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4.2mのロマンを目指して掴み取った「星」。ロボコン大賞を受賞した熊本高専熊本キャンパス「強奪名星(ロブスター)」に迫る!

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2025年11月16日(日)に東京・両国国技館にて高専ロボコン2025の全国大会が開催され、準優勝となった熊本高専熊本キャンパス「強奪名星(ロブスター)」がロボコン大賞を受賞しました。ロボコン大賞は「大きな夢とロマンを持ってロボットを製作し、唯一無二のアイデアを実現、見る者に深い感動を与えたチームに対して贈られる賞」であり、優勝と同じく名誉ある賞として捉えられています。

今回の競技課題は「Great High Gate」で、主に「ロボットでボックスを組み立てて、高いゲートをつくること」が得点につながる競技でした。決勝戦では、今大会で最も高い4.2mのゲート建設に挑戦する「強奪名星(ロブスター)」と、低めのゲートをいち早くつくり、そこを旋回して数多く通過することで「通過得点」を重ねるという予想外の戦略で注目されていた旭川高専「天旋」との戦いが白熱し、「伝説の試合」と称する声もありました。

本記事では「強奪名星(ロブスター)」のリーダー・制御担当の松永蒼真さん(制御情報システム工学科3年)、機械設計担当の水篠太奨さん(制御情報システム工学科4年)、長田大輝さん(制御情報システム工学科3年)にお話を伺い、その決勝戦についてのみならず、開発や練習の経緯、大会中のトラブル、ロボコンで学んだことなどについて迫りました。

昨年準優勝の悔しさから名付けた「強奪名星(ロブスター)」

―みなさんがロボコン部に入部した経緯を教えてください。

松永:高専入学前だった2022年の高専ロボコンを見て、学生だけでロボットをつくっているところをすごいと思い、自分もつくりたくなってロボコン部に入部しました。

リーダー・制御担当の松永さん
▲リーダー・制御担当の松永さん

水篠:せっかく高専に来たのだから何か高専らしいことをしようと、ロボコン部に入りました。高専に入学したきっかけもロボコンでした。

機械設計担当の水篠さん
▲機械設計担当の水篠さん

長田:高専に入学してからロボコンのことを初めて知りました。ゼロから自分たちで考えるのが面白そうだなと思ったこと、先輩たちの楽しそうな雰囲気に惹かれたことが、入部した理由です。

機械設計担当の長田さん
▲機械設計担当の長田さん

―松永さん・長田さんから見て、先輩である水篠さんはどういう存在ですか。

松永:落ち着きがあって、常に全体を見てくれている存在です。自分たちが出したアイデアには大抵穴があるのですが、水篠先輩が落ち着いて指摘してくださいました。また、進行したり俯瞰したりする力など、リーダーとしての自分の至らない点をサポートしてくださいました。

長田:先輩は僕と同じ機械設計担当で、ロボットに関する質問をしたら完璧な回答が返ってきました。練習のときも全体を見ながら的確なアドバイスをされていて、チームの大黒柱的な存在でしたね。新しいアイデアをたくさん出したのが僕らで、それを完璧なものに修正されたのが先輩でした。

―水篠さんから見て、後輩である松永さん・長田さんはどのような存在ですか。

水篠:松永くんはチームリーダーとして書類業務をこなしながら、僕の専門外である制御の部分で後輩とコミュニケーションをとりながらカバーしたことで、ロボットの動きが良くなりました。真のリーダーだったと思います。

長田くんはつくるのが早くて、器用で、アイデアマンでした。ロボットの改良を検討する際には真っ先にアイデアを出し、すぐに形にしてくれるので、ロボットがどんどん良くなっていきました。彼の存在は大きかったです。

―プロジェクト名「強奪名星(ロブスター)」の由来は何ですか。

松永:これは長田が命名したんです。

長田:昨年が準優勝という悔しい思いをしたので、優勝という一番“星”を奪い、名声を獲得したいという思いで名付けました。ロブスターはロブ(強奪する、rob)とスター(星、star)の当て字ですが、ボックスをつかむハンドの部分はロブスターのハサミに見えますし、ロボットに合っていると思いました。

ただ、強そうな名前にしてしまったので、これで負けたら恥ずかしかったですが、結果としては昨年と同じ準優勝。とはいえ、ロボコン大賞を受賞でき、“名星”を奪えたかなと思っています。

―今回の競技課題「Great High Gate」のルールが発表されたとき、どのようなアイデアが出ましたか。

松永:かなりいろいろなアイデアが出ました。今大会で優勝した旭川高専が旋回で得点を重ねていたことが話題になっていましたが、旋回の案は熊本キャンパスでも一応出ていまして、それくらい幅広くアイデア出しを行いましたね。効率的なゲートの積み方そのものを検討しようと、体育館でさまざまな形のゲートを人力で頑張って組んでみたりもしました。

初期のアイデア出しで使用したホワイトボード
▲初期のアイデア出しで使用したホワイトボード

―ロボットの開発や設計は、どのように進めましたか。

松永:「一番高いゲートを立てて優勝すること」を最終的な目標に設定しましたが、まずは現実的に可能そうな3.2mのゲートを目指しました。ただ、全国大会で優勝するためにはもっと高くする必要があると思っていたので、そこを容易に目指せるように機構面で汎用性を持たせることを意識して開発しました。

水篠:その結果、昇降機構(ロジャーアーム)を2つ置き、両側にボックスを持つハンドを設け、重量を吊り合わせて安定させながらブロックを持ち上げて積んでいくロボットに行き着きました。すでに1号機の段階でコアとなるハンドや昇降機構がうまく動いたので、早い段階で細かな改善に着手できるように。シンプルなロボット構造でしたから、制御プログラミングもじっくり詰めることができ、滑らかな動作が実現できました。

▲高専ロボコン2025の配信では、ロジャーアームについての解説がありました(6:31:35から解説されています)

長田:自分は「ハンドの収納」や「ハンドの吸盤でボックスを持つ」機構を担当していたのですが、いらないと判断した機構はすぐ排除していました。早くつくって、早く試して、見極めて、変えていく——このバージョンアップをたくさん実施することで、ロボットの質をどんどん良くすることができたと思います。

通信不良の中でも、4.2mのゲート建設を決断

―実戦練習も150回されていたそうですね。

長田:そうですね、熊本キャンパスのBチームとのガチンコ勝負を150試合しました。もちろん、自分たちのチーム内でも練習しており、それと実戦を組み合わせることで、本番でも通用する力を身につけようと考えたんです。最近の熊本キャンパスではそれが一番強くなる方法であると、共通認識を持っています。

全国大会前のAチームとBチームでの部内戦の様子。強豪校対策として、共有ボックスの中で1番長いボックスEの取り合いを練習しています
▲全国大会前のAチーム(左)とBチームでの部内戦の様子。強豪校対策として、共有ボックスの中で1番長いボックスEの取り合いを練習しています

―九州沖縄地区大会の決勝では、そのBチームと対戦することになりました。

松永:自分たちAチームが強い時期もあればBチームが強い時期もあり、どちらが勝つかはやってみないと分からない状態でした。地区大会の直前にも5試合したのですが、Aチームの3勝2敗でして、それくらい互角だったんです。本当に勝てて良かったです。

地区大会前に、AチームとBチーム、そして先輩のみなさんで円陣
▲地区大会前に、AチームとBチーム、そして先輩のみなさんで円陣

―全国大会に挑む直前の気持ちについて教えてください。

松永:全国大会直前までBチームと練習を重ねたので、自信はありました。

水篠:前日に会場入りするまでは自信があったのですが、トーナメント表を見たら近いところに強豪校がいくつもあって、勝ち抜けられるのだろうかと思いました。また、テストランで旭川高専のロボットが旋回している様子や、奈良高専や八代キャンパスのロボットが共有ボックスのあるエリアに素早く辿り着き、一番長いボックスEを積み上げている様子を見ていたら不安になりました。

―その旭川高専とは2回戦(熊本キャンパスとしては初戦)で対戦しました。

松永:旭川高専はテストランでの最高得点を記録していましたが、旭川高専の戦い方は共有ボックスを使わないものだったので、自分たちが干渉できる部分はありませんでした。ですので、自分たちのベストが出せるよう、4.2mのゲートを目指して集中していました。

ただ、途中までうまくいっていたのですが、通信不良が起こってしまい、4.2mのゲートが完成するギリギリのところでボックスが崩れてしまったんです。テストランではうまくできていただけに、「通信不良で終わってしまうのか」と、悔しい思いをしました。

通信不良は練習では起こったことがなく、地区大会では少し起こったものの、影響はほとんどありませんでした。テストランでも起こりましたが、その場の修正でうまくいったので、安心して当日に臨んだのですが、会場の人の多さもあって今回の通信不良が起こったのだと思います。

―しかし、ワイルドカードに選ばれ、大会に復帰することになりました。そのときの心境はいかがでしたか。

松永:選ばれたのは嬉しかったですが、この段階で通信モジュールを代えることはできなかったので、まずいと思っていました。ですので、ロボットにもっと近づいてコントローラを操縦することで、通信不良によるラグを小さくしようとしたんです。普段と違う視界になるため、あまりやりたくないことではありました。

また、普段とは異なる操縦方法になりましたので、確実性を少しでも高めるため、ワイルドカードに選ばれてからは、3.2mの高さに留めて戦うことにしました。

長田:ただ、絶対に決勝戦で旭川高専に勝ちたいと思っていました。他の高専を見ると、旭川高専以外は高く積んだゲートを通過する戦略でしたが、ボックスを積みきれずに負けてしまう高専が多かったんです。「Great High Gate」という競技課題において、積みきれずに負けることや、そこまで高くないゲート内を旋回し続ける旭川高専が優勝しそうなことに対して悔しい思いを抱いていた高専もいらっしゃったので、その思いを勝手に背負っていましたね。

ですので、決勝戦で4.2mのゲートを立てて、旭川高専に勝ちたいと思ったんです。

松永:通信不良の問題は根本的には解決できていませんでしたが、決勝戦で4.2mを目指したのは、満場一致で決まったことでした。

決勝戦に臨む直前の様子
▲決勝戦に臨む直前の様子(前列左から長田さん、松永さん、水篠さん)

ロボコン大賞を受賞したときの気持ち

―旭川高専との再戦となった決勝戦。今大会で最高の高さとなる4.2mのゲートを完成させました。そのときの気持ちを教えてください。

▲旭川高専「天旋」との決勝戦の様子(5:56:20からスタート)

松永:通信不良の中でなんとか4.2mのゲートを立てることができましたが、その点数が加算された時点で旭川高専の勝ちであることが分かり、悔しかったです。しかし、自分たちの力をみなさんに見せることができ、とても嬉しかったですね。

完成させた4.2mのゲート
▲完成させた4.2mのゲート(手前)

水篠:旭川高専はとても強く、負ける可能性の方が高いと思っていたので、4.2mを立てることができただけでも満足でした。ゲートができた瞬間はガッツポーズをして、思わず「勝ったぞー!」と叫んでしまったのですが、点数を見たら負けていましたね(笑) でも、どの高専も達成できなかった4.2mのゲートができたので、悔しさよりも満足感の方が大きかったです。

4.2mのゲートの間をロボットが通過した瞬間、ガッツポーズで喜び合う水篠さんと長田さん
▲4.2mのゲートの間をロボットが通過した瞬間、ガッツポーズで喜び合う水篠さん(手前)と長田さん

長田:立てたゲートの間をロボットが通過するという最後の操縦を担当していたのが僕でして、ヒヤヒヤしながら操作していました。そして無事に通過し、成功できてよかったと思いながらパッと振り返って点数を見ると、「負けた」と思いました。

そのときの会場は、どっちが勝ったのか観客のみなさんが固唾を呑んで見ているときで、ほんの一瞬の静寂がありました。すると金銀のテープがパーンと打ち上げられ、僕らのゲートに降ってきました。それを下から見ながら「勝って見たかった」と思いましたね。

―そして、準優勝という結果になりましたが、高専ロボコンのもう1つの名誉であるロボコン大賞を受賞しました。受賞したときのことを教えてください。

松永:ロボコン大賞の発表のときって、高専名がアナウンスされる前にちょっと長めのナレーションが入りますよね。そこで「通信不調に悩まされながらも……」と聞こえたので「自分たちだ」と分かってしまいましたが、めちゃくちゃ嬉しかったです。初戦で負けたらワイルドカードに選ばれて、決勝まで進めて、しかもロボコン大賞を受賞するという道筋を辿るなんて思ってもいませんでした。

長田:ロボコン大賞は嬉しいですが、最初の目標であった優勝は出来なかったので、喜び半分、悔しさ半分といった感じでした。次は絶対優勝したいと、そのときは思いましたね。

―今回の高専ロボコンで学んだことは何ですか。

松永:役割分担してつくっていくのでコミュニケーションが難しいところもありましたが、定期的に会議を開いたり、戦略や改良方法についてたくさん議論したりすることで、チーム全員で一つの目標に向かっていく楽しさを学びました。

3Dプリンターでつくったボックスのミニチュアを使って作戦会議
▲3Dプリンターでつくったボックスのミニチュアを使って作戦会議

水篠:仲間の大切さと人に頼ることの大事さを学びました。3年生のときは各メンバーがそれぞれ1台ずつロボットをつくり、それらを繋ぎ合わせることで完成させたのですが、自分の作業にしか注力できず、しかもそれぞれの完成タイミングがずれてしまうので、効率よく進めることができませんでした。結果、自分たちのチームは地区大会で敗退となったんです。

しかし、今回は後輩それぞれに仕事を託して自分がサポートに入ることで、一人ひとりのタスクを減らすことができ、効率よくロボットを早く組み上げることができたと思います。

長田:低学年とのコミュニケーションが一番の学びでした。一人ひとりに話しかけると、話しかけられた方は当事者意識を持ちます。僕が低学年のときにそう話されたら「先輩のために頑張ろう」と思えたので、3年生になった今回はそれを実践したんです。

低学年と円滑にコミュニケーションがとれると作業スピードは上がりますし、部の雰囲気も良くなります。低学年の雰囲気の良さが高学年に伝播し、それがまた低学年にも伝播するという好循環が生まれていたと思います。

ロボット操作の練習の様子。ときにはロボットが倒れてしまうことも
▲ロボット操作の練習の様子。ときにはロボットが倒れてしまうことも

―松永さんと長田さんは3年生、水篠さんは4年生です。今後の目標を教えてください。

松永:そこまで将来のことは考え切れていないのですが、東京大学に編入したいと思っているので、それに向けた勉強を頑張りたいです。今後は受験で忙しくなるので今までのようにロボコンに関わることは難しいと思いますが、5年生で受験が終わったタイミングで余裕があれば、後輩のサポートをしたいですね。

水篠:僕も大学編入を希望しているのですが、希望する大学をまだ決め切れていません。ですので、自分の納得できる進路を選び、無事に受かることが目標です。また、来年は5年生になるので、先輩方からしていただいたように後輩のサポートをして、熊本キャンパスがいい結果を残せるように尽力したいと思っています。

長田:今年は高専プロコンにも参加し、自由部門で最優秀賞を受賞するなど、コンテストに集中した1年でした。今後もそれを継続し、まだ取り組んだことのないビジネス系のコンテストやDCONなどに参加して、自分の視野を広げていきたいです。ロボコンに関しては、実働で動ける学年の中では一番上の4年生になりますので、マネジメント力を鍛えるためにも、チームに参加したいと思っています。

―最後に、高専ロボコンに興味を持っている後輩のみなさんにメッセージをお願いします。

長田:ロボコンには、ロボコンでしか得られないものがあります。それは他では得られない経験かもしれませんし、信頼できる仲間かもしれません。最高のステージでの、最高の名誉かもしれません。しかし、どんなものを見つけても、それは自分だけのものであり、自分で価値をつけていくものです。高専生活の中で自分だけのものを一つ見つけてもらいたいと思います。

水篠:ロボコンは仲間が大切です。一人だとロボットは組み上がりません。仲間との絆は、ロボコンで得られる何事にも代えがたいものです。

そして、ロボコンに挑戦するからには結果を出したいと思っているはずですが、結果が出ないときももちろんあります。しかし、諦めずに続けていくことが何よりも大切です。真剣勝負で自分たちのベストが出せるロボコンを、ぜひやりましょう。

松永:ロボコンは学生だけでロボットをつくるので、自分たちで技術を開拓し、コミュニケーションを取ってプロジェクトを進めていく難しさがあります。また、半年間かけて取り組んできたプロジェクトが、地区大会2試合の合計6分で消えてしまうこともあるという辛さもあります。

その分、自分たちの努力が実ったとき、それを仲間と喜び合えるのがロボコンの魅力です。ぜひ、ロボコンに挑戦してみてください。

※高専ロボコン2025で優勝した、旭川高専「天旋」への取材記事も、ぜひご覧ください。

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