![電気・電子の道から、情報コースの教員へ。興味があったから今につながる「電気・電子と情報」を組み合わせた研究のサムネイル画像](https://gekkan-kosen.com/wp-content/uploads/2024/05/【サイズ調整】プロフィール写真-1-800x613.jpg)
鶴岡高専の電気工学科(現:創造工学科 電気・電子コース)を卒業し、現在は母校の情報コースに務めている髙橋聡先生。教員になったのを機に別の分野に進んだ髙橋先生ですが、現在は電気・電子で培った知識と情報コースという環境を生かし、ユニークな研究を進めています。
“宝の山”で見つけた研究のきっかけ
―鶴岡高専に進学を決めた理由を教えてください。
「筆者の考えを述べよ」といった問題が出るたびに「それは筆者にしかわからないだろう」とつっこむほど国語が苦手な中学生でしたので、「自分は理系タイプだ」という自覚がありました。ですので、工業高校を受験するつもりでしたが、進路指導の先生から高専を紹介されたんです。高専の存在は、そこで初めて知りました。
そこで、中3の夏休みに地元にある鶴岡高専のオープンキャンパスに行き、体験実習に参加してみることに。すると、思っていた以上に面白く「ここならいろいろなことが学べる」と感じ、進学を決めました。電気工学科に進んだのは、両親から「電気の分野を学んだほうが将来は安定するだろう」と言われたからです。
―実際に進学して、いかがでしたか。
想像以上に勉強が難しくて衝撃を受けました。中学ではそれなりに授業を受けていればずっと高成績をキープできていたのですが、高専に入学して最初の試験では40人中36位という結果になってしまい……。そこからは年に4回ある試験に向けて、計画的に勉強をする日々を送っていました。
ただ、テニス部に入るなど、勉強以外も楽しい学校生活でした。寮の友人たちとホラー映画のビデオを観ていた際、消灯時間に気づかず突然電気が消えて慌てふためく……なんて思い出もあります(笑)
―高専ではどんな研究をしていたのですか。
特定の研究をしたいという思いはなく、どの研究室に行こうか考えていたときに、とある先生が「プレステ3を入荷しました」と言っていたのを聞いて、そこを選びました。後に罠だと気づいたのですが……。
私がいた研究室は独特で、先生が研究課題を与えたり教えたりということは、ほぼゼロに等しかったんです。研究室に山のように積まれたよくわからない何かの中から興味があるものを自分で探し出し、そこからやりたいことを見つける学生が多かったように思います。はたから見たらガラクタのようですが、今思うとまるで“宝の山”のようでもありました。
![高専5年生の頃の髙橋先生](https://gekkan-kosen.com/wp-content/uploads/2024/05/【ボカシ】高専生の頃のお写真.jpg)
そこで私が本科の際に研究していたのは、プレステ3に別のOS(コンピュータ全体の動作を管理する基本ソフトウェア)を入れ、動画での顔認識処理のシステム研究です。専攻科では、センサや信号処理に興味が湧き研究を行い、そこから豊橋技術科学大学の院に進学することを決めました。
IoTを活用した積雪計測と、IoT人材の育成
―母校の教員になった経緯を教えてください。
長男だったこともあり、両親の要望で就職は地元ですると決めていたからです。ただ、博士の学位を取得するとなかなか見つからず……。そんなときに母校の鶴岡高専から教員募集が出たと知り、ありがたいことに採用していただきました。
ただ、電気・電子を学んでいたはずなのに、今務めているのは情報コースです。まったく違う分野ですし、情報は日々進化する世界なので、いまだに勉強が欠かせません。とは言うものの、学生の頃から情報系にも興味があり、高専生時代の研究室でも自作のパソコンを組み立てるくらいでしたから、今いる分野でも楽しめています。
―現在の研究内容について教えてください。
主に、「スマート社会(Society5.0)に向けた積雪深さ計測デバイスの開発に関する研究」と「IoT 人材育成に向けた教育実習型デバイスの開発に関する研究」の2つです。
スマート社会の実現のためにはIoT(Internet of Things)の活用が必要不可欠で、積雪計測においてもIoTが活用されはじめています。ところが、一般的に使用されている超音波式やレーザー式を用いたものは膨大な費用が必要で、広く活用するのは難しいのが現状です。
そこで、電気的に積雪を検出する超低コスト・低消費電力なIoTデバイスの開発を進めています。積雪深さを計測できれば、リアルタイムデータをもとに除雪車の出動タイミングや効率的なルート検索が可能になります。現在は完全ワイヤレス化を目指しているところです。鶴岡高専がある山形は豪雪地帯ですから、地域貢献につながれば、これほどうれしいことはありません。
![積雪検知IoTデバイス](https://gekkan-kosen.com/wp-content/uploads/2024/05/積雪深さ計測デバイスの開発に関するお写真.png)
―もうひとつの研究についても教えてください。
高専という環境で研究を続ける魅力は、教育に深く関われる点だと感じています。現在の日本は、IT人材の不足が大きな課題です。特に、AIやビッグデータ、IoTなどの先端IT技術は今後の産業界を変革する可能性を秘めているため、即戦力となるエンジニアの育成は高専の使命だと感じています。
しかし、先端IT人材を育成するための具体的な教育カリキュラムの目途は立っていないのが現状です。そこで、あらかじめ用意したデバイスを組み立てるだけで、小学生でもIoTが学べるような研究を進めています。
![教育実習型IoTデバイスの全体図](https://gekkan-kosen.com/wp-content/uploads/2024/05/教育実習型デバイスの開発に関するお写真.jpg)
本研究をきっかけにIoTに興味をもったり、様々なアプリケーションへの応用を学生が主体性を持って考えられるようになったりする未来が目標ですね。
高専卒業生の進路は充実している!
―学生とともに研究をする楽しさはどこにあると感じますか。
自分にはない発想に出会える点でしょうか。最近では、先述したデバイスの研究を応用し、ゲームのコントローラを開発した学生もいました。やはりゲームなど身近なテーマに関連付けると興味をもちやすいので、これは学生ならではの視点だなと感心しましたね。
![髙橋研究室のみなさまと](https://gekkan-kosen.com/wp-content/uploads/2024/05/髙橋先生の研究室のお写真.jpg)
―高専にはどんな学生が合うと思いますか。
高専は、必ずしも理数系の勉強ができる人に向いているわけではありません。受験科目には国語と社会(※)がありますし、入学してからも文系の授業が待ち受けています。私は、それよりも好奇心をもち、様々な分野に関心を持てる人にこそ、高専を勧めたいと考えています。
※多くの高専の学力選抜は国数社理英の5科目試験ですが、高専によっては4科目試験の場合もあります。
ずっと電気・電子の分野にいた私ですが、現在は情報の道に進んだからこそ、研究の幅も広がったと思っています。センサや信号処理といったこれまでの電気・電子の知識と情報をかけ合わせた結果、今があるのです。
もっとさかのぼれば、高専時代に自分から興味をもって“宝の山”からパーツを探し出し、研究内容を見つけられたことが、今につながっている。やはり「好奇心」に勝るものはないと感じます。
![研究室メンバーの皆さんとBBQを行った際の記念写真](https://gekkan-kosen.com/wp-content/uploads/2024/05/【ボカシ】そのほか、学生と写っているお写真がございましたらぜひ.jpg)
―高専を目指す小中学生にメッセージをお願いします。
5年制の高専について「普通高校に行くよりも2年分、社会経験が遅れる」と考える人もいますが、私は高専こそ社会に出るためのステップアップになると考えています。異なるタイプや年齢の学生とともに専門分野を学べる高専に身を置くことは、すでに社会経験のスタートだと言えます。
また「将来は専門的な学びを深めたい」と考えているのであればなおのこと、若いうちから専門性を追求できる高専はおすすめです。教員の立場から発言すると、近年はますます卒業後の進路が充実しているとも感じます。
5年という長い月日をともに過ごすので、友人同士の絆も深まります。最近は年齢のせいか体調面の話で盛り上がりがちですが、当時の寮生とは今でも年に一度集まる仲です。ぜひ、あらゆるものに興味を持ち、高専で自分の道を見つけてください。
髙橋 聡氏
Sou Takahashi
- 鶴岡工業高等専門学校 創造工学科 情報コース 准教授
![髙橋 聡氏の写真](https://gekkan-kosen.com/wp-content/uploads/2024/05/【サイズ調整】プロフィール写真-1-470x360.jpg)
2009年 鶴岡工業高等専門学校 電気工学科(現:創造工学科 電気・電子コース) 卒業
2011年 鶴岡工業高等専門学校 専攻科 生産システム工学専攻 電気電子・情報コース 修了
2013年 豊橋技術大学大学院 修士課程 電気・電子情報工学専攻 修了
2016年 豊橋技術大学大学院 博士後期課程 電気・電子情報工学専攻 修了
2016年 鶴岡工業高等専門学校 創造工学科 特命助教
2020年 鶴岡工業高等専門学校 創造工学科 助教
2021年より現職
鶴岡工業高等専門学校の記事
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