幼い頃から電気の魅力にはまり、研究に打ち込まれてきた熊本高専の村山浩一先生。現在は主に、「放電を用いたコンクリート破砕」の研究を行っておられます。高専教員になったきっかけから、先生が大事にしている教育方針について、お話を伺いました。
学科間の連携から始まった「電気×コンクリート」の研究
―先生のご研究内容を教えてください。

現在取り組んでいるのは、細線放電による衝撃波を用いたコンクリート破砕の研究です。私の研究室では、直径0.3ミリ程度の細いアルミニウムの線に、10~20kVの電圧を瞬間的に印加し、大きな電流を流しています。それによって発熱をして、細線が溶融気化することで「プラズマ」になります。
そのときに、すごく大きな体積膨張が瞬間的に起き、衝撃波が発生するんですね。その衝撃波を使って、コンクリートを壊すというのが私の研究です。
これは10年程前、当時、熊本高専の建築社会デザイン工学科で「火薬によるコンクリートの亀裂制御」の研究をされていた中村裕一先生から、「火薬の代わりに電気エネルギーを使えないか」という相談があったことがきっかけで始めました。

コンクリートを破砕する場合、主に「火薬」や「重機」が用いられていますが、火薬は危険物であるため法の規制が厳しく、簡単には使えません。重機ですと、人間の手で動かすことによるコスト的な問題や、重機が入れないような狭い場所では破砕ができないという問題があるんですよ。そういった場面においては、電気エネルギーを使ったコンクリート破砕が有用ではないか、というわけです。
たとえば、地震等によってコンクリートの構造物が壊れた時に、中に人が閉じ込められてしまうケースがありますよね。そういった際に、閉じ込められた人を救出するための穴を空ける「ブリーチング」という作業があります。これは、現在のところ、人が掘削機やコンクリートカッターを使って行われているので、ここに電気エネルギーを活用することができれば、より早くより安全に作業できるのではないかと考えています。
―研究に関して、今後の展望を教えてください。

コンクリートの破砕は、再現性を高めることが難しいんですよね。同じ条件でつくったとしてもコンクリートの強度などに違いが生じてしまい、破砕した時の状況にも影響してしまうことが多々あります。ですから、この再現性を高めるためにはどうしたらよいのかということを常に考えています。
また現在のところ、研究設備と安全性の面から、小規模な試験片での実験までしかできていません。実際の構造物だと、中に鉄筋が埋め込まれているので、より大きなエネルギーでの破砕が必要になります。亀裂を制御した破砕が可能なことは確認できているので、亀裂制御の精度を上げると共に、少しずつ試験片の規模を大きくしていければと考えています。

最近では、パルス電界による殺菌の研究も始めました。こちらは、八代キャンパスにある生物化学システム工学科の弓原多代先生、木原久美子先生から相談があったことがきっかけです。
私だけでなく、学科間で協力して研究や様々な取り組みをされている先生は多く、これは学科間の垣根が低い八代キャンパスの強みだと思います。今後も学科間の連携を生かしてより良い研究や教育につなげていきたいです。
二度の不合格を乗り越えたどり着いた、高専教員の道
―先生が電気の分野に進んだきっかけは、なんだったのでしょうか。

幼い頃から電気関係に興味があり、電子工作のやり方が書いてある本を図書館から借りて読んだり、青少年科学館と呼ばれる場所で子ども向けの電子工作の講座に通ったりしていました。そういった経験をする中で、電子工作の楽しさに気づき、「電気についてもっと学びたい!」と思うようになっていきました。
大学受験では、前期に第一志望の北海道大学を受験するも、合格はもらえず。後期で母親が住んでいた宮崎県に近い熊本大学に合格し、進学しました。
大学では、「高電圧パルスパワー工学」という分野の研究をしていたのですが、その研究がとても楽しくて。恩師や先輩,同期など周りの人に恵まれていたこともあり、そのまま大学院へ進学することにしました。

―そこから、なぜ高専教員へ?
就職活動を始めた頃は、高専の教員になるとは微塵も思っていなくて、周りの友人と同じようにメーカーに入社したいと考えていました。しかし残念ながら、希望する会社からは内定をもらえず、「就職浪人をしようか」と途方に暮れていたところ、研究室の恩師から「八代高専(現・熊本高専八代キャンパス)で教員募集があるよ」と勧められて、応募することにしたんです。

ただ、採用面接の前日になって恩師に「面接を辞退したい」と相談してしまったくらい、自信がありませんでした(笑)。それでも恩師からは「今更泣き言を言うな!!」という激励(?)の言葉をもらい、腹を決めて面接に挑みました。そういった経緯で進んだ教員への道でしたが、今では、学生と過ごす時間が何よりも楽しいですし、「高専教員になってよかったな」と心から思っています。
「学生と教員が互いに尊重し合える関係性」を構築したい
―先生は、地域連携の活動にもご尽力されているんだとか。

サッカー部の顧問をやっている関係から、「サッカーでなにか地域貢献ができないか」と考えていたんです。そして、サッカー協会の方から助言をいただき、サッカー部員に日本サッカー協会のキッズコーチライセンスを取得してもらい、地域の子供達向けのサッカー教室を実施していました。
当時は、「子ども向けのスポーツ教室」というものがほとんどなかったんですよね。そのため、月1回ほどのペースで約2年間続けていました。
そこには、地域貢献はもちろんのこと、学生自身の人間教育に力を入れたいという思いが強くあります。サッカー教室を通して、人に物事を伝えることの大変さや楽しさを知り、地域の方と関わる機会を持つことで、人間性を高めることにつながるのではないかと考えています。
また、学生有志と一緒に子供向けの電子工作キットを制作し、地域の子ども向けのイベントでも積極的に出展しています。これは、自分の専門知識を生かした地域貢献がしたいと思い、自分が子どもの頃に通った電子工作講座を参考に、取り組んでいるものです。

学校自体が田舎に位置していることから、学生達はどうしても外部と接する機会が少なくなってしまうんですよね。なので、こういった機会を使って積極的に外部とのつながりを持つことが、学生の成長にもつながると考えています。
―先生が、学生と接するうえで大事にしていることはなんでしょうか?

学生との対話や、一緒に過ごす時間をできるだけつくることです。
サッカー部では、可能な限り、学生と一緒に汗を流すようにしています。白熱しすぎて、骨折したこともあるくらいです(笑)。最近は、学生と一緒に運動するのが体力的に厳しい年齢になってきましたが、サッカーの時間を共有することは自分にとっての楽しみの1つですね。
担任を任されていた時には、日直の放課後清掃を一緒に行うようにしていました。やはり、教えてもらう人をリスペクトする気持ちがないと、学ぶ意欲も湧いてこないですよね。そういった意味でも、学生と教員とが互いに尊重し合えるような関係性を構築していくのが、私の教育スタイルです。
私自身、進学と就職で二度不合格を経験していて、進学や就職活動が上手くいかなかった学生の気持ちがよく分かります。八代キャンパスには、実直で人間的にも素晴らしい学生がたくさんいます。これからも、人一倍学生に寄り添いながら、そういった学生の人間性をより伸ばしてあげられるような活動を続けていけたらと思っています。

村山 浩一氏
Koichi Murayama
- 熊本高等専門学校 八代キャンパス 機械知能システム工学科 教授

1994年 熊本大学 工学部 電気情報工学科 卒業
1996年 熊本大学大学院 工学研究科 電気情報工学専攻 修了
1996年4月 八代工業高等専門学校 機械電気工学科 助手
2002年 熊本大学大学院 自然科学研究科 システム情報科学専攻 修了
2008年4月 同 准教授
2008年10月 熊本高等専門学校 機械知能システム工学科 准教授
2019年10月より現職
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