県外からの入学者も多い福島高専。距離などの問題から通学が困難な学生の多くは「磐陽寮(ばんようりょう)」と呼ばれる寮で生活をしています。寮の管理・運営を担当されている福島高専の松江俊一先生と、県外から進学してきた6名の寮生に話を伺いました。
規律ある楽しい生活と、栄養たっぷりの食事
―先生はどのような業務を担当されていますか?
松江先生:「寮務委員会」が磐陽寮の管理・運営を行っているのですが、私はその寮務委員会の責任者として、全体の統括を行っています。現在はCOVID-19の感染リスク低減のため、朝と昼に寮の食堂へ行き、手袋をして配膳の手伝いをしています。そのため、コミュニケーションは食事の際によくとっており、寮生との距離は近いと思います。
―磐陽寮について教えてください。
午前7時と午後10時に在室確認があります。これまでは、フロアごとに宿直教員が点呼していたのですが、今はカードキーで入退出を確認するシステムに変わりました。門限は平日・休日ともに午後10時です。もし、早朝や夜間に外出が必要なら、不在届を出します。現在はCOVID-19の影響から、就活や受験・帰省以外の外泊を認めていませんが、通常は、保護者の同意書があれば外泊も可能です。費用は、3食付きで月5万円ほどです。
低学年生のうちは基本的に2人部屋で、高学年生が優先的に1人部屋になります。各フロアには自習室や補食室があって、乾燥機付きの洗濯機・トイレ・お風呂は共用です。お風呂には女子6個、男子12個のシャワーが付いているので好きな時間に入ることができます。部活の学生が帰ってくる前の時間帯は特に狙い目らしいです(笑)。
COVID-19の影響でほとんど中止していますが、本来であれば新入生歓迎会・卒業寮生送別会・餅つき大会・バイキング・スポーツ大会など、多くのイベントが開催されます。今年は年に1~2回のスポーツ大会をやっと開催できている状況です。
―寮での食事について教えてください。
朝食は、午前7時10分~8時15分の間に食べることができます。午前中の授業を終えると、寮の食堂に戻って昼食を食べます。朝は雨が降っていなかったのに途中から降ってきた日は、びしょびしょになって食堂に来る子が多いのは「あるある」ですね(笑)。
夕食は、午後5時30分~8時までの間に食べることができますが、現在はCOVID-19の影響で午後7時20分までに短縮しています。
寮生 伊藤さん:昼食と夕飯はA定食・B定食があるのですが、B定食は20人分しかないので、食べたいときは早く食堂に行きます。B定食を食べたいのに授業が終わらないときは、授業の話が何も入ってこないんです(笑)。
松江先生:今年から元和食の板前さんが料理長になりまして、味のレベルがぐんとアップしました。メニューも豊富になり、育ち盛りの学生のカロリーや栄養に配慮した食事が1日3食提供されています。月に1~2回程度であれば、欠食届を出して外食をすることも可能です。学校の周りには、ファミレスやラーメン屋・回転寿司もあるので、学生は食べに行きやすいと思います。
6名の寮生へお話を伺いました
●伊藤 千紗(いとう ちさ)さん[ビジネスコミュニケーション学科5年](山形県出身)
●畑澤 賢作(はたざわ けんさく)さん[ビジネスコミュニケーション学科3年](千葉県出身)
●四本 心春(よつもと こはる)さん[都市システム工学科3年](茨城県出身)
●塚田 愛由希(つかだ あゆき)さん[機械システム工学科2年](山梨県出身)
●白石 遥菜(しらいし はるな)さん[ビジネスコミュニケーション学科3年](千葉県出身)
●岡部 さくら(おかべ さくら)さん[都市システム工学科5年](茨城県出身)
―県外から福島高専に進学したきっかけは?
畑澤さん:何度か旅行でいわき市に来たことがあって、そこでまず福島高専を知り、中学生の頃には、福島高専が開催している「わくわく体験授業」に何度も参加しました。もともと私は理系に向いていなくて、早いうちから経済について学びたかったこともあり、文系学科である「ビジネスコミュニケーション学科」に入学しました。それと、学校に近くて通学に便利なので寮のある学校に入りたかったんです。
四本さん:私は橋に興味があったんですが、地元の茨城高専では関連する学科がなかったので福島高専を選びました。通えない距離ではないんですが、朝が苦手なので、寮に入ったほうが気持ち的にも楽かなと思い、寮に入りました。
―中学卒業後から親元を離れることに不安はありませんでしたか?
伊藤さん:不安よりも逆に、寮生活に対しては「アイカツ!」というアニメの影響でいいイメージがあったんです(笑)。「早く家を出たい」とも思っていました。
塚田さん:寮生活に対して不安はありませんでしたが、いざ離れてみると実家のありがたみがわかりましたね(笑)。実家が山梨で福島から遠いため、帰省できるのは長期休暇くらいです。だからはじめのうちは少しホームシックになりました。今はもう完全に寮になじんでいるので、とても楽しいです。
―日用品などの買い物はどうしていますか?
伊藤さん:地元の鶴岡高専だとコンビニまで自転車で行くって聞いたことがあるんですけど、ここは近くにドラッグストアがあって、大体のものは揃います。その点において福島高専はかなり恵まれているほうです。ちょっと行けばコンビニも2~3軒あって、スーパーも本屋さんもなんでもあります。生活には困らないですね。
白石さん:必要なものは実家から送ってもらっています。服などは帰省した時に両親と一緒に買いに行くことが多いです。寮生活で使うお金は友達と出かける分くらいです。
塚田さん:主に休日に買い物に行きます。今までは、友達と買い物に行くという感覚が全くありませんでしたが、寮だといつでも友達と一緒に買いに行けるので、それだけでも楽しいです。
―寮に入って、よかったと思うことはありますか?
岡部さん:私は一般の高校から高専に編入し、寮には4年生から入ったのですが、趣味が合う友達と出会うことができました。学科が違うので、寮に入らなかったら話すこともなかったですし、人脈を広げることができるのは寮の魅力だと思います。
白石さん:寮にいれば先輩とも仲良くなれるので、学生生活のアドバイスがもらえたり、勉強も教えてもらったりしています。とてもありがたいです。
伊藤さん:寮にあるオーブンを自由に使えるので、お菓子作りが上達したことですかね。あとは、実家にいると甘やかされて、だらだらと生活してしまうのですが、寮に入ってからは午前5時には起きるようになりました(笑)。規則正しい、きちんとした生活を送れているかなと思います。
世界中から学生を集める「国際寮」
―新しい寮が建設されているんですね。
松江先生:磐陽寮は、建設されてから50年ほど経過しています。そのため、現在では建物が古くなってしまって、お風呂場の水が止まったり排水溝が詰まったりといった、さまざまな問題があるんです。
そこで本年度、磐陽寮を新しくする計画の第1段階として、留学生の居住に対応した「国際寮」(仮称)の建設が始まりました。さらに、もともとあった合宿センターを取り壊して新しく女子寮を建設、そして男子寮も内部を大改装する予定です。完成は、令和5年度を目途としています。
現在は定員が240人程度ですが、全てが完成すると300人を超す見込みです。これから作る寮はすべて個室で、ワンフロアに7~8人、多いところで10数名を想定しています。フロアごとに勉強や談笑のための共用スペースを広くとって、トイレやシャワー・洗濯・電子レンジなどを設置した補食コーナーが配置される予定です。学年を問わず、フロア単位で協力するという新しい寮生活の形になるのではないかと考えています。
5年間を通して寮で過ごした時間が宝物になったという卒業生の話をよく聞きます。高専は勉強が難しく、留年も多いので卒業すること自体が大変です。そんな中で、親元を離れて寮生活を送るわけですから、寮生は企業からの評価も高いんです。
そして現在、福島高専では「廃炉人材育成事業」に取り組んでおり、原子力や放射線・廃炉に関する教育に力を入れています。これを機に、福島で学びたいという多くの学生が、日本中そして世界中から集まり、充実した寮生活を送れるようにサポートしていきたいと思います。
福島工業高等専門学校
〒970-8034 福島県いわき市平上荒川字長尾30 磐陽寮
TEL 0246-46-0737
https://banyoryo.fukushima-nct.ac.jp/
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