大阪に本社を構える「エース設計産業株式会社」。現在、20名以上の高専OBが所属し、日本のものづくりを支える仕事に従事しています。今回は、入社6年目で津山高専出身の秋平将吾さん、入社5年目で明石高専出身の砂場亮佑さん、入社4年目で大阪府大高専出身の横山貴広さんの、3名の高専OBにお話を伺いました。
ものづくりの根幹を支える、“設計”という仕事とは
「エース設計産業株式会社」は、モノづくりの現場で活躍する生産設備機械の設計専門会社。現場が望む‶生産構想‴を実現するための設計技術サービスを提供し、モノづくりの根幹を担っています。
■モノづくりの分野
日本の主要産業である、自動車分野、エネルギー分野、半導体分野をはじめ、電子・電気部品関連や食品・日用品関連まであらゆる分野です。
■生産設備機械の種類
生産ラインや搬送機、組立機や検査機など、各生産工程に関わる設備機械やFAシステムなど多種多様です。ごみ処理や製鉄などの産業用プラントの設計にも取り組んでいます。
―みなさんの担当業務についてお伺いできますか?
秋平さん: お客様の要求を満たすことはもちろんですが、操作性や安全性等、さまざまな視点から最適な生産設備機械を設計しており、「ものづくりの根幹を支える仕事」という思いで、日々業務を行っています。本社は大阪にあるのですが、そのほかにも津山・姫路・京都に事業所があり、私は津山事業所に在籍。機械メーカーの担当者さんと1対1で打合せをしながら、産業機械の設計をさせてもらっています。
横山さん:私は本社の開発部CATIAグループに所属し、現在は工場で動いている産業機械というよりはお店で使うような機械を設計しています。装置の仕組みを検討するとか、部品図を描くなどして、どんな動きをするか、どこに力がかかるかを想像しながら細部を詰めているイメージです。産業機械の設計がメインの会社ではありますが、製品の試作機の設計などにも携わっています。
砂場さん:私も本社に勤務しています。所属は技術本部 第1技術部 2課です。今は、上長にサポートしてもらいながら、仕様を具体化していく構想設計や、協力会社に作業依頼をするなどのディレクションも行っています。もちろん自分で図面を描くこともあります。
単に設計といってもその分野は多岐に渡っており、メカニクス設計(機械設計)のほか、ハード設計(制御盤・回路設計)や制御設計など、さまざまにあるんです。当社ではお客様の使用しているCADごとに合わせた部署に業務を割り振るなどして最適化を図っています。
―エース設計産業に入社した経緯と、仕事のやりがいを教えてください。
秋平さん:私は津山高専では専攻科まで進学し、その後就職しました。高専では7年間学び、クラブ活動やインターンシップ・研究などさまざまなことを経験させてもらいました。専攻科に進学したのは、大卒程度の資格が欲しいなと思ったのと、もっと研究をしてみたいという思いがあったからです。
その後就職活動をしたんですが、もともと設計の仕事に就きたいと思っていたので、エース設計産業を志望しました。
実は学生時代に2度インターンシップを経験しているんですが、どちらも製造業で、工場で溶接などの作業を見せてもらったりしました。でも、職場見学が中心のような取り組みだったので、正直あまり興味を抱けなかったんです。そういった経験も、就職活動時には判断材料になった部分はありますね。
ちなみに、当社もインターンシップの受け入れには力を入れているんです。新入社員研修のカリキュラムの一部を取り入れるなど、実際の仕事の一部を体験出来る内容になっているので、そうした意味では内容が濃く、実際に働くことが想像できるような充実したプログラムになっていると思いますので、オススメですよ(笑)。
また仕事のやりがいとしては、自分の設計した装置がエンドユーザーの現場で稼働される段階までくると、「お客様の満足のいく装置が設計できたのだな」と実感できる点ですね。
横山さん:私は大阪府大高専の本科を卒業し、就職しました。当時は進学も少し考えており、大学の説明会に参加するなどもしていました。同時に、学内で行われる企業説明会などへも参加し、社会で働きたいという想いが強くなったので、就職を選びました。
そのなかでもエース設計産業を選んだ理由は、実は「設計があまり得意ではなかったから」なんです。高専生時代はロボット製作をする部活動に入っていたんですが、自分でロボットを設計したときにあまり良いものができなくて、設計って難しいなと思っていました。
良いものができるようになるには時間がかかると思ったので、なるべく設計に携わる環境に身を置いて、長くじっくり勉強したいなという思いで設計専門のエース設計産業に入社しました。「できないから、できるようになりたい」という気持ちが強かったんです。下手の横好きと言うんでしょうか(笑)。
そうした部活動の取り組みのほか、実習の授業で工作機械を触って作業していた経験もあるので、その経験が今の仕事に生かされることも多いですね。設計図面を書く中では、この図面を基にしてどういうふうに加工されていくのかなとか、こんな加工の仕方はできるのかなとか考えていくことが楽しいです。加工や組立てをされる方の目線で図面を描く事を意識しています。
砂場さん:私は明石高専出身ですが、進学については、ほとんど考えていませんでした。勉強するより働きたいなと思って就職することにしたんです。設計の仕事は、製造業の花形部門といわれていることもあり、設計職には憧れがありました。そうした理由もあって、設計会社に就職したいと考えるようになったんです。
私も学生時代にインターンシップを経験しているんですが、機械要素をつくるメーカーで、製品テストをする部署に2週間ほど行かせていただきました。ただ、希望部署ではなかったということもあり、より設計職への思いが募っていきましたね。
いまこうして設計の仕事に就くことができ、設計自体にやりがいはもちろんありますが、いまはディレクションがうまくできていくことにやりがいを感じています。作業スピードを考慮しながら次の作業をお願いするとか、効率的にその工程をコントロールしている感じが楽しくて、いまはまだできていないところも、今後できるようになっていきたいなと思っています。
専門分野が学べる、高専の魅力
―高専に進学したきっかけと、学んだことは何ですか?
秋平さん:私が小学校高学年くらいの時にいとこが高専に通っていて、とても器用に遊び道具をつくってくれたのを覚えています。そんな姿を見て楽しそうだなと思い、高専に進みたいと思うようになりました。就職率が高いというのも理由のひとつでしたね。
本科5年生と専攻科の2年で合わせて3年間は、やりたい研究を続けることができました。当時は田んぼに生える草を除草するロボットの研究をしていたんですが、企業と共同研究をさせてもらうなど、熱心に取り組めたと思います。
高専では本当に幅広い専門分野の勉強をさせてもらったので、それは今でも自分の基礎になっています。研究を通じてスケジュールを立てて進めていくことの難しさや、報連相の大切さ、コミュニケーションを取ることの難しさなど、さまざまなことを学ばせてもらいました。
横山さん:私は子どもの頃からロボットが好きだったんです。漠然とロボットをつくりたいなと思っていたので、高専ならそれが叶うと知り、進学しました。もともと、受験のために勉強して高校に入り、また受験のために勉強して大学に行くということに興味が持てなかったんです。
そのなかでも私自身は「ロボットがつくりたい」と、学びたい分野が明確だったので、高専という学校はとても良い環境だったと思います。部活動の取り組みで「レスキューロボットコンテストⓇ」に出場するなど、存分にロボット製作を楽しんでいましたね。
高専では座学で工学の基礎的な分野を学び、実験・実習では目的を明確にしたうえで、どういう実験をすればいいか考えて計画することを学びました。また部活動で工作機械の使い方を学び、設計についても触れることができたことは、いまこうしてエース設計産業で働く礎にもなっていると思います。
砂場さん:私は兄が高専に進学していまして、それがきっかけで高専という学校があることを知りました。中学生の時は、比較的勉強ができるタイプだったので(笑)、近場の普通科高校よりも専門的なことが学べる高専がいいかなと思い、志望したんです。
ただ私は横山のように「ロボットがつくりたい!」などといった強い思いは持っておらず、機械科に進むか電気科に進むか、悩んでいました。とはいえ小さい頃から機械いじりが好きな子どもではあったので、高専に進学して学んだ内容はとても興味深く、知的意欲を満たしてくれる環境でしたね。実験・実習で、工作機械を動かして実際にものをつくる方法を学べたことは、いまの仕事にも役に立っていると思います。
―社会人になってから思う高専の魅力と、今後の目標を教えてください。
秋平さん:そうですね。専門分野の勉強ができるっていうのは大きな魅力かなと思います。横山のように「ロボットがつくりたい!」という人や明確に学びたいことが定まっている人には、社会に出て必要なスキルを学べる良い学校環境ではないでしょうか。
私はいま入社6年目ですが、まだまだこれから学ぶこともありますし、これからもたくさん経験して、知識を得て、後輩やお客様・上司からも頼られる設計者になっていきたいと思っています。
横山さん:秋平と一緒ですが、高専は専門性が高いのが一番の魅力だと思います。私自身そうした環境下で学べたことは財産だと思っています。
会社では、まだまだ学ぶべきことが多く、また私の場合はなんでも1人でやってしまいがちなところがあるので、人に頼れるようになりたいなと思って頑張っているところです。また装置の仕組みや機構をたくさん覚えて、自分の引き出しを増やしていきたいとも思っています。そうしていつかは、人からアドバイスを求められるような、多くの知識やアイデアを持った設計者になりたいです。
砂場さん:2人と同様に工作機械だとかの専門的な知識を得る機会がある高専は、一番の魅力だと思います。また私の学生時代は5年間ずっと同じクラスで、同じメンバーで一緒に進級していく環境でした。5年間ずっと共に勉強して、部活動に取り組んで、生活できたというのも良かったと思っています。
今でも高専時代の友人たちとの繋がりは強く、就職した者・進学した者と立場はさまざまですが、いろんな角度から話が聞けるというのも、かけがえのない財産になっていますね。
高専時代のこうしたコミュニケーションを生かし、会社での立ち回りもこなしていきたいと思っています。仕事をさばくにあたって、言葉だけで指示したつもりになってしまうと、聞いている人が聞き漏らしていたりとか、言い漏れていたりなど、ミスにつながってしまうので、なるべく資料を作成するように心がけ、業務に従事していきたいと思っています。
―みなさま、貴重なお話をありがとうございました!高専で学んだ知識が、「設計」という仕事に活かされていることが良く伝わりました。これからも、設計という仕事を通じて、ぜひ日本の産業に貢献していってくださいね!
エース設計産業株式会社
〒540-0031 大阪市中央区北浜東4-33 北浜ネクスビル18階(本社)
TEL:06-6945-7088(代)
https://www.ace-tech.co.jp/
●高専OBインタビュー動画(津山高専OB:秋平さん)
https://youtu.be/pGk6oBUEEBs
●高専OBインタビュー動画(明石高専OB:砂場さん)
https://youtu.be/I9kq8m7N4k0
●高専OBインタビュー動画(府大高専OB:横山さん)
https://youtu.be/4P1cN773Kw4
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