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自動運転を実機で学べる教材へ。PIUS Edgeと移動ロボットで広がる、藤原研究室の「一石n鳥」の研究

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自動運転を実機で学べる教材へ。PIUS Edgeと移動ロボットで広がる、藤原研究室の「一石n鳥」の研究のサムネイル画像

一関高専の藤原康宣先生が運営する研究室では、移動ロボットや小型モビリティを対象に、自律移動・自動運転技術の研究開発が進められています。そして特徴的なのが、その成果を「実機を使って自動運転技術を学べる教材やカリキュラム」へと展開しようとしている点です。

2026年6月に開催されたROBOMECH2026(ロボティクス・メカトロニクス講演会2026)では、藤原研究室に所属する専攻科生2名が、自律移動ロボットと小型モビリティのPIUS EDUCATIN SYSTEM (Type Edge)(以下、PIUS Edgeと表記)を用いた研究成果を発表しました。研究で得られた技術を教育へ落とし込み、さらに地域企業での実装や人材育成にもつなげていく。そんな「一石n鳥」と称される取り組みについてお話を伺いました。

研究成果を教育に落とし込む、PIUS Edgeの教材化

―藤原先生の研究室では、どのような研究に取り組まれているのでしょうか。

藤原先生:大きく言うと、移動ロボットや小型モビリティの自律化・自動化に取り組んでいます。

一つは、工場や物流倉庫などで物を搬送する自律移動ロボットです。ロボットが自分の位置を把握しながら地図をつくり、設定された経路を移動するようなシステムを開発しています。

▲開発している自律移動ロボット

もう一つが、株式会社村上商会と共同で進めているPIUS Edgeを用いた自動運転技術の開発です。PIUS Edgeは、もともとは自動車の構造や走行の仕組みを学べる小型モビリティです。そこにセンサーや制御システムを組み合わせることで、自動運転や運転支援の技術を学べる教材として展開しようとしています。

▲PIUS Edgeのしくみ

―PIUS Edgeは教材としてどのように使われているのでしょうか。

藤原先生:PIUS Edgeは、自動車の構造や走行の仕組みを学べる小型モビリティ「PIUS」をベースに、ステアリング、アクセル、ブレーキを電動化した車両です。そこに車両周辺の環境を立体的に認識する3D-LiDAR(ライダー)や、障害物との距離を測るミリ波レーダー、制御用PCなどを組み合わせることで、自動運転技術の教育研究に活用できるようにしています。

特徴は、車両本体やセンサーを直接扱うことができることです。自動運転を実現するソフトウェアがあらかじめ用意されているわけではないため、学生自身がセンサーの情報をどう読み取り、車両の動きにどう反映させるかを考え、実際に車両を運転させながら実装していくことが学びにつながります。

▲PIUS Edge。車体に搭載されているモニターにはセンサーによって感知された認識結果が映し出されています

―村上商会さんと一緒にこの研究を始めたきっかけや、PIUS Edge開発における藤原先生の役割について教えてください。

藤原先生:一関高専と村上商会さんとの関わり自体は以前からあり、PIUS Edgeのベースとなる車両も、もともとは村上商会さんと本校の教員が連携して開発してきたものです。私はこの車両を使って自動運転技術に取り組めるのではないかと考え、数年前から関わるようになりました。

車両そのものは村上商会さんがつくられたもので、私が主に担当しているのは、ソフトウェアや制御の仕組み、教育カリキュラムの部分です。例えば、自動ブレーキの実習であれば、どのセンサーを使い、どのようなプログラムを組めば車両が止まるのかを整理し、授業の中で学生が実際に体験できる形に落とし込んでいきます。

授業に取り入れ始めたのは2023年ごろです。最初は簡単なブレーキ制御からのスタートでしたが、現在は、3D-LiDARで周囲の立体的な地図を作成し、その地図の中で車両が自分の位置を把握する仕組み(SLAM)など、自動運転に必要な技術要素の実装へと少しずつ発展しています。

―PIUS Edgeの研究開発が、そのまま教育にも生かされているのですね。

藤原先生:そうですね。研究として開発した機能を授業にフィードバックする形で進めています。今後は機能の充実と併せて、授業で使うためにつくったドキュメントを企業や他の教育機関でも活用できるような形につなげていきたいです。最近の私のキーワードは「一石n鳥」で、研究・教育・社会実装が別々にあるのではなく、うまく重なり合う形にしたいと考えています。

ただ、私一人でこのプロジェクトを進めるのはなかなか大変で、自動ブレーキの実習や自己位置推定の精度向上、将来的には自動駐車のような機能も含めて、教育パッケージとして整えていく必要があります。何時間の授業で何をどこまで扱うのか、学生や生徒がどのような順番で理解していくのか。そういったことを考えて、カリキュラムや仕組みをつくることも研究成果の一つだと思っています。

高専の授業で自動運転技術を扱っている例はまだ多くありませんが、PIUS Edgeを使えば学生が実機に触れながら学べます。一緒にカリキュラムを考えたり実装を進めたりしてくれる方がおられたら、ぜひ連絡してほしいですね。

ROBOMECH2026で発表された、学生たちの研究

こうした藤原研究室の取り組みの中で、学生たちも研究開発の一端を担っています。2026年6月に開催されたROBOMECH2026では、専攻科生の菅原悠希さんと和賀遼さんが、それぞれの研究成果を発表しました。お二人それぞれの研究内容や、取り組みを通して感じたことを伺いました。

▲藤原研究室に所属する菅原さん(左)と和賀さん(右)

―菅原さんは、どのような研究に取り組まれているのでしょうか。

菅原さん:私は自律移動ロボットの研究に取り組んでいます。工場や物流倉庫の中で物を搬送することを想定していて、ロボットが自分で地図を作成し、その中で現在地を把握しながら移動できるようにする研究です。

現在は地域企業と共同研究を進めており、実際に工場内でロボットを導入することを目指しています。学校内で実験を行いながら、企業側でも導入に向けた準備を進めているところです。

―移動ロボットが自分の位置を把握するというのは、どのような仕組みなのでしょうか。

菅原さん:ロボットに3D-LiDARを搭載して、周囲の壁や物体の形を、無数の点の集まりとして取得します。その点群データをもとに地図をつくりながら、同時に自分がその地図の中のどこにいるのかを推定していきます。

現在は、3D地図生成とそれに基づいた自己位置推定、および簡単な自律移動機能を実現することができました。今後はいろいろな環境で実験を行い、自律走行の安定性や精度を検証していく予定です。

▲移動ロボットを操作する様子と、それによって生成された3Dマップ

―移動ロボットを工場で使うにあたって、どのような課題があるのでしょうか。

菅原さん:例えばファミリーレストランなどで使われている配膳ロボットは、屋内の平坦な場所で動くことが多いと思います。ただ、工場で使う場合は、段差やスロープがあったり、屋内外を行き来したりする可能性があります。

そういった環境に対応するため、タイヤを大きめにしたり、段差に対応できる構造にしたり、自己位置推定の精度を高めたりしながら、実用化に向けた開発を進めています。今後は、スロープやエレベーターのような環境でどう安定して動かすかも課題です。

▲菅原さん

―和賀さんは、PIUS Edgeを使った研究に取り組まれているのですね。

和賀さん:私は先ほどの移動ロボットで使われている自己位置推定の技術をPIUS Edgeに応用する研究に取り組んでいます。もともとは別の機体ですが、モーターで動く移動体という点では共通しているので、同じように技術を応用できるだろうというところから始まりました。

移動ロボットと同じく、PIUS Edgeにも3D-LiDARを搭載し、周囲の環境を認識しながら、自分がどこを走っているのかを推定できるようにしています。今は、機体を動かしながらマッピングを行い、走った経路を記録する段階です。

今後は自己位置推定やマッピングの精度を上げていくことで、障害物検知や自動ブレーキなど、自動運転に必要な技術につなげることを目指しています。

▲和賀さん

―実機があることで、学び方にも違いがありそうですね。お二人が研究を進める中で、苦労したことはありますか。

菅原さん:自律移動ロボットの技術は、藤原研究室で以前から取り組まれてきたものです。先輩から引き継ぐ形で始めたのですが、いきなり高度なロボットに触れることになり、最初はとても難しかったです。

ロボットを動かすこと自体も難しいのですが、さらに実環境で使うことを考えると、想定してなかった課題が次々と見つかります。その課題を一つずつ解決していくところに苦労しています。

和賀さん:私の場合は、小型パソコンの環境構築に苦労しました。3D-LiDARを使ったマッピング自体はソフトをダウンロードして動かすだけでいいのですが、その前段階の環境づくりでバグが出たり、データを一度消して入れ直したりすることもありました。

また、実際に機体を動かしてみると、うまくいくこともありますが、思ったようにいかないことも多いです。うまくいかなかったらやり方を変えて、また試す。その繰り返しでしたね。

―お二人は専攻科生とのことですが、今後の目標や進路について教えてください。

菅原さん:私は大学院に進学し、引き続きロボットの実装に関わる研究を続けたいと考えています。この研究を通して、実際に企業へ導入するロボットをつくることの面白さを感じました。将来的には、企業の現場で使えるロボットの開発に携わり、社会課題の解決につなげていきたいです。

和賀さん:私は専攻科を修了した後は就職を考えています。研究で学んだことを生かせる分野があれば挑戦したいですが、今は業界を絞りすぎず、自分に合うところを探していきたいと思っています。

できる機能から積み重ねる、ロボット研究の面白さ

―2021年に取材させていただいた際、先生は「移動ロボットのプラットフォーム開発」に取り組まれているとお話しされていました。今回の自律移動ロボットやPIUS Edgeを用いた取り組みも、その延長にあるのでしょうか。

藤原先生:そうですね。もともとの移動ロボットのプラットフォーム開発は、ロボットを一からつくるのではなく、目的に応じて機能を載せ替えられる母体をつくろうという考え方から始まっています。

今回の自律移動ロボットも、その流れの中にあります。単に機体をつくるだけではなく、ソフトウェアやドキュメントも含めて、導入先で扱える形にする。さらに、導入先の企業などが自社の業務に合わせて調整・発展できるようにするところまで含めて、プラットフォーム化だと考えています。

また、そうした考え方は、PIUS Edgeを用いた自動運転技術の教育にもつながっています。移動ロボットで培った自己位置推定や環境認識の技術を応用し、それを学生が実機で学べる教材へと落とし込んでいく。今回の取り組みは、これまで進めてきたプラットフォーム開発を、企業での実装と教育の両方へ展開しているものだと思います。

―藤原先生は、今後この研究をどのように発展させていきたいと考えていますか。

藤原先生:自律移動ロボットについては、まず企業の現場で実際に動かすところまで持っていきたいです。現在は3年計画で進めていて、今年は自律移動の機能を導入し、来年以降は企業の環境に合わせた機能を実装する予定です。

PIUS Edgeについては、自動ブレーキや自己位置推定、自動駐車のような機能を、もっと教育にも使える形で整えていきたいです。学生が実機を使って自動運転技術を学べる教材として展開できるといいと思っています。

▲藤原先生

―最後に、今回の研究にも通じる、藤原先生が考えるロボット研究の面白さについて教えてください。

藤原先生:ロボットというと、人型ロボットやアーム型ロボットを思い浮かべる人が多いと思います。でも私は、人間の作業を少しでも支援するものは、広い意味でロボットだと考えています。

例えば、ファミリーレストランの配膳ロボットは、料理を運ぶことに特化しています。人がやってもいい作業かもしれませんが、ロボットが自動で運んでくれれば、人は別の作業に集中できますよね。

車も同じで、完全自動運転でなくても、一部の操作を支援できれば運転の負担は大きく減ります。実際、自動運転車には「ロボティック・カー」という言い方もあります。私はこの表現が好きで、車もまた、人の生活を支援するロボットの一つとして捉えられると思っています。

そして、その開発において重要なのは、最初からすべてを自動化しようとするのではなく、できる機能から一つずつ実装していくことです。その積み重ねの中に、技術を追究する面白さがあると思います。学生にとっても、実際に車両やロボットを動かしながら試行錯誤する経験は、技術の難しさや面白さを体感する貴重な機会になるはずです。

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