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高専制度創設60周年記念! 「第1回高専研究国際シンポジウム (KRIS) 」を開催する理由に迫る

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2023年3月1日(水)~2日(木)の2日間にわたって開催される「第1回高専研究国際シンポジウム (KRIS)」。高専教員や学生をはじめ、工学分野における国内外の研究者が集い、国際的な学術交流が行われます。国立高専機構でKRISの運営をご担当されている高田英治先生と日置怜係長にお話を伺いました。

高専の強みである「社会実装研究」を世界に発信

―KRIS(KOSEN Research International Symposium)について教えてください。

高田先生:KRISは、工学分野における国際的な研究発表の場として、高専機構が主催する国際学会です。高専は今年で60周年を迎え、その記念イベントの1つとしてKRISを開催することになりました。

タイのキングモンクット工科大学(KMITL)などの連携校をはじめ、国内外から研究者が集まり、英語で発表が行われます。

高田先生のお写真
▲取材をお引き受けいただいた高田先生

高田先生:ひとことで「研究」と言っても、大学や研究所が得意とする「基礎研究」や「学術研究」、企業などと共同研究を行うような「社会実装研究」と呼ばれる研究など、さまざまです。

中でも高専では、直接的に人々の生活に影響を与える「社会実装研究」が多く行われています。このことは、国内の大学や研究所の方には段々と知られてきていますが、海外では全く知られていないんですよね。そのため、海外に向けて発信することがKRISを開催する1つの目的です。

一方で、学術研究をメインとして行っている教員もいるため、社会実装研究と併せて、高専で行われる研究全般を世界に向けてアピールする機会になればと考えています。

また、高専機構では高専教員の研究をサポートする「研究力強化プログラム」や人材育成プロジェクトである「GEAR5.0」を実施しています。当日は、これらの事業の中で高度な研究を行っている学生や教員の研究発表も行われる予定であり、見どころの1つです。

―今回、KRISを開催するに至った経緯はどのようなものだったのでしょうか。

日置係長:高専機構が実施するプロジェクトは教育関連のものが多い中、「GEAR5.0」のように、研究に重点を置いたプロジェクトも少しずつ行われるようになってきました。そして、高専内で研究関連が盛り上がってきた流れと高専60周年の節目が重なり、今回のKRIS開催につながったという要因があります。

日置係長のお写真
▲取材をお引き受けいただいた日置係長

高田先生:高専の設置基準などを見ても、高専教員は「教育をするために研究をする」という位置づけになっていて。研究発表をしていても、「教育をするため」という雰囲気があるんですよね。これまでに開催された、高専機構主催の国際会議もまた、教育中心のものでした。

ただ、結局のところ、きちんとした研究をしなければ学会発表も論文発表もできません。だから、高専教員も研究自体は大学の教員と同じように取り組んでいます。そういった部分をもっと見せるためにも、研究をメインとした学会発表の場が必要であり、その第一歩がKRISというわけです。

2日間で行われる研究発表は200件以上! 高専生の発表も

―当日はどのようなプログラムで構成されているのでしょうか?

高田先生:内容としては、「素材とバイオ」、「電子・情報・通信技術」、「電気・機械工学」、「持続可能エネルギー・環境工学」、「土木・環境・海洋工学・建築」というように、高専で行われている研究を全て網羅するような5つのセッションで構成されています。

初日の3月1日(水)は正午過ぎから始まり、まずはオープニングセレモニーがあります。高専機構の谷口功理事長からのお話やKMITLのソムヨット校長先生による基調講演が行われ、その後、口頭発表のセッションを3つ、ポスター発表のセッションを1つ行い、夜にウェルカムパーティーを開く予定です。

▲1日目のタイムスケジュール

翌日は朝9時ごろから始まり、4つの口頭発表セッションと2つのポスター発表セッションが予定されています。

▲2日目のタイムスケジュール

当初は発表者を100名募集していたのですが、最終的には200名以上の応募をいただきました。そこで、せっかくですから、いくつかの申し込みにはコメントを付けて修正頂いた上で、全ての方に発表いただくことにしたんです。そのため、予定よりもポスター発表を増やし、1つの発表あたりの時間を質疑応答込みで15分と、少し短めにしています。

発表者の内訳としては、高専からは160名(うち学生101名)、他の教育研究機関からは43名、企業から6名の、計209名です。

―学生の発表も多いのですね。

高田先生:そうですね。大半が専攻科生の発表ですが、中には本科の学生もいて、これには私たちも感心しています。また、一般的には、学生はポスター発表が多いのですが、今回の学会では120名の口頭発表のうち、32名が高専生です。この点は他にはない見どころだと思います。

日置係長:当初予定していたよりもかなり多くの学生が応募してくれましたね。私も高専出身者だから分かるのですが、「高専生」というつながりがあると、それだけで強い仲間意識が芽生えるんです。KRISを通して全国に交友関係の輪を広げながら、今後の研究につなげてくれればと思っています。

分野の垣根を越えた国際的な学術交流で、さらなる研究の活性化へ

―他の国際学会とはどのような違いがありますか?

高田先生:一般的な国際学会は、「電気であれば電気だけ」というように、もっと狭い領域で開催されることが多いです。KRISは高専で行われる研究を網羅するように広い分野で開催されるので、その点が大きな違いです。

学会に参加し、他の研究者と交流することで共同研究につながることも少なくありません。1つの分野にとらわれず、いくつかの分野を組み合わせながら新しいアイデアが生まれる。そういったきっかけの場となれば、嬉しいです。

とは言いつつ、各分野の基礎的な部分をしっかり理解することも重要です。基礎がしっかりしている人同士が融合することで、良い研究につながると思います。KRISでは各セッションで専門的な内容をしっかり勉強しつつ、他分野の発表を聞くこともできます。これは、学生にとっても教員にとっても有意義な環境だと思います。

座ってほほえむ高田先生と、日置係長
▲取材をお引き受けいただいた高田先生(左)と日置係長

―高専全体にとって良い影響がありそうですね。

高田先生:実は、今回発表する方々には、論文執筆まで行ってもらい、それらをまとめて“KRIS”という名前が付いた論文誌として分野ごとに発行することを予定しているんです。

大学の学部4年生以下が学術雑誌に論文を書くことは、国内では非常にまれなケースだと思います。だからこそ、それに挑戦することで高専生のレベルの高さを国内外にアピールする。そうして、高専の教員・学生と海外との共同研究につなげることが1つの目標でもあります。

論文には「インパクトファクター」という指標があり、これが高ければ高いほど社会的に与える影響が大きいと評価されるんです。KRISをきっかけに、インパクトファクターが3以上である英語の論文が増え、高専の研究のレベル向上につながればいいなと考えています。

そのためにも、高専関係者はもちろん、国内外の大学・研究所、企業の方にも積極的に参加していただき、高専における研究活動をますます盛り上げていきたいです。

「第1回高専研究国際シンポジウム (KRIS 2023)」
開催日:2023年3月1日(水)、2日(木)
参加方法:オンラインまたは会場での対面(ハイブリッド開催)
※ポスターセッションは、現在会場にて実施予定です。
※Covid-19の状況によっては、すべてのセッションが完全にオンラインで行われる場合もあります。

会場:東京・一橋講堂(学術総合センター2階)
主催:独立行政法人 国立高等専門学校機構(KOSEN)

参加費:
高専の教員と学生:無料
その他の参加者:30,000円(税込)

参加登録締切日:2023年1月5日(木)

KRIS 2023の詳細、参加登録はこちらから
https://kris2023.kosen-k.go.jp/ja/

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