高専教員技術職員

実験指導から組織運営まで。学生の「できる」を信じて、一番近くで成長を支える技術職員の仕事

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鈴鹿高専で技術職員として学生を支え、技術長として組織運営にも携わっている鈴木昌一先生。電気電子工学科全学年の実験実習、電気工事士技能試験対策やロボコン向け講習会など、常に学生に近い立場で成長を見守ってきました。そんな鈴木先生に技術職員の仕事の詳細や学生指導への思いなど、お話を伺いました。

最先端を学びたいという思いから工業高校へ

―工業高校へ進学された理由を教えてください。

当時、時代の最先端だと感じていた半導体や電子制御を学びたいと思い、工業高校の電子科を選びました。ただ、正直に言うと、その時点で強い興味があったわけではありません。

工業高校には電気と電子の学科があり、電気はモーターや電池、いわゆる強電のイメージが強く、工事寄りの印象。一方で電子は、回路を組んだり、基板をつくったりするきれいな世界というイメージで、「どちらかといえば電子かな」と、それくらいの感覚で電子科を選びました。

―高校生活の中で、特に印象に残っていることはありますか。

電子回路の授業は、今でも印象に残っています。担当の先生が、回路の動作をとても丁寧に説明してくれる方で、「電流がどう流れて、トランジスタがどう動いているのか」を一つひとつ噛み砕いて教えてくれました。その授業を通じて、電子回路そのものに面白さを感じるようになりました。

工業高校には、機械科や土木科もあり、元気な生徒が多いイメージでした。一方、電子科は比較的落ち着いた、真面目で理系気質の生徒が多かった印象です。そんな中、ソフトボール大会でクラスが優勝したことも良い思い出です。例年、機械科や土木科が優勝しているので、電子科としては珍しく好成績を収めました。私は小学校から野球をやっていたこともあり、チームの優勝に貢献できたと思います。

▲高校生の頃の鈴木先生。卒業アルバムより

―工業高校卒業後は、専修学校へ進学されていますね。

父から「なるべく安定した仕事がいい」と言われており、小学校低学年の頃から公務員への道を考えていました。父自身が何度か転職を経験していたこともあり、その影響は大きかったと思います。そこで、公務員への就職実績が良い専修学校を選びました。

専修学校では2年間、電子系を中心に学びました。内容としては工業高校の延長線上に近く、無線通信を扱う学科で、無線設備や通信回路に関する授業が全体の3分の1ほどを占め、モールス信号を扱う授業も少しありました。通信系の公務員になるなら、こうした知識や資格が役立つだろうと考えていました。

―そこから、鈴鹿高専の技術職員になった経緯を教えてください。

就職活動では、当初の考えどおり通信系の国家公務員を目指しました。しかし残念ながら採用には至らず、その後も引き続き公務員の道を考えていました。

国家公務員試験を受けると、受験者の情報が登録され、各機関から声がかかることがあります。私もその登録を通じて、鈴鹿高専から「受験してみないか」という連絡をいただきました。当時は、同じように建設省(現:国土交通省)関連の機関から声がかかることもありましたが、最終的に鈴鹿高専を受験することに決めました。

理由は、これまで学んできた電気・電子・通信分野を生かせると感じたこと、そして自宅から通いやすかったことです。正直、「これだ」と強く決めたというよりは、自然な流れで選んだ部分もありました。

高専については名前を聞いたことがある程度で、当時は詳しく知っていたわけではありません。ただ、専修学校にいる頃から、高専や大学の技術職員の仕事内容は聞いていたので、ある程度はイメージができていたと思います。

技術職員・技術長として、多方面から学生と現場を支える

―現在の仕事内容を教えてください。

技術職員としての主な役割は、教員のもとで学生の実験指導を行うことです。私は1年生から5年生まで、すべての学年の実験実習を担当しています。

実験では、単に手順をなぞるだけでなく、準備からデータ取得まで一連の流れを見ています。また、卒業研究や創造工学などのものづくりの場面では、学生のアイデアを形にするための技術的なサポートも行っています。

そのほかにも、電気工事士技能試験対策やロボコン向けの電子回路製作といった講習会の実施、学科内の共通設備の維持管理など、研究室の外側を支える仕事も重要な業務です。

―実験指導の中で、「技術職員ならではの関わり方」だと感じることはありますか。

低学年のうちは、学生からすると教員と技術職員の違いはあまり分からないと思います。ただ、高学年になるにつれて、その違いを意識するようになります。

教員は座学を担当し、成績評価にも関わります。そのため、学生との間には評価する側とされる側とで、一定の距離があるようにも見えます。一方で技術職員は、評価には直接関わりません。だからこそ、学生と近い距離で話ができるケースもあり、そこが技術職員ならではの立ち位置だと思います。

―電気工事士技能試験対策の講習会について教えてください。

もともと一人の学生からの「資格を取りたいので教えてもらえませんか?」という相談がきっかけでした。それが徐々に広がって講習会という形になり、今では毎試験期ごとに定期的に開催しています。前期・後期それぞれ十数名ほどが受講し、9割以上が合格しています。合格すれば単位も認定されるため、学生のモチベーションも高いですね。

講習は約1カ月間、全20回ほど行います。最初はできなくても、日を追うごとに学生は確実に成長していきます。前日に指摘したことを、翌日にはきちんと修正してくる姿には、いつも感心させられます。

短期間で、しかも国家資格合格という明確なゴールがあるからこそ、学生の成長を日々実感でき、自分自身も大きな達成感を得られる取り組みです。

―ロボコン向けの電子回路製作講習会ではどのようなことを教えていますか。

主に新入生向けに、はんだ付けの基礎から教えています。中学校ですでに経験している学生もいますが、私はできるだけ理論から説明するようにしています。「なぜこの順番ではんだ付けをするのか」「どういう理屈で部品が接合されているのか」。そうしたアカデミックな説明を、論理的に順序立てて話すのが好きなので、私自身、楽しく実施できている取り組みです。

これらの取り組みは学生だけでなく教員からも評価していただいていまして、特に電気工事士の講習会は、電気電子工学科の教員からも中学生向けの学校説明会やオープンキャンパスでも紹介されることが多く、電気電子工学科の特色の一つになっていると感じています。

▲電気工事士の講座の様子

こうした活動が評価され、数年前には鈴鹿高専の教職員表彰を受けました。技術職員が表彰対象に含まれた最初の年で、自分が選ばれたと聞いたときは素直にうれしかったですね。

―技術長としてのお仕事について教えてください。

技術長には2年前の2023年に就任しました。現在は、教育研究支援センターのマネジメント業務が中心です。加えて、特別教育事業としてスタートアップ教育環境整備事業の一環として起業家工房の設立にも関わりました。

技術長として意識しているのは、何よりも「風通しの良い職場環境」をつくることです。技術職員を代表して私一人が会議に出ることも多いため、決定事項や情報をきちんと共有することは欠かせません。

また、技術職員は基本的に研究職ではありませんが、私が技術長に就任してからは「研究に関わってもいい」という方針に変えようとしています。鈴鹿高専では各学科に技術職員が配置されており、研究支援をしやすい環境です。教員との関係性を大切にしながら、「一緒にできるならやりましょう」と、柔軟に関わっていきたいと考えています。

―起業家工房の設立では、技術長としてどのような役割を担われたのでしょうか。

起業家工房には、レーザー加工機や3Dプリンタ、回路の基板加工機、ウォータージェットなど、大型設備を5台導入しました。その選定に関わったほか、利用規則の作成もほぼ私が一から担当しました。

▲鈴鹿高専の起業家工房。左からレーザー加工機,3Dプリンタ,ウォータージェット加工機

専門の異なる5学科それぞれから要望された設備を、その仕様やサイズと工房のレイアウトとを比較検討しながら形にしていきました。学生が自由にものづくりに挑戦できる場を整えることが、技術職員としての役割だと思います。

起業教育に大事なのは、学生の「やってみたい」という気持ちを潰さないことです。私たち職員は年齢を重ねるにつれて、「それは無理じゃないか」「現実的ではない」と考えてしまいがちです。でも、学生はまだ若いですし、柔らかい発想を持っています。

たとえ実現が難しそうなアイデアでも、最初から否定しないこと。それがないと、起業や新しい挑戦にはつながらないと感じています。

―安全衛生管理の業務についても教えてください。

化学物質の管理や排水管理、空気環境設備の点検など、法令に基づいたチェックを行っています。省庁ごとに関連法規が分かれているため、一つひとつ確認しながら、実験が適切に行われているかを巡視しています。

最近の課題は、「総合的に安全衛生を管理する体制づくり」です。これまでは、化学物質は調達係、排水は施設係と担当が分かれ、全体を横断的に見る部署がありませんでした。今年、新たに委員会を立ち上げ、全体を俯瞰して管理する仕組みづくりを進めています。これをうまく機能させていくことが、今後の大きなテーマです。

―以前はソーラーカーチームの監督もされていたそうですね。

30代から40代半ばくらいまで、ソーラーカーチームの監督をしていました。最初はほぼ関わっていませんでしたが、華のあるモータスポーツへの憧れと学生やOBなどの熱心さに刺激を受けたことで深く携わるようになり、数年後には監督を担うことになりました。

▲ソーラーカーチームの活動の様子

ソーラーカーは毎年改良を重ねる必要があり、学生たちは本当に熱心でした。レース前日は徹夜になることもあり、本番はほとんど寝ていない状態で迎えたこともあります。チーム設立当初の学生は卒業後もプライベートチームでソーラーカーの活動を継続していて、OBとして現役学生にアドバイスをしてくれることもあり、今でも付き合いがあります。現在はソーラーカーの競技自体がなくなり、エコカーに一本化されましたが、あの頃の経験は強く印象に残っています。

学生の「意外な力・発想」を否定せずに信じ続ける

―学生指導において、大切にしていることを教えてください。

学生だけでなく教職員に対しても同じですが、「見た目や成績だけで人を判断しない」ことです。例えば、茶髪で目立つ学生でも、実際に話してみるととても真面目だったり、意外と成績が良かったりすることがあります。座学は苦手でも、実験になると抜群に力を発揮する学生もいます。だからこそ、最初から決めつけずに接するよう意識しています。

また、クラスや実験班といった「組織」としては、授業や実験を予定通り滞りなく進めることが大切です。ただ、その中にいる一人ひとりの学生には、それぞれ合った教え方があります。その学生が理解できる伝え方を探すことも、技術職員としての重要な役割だと思っています。

―技術職員・技術長として、今後取り組んでみたいことはありますか。

高専独自の、全国の技術職員による発表会が毎年開催されています。また、大学も含めた技術職員の発表会もあります。これまでは参加者・発表者として関わってきましたが、今後は、若い技術職員に発表の場に出てもらい、自分は運営側として支える役割を担っていきたいと考えています。

今後も社会や教育を取り巻く環境が変わる中で、職員のモチベーションをどう高め、どんな組織のあり方が望ましいのかを考え続けていきたいです。

―最後に、これから高専を目指す中学生と現役高専生へのメッセージをお願いします。

どの高専もそうですが、就職率はほぼ100%。鈴鹿高専では就職と進学がほぼ半々で、進学の場合も国立大学への編入が多い。編入試験は大学ごとに日程が異なるため、複数校を受験できる点も大きなメリットです。

特に女子学生には、ぜひ高専という選択肢を知ってほしいと思います。進路の幅を広げるという意味でも、十分におすすめできます。

高専生は、人生の中でも一番良い時期、15歳から20歳という時間を高専で過ごします。勉強も、クラブ活動も、それ以外のことも、すべてに本気で取り組める環境があります。せっかく高専に来たのだから、どれか一つではなく、全部を頑張ってほしいと、そう思っています。

鈴木 昌一
Shoichi Suzuki

  • 鈴鹿工業高等専門学校 教育研究支援センター 技術長

鈴木 昌一氏の写真

1988年3月 三重県立津工業高等学校 電子科 卒業
1990年3月 名古屋電気通信工学院(専修学校) 電波通信学科 卒業
1990年4月 鈴鹿工業高等専門学校 技術職員
2023年4月より現職

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