高専や大学で学ぶ学生たちの挑戦を、経済的な支援だけでなく、人との出会いや交流を通じても後押しする。そんな日本高専・大学支援財団による「2026年度交流会」が2026年9月4日(金)、福岡市中央区の天神住友生命FJビジネスセンターにて開催されました。
会場に集まったのは、全国の高専・大学で学ぶ財団生をはじめ、財団卒業生、財団役員、そして日頃から奨学金事業を支援する財団関係者の方々です。オンラインで参加した学生も交え、研究や進路、仕事、将来の夢について世代や所属を越えて語り合いました。そんな当日の様子をお届けします。
2026年度から支援対象を拡大。新たに25名の財団生を採用
日本高専・大学支援財団では、高専生・大学生を対象に、返済不要の奨学金による支援を行っています。2026年度からは、より多くの学生が応募できるよう対象学年を拡大し、募集も年1回から春・秋の2回へ変更されました。
春募集では、大学3・4年生と高専専攻科1・2年生を対象に募集を実施。大学生117名、高専生132名、合わせて249名から応募があり、選考を経て大学生10名、高専生15名の計25名が新たな財団生として採用されました。
これにより、在籍する財団生は70名となっています。さらに秋には、大学1・2年生、高専本科4・5年生を対象とした募集があります。

交流会の冒頭では、都城高専の校長でもある財団の田村隆弘代表理事が、財団生に向けてメッセージを送りました。
現在、財団生には月額2万5,000円の奨学金が給付されています。田村代表理事が財団生たちに考えてほしいと語ったのは、その金額そのものだけではなく、奨学金によって生まれる「時間」についてでした。
アルバイトで2万5,000円を得るためには、当然ながら相応の時間と労力が必要です。その時間を学習や研究、自分自身の成長に充ててほしい。そこには、未来を担う学生に力をつけてほしいという財団の思いが込められていると話します。
そしていつか社会に出たときには、今度は自分たちが若い世代を支援する側になってほしいとも呼びかけました。

続いて、財団生を代表してあいさつを行った久留米高専 専攻科2年の園田優花さんは、前年の交流会を振り返り、先輩から大学院入試や資格試験について聞いたり、企業の方と仕事や研究について話をしたりすることができたと話します。
大学や高専の中だけではなかなか出会えない人たちと話せることも、この交流会の大きな魅力です。今年は自身も大学院入試を経験したことから、「今度は自分から提供できる話もある」と語り、参加者に積極的な交流を呼びかけました。

また、今年度から新たに財団生となった学生2名からも、自身の研究や将来について紹介がありました。
大分大学で物理学を学ぶ3年生の並木泰成さんは、物質の性質を明らかにする物性物理学に関心を持ち、将来はシミュレーションなどを活用して新素材開発に貢献する研究者を目指しています。大学院進学や海外での研究も見据え、奨学金を学習や研究のために役立てたいと語りました。

もう1人、木更津高専 専攻科2年の髙宮青空さんは、航空機や人工衛星によって地球環境を観測するリモートセンシングを研究しています。
大学院受験と研究を並行する中、アルバイトに十分な時間を割くことが難しい状況にあったという髙宮さん。奨学金によって経済面での不安が軽減され、その分を研究や勉強に使えるようになったと話します。さらに、「将来は自分自身も、次の世代の挑戦を支えられる人になりたい」と締めくくりました。

高専卒の先輩から財団生へ。専門だけに自分を縛らない大切さ
次に、財団関係者による講演が行われました。この日の講演を担当したのは、株式会社IHI原動機 代表取締役社長の保坂知洋氏です。

鈴鹿高専出身という経歴を持つ保坂氏。卒業後、1991年にIHIへ入社し、船舶用の大型エンジンを扱う技術者としてキャリアをスタート。その後は特殊船の建造や航空機用ジェットエンジンの整備など、IHIグループのさまざまな事業領域を経験してきました。現在はIHI原動機で代表取締役社長として経営を担っています。
そんな自身の歩みを振り返りながら、財団生に伝えたのが、「今取り組んでいる専門にはとことん向き合いながらも、将来の選択肢をその専門だけに限定しないでほしい」というメッセージでした。
企業では、それぞれ異なる専門性を持つ人がつながることで、新たな価値が生まれることがあります。保坂氏自身も、複数の事業領域を経験する中で生まれた多くの人とのつながりが、現在の自分の強みになっていると語りました。
また、年齢や立場の異なる人たちと接する力の原点として、高専で過ごした5年間にも言及し、専門知識だけではない、高専で身につけた力が社会に出てからも生きていることを、財団生たちへ伝えました。
「いつか自分の手でロケットを」。財団生が描く未来
続く財団生の取組紹介では、名古屋大学 工学部3年の吉田有希さんが登壇しました。
吉田さんの原点は、中学生のときに本で見たロケットだといいます。「巨大な鉄の塊がどうして宇宙まで飛んでいけるのか」という疑問から、いつか自分でロケットをつくりたいと思うようになりました。
そこで、早い段階から機械工学を学ぶため高専へ進学。材料、熱、流体、製図などを学び、卒業研究では垂直軸型風力発電の効率改善に挑戦しました。

高専4年時にはJALエンジニアリングでインターンシップを経験。本物の航空機エンジンを目の前にしたことで、それまで漠然としていた「ロケットをつくりたい」という思いが、「ロケットエンジンや推進システムを研究したい」という具体的な目標へ変わったといいます。
その後、現在の名古屋大学へ編入。航空宇宙分野を専門的に学びながら、国際交流にも積極的に参加し、異なる文化や価値観を持つ人と協働するための力も磨いています。
将来の夢として「世界中の誰もが宇宙へ行ける時代を切り開く次世代ロケットの開発」を掲げ、今後は大学院進学や海外留学を経て、ロケットエンジンの研究・開発に携わり、世界の宇宙開発の第一線で活躍する技術者・研究者になることを目指していると語りました。

一口に「財団生」といっても、その研究分野も、描いている将来もさまざまです。物性物理学からリモートセンシング、航空宇宙工学まで、それぞれが自分の興味を掘り下げ、その先にある未来を真剣に考えていました。
学校でも会社説明会でもないからこそ、生まれる出会い
講演や発表の後は、財団生と財団関係者によるグループトークが行われました。
10分ごとにグループを替えながら自己紹介や意見交換を行い、進学や就職について社会人に相談する学生、研究内容を説明する学生、高専時代の経験を語る卒業生など、会場のあちこちで会話が続きました。

グループトークの後には、西部電気建設株式会社の取締役である東野清友氏による乾杯のあいさつが行われ、懇親会がスタート。東野氏は、この日の出会いが今後のよいつながりになることを願い、「皆様の明るい未来と、本日のご縁に乾杯」と呼びかけました。
その後は、お菓子やジュースを片手に、参加者同士が自由に歓談していました。グループトークでは話しきれなかった話題についてさらに会話を深める姿も見られ、会場のいたるところで交流の輪が広がっていました。

閉会の挨拶を務めたのは、株式会社ワンキャリア 代表取締役社長の宮下尚之氏です。
宮下氏は、企業経営を通じて得た資金を若い世代の教育支援へ還元してきた一人です。若い人たちが未来をつくっていく姿に触れたからこそ、支援を続けていると話し、財団生たちに「技術を使って資本を生み出し、それを次の技術に回してほしい」と期待を寄せました。

支援を受けて学んだ学生が、社会へ出て誰かを支える存在になり、その支援を受けた次の世代がまた新しい挑戦をしていく。奨学金を入り口に、そんな循環をつくろうとしている日本高専・大学支援財団。
今回の交流会は、財団生にとって経済的な支援の先にいる「応援してくれる人」の存在を実感するとともに、自分より少し先を歩く先輩たちの生き方に触れる機会となりました。また、支援する側にとっても、財団生たちがどのようなことを学び、何を夢見ているのかを直接知る時間となりました。
ここで生まれたつながりが、いつか新しい研究や仕事、そして次の世代への支援へとつながっていくことを期待したいです。

◇
◎イベント情報
【公益財団法人日本高専・大学支援財団 2026年度交流会】
開催日:2026年9月4日(金)
場所:天神住友生命FJビジネスセンター 2F カフェラウンジ
福岡県福岡市中央区天神2丁目8番35号
主催:公益財団法人日本高専・大学支援財団
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