国立高専機構と月刊高専が主催した「第3回高専起業家サミット」のプロトタイプ部門で、阿南高専のチーム「Awanext」が最優秀賞を受賞しました。
同チームが提案したのは、ドローンとレーザーを組み合わせ、急傾斜地などの雑草を遠隔で除去するシステム「KaLas(カラス)」です。身近な農業課題から生まれたアイデアは、農家へのヒアリングや実験を重ねながら形を変え、事業プランへと発展しました。
今回は、創造技術工学科 電気コース5年の南翔太さん(チームリーダー、サムネイル後列右)、後藤拓実さん(レーザー照射実験担当、同 後列左)、篠原彰宏さん(レーザー照射実験担当、同 前列左)、重村龍之介さん(プラン検討担当、同 後列中央)、松前伍泰さん(資料作成担当、同 前列右)に、開発の裏側やサミットを通して得た学びを伺いました。
「まさか自分たちが」——驚きに包まれた最優秀賞
―まずは、第3回高専起業家サミットのプロトタイプ部門で最優秀賞を受賞した率直な感想を教えてください。
南さん:他のチームの発表はどれも完成度が高く、まさか自分たちが選ばれるとは思っていませんでした。最初は驚きの方が大きく、少しずつ達成感が湧いてきました。
重村さん:優秀賞で名前が呼ばれなかった時点で、「今回はだめだった」と思ったんです。最後に最優秀賞として呼ばれたときは、本当に驚きました。
篠原さん:受賞が決まった瞬間は驚きましたが、その後少しずつ喜びが湧いてきました。
後藤さん:熱中症対策や実現可能性など、自分たちが大切にしてきた部分を評価していただけたのかなと感じています。
松前さん:他のチームの発表に圧倒されましたが、それでも自分たちの取り組みの良さが伝わり、評価されたことがうれしかったです。

―「KaLas」は、どのような事業プランなのでしょうか。
南さん:「KaLas」は、地上の装置から照射したレーザーを、上空のドローンに搭載したスキャナーで反射・走査し、AIカメラが識別した雑草へ照射するシステムです。人が立ち入りにくい急傾斜地でも、遠隔で除草できることを目指しています。
一般的なレーザー除草機では高出力のレーザーを使いますが、私たちは数日かけて雑草を枯らす低出力の方法を検証しました。火災リスクや機体への影響を抑えられる点が特徴です。
将来的には自治体やJA、鉄道会社などを対象に、機体を共同利用するシェアリングサービスとして展開したいと考えています。
―除草作業をテーマにした背景は何だったのでしょうか。
南さん:きっかけは、祖父母が急傾斜地で農業をしていたことです。夏場の草刈りは、熱中症や転倒など命に関わる危険もあります。さらに、担い手不足や高齢化も深刻化しており、「自分たちの技術で解決できないか」と考えました。
私が所属している研究室ではレーザーを扱っていたため、当初はレーザーを使った手持ち式の除草機を考えていました。しかし、農家の方から「手持ちでは炎天下で作業することに変わりがない」「斜面での危険が解決していない」と意見をいただいたんです。
そのとき、私たちは「レーザーを使いたい」という技術ありきで考えていて、利用する方の立場を十分に考えられていなかったことに気付きました。そこから、「人が現場へ行かずに除草するにはどうすればいいか」を考え直しました。
―ドローンでレーザーを反射する仕組みは、どのように生まれましたか。
後藤さん:最初はドローンにレーザー装置を載せる案もありましたが、重量やメンテナンス性が課題でした。そんなとき、『宇宙戦艦ヤマト』に登場する、レーザーを衛星の反射板で折り曲げて攻撃する「反射衛星砲」のシーンを見て、「地上からレーザーを照射して、空中で反射させればいいんじゃないか」と思い付いたんです。
重村さん:最初に聞いたときは「面白いね」という反応でしたが、検討していくと、これまで残っていた課題を解決できる可能性が見えてきました。
南さん:それまで手持ち型やドローン搭載型、地上走行型など、多くの案を検討していました。反射させる方法なら、それまでの課題をまとめて解決できるとわかった瞬間は、鳥肌が立ちました。
技術を社会に届けるために。試行錯誤を重ねたチーム開発
―低出力レーザーによる除草実験では、どのような検証を行ったのでしょうか。
後藤さん:篠原と一緒に、採取した雑草にレーザーを照射し、2〜3日かけて変化を観察しました。照射後すぐに結果が出ないため、地道に記録を続ける必要がありました。
篠原さん:出力が高すぎたら安全性に問題があり、低すぎたら雑草が枯れません。出力や照射時間を変えながら、実験と改善を何度も繰り返しました。この過程では、高専で失敗の原因を考えて次の改善につなげてきた経験が生きたと思います。

―重村さんは、事業プランの取りまとめや画像認識AIを担当されたそうですね。
重村さん:メンバーから出た技術やアイデアを整理し、一つの仕組みとして成立させる役割を担当しました。細かなものまで含めると数十個の案があったため、現場で活用できるか、現在の技術で実現できるかという観点から優先順位を付けました。
画像認識では、授業でツールを使った経験をきっかけに、植物を識別する実験を始めました。授業で触れた技術が、実際の課題解決につながったと感じています。

―本番で使用する資料作成を担当された松前さんは、どのような工夫をしましたか。
松前さん:限られたスペースに情報を整理することが最も難しかったです。メンバー全員から「絶対に伝えたいこと」を聞き、何を残し、どの順番で示せば仕組みや魅力が伝わるかを考えました。
ポスターは一目で全体像が伝わること、ピッチ資料は次のページを見たくなる流れを意識し、締め切り直前まで修正を重ねました。
―南さんは、リーダーとしてどのようなことを意識していましたか。
南さん:メンバーはプロジェクト仲間である前に、もともとの友人です。そのため、意見が対立したときにも関係を崩さず、結論を出すことに苦労しました。まず双方の考えを聞き、メリットと課題を整理したうえで、全員が納得できる形を探すことを意識しました。
―技術開発だけでなく、ビジネスプランを考えることにも苦労したそうですね。
南さん:当初は、面白い技術を作って魅力を伝えればよいと思っていました。しかし、メンターや先生方から「誰がいくらで買うのか」「どのように利益を出すのか」と聞かれ、答えられなかったんです。
そこで、力を貸してくださったのが、ベンチャー企業での勤務経験を持つ学内の技術職員の方です。ターゲットや収益の考え方を一から教えていただきました。技術を社会へ届けるには、利用者の困りごとに向き合い、事業を継続できる仕組みまで考える必要があると学びました。
後藤さん:サミットでは企業の方や他校の学生から質問を受け、自分たちが検討できていない安全面や法規制の課題にも気付きました。一方で、鉄道関連会社の方から「線路沿いの雑草対策において、このような技術があれば助かる」と言っていただき、農業以外にも需要があると分かりました。
実用化を目指して。次の世代へつなぐ「KaLas」
―サミット当日で、最も印象に残ったことを教えてください。
南さん:ピッチの舞台へ登壇したことです。最初は緊張しましたが、審査員の方々が頷きながら聞いてくださる様子を見て、自分たちの思いを届けられたと感じました。

重村さん:約40チームの発表を聞き、それぞれ異なる課題に向き合っていることが印象的でした。中でも、スタートアップ部門で最優秀賞を受賞した沖縄高専「Neighbors Net」の発表は、内容だけでなく伝え方も分かりやすく、自然と引き込まれました。
後藤さん:ポスター発表で、「反射衛星砲」のアイデアを企業の方に説明したことです。『宇宙戦艦ヤマト』を知っている方とは話が盛り上がり、発想の面白さを直接伝えられたことがうれしかったです。
松前さん:全国の高専生が、それぞれのアイデアを実現可能な段階まで具体化していたことに驚きました。完成度の高い取り組みが多く、その行動力に刺激を受けました。
篠原さん:多くのチームが参加しているのに、発表内容がほとんど重なっていなかったことです。どのチームにも個性があり、高専生の発想の幅広さを感じました。
―第3回高専起業家サミット後、「KaLas」にはどのような進展がありましたか。
南さん:特許出願に向けた先行技術調査を終え、現在は正式な手続きを準備しています。弁理士の先生からは、特許化できる可能性が60〜70%ほどあると伺っており、自分たちの技術の独自性を改めて確認できました。
また、画像認識AIを専門とする専攻科生2名と、本科4年生2名が新たに加わりました。「KaLas」の実用化には、雑草と作物を正確に識別するAIや、ドローンによる反射・追尾制御の精度向上が欠かせません。一方で、初期メンバーは全員5年生で、卒業後は就職します。そのため、技術や知見を後輩へ引き継ぎ、長期的に開発を続けられる体制を整えています。
―今後、どのように「KaLas」を発展させていきたいですか。
南さん:まずは特許取得を目指し、同時にAIによる雑草認識とドローン制御、レーザー照射を一つのシステムとして高精度に連携させていきます。
サミットで鉄道関連会社の方から声をかけていただいたことをきっかけに、農業だけでなく、線路沿いなどインフラ分野での活用可能性も見えてきました。今後は企業とも連携し、まずは徳島県内の農家や地域インフラの現場で実証実験を重ねたいです。
屋外でレーザーを使用する際の法規制など、解決すべき課題はまだあります。それでも、学生から生まれた技術が後輩へ受け継がれ、農作業中の熱中症や地域インフラの維持管理といった課題を解決する事業へ発展してほしいと思っています。
―今回の経験を、今後どのように生かしたいですか。
南さん:私は今回と近い技術分野の企業へ就職する予定です。技術の面白さだけでなく、顧客が本当に必要としているものを考えながら、ものづくりに取り組みたいです。
重村さん:今回、まず行動してみることの大切さを学びました。これからも、自分から新しい経験を得にいく姿勢を大切にしたいです。
後藤さん:自分の考えを伝えるには、相手の立場に合わせて説明する必要があると感じました。技術やアイデアを分かりやすく伝える力を身につけたいです。
松前さん:チームで物事を進める方法と、周囲の意見を聞くことの大切さを学びました。自分の考えに自信を持ちながらも、周囲の意見を聞き、見落としがないかを確認して提案できるようになれればと思います。
篠原さん:失敗を恐れずに挑戦する姿勢を、今後も大切にしたいです。今回の経験を通して、失敗も次の挑戦につながるんだと実感しました。
―最後に、何かに挑戦している高専生や、高専への進学を考えている中学生へメッセージをお願いします。
南さん:最初から大きな課題を探す必要はありません。私たちも、祖父母の農作業という身近な光景から始まりました。周りの人が何に困っているのかを見て、「自分の技術で解決したい」と思えるものを見つけてほしいです。
重村さん:よいアイデアを思い付いても、考えているだけでは形になりません。「どうすれば実現できるか」を考え、まずは行動してみてほしいと思います。
後藤さん:高専は5年間、同じ仲間と一緒にさまざまなことへ取り組める環境です。高専生を対象としたサミットや大会も多く、部活動と専門的な活動の両方に挑戦できます。
松前さん:経験して初めて得られる学びはたくさんあります。高専には挑戦できる機会が数多くあるので、視野が広がり、人生を豊かにしてくれると思います。
篠原さん:始める前に考えすぎて動けなくなるよりも、まずやってみてから考えるくらいの気持ちが大切であることを伝えたいです。また、ものづくりに興味のある中学生には、ぜひ高専でさまざまな活動に参加してみてください。
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○第3回高専起業家サミット HP
https://startup.gekkan-kosen.com/
阿南工業高等専門学校 の記事





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