主に食品メーカーや卸・小売店向けに、食品の計量や包装、検査機器の開発や生産・販売を行っている「株式会社イシダ」。計量包装業界では国内No.1・世界No.2という高い売上高を誇り、多くの高専卒者が活躍しています。その魅力と、現場で働く高専OBのお話を伺いました。
失敗を恐れず革新を。根付く「チャレンジ・スピリット」
「株式会社イシダ」は、今年で創業128年の計量包装機器メーカーです。お客様は、主に食品メーカーや卸、小売店であり、「はかる・包む・検査する・表示する」などの高度な技術で、いまや世界100ヶ国以上の「食の安全・安心」を支えています。
例えば、スーパーには、正確な重さと値段がラベリングされたお肉のパックや、異物なく同じ分量で梱包されたスナック菓子などがずらりと並んでいますが、この当たり前はイシダが支えているんです。決まった重さに計量するための組み合わせ計量機や、異物混入を検査するX線検査装置など、食品製造における自動化・省人化をサポートしています。
イシダでは現在119名の高専出身者が、開発設計・生産技術・品質保証・営業技術・カスタマーエンジニアなどさまざまな職種で活躍しています。AI・IoT・ロボット等の幅広い技術の活用も進めているため、高専出身者の活躍できるフィールドがたくさんあります。
大卒・高専卒などの学歴での差は、一定の年齢でフラットになり、学歴よりも実力主義で、頑張った分だけ評価される社風のため、やりがいをもって働ける環境が整っています。
高専OB社員インタビュー
―イシダに入社した経緯と、仕事のやりがいを教えてください。
木村さん:私はもともと電気やガス・鉄道などに興味があり、インフラ業界を軸として企業を探していました。イシダの求人票には「食のインフラを支える会社」とあり、「食のインフラってどういうこと?」と興味をもったんです(笑)。さまざまな食品の計量・検査等、生活のとても身近なところで活躍していることに魅力を感じ、入社しました。
現在はカスタマーエンジニアとして、主に食品メーカーに設置されている計量機や検査装置の納品・点検・メンテナンス業務を行っています。機械が故障してしまうと、当然ながら生産ラインが停止しますし、1mm微調整することで結果が変わるというシビアな場面もあります。そのような状況で修理し、復旧した際には達成感があってお客様からも感謝されるので、やりがいを感じますね。
黒川さん:私は多種多様な製品を取り扱っている点と、高専本科卒では少ない、開発部門の募集があったことが非常に魅力的でした。とにかく設計・開発の仕事がしたかったので、面接で「絶対に製品開発がしたい!」と正直に伝えたんです(笑)。今、実際に製品開発に携われているので非常にありがたく思っていますね。
主な仕事は装置のメカ設計開発で、現在は、人が手作業で行っていた食品配送用コンテナに自動で製品を移載する「i-SAI(アイサイ)シリーズ」の装置全体の開発に、リーダーとして携わっています。
「こういう製品が欲しい」と言われるだけで、それを実現するためにどうしたらいいか、一つずつ方法を考えなければいけないので大変ですが、それがおもしろいですね(笑)。チームで仕事を進めるので、人と人との繋がりを作るのも大変ですが、力を合わせて一つひとつ課題を乗り越えていくことにもやりがいを感じます。最終的に装置がお客様に納品され、喜ばれたときは本当に嬉しいですよ。
社会人になってから思う、高専の魅力
―高専に進学したきっかけと、学んだことは何ですか?
木村さん:もともと、工業系の学校へ進学しようと思っていたときに、塾の先生から高専を紹介してもらいました。就職のときの求人倍率が高くて、将来の選択肢が多いと思ったことも理由のひとつですね(笑)。
高専では機械を専攻し、課外活動ではソーラーカーの製作をしていました。高専祭などでは小学生に電子工作を教えたのですが、「分かりやすく伝えるためにどうすればいいか」ということはすごく考えましたね。授業では1年生のときから工作機械を使用する実習があり、それは今の仕事にも役立っています。
黒川さん:私は、とにかく早く社会に出て、装置の開発や設計をしたいと思っていました。最短で開発職につける方法を考えたときに、高専の存在を知り、中1の夏には学校見学会に参加していましたね。
高専では、ゼロから何かを始める難しさと楽しさ、勉強の大事さ、懸命に努力すれば、だれかが助けてくれることを学びました。実習では、奇抜なことをやろうとして、失敗ばかりしていましたよ(笑)。
5年生の時には、「半年でロボコン部に勝とう!」と、全員素人でロボコンにも参加しました。ロボコンの課題は年々難しくなっているのですが、僕たちはゼロからで時間も経験もなかったので壊れるのは仕方ない、試合前に全部交換すればいいと割り切って、どんどん次に進めることにしました。
何回も作るうちに、3日あれば1台分の部品ができるようになっていましたね(笑)。予選で負けましたが、予定通りの性能が出て無事完走することができました。高専には、チャレンジに寛容な風土と、そういった学生を支援する雰囲気があったように感じます。
―社会人になってから思う高専の魅力と、今後の目標を教えてください。
木村さん:現地でお客様の要望をお伺いしていると、柔軟に対応しなければいけない場面が多々あります。例えば、急遽穴開けの作業が必要になったりすることがあるのですが、高専で学んだおかげで、工作機械などを使ってその場で対応できています。
今後はもっと、幅広く知識や技能を身に付けたいですね。計量機や検査装置以外にも様々な機械があるので積極的にトライして、マルチに活躍できるカスタマーエンジニアを目指したいです。
また、イシダには新入社員と年齢が近い先輩が「エルダー」として業務指導を行う人事制度があったり、客先に一人で出向いて困ったときに、気軽にアプリで相談できる体制が整っていたり、相談しやすい環境があります。これまで私も助けてもらってきたので、今度は後輩が困っていたときに助けられるようになりたいです。
黒川さん:高専は実験などが豊富なとても実践的なカリキュラムなので、知識だけではなく、「たとえ失敗に終わっても実際に経験している」というのは大きな強みです。製品開発はプレッシャーもありますし、困難に直面することも多くありますが、粘り強く考え、解決できるだけの経験と失敗に負けない気持ちを身に付けられたと思います。
今後は発売したばかりの「i-SAIシリーズ」が日本で、そして世界でもっと売れるように着実に進化させていきたいです。また、イシダは学歴よりも適性を重視してくれる会社で、やりたいことをしっかり伝えて、会社のためになると判断してもらえれば、やらせてくれる社風だと思っています。だからこそ、これまでにない新しい着眼点で、会社の柱になるようなヒット製品を開発したいですね!
-最後に高専生にメッセージをお願いします。
木村さん:僕自身、高専時代の友達とは今でもよく電話で話します。「出会い」や「つながり」は自分にとって大きなチャンスになるので、大切にしてほしいですね。また、これから就職活動をされていくかと思いますが、まずは「将来の自分がどうありたいか」をしっかり考えて方向性を決めていくといいと思います。
黒川さん:卒業してから思うのは、「あんなにお金をかけた丁寧な実習、他ではなかなかない」ということです(笑)。高専の実習をやっていたからこそ、本を読んでも理解ができるし、分からないことでもアタリを付けることができます。失敗を恐れたり恥じたりせずに、探究心を持って、将来のイメージを膨らませてみてください!
―お二人とも、貴重なお話をありがとうございました!今後も高専での経験を活かし、活躍していってくださいね!
株式会社イシダ
〒601-8438 京都府京都市西九条東比永城町75番地 GRAND KYOTO 3F
TEL:075-693-7107
HP:https://www.ishida.co.jp/ww/jp/
採用サイト:https://www2.ishida.co.jp/recruit/
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