有明高専から九州工業大学・大学院での研究を経て、現在は北九州高専で教育・研究に携わる北園優希先生。学生時代の学会経験を背景に、着任1年目から学会を立ち上げ、国際会議や論文誌の運営を担いながら、学生に学会発表の機会を届け続けています。研究と学会運営の両輪で学生の挑戦を支える北園先生の歩みと、その教育への思いを伺いました。
身近な高専から始まった研究者人生
―まずは高専に進学されたきっかけを教えてください。
中学生のころは、いわゆる「将来これになりたい」というはっきりした目標があったわけではありませんでした。ただ、数学とか理科が好きで、成績も理系科目のほうが良かったんです。自然と「理系に進むのかな」という感覚はありました。
家の近くに有明高専があって、中学校の先生が「こういう学校があるよ」と教えてくれました。5年間通えて、大学受験がなくて、専攻科まで進めば大学と同じような扱いになる、と聞いて、「じゃあそこにしようかな」と。それぐらいの理由でした。本当に、すごく強い動機があったというよりは、身近に選択肢があったから選んだ、という感じです。
―実際に入学してみて、高専生活はいかがでしたか。
入学前は、もっとレベルが高くて大変なんじゃないかと思っていました。同じ中学校から何人か受験して、自分だけ受かったので、「これは相当厳しいのかな」と身構えていたんです。
でも入ってみると、意外と何とかなりました。専門科目が多いのは楽しかったですね。電気系の授業が増えて、「ああ、自分はこういう勉強がしたかったんだな」と感じました。一方で、社会や地理、歴史といった文系科目では論述中心の課題が出され、むしろそちらのほうが大変でした。レポートも毎週たくさん出て、書く量は多かったですね。
部活やアルバイトは特にしていませんでした。高専祭や体育祭といった行事はありましたが、全体としてはのんびりした学生生活だったと思います。有明高専は高専祭と体育祭を一年おきに交互にやっていて、どちらの年も準備にかなり時間をかけていました。
―卒業研究はどんなことをされましたか。
テーマは電気系で、DC-DCコンバータの効率を良くする、という内容でした。電圧を変換する装置のロスを減らす研究ですね。担当の先生のテーマに沿って回路を組んで、測定して、結果をまとめる、という流れでした。今思えば「研究」というよりは大きめの実験に近かったかもしれません。
―その後、九州工業大学へ編入されています。進学の理由は何だったのでしょう。
もともと進学するつもりでいました。まだ働くよりは、もう少し勉強したいな、という気持ちがあって。場所についても、九州からあまり離れるつもりはなくて、九州内の国立大学で探して、九州工業大学を選びました。特別に強いこだわりがあったというより、自然な選択でした。
―大学に進学されてから、本格的に研究が楽しくなったそうですね。
はい。本格的に研究に取り組んだのは大学に入ってからです。編入後、4年生で研究室に配属されました。配属先は芹川先生の研究室で、センサーを使ってモノを作る研究がメインだったので、「ここでやってみたい」と思って希望しました。
当時はお風呂場などで倒れても気づかれない事故を防ぐための装置を作っていました。赤外線センサーを縦横5個ずつ、合計25個(5×5)並べて、立っている・しゃがんでいる・横に倒れている、といった状態を判別できないかを試しました。
風呂場で利用するものなので、カメラを使わずに姿勢を判定する必要があり、そのために回路を作って、組み立てて、実験して、論文を書いて……という作業を繰り返していました。モノを作って動かして確かめる過程が、自分には合っていて楽しかったですね。
―学会発表も多かったと伺いました。
そうですね。研究室では学部4年生でも学会発表をする方針だったので、夏頃には発表に行っていました。発表のためにいろいろな場所に行けるのが楽しかったです。研究をして、発表して、ついでに少し観光して。博士課程のときにはハワイでの国際会議にも参加しました。観光のほうが印象に残っているくらいです(笑)
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学生と築く学会・研究のフィールド
―北九州高専に着任されてからの活動について教えてください。
九工大時代の縁もあって、着任1年目に大学の先生方と一緒に産業応用工学会を立ち上げました。現在も理事として運営に関わっています。
背景としては、学生時代に国際会議に参加するなかで、群馬で会議があったとき、群馬大学の先生方による「自分たちで会議を開き、自分たちで発表し、表彰まで行う」運営スタイルを見たことです。「自分たちでもこういう場を作れたらいいよね」と話す中で、芹川先生が舵を取ってくださり、定款を作るところから準備して立ち上げました。

毎年、国際会議を2回、全国大会を1回開催しており、論文誌も日本語1誌、英語2誌の計3誌を発行しています。開催地の選定、ホームページや投稿システムの管理、査読の割り振り、プログラム作成、当日の会場運営まで、会議運営全般に携わっています。論文誌については、日本語論文誌の受付や編集も担当しています。
投稿が来たら査読者を決めて、結果をまとめて、プログラムを組んで、当日の会場運営をして……という流れが半年ごとにあり、これを毎年繰り返しています。
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―この学会運営は、学生の発表機会にもつながっているのですね。
はい。この学会で学生にも年2回、発表してもらっています。卒業後に就職する学生もいますが、進路にかかわらず、面接等の場面で「研究で発表までやりました」と話せるのは、やはり大きいと思っています。せっかく研究をするなら、外で発表して経験を積んでほしいですね。
以前は5年生で研究室に配属して9月の発表に向けて準備していましたが、最近は4年後期に配属になり、3月に1回、9月に1回発表する形になりました。早い段階で一度発表を終えた状態で、就職や進学に臨めるようになったのは大きいです。9月は全国大会と国際会議を一緒に行うので、一度に英語と日本語、同時に発表する学生もいます。

普段の指導では、一緒に残って作業することが多いです。夕飯を買ってきて、食べながら実験したりプログラムを書いたり。モノを作るテーマはどうしても時間がかかるので、できるだけそばにいるようにしています。
また、学生本人の意向次第ではありますが、専攻科まで進んだ学生には、「日本高専学会」の研究奨励賞なども目指してほしいなと思っています。これまでに優秀賞が2人、最優秀賞が1人出ていて、今年も応募しています。そうした賞も目標にしながら研究に取り組んでほしいですね。

―現在取り組まれている研究について教えてください。
企業との共同研究で、海岸に漂着するカキ養殖用のパイプを回収するロボットを作っています。海岸に流れ着いた細いパイプが大量に残ってしまう問題があり、それを自動で回収できないか、というテーマです。
この共同研究は、学会で企業の方が展示をされていて、そこで何度かお話しする機会があったことがきっかけでした。ちょうど研究室の学生がインターンシップを希望し、その後も技術相談のやり取りが続き、その流れで共同研究につながっています。

仕組みとしては、まず波打ち際(波の境目)を検出して、そこまで移動し、そこから陸側へ向かって回収していくことを考えています。まだ始めたばかりで開発途中ですが、実際の海岸で動かしながら改良している段階です。

―学会運営について、今後の目標はありますか。
まずは、今の形で研究発表を継続していきたいというのが一つです。学会の参加者数も、もう少し増やして規模を大きくしていきたいですね。
それから、論文誌をScopus(論文情報データベース)のような国際的な検索データベースに登録したいと考えています。海外では、どのデータベースに載っているかが投稿先選択の基準になるので、そこに載らないと投稿してもらえないことがあるんです。海外誌の担当は私がメインではないのですが、この辺りもうまく整備できればいいなと思っています。
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―最後に、高専を目指す中学生や在校生へメッセージをお願いします。
やる気があって、やりたいことがあれば、高専はいろいろな挑戦ができる場所だと思います。研究も、学会発表もできますし、企業との共同研究もあります。
目標を決めて取り組めば、いくらでも経験を積める環境です。ぜひ積極的にチャレンジしてほしいですね。こちらもできるだけサポートしていきたいと思っています。

北園 優希氏
Yuhki Kitazono
- 北九州工業高等専門学校 生産デザイン工学科
情報システムコース 准教授

2005年3月 有明工業高等専門学校 電気工学科 卒業
2007年3月 九州工業大学 工学部 電気工学科 卒業
2009年3月 九州工業大学大学院 工学研究科 電気工学専攻 修士課程修了
2011年3月 九州工業大学大学院 工学府 電気電子工学専攻 博士後期課程修了
2011年4月 北九州工業高等専門学校 電子制御工学科 助教
2015年4月より現職
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