解する研究に携わりました。共同研究を行ったPeter教授と3か月で2本の論文を仕上げたことは、ハードでしたが、今となっては良い思い出です。

LosAlamos National Laboratory 留学中に撮影された2ショット写真。木々が生える山を背景に、左側でほほ笑む梶村先生。
LosAlamos National Laboratory 留学中のカット

―その後、民間企業へ一度就職されたあと、大学で研究者の道に進まれましたね。

博士課程を修了後は、数値解析の分野において日本で最もシェアをとっている会社に5年ほど勤めていました。ただ自分の研究成果を論文として出していくほうがやりがいを感じるなと思いはじめたんです。
ちょうどそのときに「九州大学 核融合ロケット研究者募集」の公募を見つけ、まさに自分がやりたいことだったので、応募するしかない!と思いましたね(笑)。九州大学では約4年、レーザー核融合のロケット研究をやりながら、次世代の宇宙用エンジン・磁気プラズマセイルの研究もはじめました。その後、京都大学の先生に国家予算のプロジェクトを一緒にやりませんかと声をかけていただいたことをきっかけに、京都大学の研究所へ赴任。その時の共同研究者のひとりにJAXAの方がおり、磁気プラズマセイルの研究のために呼んでもらったのが、その後JAXAの研究員になった経緯になります。

実験風景。中央の同型の3つの機器から紫のライトが発光されている。
実験の様子

ありがたいことに、さまざまなご縁があって研究を続けられているんだなと改めて実感しています。
現在明石高専では、基礎として核融合のエネルギー開発を進め、その応用として核融合エネルギーを使った宇宙用ロケットの研究を進めています。

高専生による人工衛星の開発

―他の高専とともに研究開発を進められている「KOSEN-1」について教えてください。

高知高専の今井一雅先生が発起人となり、「高専スペース連携」という9つの高専が集まったチームを発足したのがはじまりです。人工衛星を打ち上げる人材を高専から輩出しようと、文部科学省の「宇宙人材育成プログラム」の教育支援を受けた取り組みで、チーム発足から今年で7年目になります。

高専スペース連携での活動のようす。広い空き地で上空に向かって飛ぶ小型ロケットの行方を見守る人々。
高専スペース連携での活動

発起人である今井先生は木星の研究をされており、木星から発せられる電波を観測して研究をされています。宇宙に行けばより詳しく電波を観測できるので、その観測機を高専生がつくる衛星に載せて打ち上げようと提案して採択されたのが、「KOSEN-1」です。
衛星の設計は高専ごとに担当が分けられ、明石高専は衛星の姿勢を制御する装置を担当。そのほか、高知高専は木星電波を観測する観測機の設計・電源の担当・通信の担当など、それぞれ分担し、衛星を製作。総勢40~50名の学生が携わっています。
2021年に打ち上げが決まっているJAXAのイプシロンロケットの相乗り衛星に採択されているので、製作のスケジュールも細かく刻まれているんです。10月末までにはエンジニアリングモデルの提出、来年の2月には実際のフライトモデルの提出、その間に振動試験や衝撃の試験など、忙しく動いていますよ(笑)。今井先生を中心に、学生にも参加してもらう形で毎週火曜日にオンラインでミーティングを行い、作業の足並みを揃えています。

未来の宇宙開発を支える人材育成とは

―「高専スペース連携」の取り組みをみて、宇宙開発に携わりたいという学生も増えてきているのでは?

ホームページに「高専スペース連携」の活動報告などを載せるようになってから、毎年宇宙開発に携わりたいという学生が入学してくるようになりました。3~4年くらい前から増え、その学生たちが部活をつくりたいといって宇宙工学研究部というのを立ち上げてくれたんです。私は顧問をやらせてもらっているんですが、現在40名くらいの部員がいますよ。
中学生が進学先を考える際、部活動ってとても大きな要素になると思うんです。中学で続けていたことを進学先でも続けたいと思ったときに、そうした環境が整っていないと選択肢から外れてしまう。だから高専としても部活の環境を整えるようにしています。

―ほかにも、地域や小中学生向けに宇宙教育を行なっているそうですね。

明石高専ではもともと、中学生向けにロケットをつくって打ち上げる講座を、毎年7月に開催しています。1回15名程の講座なのですが興味のある子が多く、毎回50名くらいの応募が来るんです。なのでこうした機会を増やすため、地域の子供会などから依頼を受けてロケット製作などの講座を開催しています。また淡路島にある明石海峡公園では、毎年2月頃に保護者の方も一緒に参加できる小学生向けのロケット製作と打ち上げ講座も行っていますよ。

高専生を前に講座を行う梶村先生。
スクリーンには「モデルロケット講座」のスライド。
高専で開催されている講座のカット

熱意が人と心を動かす

―今後の研究と、学生との向き合い方について教えてください。

私は中学時代の陸上部顧問の先生から「継続は力なり」という言葉を聞き、今でも胸に刻んでいます。核融合の研究も、高校時代に興味を持ってから現在まで続けているという継続の力は大きいです。新しいエネルギーをつくりたいという強い想いを持ち続け、これからも研究を続けていきたいと思っています。
また学生は、先生がどれほど熱意を持って研究に取り組んでいるのかよく見ています。なので、その姿勢をみせる意味でも、楽しく熱意を持って研究することを意識しています。またそうした環境をつくり、一緒に取り組み、達成感を味わうことで自信がつくと思うんです。自信がつけば、また次に挑戦できるようになるので、そうした有意義な5年間にしてほしい。そのために教員は部活や研究の場を提供し、最先端の研究をしておく必要があるんだと思います。どういう研究がいま求められているのかを知り、研究のコミュニティーに出て、学生が活躍出来る場の情報を得ることが大切。どの学生も、研究をしながら変化を続け、自分の進路を決めて進んでいるので、将来が楽しみですね。

梶村 好宏
Yoshihiro Kajimura

  • 明石工業高等専門学校 電気情報工学科 教授

2000年 富山大学大学院 理工学研究エネルギー科学専攻修了、株式会社シーディー・アダプコ・ジャパン 入社。
2004年 九州大学 総合理工学研究院 エネルギー理工学部門 講師。
2008年 京都大学 生存圏研究所 生存圏開発創成研究系 産学官連携 講師。
2010年 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 招聘研究員。
2012年 明石工業高等専門学校 電気情報工学科 講師。2014年 同准教授。2017年 同教授。現イノベーションオフィス長。

梶村 好宏氏の写真