インタビュー

国内外で特許を取得!ミミズ研究で人類の未来を切り拓く?独自の就職支援・研究参画制度も創設

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ミミズから血栓症を予防する健康食品の商品化を実現し、国内外で多数の特許を取得。テレビ・新聞・Webメディアにも多数取り上げられている長岡高専の赤澤 真一先生。少年時代からアカデミックの世界を目指しますが、研究テーマに出会うまでは紆余曲折があったそう。どのように高専で教育・研究に取り組まれているのかを伺いました。

理科が大好きな少年時代。ポスドクを経て高専教員へ

―先生が科学に興味を持ったきっかけを教えてください。

大学の研究室にて集合写真
大学時代のラボ風景

父が小学校の教員で理科専門だったからか、理科が大好きな子どもでした。「AとBを混ぜると全然違うものができる」って、なんて不思議なんだろうと興味津々で。誕生日プレゼントか何かでもらった顕微鏡キットで、夏休みの自由研究で微生物を観察したりしていましたね。中学生くらいからは科学の道に進みたいと、ぼんやり思っていました。

大学は、近畿大学 理工学部 応用科学科に進みました。研究室に入る頃は、世の中的にも環境に優しい技術が注目されており、微生物を使ってプラスチックを分解するバイオプラスチックなどに興味が向いていました。

ただ微生物分解をする研究室はなかったため、有機合成で新規香料を作ったり、微生物の力を使って香料を作っている研究室に入ることに。仲間と深夜までよく実験してましたが、やればしっかり結果が出るので、とても面白かったですね。しかし、簡単に結果が出るものを今後ずっと研究テーマにするのも…と思ってしまって。今思えば、浅はかと言うか贅沢な悩みでしたね(笑)。

そんな思いもある中、卒業研究「微生物変換による新規香料の創生」に取り組んでいた際、生物の面白さ・可能性に目覚めまして。当時は、遺伝子工学が花開き始めた頃で、解明されていないことも多かった時期です。

これがきっかけとなり、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)で遺伝子工学を専攻し、微生物の研究をすることに。そのまま修士を取得し、COE研究員等を経て博士を取得しました。在学中に兼任で、和歌山県立医科大学でポスドクとして半年程度勤務した後、縁あって長岡高専に着任しました。

ミミズ研究との出会いが人生の転機に

―先生はミミズ研究の第一人者として活躍されていますが、ミミズ研究にシフトされるきっかけはあったのでしょうか?

整然と器具が並べられた実験デスク
NAIST時代の実験デスク

きっかけはNAIST最後の年に、教授から、「奈良県の老舗医薬品メーカーから、ミミズに含まれている血栓分解酵素の研究をしてほしいと相談があったのでやってみて」と言われたことでした。さらに高専教員として着任するタイミングで教授も退官したので、このテーマを継続する人材がいなくなり、着任後も続けても良いと言うことになったのが一つのきっかけですね。

実は、高専初年度は研究テーマがない状態になりそうだったので(笑)、このご縁に救われた形です。もちろん和歌山県立医科大学の先生にも共同研究という形で助けていただき、良いスタートを切れたと思います。大学で研究室に入ったらその後の研究テーマもおのずと見つかると思っていたのですが、それは一握りの人だと知りましたね。ミミズ研究との出会いは私にとって大きな転機になりました。

現在ミミズについては、「強力な血栓分解酵素・消化酵素を活用したミミズ健康食品の開発」「ミミズを活用した代替タンパク質の開発と地域バイオコミュニティの創生」「ミミズを新たな宿主・研究ツールとするための遺伝子工学技術の開発」の3つを主に研究しています。

一国一城の主、高専教員就任時の赤澤先生
高専着任当時の写真

―ミミズ研究の面白さ、大変さはどのようなところでしょうか?

ミミズ研究と出会ってとんとん拍子というわけではなく、実は苦悩した時代もあったんです。酵素であるセルラーゼを使ったバイオマス資化技術の第一人者の長岡技術科学大学の森川康先生、小笠原渉先生と出会い、研究協力をいただけるようになったのですが、やればやるほど先生方のすごさを痛感。この分野では太刀打ちできないと、独自の研究テーマ探しに必死になっていました。

カプセルに入った粉末。サプリメント。
共同開発したミミズ健康食品

面白くなってきたのは高専着任4年目の頃。ミミズの宿主開発をひらめいたんです。調べると海外で1件だけ特許があったのですが論文も出ておらず、これはイケると直感。誰もやっていないからこそ、うまくいったときは全て世界初になるワクワク感でいっぱいでした。成功したらその先にもっと高い壁があるものですが、面白いと言ってくれる人が集まってくれたり、どんどん輪が広がっていきましたね。

―今後、ミミズ研究において取り組みたいことはありますか?

女子学生が顕微鏡に向かっている姿
学生の実験風景

研究者なら一度はNatureやScience誌に成果を掲載したいというのがあると思います。でNatureの姉妹紙にチャレンジしましたが速攻で撃沈。ですが、研究室単独で、同じグループジャーナルであるScientific Reportsに研究成果が掲載されました。嬉しかったですね。この成果はNHKサイエンスZERO出演にも繋がり(2021年10月放映)、高専生の底力を見せられたと思います。今後もこのようなチャレンジをしていきたいです。

現在は細胞にも注目し、ミミズの細胞を使った新しい土壌毒性試験法の開発や医薬品生産宿主として応用できないか研究を重ねています。ミミズは世界経済協力機構(OECD)が土壌毒性試験のモデル生物として認定しているのですが、ミミズ固体を用いた手法は煩雑です。

一方で、細胞は扱いやすく短時間で結果を得ることが出来るため、非常に有用であると考えています。また、高等動物の遺伝子を発現させて組換えタンパク質を生産するのはとても難しいのですが、組換えタンパク質を生産させる使いやすい宿主が意外と少ないという現状がありました。ミミズは安価で飼育も容易な上に、細胞だとさらに個体よりバラつきも減り譲渡もしやすくなるため、新たな宿主として開発し、普及させたいと考えています。

就職・低学年の研究参画など、長岡高専独自の取り組みを推進

―先生が学生と接する上で大切にされていることはありますか?

えんじ色の三角屋根が目立つ、大きな建物。観光バスなどが停まっている。
研究室のメンバーでスキーへ。
ラボ旅行(上越国際スキー場)

はい、教育方針としては「よく学び、よく遊べ」を大切にしています。研究室に入るまでに、しっかり遊んで、配属されたらこれまで学んだ知識を総動員して研究に取り組んでほしいと思っています。遊び足りないと研究していても遊びたくなるものです(笑)。メリハリを付けて、学生時代しかできない経験をして欲しいと考えています。

また研究は、究極の課題解決です。テスト対策や座学では得られないものがありますので、懸命に取り組めば確実に成長します。日々の実験は地道な積み重ねなので疲れたら音楽を聞きながら、仲間と一緒に、など楽しくなる環境を作って取り組んでもらえたらと思っています。

―先生は、授業や研究以外の活動も精力的にされています。地元企業と学生を繋ぐ活動について教えてください。

体育館の中に、企業ブースと学生さんが大勢。
企業説明会の様子

はい、地域連携推進センター長として下記3つの取り組みをスタートしました。
【1】大規模な企業説明会・ガイダンスを開催し、毎年継続
【2】社会人生涯教育(リカレント)講座を創設
【3】UIJターン窓口構築

当たり前ですが、企業や求人を知らないと就職先の候補にすらなりません。ただこれまでは、学生が地元企業について知る機会がありませんでした。そこで、新卒・既卒問わず採用したい企業と、身元が明瞭な企業の中から安心して就職活動をしたい学生・卒業生の出会いの場を作ったのです。高専の使命の一つである「地元への人材定着」にも繋げたい考えです。

―低学年からの研究活動を推進する「プレラボ制度」について教えてください。

学生たちが鍬を持ち、土を耕している様子
プレラボ活動での畑作り

これは研究のアクティビティを低学年から上げる、本校独自の制度として創設しました。従来、研究活動は高学年になり研究室に入らないとできませんでしたが、この制度により一年生からでも研究参加が可能に。なんと、DCON(ディープラーニングコンテスト)で最優秀賞を獲得したプレラボチームもあります。

私は化学部の顧問をしているのですが、「研究がしたい」と言ってくる低学年生がおり、個別にテーマを与えていたんです。これを学年・学科を超えて、さらに職員も学生と研究ができるように具現化。高専には研究をしたくて入学した学生が多いのでアンケートでも満足度が高く、教職員からも好評です。創設して6年が経ち、運用もシステマティックになり、完全に学校の教育システムに組み込まれるに至っています。

―最後に、今後力を入れていきたいことを教えてください。

雲海、青い空、白く光る太陽
2011年富士登山(山岳部に同行)

今後は共同研究として「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発(NEDO)」や「GEAR 5.0(未来技術の社会実装教育の高度化)」(防災・減災・防疫分野)のサブリーダーなど大きな研究に携わります。初めての大きな研究なのでプレッシャーはありますが、しっかりと推進していきたいと考えています。

さらに長年の夢の一つ、ミミズ養殖場のプロトタイプがついに来春、建設されることになりました。地域バイオコミュニティの形成や社会実装を目指し、より一層研究に注力していきます。

赤澤 真一
Shin-ichi Akazawa

  • 長岡工業高等専門学校 物質工学科 生物応用コース 准教授

赤澤 真一氏の写真

1998年3月 近畿大学 理工学部 応用科学科 卒業
2000年3月 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 細胞生物学専攻 博士前期課程修了 修士(バイオサイエンス)
2002年11月 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 COEリサーチ・アシスタント(2003年2月まで)
2004年 4月 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 COE研究員(2005年3月まで)、同年9月 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 細胞生物学専攻 博士後期課程修了 博士(バイオサイエンス)
2005年9月 和歌山県立医科大学 博士研究員(2006年3月まで)、同年9~10月 ミネソタ大学科学工学・物質科学部バイオテクノロジー研究科
2006年4月 長岡高等専門学校 物質工学科 着任
2014年4月~2015年3月 国立高等専門学校教員グローバル人材育成力強化プログラム(グローバルFD)参加(豊橋技術科学大学環境・生命工学系,Queens College at the City University of New York,豊橋技術科学大学マレーシアペナン校等に在籍)
2016年10月 豊橋技術科学大学 高専連携推進センター 連携准教授(兼任2020年3月まで)

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