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高専からJAXAへ。追い続けた宇宙の夢を、次世代の子どもたちへつないでいく

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宇部高専から国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)へ入社し、ロケットの打ち上げを地上システムの開発や運用などの面から支えている浅村岳さん。宇宙へ興味を持ったきっかけや現在の仕事内容、高専時代の思い出などを伺いました。

はじまりは天文の図鑑だった

―宇宙へ興味を持ったきっかけを教えてください。

幼い頃からロケットが好き。実家の裏にある広い公園で、父と一緒に水ロケットを飛ばした。

4~5歳の頃、星空好きの祖母が私に図鑑をプレゼントしてくれました。そこに描かれていた、星空に向かっていくロケットや人工衛星の絵に心惹かれ、宇宙に興味を持ち始めました。そして、小学校2年生のときに『アポロ13』というトム・ハンクスさん主演の映画を観てからは、ロケットや宇宙飛行士の活動を地上から支援する管制官に憧れを抱くようになりました。

私は、どちらかというと表舞台に立つより、裏方の仕事をするのが好きでして、「縁の下の力持ちになりたい」と幼いころから思っていました。だから、宇宙飛行士になることにはあまり興味がなくて(笑)。宇宙に向かっていくロケットに関わりたいという気持ちが強かったです。

―JAXAではどのようなお仕事をされているのですか?

種子島宇宙センター 吉信大型ロケット組立棟(VAB)から射点を望む。

最初は、種子島宇宙センターのロケット打ち上げ全体の進行管理をする部署で仕事をしていました。全体を見渡す学級委員のような役割というと、イメージしやすいですかね。

また、ロケットの打ち上げには厳しい気象条件が課されています。その気象条件を監視するために、射場には自前の気象観測システムや火山灰予測システムが設置されており、それらの整備・運用などにも携わっていました。

入社後の4年間を種子島で過ごした。同期6人の中では最年少、唯一の高専卒業生だった。

現在は、筑波宇宙センターに勤務しています。ロケットは、打ち上げてしまえばそれで終わりというわけではありません。打ち上げられたロケットが、その後順調に飛行を続けているか、経路は正常であるかを監視する必要があるんです。私は今、機体から送られてくるデータを瞬時に処理し、安全な飛行を確認するための「飛行安全管制システム」の開発や運用に携わっています。

筑波宇宙センターには科学館が併設。高専時代の友人たちも遊びに来てくれた。

打ち上げ後のロケットの状態や位置情報のデータは、機体から送信され「地上局」のアンテナでキャッチされます。ロケットは概ね地球の自転方向に飛行するので、地上局はその経路に沿うかたちで国内外に設置されています。そこで拾われたロケットの情報は、すべて種子島に集められるため、筑波勤務となった今でも、打ち上げの度に種子島に出張していますよ。

地上局はチリの首都・サンチャゴにもあって、そこで対外調整や打ち上げ運用を担当していたこともありました。当時は種子島勤務で、島からは片道3日かかるんですが、半年の間に3回もチリに渡航していたので、すっかりお気に入りの国になりましたね(笑)。

ロケット追尾運用を担当した、チリ・サンチャゴダウンレンジ局にあるアンテナの前で。

―仕事をする中で、最もやりがいを感じるのはどのような瞬間ですか?

ロケットをつくる人や打ち上げに関わる人は、とても長い時間をかけて、人工衛星を目的の軌道へ確実に届けるための準備をしています。万が一、ロケットが安全に飛行できないと判断したときには、ロケットの飛行を止めるのも私たちの仕事です。そういったことがないように、常に覚悟を持って仕事に取り組んでいます。

その分、ロケットが打ち上げられる瞬間というのは、何機打ち上げても、やりがいを感じますね。これまで30機ほどの打ち上げに携わってきましたが、ミッションが1つの区切りを迎えると、「やっていて良かった!」と心の底から感じます。成功するたびにその気持ちを味わえるというのは、この仕事の良いところだと思います。

種子島で関わった小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げ (C) 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

高専で学んだことで、役に立たないことはない

―学生時代にはどのような研究をされていましたか?

卒業研究では、地元イベントへの出展や出前授業の活動も行った。

コンピュータやモノの仕組みに興味があって、制御情報工学科で勉強していましたが、当時は宇宙に関連するテーマを扱う研究室がありませんでした。そのため、「自分はどうしても宇宙に興味がある」、「どうにかして宇宙っぽいことをやらせてほしい」と先生方に嘆願したんです(笑)。

そのときに、医療分野の画像診断などに遺伝的アルゴリズムを適用する研究をしていた先生から、「うちでやってみない?」と提案をいただきました。そこから、衛星画像のパターン認識技術に関する研究を2年間行いましたね。具体的には、JAXAが運用していた陸域観測技術衛星「だいち」のデータを使って、人工衛星の画像から土地の使われ方を分類するアルゴリズムの研究に取り組んでいました。

―高専で学んだことが、役に立っていると感じることはありますか?]

学生会では、総務委員長を務めた。SNSでの情報発信などを通して、全国の高専生との交流も生まれた。

本当にたくさんありますし、むしろ高専で学んで役に立たなかったことはないと思います。卒業研究に関することでは、「研究の計画・解析・考察を通して、次への改善事項を見つける」というプロセスは、今の仕事に通じていますね。また当時は、低学年で学ぶような学科共通の基本科目は早く終わらせて、もっと専門的なことを勉強したいと思っていました。でも、今の仕事の中ではその基礎的な部分もとても役に立っているんです。

陸上競技部に所属。対外調整やチーム運営の手腕を買われ、副キャプテンを務めた。

例えば、ロケットに搭載されているセンサからロケットの位置を把握するときには、速度を時間積分して位置を算出するといった、微分積分の計算処理が用いられています。このような基本的な考え方が感覚的に理解できていなければ、仕事には全くついていけなかったので、高専時代にしっかりやっておいてよかったと強く思いました。当時使っていたノートや教科書は今でも家に保管してあるので、たまに見返したりしています。

私自身、学生時代は部活動・学生会活動・海外での活動などを積極的に行い、チームの企画や運営に関わる経験を多く積んできました。高専生に毎年配布されている「高専手帳」の制作に参加したのも、いい経験でしたね。

高専5年次、親友の笹尾氏と共に高専手帳の製作に関わった。
※高専手帳は『月刊高専』編集部であるメディア総研が、毎年高専に寄贈しています。

昔から文房具が大好きで、手帳を使い倒していたことから畑村先生(https://gekkan-kosen.com/1788/)にお声がけいただき、企画に参加させてもらいました。高専生はレポートなどの課題が多いので整理できる欄が欲しい、バーチカルタイプにしたほうがスケジュールを管理しやすい、などと提案しながら、楽しく取り組んでいました。

それらの経験が今になって仕事につながっていると感じることは多いです。なので、学生時代になにか1つでも心惹かれるようなことを見つけて、就職や進学後も自分の信じた道を極めてほしいと思います。

私はJAXAに就職するにあたり、航空宇宙工学や機械工学といった分野を学んでいたほうが役に立つのではないかと思うこともありました。しかし入社後、私が学んだ情報工学をはじめ、本当に多くの学術分野が宇宙開発に関わっていることを知りました。「宇宙に興味があるけど、勉強している分野が全然違う」などと思っている学生がいるなら、「宇宙につながる糸口は必ずあるんだよ」と背中を押してあげたいです。

これからは自分が子どもたちにきっかけを

―子どもの頃からの夢を、追い続けることができた理由はなんだと思いますか?

本務の傍ら、「宇宙教育」の活動にも積極的に参加。夢見る高校生たちへの講義を担当している。

自分が好きだと感じたことをずっと覚えていて、いつまでも新鮮な気持ちで、それを持ち続けられたことだと思います。まぁ、私もずっと宇宙だけが好きだったわけではなくて…。犬が大好きで、小学3年生のときには盲導犬訓練士になりたいと思ったりもしていました(笑)。色々な「好き」の中で、モノづくりやソフトウェアと宇宙が掛け合わさって、たまたま今の仕事にたどり着いたというのはあるかもしれないですね。

―教育にも興味をお持ちなんですか?

そうですね。私自身、幼いころに大人たちから興味のきっかけをたくさんもらっていたので、とりわけ小・中・高生に対する理科教育やモノづくりの指導にも興味があります。これからは、私が子どもの頃にもらったようなきっかけを、子どもたちや学生に与えていけるような大人になりたいと思っています。

浅村 岳
Gaku Asamura

  • 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
    宇宙輸送技術部門 宇宙輸送安全計画ユニット
    研究開発員

浅村 岳氏の写真

2014年 宇部工業高等専門学校 制御情報工学科 卒業、
独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)入社、鹿児島宇宙センター 射場技術開発室。2018年より現職。

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