インタビュー

“8ビットパソコン”が人生を変えた!夢をかなえた今、伝え続けている「情報セキュリティの大切さ」

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普通科の高校を卒業後、大学・大学院では数式処理システムの研究をされていた白石啓一先生。そこからなぜ高専教員の道を選んだのか、香川高専に赴任された経緯、またインターネットが発達しているこの時代だからこそ伝えたい「情報セキュリティの大切さ」について、お話を伺いました。

幼少期から「コンピューターの仕事をする」と決めていた

-小さい頃、先生はどんなお子さんだったんですか?

にこやかな表情の白石先生
香川高専 白石教員室

小学生の頃に“8ビットパソコン”が世の中に出て、雑誌などで「BASICプログラム」が取り上げられ、当時すごく流行ったんですね。私もその流行に乗ってパソコンを買ってもらい、小中学生のときに遊んでいたんですけど、その頃から「コンピューターに関わる仕事をしたい」と思っていました。

進路を決めるときに、「高専に行くか、工業高校に行くか、普通科高校に行くか」ですごく迷ったんですけど、当時は決めきれず、結局普通科の高校に行ったんです。高校のときには覚悟が決まったので、「大学では工学部に入って、コンピューターに関わる仕事をする」と心に決めていました。正直、「あの時、高専を選んでいたら」と思う気持ちはありますね。

-高専教員の道に進まれたきっかけを教えて下さい。

大学・大学院と「数式処理システム」に関して研究をしていました。「Mathematica(マセマティカ)」や「Maple(メイプル)」など、有名な数式処理システムはいくつかあるのですが、富士通研究所が開発したRisa/Asir(リサ/アジール)を使っていました。通常コンピューターが数値計算をするときに扱うのは、整数や小数なんですね。数式処理システムだと、「x²+2x+1」のような多項式や三角関数などの関数をそのままコンピューター上で計算できるようになるんです。

当時、進路については具体的に考えておらず、「どこかの企業に就職かな」と思っていたのですが、博士前期課程のときに、詫間電波高専へ就職した大学の先輩から「高専の教員募集がある」とお声がけいただいて。研究はすごく面白かったし、この分野で研究活動を続けたかったので、高専の教員の道を目指しました。とてもワクワクしたのを覚えていますね。

その後、教授に相談して、大学院の博士後期課程へ進み、途中から社会人学生として高専の助手をすることになりました。自分と大して年も変わらない高専の学生たちは、「就職先や進路先で、こんなことがしたい」と自分の考えをしっかり人に話すことが出来ていて、「大人だな」と感じた記憶がありますね。

「技術者なくして、インターネットは維持できない」の真意

-白石先生はその後、東京高専に行かれたんですね。

今より若い頃の白石先生
東京高専にて

東京高専に行く少し前に「高専機構」が出来て、全国の教員の交流を目的として、2年をめどにした異動の制度ができたんですね。各校から「この部分を強化したい」とプロジェクトリストが出るのですが、自分が対応できて、かつ興味のある分野に応募しました。

当時は「eラーニング」が話題になった時期で、私も詫間電波高専で授業に取り入れたいと取り組んでいましたので、同じくeラーニングのプロジェクトを出していた東京高専に異動が決まりました。

東京高専では主に、英語教材のeラーニングの研究活動として、先生方と話し合いながら調査を進めていきました。スケジュールの関係で1年しか異動交流が出来なかったのですが、授業の見学をさせてもらったり、ICTの技術に関しての問い合わせ対応をしたり、プロジェクトの一員として邁進した日々でしたね。

-現在の先生の取り組みを教えて下さい。

先生は逆光でほとんど見えないが、背景にアンテナが見える
香川高専 研究室より。白石氏の右に、電波塔2基、船舶用レーダー(右側電波塔下部)、携帯電話会社の8エレメントアンテナ、太陽電池パネルが見える。天気が良ければ、瀬戸大橋が見える。

現在は、香川高専(旧:詫間電波高専と旧:高松高専が統合)でコンピュータネットワーク、情報セキュリティの授業などを受け持っていて、ネットワークシミュレータを取り入れています。インターネットの中に物理的にネットワークを構成していくのですが、ルーターをきちんと設定しないとネットワークが正常に動かなくなるんです。

概要をアイコンで表した図
情報セキュリティの概要(右側の管理者がネットワーク機器を設定・監視し、左側のクラッカーからの攻撃を防御している。OSA Icon Library 13.05のアイコンを使用)

インターネット上ではたくさんのコンピューターがつながっているため、ルーターをきちんと設定して通信を振り分けないと、正しいコンピューターにデータが送信されず大変なことになります。

家庭用ルーターは線が2本なのでさほど難しくないのですが、企業用となれば線が3本以上になり設定も難しくなります。「ネットワークの技術者なくして、インターネットは維持できない」ので、このあたりの知識や技術を学生にはしっかりと教えています。

またセキュリティ関係でいえば、情報セキュリティ上で攻撃シミュレーションができるデモソフトを使いながら、学生に授業したりもします。脆弱性を放置していると、防げない攻撃もあるので、セキュリティを守る上では毎月コンピューターをアップデートしていくことがとても大切です。攻撃への対処なども含めて日々学生には伝えていますね。

大好評の「チーム・ドリームランド」とは

-白石先生は公開講座も担当されているのですね。

和室にテーブルの上で工作する様子。たくさんの子どもたちに学生が教えている
小豆島でのチーム・ドリームランドの活動写真(低学年向け紙工作)

15年ほど前から学生主体の「チーム・ドリームランド」として、小学生に対して工作教室を開催しています。低学年には紙工作、高学年には「はんだ付け」などを使った電子工作を学生中心にアイディアを出し合いながら行っています。

顧問になったのはここ7年のことで、「光を追いかけるロボット」や「針金で作るイライラ棒」などを制作して、完成後はゲーム大会をして盛り上がっています。

中学校の技術で行う電子工作自体が減っているらしく、毎回ご好評いただいているのですが、最近は新型コロナウイルス感染症の影響で開催ができていないのが残念です。「チーム・ドリームランド」として小豆島にも出向き、工作教室もしました。すごく喜ばれたので、また再開したいですね。

教室で、高学年生が電子工作をしているのを、学生が見守り手伝っている様子
小豆島でのチーム・ドリームランドの活動写真(高学年向け電子工作)

-先生の今後の目標と、最後に学生へのメッセージをお願いします。

pc上でのデモンストレーションの様子
ネットワークシミュレーターIMUNESを使ったSmurf攻撃(DRDoS攻撃)のデモ

今後もネットワークシミュレーターと情報セキュリティ関係の研究を続けたいと思っています。ソフトウェアの脆弱性を見つけることはなかなか大変ですし、それを仕事にしている方もたくさんいらっしゃるので、私は教員として情報を集めながら共有して、学生たちにセキュリティの大切さを教育していきたいですね。

私自身、進路選択の時に迷った経験があるからこそ言えるのですが、工業系の学校に行きたいのであれば、高専はすごくおすすめですよ。やっぱり工学部を卒業するのと、高専を卒業するのとでは、就職先の職種が変わったりしますので、「モノを作って、社会を豊かにしていく」ということに興味があれば、とても楽しいと思います。

高専を目指した時、そこにはきっとなにか希望があったと思いますので、在学生にはそれを見失わずにしっかりと勉強してほしいですね。悩むこともあるかと思いますが、後悔のないよう進んでいってもらえたらと思います。

白石 啓一
Keiichi Shiraishi

  • 香川高等専門学校 通信ネットワーク工学科 准教授

1996年 愛媛大学工学部情報工学科 卒業
1998年 愛媛大学大学院理工学研究科 博士前期課程 情報工学専攻 修了
2002年 愛媛大学大学院理工学研究科 博士後期課程 システム工学専攻 修了
1999年~2006年 詫間電波工業高等専門学校 電子制御工学科 助手
2006年~2007年 東京工業高等専門学校 電子工学科 講師
2007年~2009年 詫間電波工業高等専門学校 電子制御工学科 講師
2009年~2016年 香川高等専門学校 通信ネットワーク工学科 講師
2016年より現職。

白石 啓一氏の写真

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