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行動力が可能性をひらく。飽きることなくプロダクト開発をするOBが現役高専生に伝えたいこと

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大島商船高専の情報工学科を卒業後、専攻科に進学され、2024年から株式会社リクルートの社員としてプロダクト開発に携わっている石津龍真さん。「そのときの気持ちに正直になって行動に起こしたこと」が、現在の道につながっているといいます。そんな石津さんが現役高専生に伝えたいこととは。

学部外での活動に刺激を受けた高専時代

―大島商船高専に進学した経緯を教えてください。

両親から「なるべく早く働いてほしい」と言われていたことから、お金が稼げる仕事に直結する学びは何だろう? と早いうちから考えていました。ゲームが好きで、ゲームクリエイターに憧れていた時期があったため、IT技術系の仕事なら自分も楽しめるのではないかと思い、高専が浮かびました。もともと父の知り合いが大島商船高専に行っていたこともあり、高専の存在は前々から知っていたんです。

決定打となったのは中2の頃。所属していたソフトテニス部に大島商船高専に進学した先輩がいて、あるとき学校の様子を聞く機会がありました。そのときに自由な校風や学ぶ内容などを知って「おもしろそうだし、自分も進学してみよう」と思ったのです。

▲中学生の頃の石津さん。ソフトテニス部のみなさんで記念写真

―入学してみて、いかがでしたか。

「みんなかなり勉強しているのだろう」と少し覚悟して入りましたが、実際は多くの同級生が勉強もプライベートも楽しんでいて、良い意味で「そんなに真面目に考えなくてもいいのだな」と、肩の力が抜けました。

また、どんなに真剣に授業を受けたところで、自分から動かなければ力にならないのだということも入学してから実感しました。そう感じたきっかけは、1年の3月頃に先生に誘われて参加したハッカソンです。社会人や大学生などさまざまな方の考え方に触れたり、高専生以外の人が開発したものを見たりしたのはこのときが初めて。「こんな世界があったのか」と非常に刺激を受けました。

▲高専1年生のときに参加したハッカソンにて

それまでは5年間授業を受けていれば卒業する頃には社会で通用する技術者になれるだろうと思いこんでいましたが、外の世界に触れたり授業以外でも知識を積んだりと、もっと挑戦しなければダメなんだと感じたのです。そこで、2年次にはコンピュータ部に所属して授業以外でもプログラミングに触れるようになりました。

―本科卒業後は専攻科に進んでいますが、なぜでしょうか。

本科4年の後期から卒業研究が始まり「なんておもしろいんだ!」と、夢中になったからです。研究テーマは「害獣忌避システムの開発」「夜間における人の検出精度を向上させるためのData Augmentation(※)」で、AIに関連することを学びたかったため選びました。

※既存のデータセットを分割・変換などすることで、元よりもデータ量を多くすること。データ拡張。

今現在も困っている人がいて、その問題を技術で解決できる点にやりがいを感じ、一気にのめりこみました。また、データ分析をしたり、とことん考えたり、わからないことを突き詰めたりすることが元来好きだったこともあり、研究に楽しみを見いだしやすかったのかもしれません。研究室の雰囲気も自分に合っていたため、もう少し研究を続けたいと思ったのが5年の頃だったかと記憶しています。

▲高専時代、研究室での合宿中の様子。害獣の環境調査兼夜間の人の画像を収集していた時期
 (中央:石津さん、右:松村先生

大学編入と迷いましたが、圧倒的に学費が安かったため専攻科に進み、その後は大学院へ行こうと考えていました。

未知の領域こそ挑戦したい

―専攻科修了後、大学院には行かずに就職しています。どんな経緯があったのでしょうか。

「早いうちに企業の情報をキャッチしておいたほうが絶対にいい」と思い、専攻科時代に就職説明会に参加したことがありました。その際に株式会社リクルートの人事の方に会い、キャリア相談にのっていただきました。

そのとき、「研究をするために院に行きたい」というよりも「理系の道に進んだからには院まで行かなければ就職に活かせない」と考えている自分に気がついたのです。次第に、「本当に自分は大学院に行きたいのだろうか」と思うように。さらに、リクルートの採用条件を調べてみると、院卒の学生と専攻科卒の学生では差がないことを知りました。その瞬間「だったら、院進するよりもリクルートへの就職の方が自分には合っているのではないか」と思ったのです。

▲専攻科生の頃の石津さん

―最終的にリクルートで働くことを決めた理由を教えてください。

一社に絞るのは不安でしたから、他の企業ももちろん探しました。「本当にリクルートがいいのか?」と自分に問いただし、否定材料も探したくらいです。でも、どんな企業よりもリクルートが自分に合っているという思いが拭いきれませんでした。

人事の方の人柄や社風など、惹かれたポイントはたくさんありますが、最大の決め手となったのは「飽きることがなさそう」という点です。リクルートは多くのプロダクトを手掛けており、さまざまな経験ができることは大前提。そして、何より働いている方々がみなさん本当に楽しそうに見えたのです。実際、就職前にリクルートのエンジニアの方と話す機会があり、その時に仕事の話だけではなく、趣味の話ですごく盛り上がったのが印象的でした。

それまでエンジニアという仕事に対しては「根詰めて働く」イメージが強かったので、プライベートを充実させながらもしっかりと働き、メリハリをつけている姿に衝撃を受けました。この場所なら自分ものびのびと個性を出しながら飽きることなく働けるのではと確信し、縁あって2024年から現在の仕事に就けています。

―現在の仕事内容を教えてください。

プロダクトディベロップメント室で開発に携わっています。現在はリクルートが運営している求人メディアのフロントエンド(ユーザーが直接画面越しに触れる部分)開発が主な仕事です。

▲仕事中の石津さん

ゆくゆくはバックエンド(ユーザーからは見えないサーバーやデータベースなど)開発やインフラ構築に携わりたいと考えています。理由は、あまりやったことがないから。研究と同様に仕事でも、わからないことがわかる瞬間が何よりも楽しいんです。経験があること、すでにある程度知っていることを深掘ることよりも、新しいことに触れ、自分の領域を広げることの方が楽しいので、いろんなことに挑戦していきたいんですよね。

趣味の時間を大切に

―高専に行っていて良かったと思うことはありますか。

高専出身者がそもそも珍しいため、同じく高専の卒業生に外で会うと年齢関係なく自然と打ち解けられることですね。特に年上の方には、ありがたいことによくかわいがっていただけます(笑)

また、情報技術の基礎を5年間で学ぶことができ、早いうちから専門科目に触れられたのもやはり高専ならではだと思います。

―「あのとき、やっておけば良かった」と思うことはありますか。

目の前のことに追われているうちに、学生生活があっという間に過ぎ去ったと感じています。現在働いている部署の同期には、学生時代に海外旅行や日本一周を経験した人が多く、彼らの豊富な経験を持つ姿を見るたびに、自分はそのような「時間のかかる経験」をしてこなかったことに対するコンプレックスが少しあります。

様々な経験を通じて得た知識は、物事をより楽しむための鍵だと思います。学生時代にしかできない長期旅行などを通じて、もっと豊かな感受性を育むことができたのではないかと思います。

もちろん、学生時代にも楽しい経験をしてきましたが、もっと「学生時代にしかできない経験」を積んでおきたかったと最近思うようになりました。社会人になると長期休暇を取ることが難しくなるので、あの頃にしかできないことをもっと大切にしておけばよかったと感じています。

今は、スキューバダイビングを始めたり、他の新しいことに挑戦したりして、もっと多様な経験を積んで人生を楽しみたいと思っています。経験を積むことで視野が広がり、物事をより深く楽しめると信じています。

▲スキューバダイビングを楽しむ石津さん

―最後に、高専生にメッセージをお願いします。

高専の中だけに自分の世界を留めるのではなく、早いうちから外に目を向けてどんどん飛び出していってほしいと思います。私は、1年次にハッカソンに参加したことを機に行動を起こすようになりました。最初の一歩は重いかもしれませんが、一度やってみれば二歩目はもっと気軽なはずです。外の世界には、さまざまな技術や人で溢れています。若い時期だからこその価値を存分に活かしてください。

また、どんなことでもいいので楽しい・面白いと思っていることを飽きるまでやりきってください。いつかどこかでやりきった経験が活きてくる瞬間が来ると思います。

石津 龍真
Ryoma Ishizu

  • 株式会社リクルート
    プロダクトディベロップメント室
    HR領域プロダクトディベロップメントユニット
    Application Solution部 HR Engineerグループ

石津 龍真氏の写真

2022年3月 大島商船高等専門学校 情報工学科 卒業
2024年3月 大島商船高等専門学校 専攻科 電子情報システム工学専攻 修了
2024年4月より現職

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