高知県に根付いた、金属部品の製造業である「株式会社坂本技研」。2010年から高知高専の秦隆志先生と「ファインバブル発生器」を共同開発し、全国展開を推し進めています。現役社員であり、現場をよく知る高知高専OBのお二人にインタビューしました。
高知高専の繋がりから、ファインバブル事業へ
事業本部 営業技術部 山本健児さん(1998年 高知高専電気工学科卒)に、坂本技研について伺います。
―坂本技研さんは、高専OBが多い会社なんですね。
そうなんです。1988年に設立した高知県にある会社なんですが、社員35名の約30%が高知高専卒で、社長もそうなんですよ。
―業務内容をお伺いできますか?
当社は、産業機器に組み込まれる金属部品の製造業で、「マシニングセンタ」という数値制御工作機械を使用した切削加工を行っています。中でも、水や油などの液体が流れる「流路部品」の製造を得意としていて、建設機械で使用される油圧機器やポンプ・火力発電のボイラなどの特殊な部品をいろいろとつくっています。
高知高専の秦先生と出会ったのが約10年前で、弊社の社長がお世話になっていた高知高専の先生が紹介してくださいました。秦先生は当時、研究室で使用する樹脂の容器やピペットなどを切り貼りし「マイクロバブル発生器」を作られていて、これを製品化できないかとお話をいただいたんです。現在はファインバブルと呼ばれていますが、当時はマイクロバブルや微細気泡と呼ばれていました。
秦先生のバブル発生器は「水を羽根でねじる」という特徴があって、それが当社の持っている流路部品の技術と同じという接点がありました。そこで、秦先生と当社の技術を使って「ファインバブル発生器」を共同開発し、5年前から事業化して、社内に「流体装置事業部」も立ち上げました。
ファインバブルの製品は一般的に、医療や半導体産業・家庭用シャワーヘッドなどいろいろあるんですが、当社では自然豊かな高知で活用できることを考えて開発を進め、農業・水産などの産業を中心に採用いただいています。お客さんから「実際に使える製品にしてほしい」と要望があり、発生器とポンプをセットにして「浄化したいところに入れればすぐ使える」という形でお届けすることにも力を入れています。
高知高専OBの若手・中堅社員が語る、高専の魅力と仕事のやりがい
ここからは、入社3年目の流体装置事業部 川村一樹さん(2018年高知高専機械工学科卒)にも加わっていただき、お二人に高専時代や今の仕事内容について伺います。
―高知高専に進学したきっかけはなんでしたか?
川村さん:もともと、ものづくりというか、教科なら美術とか技術が好きで、機械や建設の勉強がしたいと思っていました。就職率が良いというのも魅力的でしたし、正直、自転車で通える距離で通学が楽というのも大きかったです(笑)。
山本さん:私は1998年卒業なのでだいぶ前の話になりますけど(笑)。当時は高知県には工業系の学校って高専か工業高校しかなかったんですよ。今は高知工科大ができましたけど、高知の大学には工学部がなかったので、工業系にいこうと思ったときに、自然と高知高専を選んでいました。
―高専に入ってよかったと思うことはありますか?
川村さん:やっぱり就職のしやすさですね。高専生が在籍している会社は、先輩が会社に認められていることが多いので、高専生の採用に力を入れている企業が多いと思います。同級生の大半は県外に就職したんですが、大学から就職すると院まで行かないと入れないような大企業にも、専門知識に特化しているため採用してもらえる。やっぱりそういうところは、行ってよかったとみんな思ってると思います。
それと「機械が好き」という学生がほとんどなので、同じ感覚や趣味を持っている人が多くて、私にとってはすごく居心地のいい学校でした。だいたいゲームの話ばかりしていましたけどね(笑)。
山本さん:就職に関連してだと、特に高知高専がだと思いますが、OB・OGと学校の連携が深いと思いますね。私は中途でこの会社へ入ったんですが、それまでは、10年ほど愛媛県の会社にいました。地元に戻りたいと思って高知高専の先生に相談したところ、当社を紹介されたんです。実は、高専卒業後に入社した前の会社も、高知高専の先生からの紹介でした。
「(社)高知高専テクノフェロー」というOB会みたいな組織があって、再就職の斡旋や、共同研究などで企業と高専とを繋ぐ役割をされているんです。「こういうところがいいから、この会社はいいと思うよ」といった、内情をよく知った上での深い情報を教えてもらえて有難かったです。高専っていう小さな組織だからこその、ちょっと濃い情報網と言えるのではないでしょうか。
―卒業しても高専のつながりは続くんですね。川村さんが坂本技研に入ったきっかけは、なんでしたか?
川村さん:もともと、県内の企業に就職したいと思っていたんです。インターンシップでは県外に行ったんですけど、地元を離れるのはやっぱり寂しかったし、長男というのもあって、親がいる地元に残りたいという気持ちがありました。
高知高専では、学内で地元企業だけを集めた就職セミナーがあって、そこで県内の企業をいろいろと見ていく中で、坂本技研を見つけました。私が就職しようと思った頃は、すでにファインバブルの事業が始まっていて、話を聞いて面白そうだなと思ったのがきっかけですね。
―現在は、どのような業務を担当されていますか?
川村さん:所属している「流体装置事業部」では、秦先生と共同開発しているファインバブルや乳化装置などの開発・設計・製造・販売まで行ったり、SL機関車やボイラ関係の設計を行ったりしています。その中で私は、二次元図を三次元の図面に起こして、流体解析のシミュレーションをしたり、ファインバブル製品の組立・設置や、販売後のサポートをしたり、いろいろなことをやっています。
山本さん:私は、前職は技術職でしたが、当社には営業として入社しました。私が所属しているのは「営業技術部」というところなんですが、技術的な内容もわかった上で、終始全体を見渡すといった幅の広い仕事をしています。いろいろまわりに迷惑をかけながら、けっこう自由にやらせてもらっていますね(笑)。
営業って、足繁く客先に通って門前払いを受けながら…ということを想像する方もいるかと思いますが、有難いことに、当社の場合は高知高専の秦先生のご紹介も含めて、お問い合わせや紹介をたくさんいただいており、そういった要望に対して、うちで解決できることや、他社と協力してできることを提案しています。
―どういったところに、やりがいを感じますか?
山本さん:ファインバブルに関していうと、お客さんが漁師や農家の方だったりするんですが、「ファインバブルがほしい」ではなくて「ファインバブルの効果」を求めていることが多いんです。例えば、エビが100匹死んでいるのを10匹までに減らしたいとか、そういった課題の解決を求められるので、いろんな角度で解決策を見つけないといけません。大変ですけど、自分の新しい見方の発見にもなって、やりがいでもあるし、面白いなって思いますね。
川村さん:私は、お客さんが欲しい商品を開発して、訪問して試験して、感想を聞いて…ということを行っているんですが、ただ注文が来たものを作ればいいという訳ではないので、大変ではあります(笑)。でもお客さんの声を実際に聞いて、開発設計やシミュレーションなど、いろいろな仕事を経験できることにやりがいを感じます。
ファインバブルの開発に力を注ぐ、坂本技研のこれから
―坂本技研さんの今後の展開について教えてください。
山本さん:今後は、これからの発展性に期待して、ファインバブルの事業をコアにしていけたらと思っています。現在は、流路部品などの切削加工業務が80%を占めていて、ファインバブル事業はまだ20%くらいですが、会社としても力をいれているところです。
当社は、水産関係の事例を特に多く持っていて、全国のいろいろな場所で使用していただいていますが、ファインバブルの効果が強く出るのはまだまだ一部です。そういう意味で研究要素が強い分野ですが、今も秦先生が協力してくださっています。新たにファインバブル事業に取り組みたい企業にとっては、高知高専とも協力しながらできるのはメリットだと思うので、ぜひご相談いただきたいですね。
それと、自社製品の開発をもっとしていきたいし、していかないといけないと思っています。さっき川村が言っていたように大変なところもあるんですけど(笑)、高専生や高専OB・OGの方も含めて、ファインバブルでいろいろなことをやってみたいと思う方がいたら、ぜひ声をかけていただきたいと思っています。
株式会社坂本技研
〒783-0022 高知県南国市小籠941-6
TEL : 088-864-4277
https://www.sakamotogiken.com/
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