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不動産業界No.1のインフラを目指して。業界の知見と高度な技術を生かして社会の役に立つ!

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不動産業における課題をテクノロジーで解決するサービスを提供している「イタンジ株式会社」の代表取締役 社長執行役員 CEOである永嶋章弘さんは、木更津高専の卒業生です。業界の最先端を突き進む永嶋さんが、高専生に送るメッセージとは。

大学進学で世界が広がった

―IT業界を意識するきっかけは何でしたか。

私が中学生の頃は、いわゆる「ネット黎明期」と言われる時代。新しいものが好きだった父のおかげで、我が家にも早々にパソコンとネット回線が用意されました。見よう見まねでホームページやメル友をつくったりしていくうちに、「インターネットって面白いな」と思うようになったと記憶しています。

当時のホームページにはアクセスカウンター(訪問者数をカウントするもの)を設置するのがブームで、私もコードをいじってアレンジしていました。今思うと、これがITへの入口だったのでしょう。この頃は明確な将来の夢はなかったのですが、「IT革命」というワードが流行っていたので、何となく「これからはITの技術が重要になる。自分もそれを使って何らかを世の中に表現できるようになりたい」という思いはありました。

そんなときに、塾の先生から高専を紹介されたのです。「高専ならプログラミングなどのIT分野を専門的に学べる」と聞き、興味が湧きました。自立願望があった私にとって、寮があるのも非常に魅力的でした。

―高専で印象に残っていることはありますか。

服装や髪の色が自由な、高専ならではの校風はやはり印象に残っています。2002年の日韓ワールドカップ開催時は、選手の派手な髪色を真似たこともありました。

何より思い出深いのは、寮生活でしょうか。当時は上下関係が厳しく、入寮して早々に体育会系の洗礼を受け、衝撃的でした。しかし、この経験があったからこそメンタルが鍛えられたようにも思います。

高専時代、サッカー部員、寮のルームメイトと並んでピースサインをする永嶋様
▲高専のサッカー部員、寮のルームメイトと

学業面においては、プログラミングやOSの仕組みなど、今でも役に立つ基礎をしっかりと学べたことが良い点でした。普通の高校と比較してテストの回数が多いとか赤点のラインが厳しいとか大変な面もありましたが、楽しい学生生活を送りました。

沖縄への卒業旅行で、クラスメイトと記念撮影
▲沖縄への卒業旅行で、クラスメイトと

―卒業後、筑波大学に進学したのはなぜですか。

高専は専門的である分、限定的な環境なので、もっと広い世界を見たかったからです。「これを学ぶために大学へ」というよりは、アカデミックな環境をのぞいてみたいという好奇心が大きかったと思います。筑波大学は伸び伸びとした環境のキャンパスがあり、実家からもほどよい距離にありながら通うには遠すぎるため一人暮らしができるという点で選択しました。

実際に大学に行ってみると、高専生は専門知識が抜きん出ているのだと実感することが多々ありました。理論だけではなく実習を通して実務的な経験から知識を吸収していることはやはり高専の大きな強みです。

一方で、大学のほうが世の中を多角的な視点で見ている人が多いとも感じました。あくまでも主観ですが、高専には自分の興味関心を突き詰めて研究にのめりこむ学生が多いのに対し、大学には「起業をしたい」とか「世の中の役に立ちたい」とか大きな願望を抱く学生が多い印象を受けました。

マラソンサークルでフルマラソン大会に出場したときの永嶋さん。チームメイトと記念撮影
▲マラソンサークルでフルマラソン大会に出場したときの永嶋さん

起業家サークルもあり、「会社に就職することが当たり前」と考えていた私にとってはなんとも刺激的な出会いでした。そもそも私は、中学生の頃から「技術を使って世の中を変えたい」という意志があったので、高い志を持った人に囲まれる環境で過ごせたことは良い経験となりました。

大学生の頃、自転車で四国を一周して帰宅したときの永嶋さん。自転車を傍らに大きく手を広げている
▲大学生の頃、自転車で四国を一周して帰宅したときの永嶋さん

中学生の頃に抱いた志を実現

―大学院で修士取得後は企業に就職されています。決め手は何でしたか。

世の中の役に立つ仕事がしたいとの思いから、当時勢いがあり、かつ世の中にインパクトを与えている印象が強かったWebサービス業界での就職を志しました。その中で出会ったのがIT・通信事業の「ニフティ株式会社」です。入社し研修を終えてからの約3年間はグループ会社の「株式会社コムニコ」に出向し、SNSをビジネスに活用するためのシステム開発などに携わりました。

ベトナムに赴任していたこともある永嶋さん。街中での一枚
▲ベトナムに赴任していたこともある永嶋さん

コムニコは当時、10人くらいの社員しかいないスタートアップ企業でした。スタートアップで働く魅力はビジネスモデルの構築から関われることです。自分の裁量で仕事を進めるやりがいや楽しさをコムニコの現場で知り、「もっとこんな働き方がしたい」と思うようになりました。

ベトナムで開発に携わっていた頃、現地のエンジニアメンバーのみなさんと記念撮影
▲ベトナムで開発に携わっていた頃、現地のエンジニアメンバーのみなさんと

そこで、2014年、創業して間もない不動産テック企業「イタンジ」に転職したのです。周囲からは「せっかく大きな企業に就職できたのに」と言われましたが、とにかく自分がおもしろいと感じることを仕事にしたかったのです。身近な産業に関わってみたいとも思っていたので、生活に欠かせない「衣食住」のうちの「住(不動産)」を担っている点も惹かれたポイントでした。

―転職してみて、いかがでしたか。

初期のイタンジは「不動産管理会社と入居希望者を直接つなぐ」というコンセプトの賃貸物件情報ポータルサイト「HEYAZINE(ヘヤジン)」や、来店なしで内見ができ、チャットを使って物件の質問も可能な不動産仲介サービス「nomad(ノマド)」を提供していました。しかし、いずれも不動産業界の慣習についての知識が不足していたために、なかなか軌道に乗せることができませんでした。

採用イベントに出展されたときの永嶋さん。社員と一緒に
▲採用イベントに出展されたときの永嶋さん

トライアンドエラーの繰り返しで困難続きではありましたが、事業のひとつとして実際に不動産賃貸仲介業を経験し、業界の課題を肌で感じられるようになりました。その経験をもとに、チームで物件確認電話の自動応答システム「ぶっかくん」を開発したのです。物件の空室確認を自動音声化することで仲介会社と管理会社間の電話対応の手間を削減。また、営業時間外や不在時にも自動応答できるため、収益機会も逃しません。

まさに顧客ニーズの真意をとらえたサービスで、この開発を機に、イタンジの業績は右肩上がりになりました。今振り返っても「なんて素晴らしいものをつくったのだろう」と自画自賛するほどです。何より、この経験は大きな自信につながりました。

ぶっかくんチームのみなさんと
▲ぶっかくんチームのみなさんと(左:永嶋さん)

そんなときに友人から「株式会社メルカリ」に誘われました。当時のメルカリはまさに“日本のスタートアップの雄”。自分の力がどこまで通用するか試したいという気持ちで、2016年にはメルカリにプロダクトマネージャーとして転職しました。

イタンジ退職時に、当時のデザイナーからプレゼントされたイラスト。柴犬や永嶋様の似顔絵が描かれている
▲イタンジ退職時に、当時のデザイナーからプレゼントされたイラスト
メルカリでMVPに選ばれたときの永嶋さん。メルカリの旗をかかげている
▲メルカリでMVPに選ばれたときの永嶋さん

その後、2018年に二代目CEOに就任した野口から声をかけられ再びイタンジへ。執⾏役員としてデザイン部⾨、マーケティング部⾨などを管掌し、2023年11月、代表取締役 社長執行役員 CEOに就任しました。

―「イタンジ」を、これからどのような会社にしていきたいですか。

CEOに就任したこの1年は、組織の仕組みづくりに全力を注ぎました。イタンジは急激に成長したので、組織が事業フェーズに適していない部分が目立ち始めていたからです。今後の事業成長に耐えられるよう、持続性のある体制構築を進めました。

今、ようやくそれが形になってきたので、これからは事業に全力集中したいと考えています。やりたいことは山ほどありますから、どのように実現していくかを考えるフェーズですね。常に大切にしたいのは創業当時から掲げている「テクノロジーで不動産取引をなめらかにする」というミッションです。

イタンジ全社アワードで、壇上にて会社の目標についてメンバーに伝える永嶋さん
▲イタンジ全社アワードで、会社の目標についてメンバーに伝える永嶋さん

私たちの強みの1つは、不動産業界内での「シェア率」。ありがたいことに、リーシング・マネジメント・コンサルティング株式会社の「引越しシーズンから探る賃貸住宅不動産市場の最新ニーズと傾向2024」において、4サービスで2年連続賃貸不動産仲介会社の利⽤率No.1を獲得しています。

大きなマーケットシェアを持つインフラであることによって、業界そのものをアップデートすることができ、不動産取引に関わる全ての人に感動を与えることができると考えています。今後は、このナレッジを活かして不動産業界やその周辺領域をテクノロジーでサポートし、海外に進出していくことも目標のひとつです。

2023年12月にハウスマートをM&A。ハウスマート創業者の針山さん(左、現:イタンジ執行役員(売買支援事業担当))との対談インタビュの様子
▲2023年12月にハウスマートをM&A。ハウスマート創業者の針山さん(左、現:イタンジ執行役員(売買支援事業担当))との対談インタビューにて

学生の強みを生かして挑戦を!

―イタンジが求める人材について教えてください。

他社が思いつかないようなシステムを開発してきたのも、イタンジの強みのひとつ。200名を越える規模になった今でも、柔軟にモノ・コトに向かうカルチャーが残り続けていることがさまざまなプロダクトを生み出す要因になっていると考えています。まさに、そんな発想の飛躍ができる人こそがイタンジが求める人材です。

何と言っても、「不動産業界のインフラになる」という共通のビジョンに向かい「人を感動させたい」「世の中の役に立ちたい」という高い志を持ってくれる人と一緒に働けたら、うれしいですね。もちろん、高専生のインターンも受け付けています。

イタンジのボードメンバーのみなさんと並んで
▲イタンジのボードメンバーのみなさん(中央:永嶋さん)

―高専生へメッセージをお願いします。

テクノロジーが普及し世の中に様々な技術が溢れていることで、技術そのものの価値は相対的に下がり、ただ技術があるというだけでビジネスが成功する時代ではなくなっています。とはいえ、高専で学べる高度なスキルは非常に大切。ぜひ、技術を学ぶとともに、どうすれば社会やビジネスに役立てられるかという視点も養ってほしいと思います。

また、今は起業がカジュアルにできる時代。手順や必要なものは、ネットで検索すれば情報が出てきます。ぜひ、ビジネスに関わる経験を早いうちから積んでください。人生の中で、最も時間が豊富で失敗をしても致命傷にはならない貴重な学生時代。リスクを恐れずに柔軟なアイデアでたくさん挑戦してみましょう。

私自身「あのとき、チャレンジしていたらよかった」と思うことがたくさんあります。Facebookのような、世界中で使われるシステムを日本の学生がつくったっておかしくない。そんな高専生がこれから増えることを期待しています。

永嶋 章弘
Akihiro Nagashima

  • イタンジ株式会社 代表取締役 社長執行役員 CEO

永嶋 章弘氏の写真

2006年3月 木更津工業高等専門学校 情報工学科 卒業
2008年3月 筑波大学 第三学群 情報学類 卒業
2010年3月 筑波大学大学院 システム情報工学研究科 修士課程 修了
2010年4月 ニフティ株式会社
2014年3月 イタンジ株式会社
2016年8月 株式会社メルカリ
2018年10月 イタンジ株式会社
2023年11月より現職

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