宮城県に本社を構え、家電製品を中心に生活用品の企画・製造・販売を手掛ける総合メーカー「アイリスオーヤマ株式会社」。家電開発部で活躍されている、東京都立産業技術高等専門学校出身のT.S.さんにお話を伺いました。
幅広いフィールドで活躍できる、アイリスオーヤマの高専OB・OG
―御社の事業内容と、T.S.さんの担当業務について教えてください。
当社は多事業展開を行う総合メーカーで、テレビCMでお馴染みの家電製品以外にもAI/IoT事業などさまざまな分野に参入し、ありがたいことにコロナ禍でも着実に業績を伸ばしています。
特に年間1000点もの新商品を世に出すという「スピード開発」を行っており、ロングセラー商品に頼るのではなく、移り変わる生活者ニーズに合わせて常に変化対応しているのが特徴だと思います。
私は現在入社4年目になり、家電開発部 季節家電課冬チームで、加湿器の開発を担当。当社の開発担当は、企画から量産までの業務を一貫して行っています。
企画のフェーズではアイデア出しを行い、どのような製品が売れるかを検討。設計のフェーズでは構想レベルの設計を、具体的に3D図面に落とし込み、試作やコスト試算を行い、実現性の確認を行います。
立ち上げのフェーズでは樹脂部品を金型で発注し、量産時の問題対策や、スペックを安定させるための検討をします。立ち上げが完了すると、やっと製品を発売することができるという流れです。
―御社では多数の高専OB・OGの方が活躍されているそうですね。
主に「開発部門」と「応用研究部」に、高専卒者が多い印象ですね。同期では私含め2名の高専生が採用され、チームは違いますが同じ家電開発部で働いています。私は東京都立産業技術高等専門学校出身ですが、同期は八戸工業高等専門学校の出身です。
実は当社では、これまでは毎年2~3名ずつしか、高専卒の採用枠を設けていなかったそうです。ですが高専生の“まず手を動かす”という姿勢が、当社の開発の社風に非常にマッチすることが分かり、今年度から採用枠をなんと10倍にし、2022年卒は高専から34名の採用が内定していると聞いています。
2022年卒では、北は苫小牧高専から南は鹿児島高専まで、全国20の高専からさまざまな学科・コースの学生の内定が決まっており、数少ないと言われる高専女子が、34名中、12名も入社してくるそうです。
当社は「家電開発」がメインと思われがちですが、「日用品の開発」や「食品開発」など、働くフィールドが幅広いのが特徴です。ですので、高専生にも「品質管理」から「SE」、「マスク製造」「空間デザイン」など、さまざまなフィールドへの配属があり、それぞれにマッチする職種を案内していることが魅力と言えるのではないでしょうか。
また「開発部門」では生活シーンにおける不満を発掘し、それを解決するためのアイデアを形にする仕事なので、手を動かして取り組むことに長けている高専OB・OG社員は、即戦力として現場の第一線で活躍しています。高専卒・大卒は隔たりなく業務を行い、自身のスキルを磨きながらキャリアアップを実現していますよ。
就職活動の行動力で掴んだ、高専のものづくりを生かす道
―T.S.さんが、高専に進学したきっかけと、学んだことは何ですか?
もともと工作が好きな子どもでした。「好きな教科は何ですか?」と聞かれたら「図工」と答えるような子どもで、そうした姿を見た父親が、「こんな学校があるよ」と教えてくれたのが高専でした。
「ものづくりができる」ことと「就職率が高い」ということに惹かれ、東京都立産業技術高等専門学校に進学。実は兄が先に同じ高専に通っていたので、そのこともきっかけでしたね。
高専生時代は、航空宇宙工学を専攻し、研究室では小型の手作り風洞の効率化を図り、流体シミュレーションを駆使して予測を立て、実際に組み立て効果検証を行っていました。
当時の研究が何か今に生きているかと言われると、あまりないのですが(笑)、高専では実習が多かったため、トライ&エラーを繰り返す高専でのものづくりは、試作のフェーズで手を動かす現在の業務に繋がっており、高専での取り組みが生きた部分かなと思います。
また学生時代は部活動やアルバイトなども経験し、早くから社会性を身につけられたというのも良かったと思います。
―就職活動の際、アイリスオーヤマに入社したいと思ったきっかけは?
就職活動時、実はすごく悩んでいました。すぐにでも世の中に出て働きたいという気持ちが強かったため、「何がやりたい」というのが明確でなく、ただ「ものづくりに関わる仕事がしたい」ということだけが分かっていたという状態でした。
そんな中、たまたまテレビでアイリスオーヤマについて取り上げられている番組を見て、おもしろい会社があるなと思ったのが、志望した最初のきっかけでした。「ユーザーインで考えるものづくり」などに、他社にはない魅力を感じましたね。
ただ志望したのは良いのですが、当時、都立産技高専にはアイリスオーヤマからの就職の推薦枠がありませんでした(笑) 高専の就職には、文系大学生のような「自由応募」での就職と、「学校推薦」での就職の2つがありますよね。
「学校推薦」では、企業から高専に何名欲しいという要望を出すものですが、私の就職活動時にはアイリスオーヤマからの推薦枠がなかったので、ダメもとで人事に電話して、「御社を受けたいんですが、求人を出してもらえませんか」と問い合わせたところ、推薦枠を出してくれました(笑)
こうした学生のやる気を拾ってくれる会社というところにも魅力を感じましたし、また私自身のその行動力も買ってくれたのではないかと思うと、うれしかったですね。
―社会人になってから思う、高専の魅力はどんなところにあると思いますか?
ひとつは、ものづくりのさまざまな体験ができることだと思います。例えば溶接や鋳造など、おそらくやったことある人は、世の中にそう多くはいないと思います。そういった普通の工業高校などではなかなかできないレベルのものづくり体験ができるのは、高専ならではの魅力だと思います。
また自由度が高い点も魅力ですかね。例えば私服で登校していいとか、地方の高専だと車で通学していいとか、学生にある程度任せている部分が多く、ただ、その分、責任もしっかり伴うということは、自己管理能力を育む上でとても良い環境だったと思います。
高専って高校と比べて、割と進級する基準が厳しいです。だからある程度自由が与えられている分、勉強に対しては結構厳しくなっているので、そういう自分をしっかりコントロールする力は、やっぱ高専生活で得られたものかなと思います。
―今後の目標について教えてください。
会社としては、2022年にアイリスグループで売上1兆円を目指すという目標がありまして、そこは今のままいけば、達成できるんじゃないかなというところにあります。売り上げの7~8割が家電になっているので、家電を中心に商品のラインナップを増やしていくなど、ブランド力を上げていきたいと思っています。
また個人の目標としては、もちろん会社に貢献していくというのもあるのですが、開発者のひとりとしては、自分の考えたアイデアを具現化したヒット商品を生み出したいなと考えています。
現在私の担当している開発では、自身のアイデア100%のアイテムというのがまだなくて、マーケットからくる開発であるとか、品揃えの開発などがメインになっていますので、今後は堂々と「自分がこれを開発しました!」といえるようなヒット商品や、ユーザーイン目線でつくったアイテムを出していきます!
アイリスオーヤマ株式会社
https://www.irisohyama.co.jp/recruit/
03-5843-7708 人事部採用課大卒・高専採用チーム
アクセス数ランキング
- 英語の先生は、トルクメン語研究の第一人者! 世界の多様な言語を通して、学びの本質に触れてほしい
- 北九州工業高等専門学校 生産デザイン工学科 (一般科目(文系)) 講師
奥 真裕 氏
- 目先のことにとらわれず、多くの学びを! 長い時間をかけて得られた“知識の引き出し”は、数年後に開かれる
- 株式会社環境管理センター 技術センター
福本 由美 氏
- 幹部自衛官から大学研究者へ転身、そしてベンチャー創業。全ての経験を、目の前にいる高専生の学びにつなげたい
- 東京工業高等専門学校 機械工学科 准教授
原口 大輔 氏
- アルバイト、闘病、フリーランス、転職——人生のさまざまな場面で道を切り拓く、高専で培った知識と技術
- 株式会社マティクスリテールサービス カーセブン岡山平島店/岡山青江店 店長
北野 敦司 氏
- 高専で得た「独立心」から起業へ! ITと不動産を融合させる若手起業家
- 株式会社スミカ 代表取締役
山口 結生 氏
- キャリアプランを描き続けて今がある。高専の機械工学科で培った“ものづくりの哲学”を半導体の未来に生かしたい
- 日本サムスン株式会社
Samsungデバイスソリューションズ研究所
上根 直也 氏
- 「高専生はかっこいい!尊敬する!」学生に厳しかった安里先生の、考えが変わったきっかけとは
- 新居浜工業高等専門学校 機械工学科 教授
安里 光裕 氏
- 工業高校から高専へ編入! 苦手な化学の克服が、人生のターニングポイントだった
- 大島商船高等専門学校 電子機械工学科 准教授
松原 貴史 氏