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日常の中で国際性と人とのつながりを育む! 新・高千穂寮に込められた新しい寮生活のかたち

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2025年3月、全面的な建て替えを終えた都城高専の「高千穂寮」。設備の刷新に加え、学生が部屋にこもらず過ごせる空間設計や、留学生と共に暮らす国際寮など、「暮らしそのものが学びになる」環境が整えられました。寮の運営を担う寮務主事の若生潤一先生と学生寮長のお二人にお話を伺い、新・高千穂寮の魅力に迫ります。

「こもりきりにさせない」設計——新・高千穂寮の概要

―新しくなった高千穂寮について教えてください。

若生先生:都城高専は2024年度、学校創立60周年を迎えました。高千穂寮も築60年が経過し、老朽化が進んでいたことから、2020年度から段階的に建て替え工事が行われてきました。そして2025年3月、すべての棟の建て替えが完了し、新しい高千穂寮が完成しました。

建て替えにより施設・設備は一新され、居室には作り付けの棚やロフトを備えるなど、限られた空間でも使いやすい設計になっています。エアコンや換気設備、インターネット環境も整い、日常生活で不自由を感じる場面はほとんどありません。

▲高千穂寮の1人部屋

若生先生:各棟の入口はオートロックになり、防犯カメラの設置台数も増やしました。外部からの侵入を防ぐことはもちろん、寮内で起こりうる盗難などのトラブルを未然に防ぐ意味もあります。実際、ここ数年で大きな問題は起きておらず、学生を守るための仕組みとして重要な役割を果たしています。保護者の方にとっても、安心材料のひとつになっているのではないでしょうか。

さらに、建て替えによって寮の収容可能人数が最大420名まで拡大しました。現在は自宅から通学可能な学生であっても、「親元を離れて自立した生活を送りたい」「寮生規範を守れる」という意思があれば、居室に空きがある限り入寮を認めています。

▲取材をお引き受けいただいた若生先生

―新しい高千穂寮の最大の特徴は何だと考えていますか。

若生先生:大きな特徴は、各棟・各階に設けられた「居室前の共有スペース」です。以前の寮では、居室前は単なる廊下で、学生が自然に集まれる場所は限られていました。談話室や食堂前のソファなどはありましたが、どれもスペースとしては十分とは言えませんでした。

▲食堂前の談話スペース

若生先生:新しい寮では、「寮生が自分の部屋にこもりきりにならず、外に出て過ごせる場所をつくりたい」という考えから、居室前のスペースを広く取り、テーブルやテレビを設置しています。各階に1台ずつテレビがあり、自由時間にはレポートを書いたり、談話をしたり、みんなでテレビを見たりと、想定していた通りの使われ方をしています。

▲居室前の共有スペース

佐藤さん(男子寮長):以前は男子寮に談話室が1室しかなく、集まれる人数が限られていました。今は自然と人が集まる場所が増え、テスト期間には一緒に勉強したり、友達に聞いたりしやすくなりました。

―高千穂寮は「教育寮」としての役割も担っていますね。

若生先生:高千穂寮は、建て替え前から一貫して「教育寮」として位置づけられています。低学年生は、授業のある日の前日の夜8時から10時までを学習時間とし、机に向かって学習に取り組む環境を整えています。

学習時間を設けなくても、自分で計画的に勉強できる学生はいますが、そうでない学生もいます。誰もが一定の学習習慣を身につけられるようにするための環境づくりの一環として、ずっと継続しているルールです。

実際に成績を見ても、通学生と比べて寮生が大きく劣ることはありません。むしろ、平均的には寮生のほうがやや高い傾向も見られます。食堂に集まって、希望者同士で勉強会を開催することもあり、寮生活ならではの効果は確かにあると感じています。

大野さん(女子寮長):私は時間が決まっていないと勉強できないタイプなので、低学年のときは寮の学習時間があるおかげで、自然と机に向かうことができていました。この学習時間のルールをきついと感じる学生もいるかもしれませんが、勉強の習慣を身につけたい人にとっては、意味のある仕組みだと思います。

▲取材をお引き受けいただいた佐藤さん(左)と大野さん

―費用面についても教えてください。

若生先生:寮生活にかかる費用は、比較的抑えられています。寄宿料は1人部屋で月800円、2人部屋で月700円です。給食費は1日3食で日額1,320円(※改定の可能性あり)。これに加えて、電気・水道・風呂燃料費、ネットワーク利用料、エアコンのリース代などを含む管理費が年額10万8,000円かかります。

また、寮生会活動の運営費として、年額5,000円の寮生会費が必要です。生活に必要な費用が明確で、保護者にとっても見通しを立てやすい点は、大きな安心材料と言えるでしょう。

共同生活から広がる、国際性と人とのつながり

―国際寮について教えてください。

若生先生:高千穂寮の中でも特徴的なのが、国際寮の存在です。一般的な学生寮とは異なり、シェアハウスに近い生活スタイルが特徴です。部屋の前にキッチンや共有スペースがあり、日常の延長線上で国際交流が生まれるよう設計されています。

▲国際寮のユニット内

若生先生:現在、高専では「グローバルエンジニア」の育成に力を入れています。国内にとどまらず、世界で活躍できる技術者を育てるためには、語学力だけでなく、異なる文化的・社会的背景を持つ人と自然に関われる感覚が欠かせません。国際寮は、そのための環境づくりの一環です。留学生をより多く受け入れ、日本人学生と生活を共にすることで、相互理解を深めることを目的としています。

2025年度現在、在籍している留学生はウガンダ、フィリピン、インドネシア出身の3名。翌年度には5名に増える予定です。今後は、1年間の長期留学だけでなく、3ヶ月や1週間といった短期留学生の受け入れも想定しています。短期留学生が日本人学生と寝食を共にすることで、新たな交流が生まれることを期待しています。

―国際寮での共同生活を通じて、どんな力を身につけてほしいと考えていますか。

若生先生:日本人は英語が苦手という以前に、外国人と話す環境そのものに慣れていないケースが多いと感じます。国際寮では「外国人と話すことは特別ではない」感覚を身につけてほしいです。英語がたどたどしくても、話してみれば意外と通じるもの。その経験を重ねることで、将来、海外の技術者と仕事をする場面でも、臆せずコミュニケーションを取れるようになってほしいですね。

現在、国際寮では留学生とトランプをしたり雑談したりと、日常の中で自然な交流が生まれているようです。文化的背景の異なる人と生活を共にすること自体が、十分に国際交流の経験になっています。

佐藤さん:ウガンダ出身の留学生とお風呂で一緒になることがあり、日本語で話す中でも文化や考え方、経験の違いを感じます。一度は外国に出てみたいと思うようになり、良い刺激になっています。

―寮でのイベントについて教えてください。

若生先生:高千穂寮では、寮生会が中心となって年間を通じてさまざまなイベントが行われています。新入生歓迎会や寮祭、寮マッチ、ナイトカフェ、クリスマス会など、その目的は単なる娯楽ではありません。

特に大きな意義だと感じているのは、日常生活だけではなかなか生まれない、縦と横のつながりをつくれることです。普段は話す機会のない学年や棟の学生と関わるきっかけになり、イベントを一緒につくる・楽しむ過程そのものが、人間関係を深める場になっています。

―寮生のおふたりは、印象に残っているイベントはありますか。

大野さん:寮祭とナイトカフェです。寮祭では実行委員長に声をかけられ、音響担当として参加しました。業者を呼ばず、学生だけで音響設備を設営したのはとても印象に残っています。ステージではバンド演奏も行い、寮生以外の人も見に来てくれました。かなり本格的で、思い入れのあるイベントです。

▲寮祭の閉会式の様子

大野さん:ナイトカフェは、今年初めて開催された新しい試みでした。平日の夜に、机を囲んでお菓子を食べながらカードゲームなどをする企画で、結果的に多くの寮生が集まり、一番成功したイベントだったと思います。普段は話さない人とも自然に話せたのが良かったです。

▲ナイトカフェの様子。バンド演奏も行われています

佐藤さん:私は寮マッチやワールドカップ観戦が印象に残っています。男女混合でスポーツを楽しむ寮マッチでは、学年や性別を越えた交流が生まれます。1年生のときに参加したワールドカップ観戦では、いろんな学年の先輩と一気に関係を築くことができ、今では就職や進学の相談に乗ってもらえる存在になりました。

▲寮マッチでバレーを楽しむ寮生たちの様子

寮長2人が語る、高千穂寮のリアル

―都城高専に進学したきっかけを教えてください。

佐藤さん:バレーボールの強豪校への進学を考えていたのですが、当時の成績を見た親に勧められて「とりあえず受けてみるか」と受験しました。倍率も高く、正直落ちると思っていたので、合格したときは驚きました。

大野さん:理科が好きで、化学を本格的に学びたいと思ったのがきっかけです。オープンスクールの実験が楽しく、「ここで学びたい」と思い、受験を決めました。レポートは大変ですが、中学時代に思い描いていたような実験ができていて、今はとても楽しい学校生活を送っています。

―中学卒業後から親元を離れることに不安はありましたか

佐藤さん:不安より楽しみが大きかったです。むしろ早く親元を離れたかったくらいです。

大野さん:私は不安だらけで、入ったばかりの頃は寂しくて友人と毎日泣いていました(笑) でも学校や部活が忙しくなるうちに自然と寂しさは薄れていき、今は全く感じていません。

―寮に入って良かったと思うことはありますか。

佐藤さん:友達ができやすく、先輩・後輩との距離が一気に近くなるのが一番大きいです。寮生活は周りに合わせる場面が多いので、協調性もつきました。後輩に寮のルールをどう伝えるかなど、人との関わり方を学べる感覚があります。

大野さん:通学生より縦と横の関係をつくりやすいのが魅力です。分からないことを先輩に聞けたり、夜に後輩や友達と話したり、毎日お泊まり会みたいで楽しいです。生活面では、自分で回す力がつきました。アルバイトで寮食の時間に間に合わない日は自炊をして食べることもあります。そういう経験を重ねるうちに、自立できてきたなと感じます。

▲高千穂寮のキッチン

―新しい寮に入ったときの率直な感想を教えてください。

佐藤さん:「綺麗」「嬉しい」です。これに尽きます。地べたでも寝られるくらい綺麗だなと思いました(笑) 以前はドアの音や揺れなどが気になることもありましたが、そういうストレスが減ってとても快適です。

大野さん:私は建て替えの移行のタイミングで一時的に国際寮に入寮していたので最初から綺麗な環境だったのですが、それでもすごく快適だなと思います。特に、設備が使いやすくなったのが大きいです。国際寮にいた頃はキッチンが限られていましたが、今は複数あって料理もしやすいと感じます。

あと、大浴場は温泉みたいで気に入っています。お風呂は、不思議と普段話さないようなことも話せたりするので、そこで会話が生まれるのも魅力です。

▲高千穂寮の大浴場

―寮長として、これからどのような寮にしていきたいですか。

佐藤さん:高専生活は高校と大学の間の時期で、世間的には「青春」と言われる大事な時間だと思っています。みんなが青春を謳歌できるような高千穂寮にしていきたいです。

大野さん:楽しむときは楽しんで、やるべきことはきちんとやる。メリハリのある寮にしていきたいと思っています。

―寮をもっと良くするために、課題だと感じている点はありますか。

大野さん:掃除に来ない学生や、「人に迷惑をかける」感覚がまだ薄い学生もいるので、どう向き合っていくかが課題です。

佐藤さん:寮には規則が多く、軽く扱ってしまう人もいます。そこをどう食い止めるかが、私たちの役目だと思っています。後輩との関わり方を工夫しながら、より良い方向に改善していきたいです。

―高専進学を検討している中学生や保護者の方へ。高千穂寮の魅力を一言ずつお願いします。

佐藤さん:最初は不安でも、慣れていくものです。困ったときは寮生会や先輩がサポートするので、安心して入ってきてほしいです。

大野さん:入ったばかりの頃は「先輩が怖い」「規則が厳しい」と感じるかもしれませんが、全部「みんなが過ごしやすくするためのもの」です。理不尽に厳しいわけではありません。不安は少しずつ消えていくので、ぜひ楽しんでほしいです。

―先生からも、高専進学を考えている中学生・保護者の方へメッセージをお願いします。

若生先生:寮生活の良さは、共同生活の中で人との関わり方を身につけられる点です。先輩・後輩とのやり取りを通して、相手との距離の取り方や、集団の中でのふるまい方を自然と学べ、自立する力も育ちます。

高千穂寮は建て替えにより設備が新しくなり、快適に過ごせる環境が整いました。親元を離れて自立する良い機会として、自宅からの距離に関わらず検討してもらえたら嬉しいですね。高専生活が、楽しく有意義なものになるよう願っています。

▲高千穂寮の国際寮(左)と第2棟

○都城工業高等専門学校 高千穂寮
〒885-8567 宮崎県都城市吉尾町473番地の1
TEL:0986-47-1138(寮事務室)
HP :https://www.miyakonojo-nct.ac.jp/dormitory/

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